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天然で鈍感な男と私の話  作者: 九條リ音
新人看護師と新人医師といっちゃってる新人精神科医
218/242

亜美に会いたい(京平目線)

 亜美、日に日に、亜美のことが愛しくなっていくよ。

 亜美の笑った顔を見ると、こっちまで笑顔になるし、いつも楽しい気持ちにさせて貰えるんだ。

 悲しい気持ちの時も、亜美はいつもそんな俺を受け止めてくれるから、いつも思い切り泣けるんだ。

 それに亜美といると安心出来る。安心し過ぎて、いつもすぐに眠たくなっちゃうくらい。

 そんな亜美を、守りたいし笑わせたいな。

 亜美の笑顔があれば、何にもいらないからさ。

 俺の隣で、ずっと笑ってて欲しいな。


「へへ、だーれだ!」

「京平ってば、なにやってんの?」

「ん、最近亜美にこういうことしてないな、って」

「なんてね。ちょっと嬉しかったかも」

「皆居るからいこ」

「え、皆って?」

「ま、来れば解るよ」


 今日は4/9。久々に亜美と勤務も合ったし、新人研修で休憩時間も久々に合うから、楽しみでしょうがなくて、今か今かと亜美を待っていたんだ。

 

「亜美は俺の隣ね」

「席取っといてくれたんだ。ありがとね」

「あ、時任先輩、遅いですよー」

「なるほ、皆って新人達かあ」

「フレッシュだよな」

「あ、因みに僕もいますよ」


 今日は医師、看護師の新人勢と、日比野くんと一緒にご飯を食べることになった。

 俺と亜美は、日比野兄弟と磯部さんと東条くんの看護師達の近くの席だ。


「本当に日比野兄弟は似ているよな?」

「兄ちゃんのがかっこいいだよ」

「顔は変わらないですよ、真」

「ん、弟にも敬語なのか? 日比野くん……って、これからは苗字呼びだと紛らわしいな」

「名前呼び捨てで構いませんよ、僕は。因みに家で厳しく躾けられて、敬語が抜けないんですよ」

「じゃあ、友くんって呼ぼうかな」


 少し話し合って、これから区別を付けるためにも、友くん真くんと呼ぶことになった。

 この2人、顔もかなり似てるからなあ。真くんには泣きぼくろがあるって違いしかないから、間違えないように気をつけなければ。


「わ、私も呼び捨てでいいですよ!」

「あ、ついでに俺も」


 新人看護師さん達も、俺に呼び捨てで呼ばれたいのかな? なかなか可愛いとこあるじゃん。


「じゃあ、美紀さん、司くんって呼ぼうかな? 宜しくな」

「はい、宜しくお願いします!」

「宜しくです」


 そんな話をしながら、俺達は弁当を食べ始めた。

 すると、後ろから甲高い声で俺を呼ぶ声が聞こえる。ああ、例のあの人が現れたか。


「深川先生! まゆと一緒にご飯食べましょ!」

「ごめん、いま皆とご飯食べてるから……あと、彼女もいるし」


 天王寺まゆりさん。正直、休憩時間が合う時は憂鬱で仕方ないよ。

 急に抱きしめてくるとかはなくなったけど、亜美以外の人を好きになることはないから、そんなにアプローチされても鬱陶しいというのが本音だ。


「まゆのが魅力的だから、まゆと付き合って欲しいです。楽しいですよ」

「だから、彼女以外興味ないから、俺」


 俺は煩わしさで、少し声を荒げてしまう。あ、流石にやり過ぎたかな?

 でもこれくらい言わないと、辞めてくれなそうだしなあ。同僚になった今は、きちんと伝えないと。


「うふふ。隣空いてるんで、まゆは隣に座りますね」


 強く言ったのに、引き下がらねえな?

 あ、亜美が不機嫌そうな顔してる。亜美にそんな顔させたくないのに。

 こんなに強引な天王寺さんを抑えるにはどうしたらいいんだ?!

 俺が頭を抱えていると。


「天王寺さん、深川くんにしつこくしないように言ったでしょ?」

「あ、めぐたん主任部長。すきだからしょうがないんですよ!」


 お、愛さんが止めに来てくれたぞ。助かるよ、愛さん。


「取り敢えず話し合いが必要みたいね。奢るから一緒にご飯食べに行くわよ!」

「ええ?! 深川先生と一緒に居たいですぅ!」

「深川くんも迷惑がってるわよ。引くことも覚えなさい」

「ひーん」


 こうして愛さんによって、邪魔者だった天王寺さんは居なくなった。本当にありがたすぎるよ、愛さん。


「亜美、もう天王寺さんは居なくなりましたから、顔を(しか)めるのはやめましょ?」

「あ、顔そんななってた?」

「うん、かなりなってたぞ。ごめんな、亜美」

「京平にその気がないのは解ってたんだけど、やっぱり気になっちゃって」


 亜美を心配させたくはないんだけど、天王寺さんが俺に付き(まと)い続ける限りは、亜美も気にしてしまうよな。本当に申し訳ない。

 亜美が不安がる必要はないのだけど、いい気がしないのは確かだよな。俺だって、同じ立場ならいい気はしないし。


「いっそのこと、亜美を抱きしめれば良かったかな? 天王寺さんの前で」

「京平、それは私も恥ずかしいよ。嬉しいけど」

「ははは、取り敢えず弁当も食ったし、少し寝ようかな」

「私も傍にいるね」

「いつもありがとな、亜美」


 教え疲れってやつかな。少し眠たかったから、俺は仮眠室で寝ることにした。亜美も傍にいてくれるし、幸せだよな、俺。


「結構強めに言ったんだけどな、天王寺さんには」

「中々諦めてくれないもんね」

「そうだよ。俺には亜美しか要らないのに」

「うん、私も絶対離さないもん」


 亜美は優しく俺をポンポンしてくれた。

 うざったいこともあったけど、やっぱり亜美がいると強張った心も和らぐよ。ふわあ、もうこれは眠りに落ちる寸前だな。


「おやすみ、亜美」

「おやすみ、京平」


 亜美、愛してるよ。なんでいつもそれだけなのに、いつも伝えられないんだろうな。俺って。

 ふわあ、おやすみ。


 ◇


「京平、そろそろ時間だよ」

「うーん、おはよ。亜美」

「京平、おはよ」


 眠っている俺を、亜美が起こしてくれた。幸せ過ぎる目覚めだよ。


「この後も研修頑張ってね」

「ありがとな。頑張るよ」


 次に亜美と会えるのは家か。かなり寂しいんだけど、仕事はしないとな。

 俺は亜美の手を少し握った後、仕事に戻っていく。

 

 研修室に戻ると、既に池林くんと小森さんは、自習をしながら待機してくれていた。

 

「あ、深川先生! 次は私達の席に来て、一緒にご飯食べましょうね!」

「うす」

「ああ、次は一緒に食べような」


 因みに五十嵐病院の研修医制度は少し特殊で、まずそもそもインターンに来た人しか採用しない。そのインターン期間でローテート、必須科目の外科、内科、小児科、産婦人科、精神科、救急、地域医療といった科を回り、面接の時にはもう希望の科を決めてもらっているのだ。

 そうすることで、より専門的に診れる医者を育てていく、という訳だ。

 ただ、緊急外来に入ることもあるので、座学、実習を通して、ローテートも行われる。

 いや、正確にはローテートじゃないかな。それぞれの科に行くんじゃなくて、受けもってる指導医……つまり俺達が教えなくてはならないので、知識がかなり必要だ。

 俺は残念ながら、外科の実習がてんで駄目なので、外科の実習だけは鈴木先生に担当して貰っている。


「さ、座学始めるぞ。来週から実習も始まるからな」


 ◇


「レポートは明日鈴木先生に提出な」

「今回も範囲広いですねえ。でも深川先生は解りやすく教えて下さるので、スラスラ書けそうです。後は予習もしなきゃですね!」

「うす」


 実習来週からだけど、池林くんは大丈夫かな? 結局今日、「うす」しか言ってないもんなあ。コミュニケーション能力が心配過ぎる。


「俺は明日休みだけど、昼は病院にいくから、一緒にご飯たべような」

「嬉しいです!私、いろんなお話を深川先生としたかったんです。楽しみだなあ」

「うす」


 まだまだ話せていないことも沢山あるもんな。折角なら仲良くなりたいし、明日は色々話したいな。

 亜美のことばかり話さないようににしないと、だけど。

 明日だって、亜美に会いたくて病院に行くようなもんだしな。


「それじゃあ、お疲れ様」

「深川先生、お疲れ様です」

「うす」


 今日の勤務も終わったし、今晩は何を作ろうかな。そんなことを考えながら、ロッカーに向かう。

 肉じゃがも久しぶりにいいかもな。なんなら、カレーも最近作ってないし。

 夜ご飯のことばかり考えていたんだけど、そんな中、後ろから声が聞こえた。


「深川先生、お疲れ様です」

「ああ、美紀さん。お疲れ様」

「そうだ、少し相談に乗って欲しいです」

「お、なんだなんだ?」


 そう言われて、ロッカーに向かっていた足は休憩室に動いていく。


「で、相談ってなんなんだ?」

「実は私、好きな人がいまして……時任先輩と付き合ったとき、どう告白したのかな、って思いまして」


 やばい、これはかなり恥ずかしいぞ。亜美が俺を好きだって確信があったから、好きとも愛してるとも付き合ってくださいとも言わず、キスして気持ちを伝えた、だなんて。

 よく考えなくても、同意なしでキスしちまってるもんな。よくはないよな。

 流石にこれを話すのは恥ずかしいから、少し嘘を吐くか。


「普通に自分の気持ちを伝えたよ。それが届いたから、今に至るって感じかな?」

「素直に伝えたってわけですね。なるほど」

「少しは参考になったかな?」

「はい、有難うございます。近々告白しようと思います!」


 まずは好きになってもらう努力を、と言いかけて俺は口を紡ぐ。

 そもそも俺だって、好きになってもらう努力はしてないし、なぜ亜美がこんな俺のことを愛してくれているかも、全然解らないから。

 亜美は俺のこと優しいって言うけど、ただ気が弱いだけだし、人はかなり選ぶ方だし。

 どんなとこを愛してくれているのかな、亜美は。


 ◇


「ただいま」

「お帰り、京平」


 信次はもうバイトに行ってるかな。

 今日は信次の好きな肉じゃがにしようかな。美味しい白滝もこの前買えたしな。

 俺は手を洗って、エプロンを付けて、調理に取り掛かる。


「おお、私も教わりたいが、まだ仕事がああ」

「またの機会だな。楽しみに待っててな」


 俺は手際良く材料を切って、白滝の灰汁を取って結んで、材料を軽く炒めて、醤油、酒、みりんを入れて煮込み始める。

 後はほうれん草のお浸しでも作ろうかな?

 それと、大根のお味噌汁にしようかな。


「おお、良い匂いがしてきたな」

「うん、もうすぐ出来るよ」


 なんだか亜美に会いたくなってきた。後数時間で会えるのに、さ。


「お父さん、ご飯作り終わったから、少し寝るよ」

「おやすみ、京平」


 亜美が居ない時間がどうにも寂しくて、俺は寝ちまうことにした。

 起きる頃には亜美の笑顔が見れますように。

 おやすみ。

京平「亜美、会いたいよ。むにゃむにゃ」

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