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天然で鈍感な男と私の話  作者: 九條リ音
新人看護師と新人医師といっちゃってる新人精神科医
213/242

新しい季節。

「んー、よく寝た!」


 いよいよ今日から4/1。私が先輩になる日だね。後輩達にとっては、新しい環境に飛び込む訳だし、早く馴染んで欲しいなあ。

 3人ともインターンで来てくれた子達だから、また会えるのも楽しみだしね。


 医師は京平が指導係になるし、力が付くお弁当作ってあげたいな。唐揚げ卵焼き弁当とかいいかも。

 医師は研修医からスタートだから、指導も大変だもんね。

 頑張ってね、京平。


 私は布団からむっくり起き上がって、ギュッとしてくれている京平の腕を解いて、キッチンに向かう。


「ああ、亜美、おはよ。朝ご飯出来てるからね。洗濯機も回しといた」

「のばらも起きてますわ!」

「おはよ、信次、のばら。でも、京平とも相談したけど、大学始まってからは家事やらなくていいからね?」

「えー、やだよ。調子狂っちゃうよ。朝ご飯作って、のばらにお弁当を作るの、もうルーティンだし」

「のばらも信次のお弁当がいいですわ」


 信次も4/7には、遂に大学生だ。大学まで距離があるし、家を出る時間も早いから、信次には負担をかけたくなくて、家事は私達でやろうねって話してたとこなんだけどなあ?

 信次としては、朝の家事はもはやルーティンみたいで、続けたいみたいだね。


「じゃあ、京平とも相談してね。心配してたしさ」

「うん、直接兄貴と話すよ」


 そんな話をしながら、2人でお弁当作りを始めた。のばらは洗濯機が終わるまで待機。

 今日は信次に余裕があるのと、信次が作りたい! って言ったから、お父さんのお弁当も信次の担当となった。私は私のお弁当と、京平のお弁当と信次のお弁当を作るよん。


「あ、そうそう。兄貴はしばらく僕の受験弁当みたく、ボリューミーにしてあげてね。指導で体力使うからさ」

「やっぱり? そうしようと思ってたんだよね」

「兄貴のことわかってるね、亜美は」

「そりゃ京平を愛してますから」


 お弁当を通して、京平の力になれますように。

 勿論どんな時も京平の力になりたいのが本音だけどさ。

 さ、さっそくボリューミーなお弁当を作ろっと!

 私はいつもより多く、鶏肉を捌いていく。唐揚げ沢山揚げなきゃだしね。捌いた鶏肉は片栗粉を付けて、醤油と出汁の入ったボウルに入れる。

 後は肉巻き野菜も作りたいな。栄養バランス的にもいいし、ガッツリしてるもんね。

 今の内に、肉巻き巻きして、卵焼き焼いちゃおっと!


「お弁当作ってる亜美、楽しそうなんだよな」


 ◇


「洗濯機終わりましたわ。干しますわ」

「ふう、僕はお弁当作り終わったよ」

「私も肉巻き野菜が焼けたら完成だよん」


 香ばしく美味しく焼き上がりますように。

 お弁当が出来たら、京平を起こさなきゃだしね。

 焼いてる間にお弁当箱に、他のおかずを詰めてっと。

 うむ、美味しそうに仕上がって来たぞ。

 肉巻き野菜も焼けて来たから詰めて。


「よし、完成!」

「へぇ、どれどれ?」

「見ちゃダメ!」

「言うと思ったよ」


 私は信次に見られないように慌ててお弁当の蓋を締めて、京平のと私のには保冷剤を入れる。信次のは冷蔵庫に入れるから、保冷剤は要らないのだ!

 お弁当はそれぞれのバッグにしまって、と。

 さて、良い時間だし京平を起こしにいかなきゃ。

 私は駆け足で、京平が寝ている部屋まで行く。

 部屋に着いた私は京平の耳栓を外して。


「おはよ、京平」


 私は思わず、京平を抱きしめた。


「おはよ、亜美。朝から大胆だな?」


 と言いつつ、京平も私を抱きしめてくれた。気付いたらキスまでしてる。こんな時間も好きだよ。京平。


「京平も大胆じゃん」

「ん。いつもだろ?」


 京平と私は、お互いに満足しながら食卓に向かう。

 ちょうどお父さんも起きて来たみたい。


「おはよう。亜美、京平」

「兄貴、おはよ」

「お兄様、おはようございますわ」

「お父さん、信次、のばら、おはよ」

「おはよ。お父さん」

「朝ご飯にしよ」


 私達は食卓に着く。今日も美味しそうな朝ご飯が並んでいるや。


「「「「「いただきます」」」」」


 ◇


 私達は朝ご飯を食べた後、朝の支度をして、病院まで向かう。

 今日はお気に入りの髪ゴムを付けたし、今日も京平は手を握ってくれているし、先輩として頑張らなきゃ!


「いよいよ、亜美も先輩だな」

「うん、後輩にかっこいい姿見せなきゃ!」

「あはは、いつもの亜美がいいよ」

「いつもの私、かっこいいかな?」

「うん。誰よりもかっこいいよ」


 京平はいつもこうやって、自信をつけさせてくれる。本当に優しい人だな。


「そう言えば京平が診察の日は、誰が指導するの?」

「インターンの時と同じ鈴木先生。しばらく内科は忙しくなるな」

「今月から京平の診察日も増えるもんね」

「正確には来週からな。今日は俺が新人教育したいからさ」


 そう、京平の診察日は来週から月曜、火曜、金曜となる。

 休憩時間も今日から昼も行う都合上、患者様が居なくなってからじゃないと取れないのに、本当にお疲れ様過ぎる。

 京平、ちゃんと休憩取るんだぞ!

 そんな訳で、京平が診察の時は休憩時間合う確率はほぼゼロってこと。

 これからはより一層、一緒に過ごせる時間を大切にしなきゃ。例えば今みたいに手を繋いで歩く時間もね。


「今日飲み会のとき、俺の隣に座ってくれよ?」

「それは願ったり叶ったりだけど、いいの?」

「じゃないと、俺が亜美不足でキツくなるから。あと、呑んじまうし」

「それはいけないね。じゃ、隣行くね」


 病院だと京平は上の立場になるし、飲み会は隣はダメかなあって思ってただけに嬉しいな。一緒に楽しめたらいいな。


「亜美が隣って決まったら、飲み会も楽しみになるよ」

「えへへ、私も!」

「飲み会会場にも一緒に行こうな」

「うん。一緒に座れるもんね」


 滅多に飲み会が開かれない五十嵐病院だけど、やっぱり普通は会社の飲み会ってつまらないもんね。特に人を選ぶ京平は、ね。

 私自身としては、今日は京平とのばらと蓮と朱音もいるし、新米看護師さんもいるし、楽しみなんだけどね。


「もう病院か。休憩時間合うといいな。じゃ、また後で」

「うん、合うといいねー!」


 よし、少なくとも飲み会は京平と一緒だし、これからお仕事頑張るぞ!私は意気揚々と、更衣室に向かった。

 私は着替えながらライムを見ていると、友からライムが届いてた。えっと「弟が今日からお世話になります」かあ。

 そう言えば、(しん)くんも五十嵐病院に内定貰って、今日から内科の看護師だもんね。

 あの兄弟、顔だけは似てるから、びっくりする人いるだろうなあ。今は髪型も同じだしね。唯一違うのは、真くんには泣きぼくろがあるくらい。

 真くんは友の弟で、国立東都看護学校の後輩でもある。

 ……あるんだけど、勉強は得意じゃないらしい。正確には中学まで身体の事もあって、全然勉強出来なかったみたいで、勉強が苦手みたい。

 いやでも、国立受かってるからバカではないよな? 寧ろ賢いのでは?

 ただ、穏やかな良い子だから、看護師向きではあるんだよね。努力してない訳じゃないし。

 そんな真くんのサポートもして行かなきゃね。


 はあ、それよか、少しずつなんだけど、私の胸も貧乳ながら育ってはいるんだよね。

 誰も気付いてくれないけど、ちょっと嬉しいな。

 でも何もしてないのに、何で育ってるんだろうな? まあいいや。もっと育てよー?


「時任先輩、何ニヤニヤしてるんですか?」

「ほえ、あ、磯部さん。おはよ。今日から頑張ろうね!」


 おでこをピンで全開にしてベリーショートの新人、磯部さんに突っ込まれた私は、少し照れながら挨拶をする。

 磯部美紀さんも今日から配属になる内科の看護師さんで、凄く真面目で秀才な女の子だ。

 ただ、欠点があるとすれば……。


「私はインターンの時から頑張ってるので、継続するだけです。常識ですよ」

「ああごめんね。そうだよね、インターンの時から頑張ってたもんね」


 そう、こんな感じでちょっと鼻に付く言い方をしてくるのだ。

 そんな意味で言ってないのになあああ。

 ただ私がコミュ障なだけの説はあるけどさ。もおお。


「では、お先にナースステーションまで行ってますね」

「うん、私もなるべく早めに行くよ」


 因みに敬語は使わないで下さいって、インターンの時に言われて、私にも敬語は要らないよって言ったんだけど、磯部さんは敬語のままなんだよね。真面目だなあ。

 いけない、余計な考えごとしちゃった。早く着替えなきゃ。


 ◇


「今日は新人の看護師が3人いますので、自己紹介お願いします」


 看護師ミーティングで、看護師長がそう告げた。お、自己紹介か。私の時は緊張して、しどろもどろになっちゃったんだよな。京平に笑われたっけなあ。皆大丈夫かな?


「はい、磯部美紀です。市立東都北看護学校卒です。インターンの時よりも頑張ります!」

「有難うございます。じゃあ、隣の東条くんお願いね」

「はい、東条司です。磯部さんと同じ学校卒です。精一杯頑張ります」

「東条くん、頑張ってくれるのは嬉しいんだけど、前髪はピンで留めるか縛るかして欲しいな?」

「しょうがないな。私のピン貸すよ、司」


 東条くん、インターンの時よりも髪の毛伸びてるもんなあ。切る暇無かったのかな?

 東条くんは慌てて前髪を、磯部さんのピンで留めるのであった。なんだ、凛々しい顔してるじゃん。やる気はみなぎってるようだね。


「最後におら、日比野真だ。宜しくおねげえしますだよ」


 ああ、真くんは相変わらず田舎訛りが抜けないね。真くんは小さい頃、病弱なのもあって、田舎のおばあちゃんちで暮らしていたんだけど、中学卒業まで田舎に居たから、言葉が田舎っぽくなっちゃったんだって。


「え、日比野真? 友じゃなくて?」


 看護師ミーティングに参加されていた鈴木先生は、頭にクエスチョンマークを浮かべてる。かなりそっくりな兄弟だもんなあ。


「ああ、友は(あん)ちゃんだ。おら、弟だよ」

「かなりそっくりだね。私は鈴木です。宜しくお願いしますね」


 続いて、新人医師の紹介も始まるようだ。確か2人配属されるんだよね。


「まずは池林さんお願いします」


 京平は、眼鏡を掛けておでこを少し掻き分けた男性の池林先生に声を掛けたんだけど、かなり照れていらっしゃる! ようやく出てきた言葉は。


「池林昇悟です」


 な、名前しか言ってない! しかもそれで、やり切ったって顔してる! 相当シャイなんだなあ。

 京平は、まあそうなるよなって顔してるや。

 インターンの時からこんな感じだったもんね。


「では続いて、小森さんお願いします」

「はい、小森沙羅です。東都大学卒で、本日をもって内科に配属されました。因みに飛び級はしてません。宜しくお願いします!」


 小森先生は相変わらずよく喋るなあ。先生方がこうも対照的だと、京平も苦労するよなあ。


 新人看護師、医師の紹介が終わった後、私は巡回勤務となった。

 新人看護師3人は、朱音に教わりながら巡回をして行き、新人医師は、京平が付きっ切りで指導を行うみたい。皆成長して欲しいなあ。


 ◇


「時任さん、休憩行っといで」

「はい、行ってきます!」

「ちょうど新人さん達も休憩だしたから、仲良くするのよ」

「話すの楽しみです」


 インターンのときも話したけど、これから長い付き合いになるもんね。仲良くしたいなあ。

 私は意気揚々と、休憩室に向かった。

 休憩室に入ると。


「だから止めろって」

「だーめ、まゆりは深川京平を愛しているんだもん」


 え、なにこれ。京平が、女の子に抱きしめられてる。

 こんなのは夢だ。夢に違いないんだ。でも、頬をつねってみたけど、やっぱり痛くて。

 でも、何で京平は抱きしめられてるの? 京平だって言葉だけじゃなくて、振り解けばいいのに。

 そんな常識ない人に優しくしないでよ、京平。

 出来れば私だけに優しくしてよ。

 私は気持ちが追いつかなくて、ショックで気を失ってしまった。


「亜美!」


 京平の声が聞こえた気がした。

亜美「うーん、京平……」

まゆり「天王寺まゆりの邪魔するなんて、やな女!」

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