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天然で鈍感な男と私の話  作者: 九條リ音
新しい季節
211/242

番外編:ホワイトデーは大変だ②(京平目線)

「天王寺さん、異能の値も落ち着いてきましたね。あと、先月はバレンタイン有難うございました。これ、お返しです」

「深川先生、有難うございます! だいすき!」

「これからも治療、頑張って下さいね」


 今日の診察は、主にバレンタインのお返しをする日になりそう。

 そもそも先月の14日も金曜日で診察の日だし、その1月後となれば、今日になるよなあ。って。

 こう言ったお返しも、大切なコミュニケーションだよな。

 俺なりに考えて選んだけど、喜んで貰えるといいな。

 そんな訳で、いつもよりちょっと多忙になるのであった。

 今の患者様で午前中は最後だから、休憩に行こうかな。


「上木さん、休憩行きましょうか」

「そうね。今の患者様で午前中最後だものね」


 久しぶりに上木さんと入ったけど、やはりベテランなだけあってやりやすかったな。

 看護師の仕事を長く続けるだけでも大変だからな。

 こういった人がいるのは有難いよ。


 さーて、亜美も休憩入ってるかな?

 今日の弁当は亜美が作ってくれたから、楽しみだよ。

 亜美と過ごせる時間は、毎回テンションあがるんだ。

 俺が休憩室に入ると、大きな口を開けてお弁当を食べている亜美を見つけた。そんな顔も可愛いよ、亜美。思わず俺は笑った。


「亜美、お疲れ」

「あ、京平。お疲れ様」

「のばらもいますわよ」

「のばらさんもお疲れ」


 亜美とのばらさんは素早く弁当を食べたらしく、今からホワイトデーのお返しを食べるみたい。

 のばらさんは朝、麻生からも貰ってたけど、全部食べるのかな?


「京平のお返しは何かな? あ、ガトーショコラだ。大好き!」

「亜美の口に合えばいいな」

「京平は私の好みを熟知してるでしょ?」

「ふふ、まあな」

「信次からはチョコケーキで、深川先生からはチョコチップクッキーで、麻生先生からはマシュマロを貰いましたわ。どれも美味しそうですわ」

「待てのばらさん、マジで全部食べるの?」

「当たり前ですわ!」


 2人とも美味しそうにお返しを食べ進めた。

 ふふ、亜美の美味しそうな顔、やっぱり好きだな。見惚れてしまうよ。

 のばらさんも亜美に負けないくらい美味しそうに食べてるね。チョコケーキがみるみるうちに無くなっていくよ。あ、チョコチップクッキーに手を伸ばし始めてるや。

 俺も弁当食べよっと。


「今日も亜美の唐揚げ美味しいや」

「えへへ、ありがと。京平のガトーショコラも、とても美味しいよ」

「そりゃあ、腕によりをかけたからな」


 俺達がお互いを褒め合っていると。


「ふにゅう、のばら、信次に会いたいですわ」

「呼んだら来るんじゃね?」

「今日は信次もバイトですし、無理をさせたくないのですわ。でも、会いたいのですわ」


 お返しを食べ終わったのばらさんは、少し寂しそうに俯く。シフトが合わないのは、のばらさんも一緒だよな。

 ちょっとのばらさんが可哀想だったので、俺はこっそり信次に、のばらさんが寂しそうだぞって連絡をした。異能でぶっ飛んで来そうだな。


「ぐすん。まだお腹も減ってますし、パンでも買って来ますわ」


 寂しさとお腹の減り具合がそれなりにあるのばらさんは、気を紛らわせる為に立ち上がったその時。


「はあはあ、のばら、お待たせ」

「信次、息を切らしてどうしましたの?」

「兄貴から、のばらが寂しそうだって聴いたからさ」

「深川先生ったら」

「後、夜に食べてもらおうと思って焼いたチーズケーキ持って来たよ」

「嬉しいですわ、信次!」

「これから寂しい時は、いつでも呼んでよ?」


 おお、予想通りすっ飛んで来たか。しかもチーズケーキまで持ってくるとは準備が良い。

 悲しそうにしてたのばらさんも、満面の笑みを浮かべながらチーズケーキを頬張ってる。


「良かったね、のばら」

「やっぱり信次の隣が愛しいのですわ」

「もっと甘えていいんだからね、のばら」


 皆が幸せなお昼休憩になりそうで良かった。

 かく言う俺も、亜美がいて弁当も美味くて、凄く幸せだよ。いつもありがとな、亜美。


「京平、ご飯食べ終わったら、仮眠室で寝てていいよ」

「亜美に傍に居て欲しいな?」

「うん、傍でポンポンするからね」

「じゃあ、素直に寝ようかな。診察疲れもあるし」


 俺は大きな欠伸をひとつして、亜美と仮眠室へ向かう。


「おやすみ、兄貴」

「おう。おやすみ、信次」


 仮眠室に着いた俺は、ベッドにごろんと横になる。

 亜美はその隣で、早速ポンポンしてくれて、俺は瞬く間に落ち着いて来たよ。

 甘えるの苦手なんだけど、亜美と付き合うようになってから、自然と甘えられるようになってきたよ。

 亜美の優しい気持ちが、俺をゆっくり溶かしてくれたんだ。


「亜美、いつもありがとな」

「当たり前のことをしてるだけだよ」

「亜美がいるから、毎日が楽しいよ」

「もっともっと、楽しくさせるからね」


 亜美は俺に笑ってくれた。その笑顔に、何度も助けられて来たよ。ありがとな。


「ふわあ。おやすみ、亜美」

「おやすみ、京平」


 安心感に包まれた俺は、亜美に癒してもらいながら眠りに着いた。

 その時見た夢は、とても優しい夢だったよ。


 ◇


「京平、そろそろ時間だよ」

「おはよ、亜美」


 夢見の良かった俺は、優しい気持ちで目覚めることが出来た。

 全部、亜美のおかげだよ。ありがとな。


「亜美のおかげで体力も回復したし、午後からの診察も頑張るよ」

「えへへ、お互い頑張ろうね」


 俺達は笑い合いながら、それぞれの職場に向かった。

 診察室に戻った俺は、気を引き締め直して、再び患者様に向き合う。


「あら、深川さん、顔色良くなりましたね」

「ん、ちょっと昼寝したら元気になりましたよ」

「午後からも頑張りましょうね」


 それから、診察をしてお菓子を渡して、診察をしてお菓子を渡して、を、午後からもひたすらに繰り返す。

 先月はほぼ全員の患者様から、チョコ貰ったからな。本当にありがたいよ。


「深川さん、患者様から好かれてますよね」

「信頼してくれてるのは嬉しいな」


 集中しまくって、体力も削られるんだけど、心は患者様の笑顔で満たされてるよ。

 寧ろ貰ってるのは、いつだって俺の方なんだ。


「さ、今日も次の患者様で最後ですね」

「あとちょっと頑張るよ」

「248番の患者様、23番診察室にお越しください」


 最後の患者様は。


「深川先生、お久しぶりです」

映出(うつしで)さん、元気にしてましたか?」

「やるべきことがあったので、治療も走ることも頑張りましたよ」

「やるべきことがなくても、治療はして下さいね?」


 今回映出(うつしで)さんの結果は、と。


「でも頑張りましたね。ヘモグロビンA1cは6.5。平常値まであと一歩ですよ」

「仕事があるとやる気が湧くんですが、ない時が大変なんですよ」

「気持ちを上げるのは苦労しますよね。私だったらそんな時はコーヒーを飲んだり、恋人と過ごしたりしますかね」


 これも今だから、だな。昔はそれが見つからなくて、ひたすら泣いてたからな、俺。

 頑張れないのに頑張って、大体無理ばっかしてたよ。亜美がいたら怒るだろうな。


「そう言えば亜美ちゃん元気ですか?」

「ええ。今日も巡回業務頑張ってますよ」

「あの子頑張ってますもんね。私も頑張らなくては」

「お互い頑張りましょうね」


 これで映出さんの診察は終わりだな。と、思っていたんだけど。


「そうだ。今日ホワイトデーですよね。深川先生が好きそうなクッキー買って来ました。良かったらどうぞ」

「有難うございます。よく知ってましたね、私がクッキー好きなこと」

「人を観察していればわかります」


 確かに映出(うつしで)さん、これでも探偵だもんな。

 そうだ、映出(うつしで)さんからはバレンタイン貰ってないけど、個人的にお世話になったからお菓子買っといたんだった。良かった、買っておいて。


「はい、私からもホワイトデーのお菓子です」

「うお、中々高そうなやつ。有難うございます」

「これからも治療、頑張ってくださいね」

「食べたら走れ! ってやつですね?」

「良く解ってらっしゃいますね」


 こうして映出(うつしで)さんも診察室を後にし、俺の今日の仕事も無事終わった。


「と、上木さんにもお返し渡さないとですね。私が焼いたクッキーです」

「律儀にありがとね。深川さんのクッキー大好きだよ」

「喜んでもらえて良かったです」


 今は17時半か。お返しを渡す時間もあったから、少し長引いちまったな。

 同僚へのお返しがほとんど渡せてないから、それぞれの科に渡してこよう。

 ふわあ、診察終わりはいつも眠たくなるよ。

 少し昼寝しようかな。


 俺はお返しをそれぞれの科に渡した後、少し仮眠室で昼寝する。帰りは亜美と帰ろうかな、って。

 家族ライムに連絡済みだけど、寝過ごさないといいな。

 疲れていた俺は、瞬く間に眠りに着いた。


 眠りに着いた直後、俺は夢を見た。

 ああ、昼間見た夢の続きだ。亜美と花畑で過ごす夢。

 夢の中の亜美は満面の笑みで、俺に話しかけて来る。

 そんな亜美が可愛くて、俺はギュッと亜美を抱きしめた。

 こういう何気ないデート、俺は好きなんだよな。

 亜美はどうかな? 花は好きだから、乗ってくれるかな?

 亜美と色んなところに行きたいな。2人で笑い合いたいな。

 亜美の色んな顔を見たいな。ぶーって怒った顔も、困り顔も、照れた顔も、笑った顔も全部。

 夢の亜美になら言えるかな、愛してるって。

 頑張って伝えようとしてみるんだけど、やっぱり照れくさくて言えなかった。

 想っているだけじゃ伝わらないのにな、俺。

 にしても、亜美が居ないのに、幸せな夢見だ。

 これからも亜美を幸せにしていきたいな。

 亜美には笑い続けて欲しいから。

 夢の中の亜美はそんな俺に微笑んで、一言告げた。


「京平、そろそろ起きよ?」


 幸せな夢だから、まだ浸ってたいんだけど、確かにもうそろそろ時間かな。

 俺は欠伸をひとつして、目を開いた。


「あ、京平。おはよ」

「本物の亜美だ。おはよ」

「ふふ、私の夢を見てたんだね」

「幸せな夢だったよ」

「現実も幸せだよ。ほら、帰るよ」

「いつもありがとな」


 寝坊しないと決めていたのに、結局亜美に起こされたな。

 幸せなんだけどさ。迎えに来てくれてありがとな。

 むっくりと起き上がった俺は、亜美の手を握って、一緒に帰るのであった。


「ふわあ、起こしてくれてありがとな」

「まだ眠そうだね? 診察もあったもんね」

「結構体力使うからな。飯食ったら今日も早めに寝ないと」

「今日もお疲れ様、京平」

「ありがとな、亜美」


 俺は思わず亜美の頭を撫でる。亜美がいるから、いつも俺は幸せなんだよ。

 亜美は少し照れながら、笑い返してくれた。


「あ、でもお茶会はしようね」

「だな。亜美にもクッキー食べさせたいし」


 ◇


 今日の夜ご飯は、俺が眠かったのもあって、簡単に鍋にした。美味しそうな(たら)も買ってあったし。

 来週には暖かくなってくるかな?

 もうそろそろ鍋の季節も終わりだな。寂しくなるけど。


「京平、そろそろうどん入れよ?」

「もうお鍋無くなりますわ」

「おお、すぐ持って来るよ」

「いくらでも進んでしまうな」


 俺は鍋を再度火にかけて、うどんを煮込み始める。

 どうせ皆、雑炊も食べるんだろうな。食欲旺盛で何よりだよ。

 信次の分、先に分けといて良かった。


「よし、うどん煮えたぞ」

「わーい、うどん大好き!」

「出汁がたまらないのですわ」

「鍋のうどんはいいな」


 その後は、卵雑炊を作って、綺麗に鍋は無くなった。皆良く食べるなあ。


「さ、亜美、のばらさん。父さんからもホワイトデーのお返しだぞ」

「お、お父さんも作ってくれたの? ありがとね」

「有難うございますわ。カップケーキですのね。のばら、コーヒー淹れて来ますわ」


 のばらさんはルンルンしながら、コーヒーを淹れ始める。

 なるほど、お茶会開始だな。


「俺のクッキーと、信次のチョコケーキも出すか」

「ああ信次、ショートケーキも作ってたぞ」

「え、また作ったの?」

「のばら嬉しいですわ」


 明らかにのばらさんの為だよなあ。

 信次、のばらさんを愛しまくってんなあ。

 そんな訳で、クッキー、カップケーキ、チョコケーキ、チーズケーキ、ショートケーキというお菓子に溢れたお茶会がスタートした。


「お父さんのカップケーキ美味しいよ。程よい甘さなのがいいな」

「初めてなのに凄いですわ」

「うん、美味いな。流石お父さん」

「美味しく出来て良かったよ」


 コーヒーとの相性もバッチリだしな。のばらさんの淹れてくれたコーヒーも美味しいし、幸せだな。

 何気ない家族と過ごす時間だからだろうな。


「次はチョコケーキ食べよ!」

「のばらはショートケーキですわ」

「京平のクッキーも美味しいぞ」

「しかし皆、良く食べられるよなあ」

「甘いものは別腹だぞ、京平」


 ◇


「んー、やっぱりラストは京平のクッキーだよね。美味しいな」

「結局全部食べたもんな、亜美。太るぞ?」

「この後走るもん!」

「そのお腹で走れるのか?」

「た、確かに、く、苦しいや」


 明らかに食べ過ぎの亜美は、悔しそうにクッキーを頬張るのであった。

 ふわあ、俺の眠気もかなり増して来たよ。

 幸せにお腹いっぱいになったもんな。

 眠たいし風呂は明日にして、もう寝ちゃおうかな。


「亜美、俺はもう眠いから寝るよ」

「あ、私も京平と寝る!」

「明日一緒に風呂入ろうな」


 俺達はパジャマに着替えて、お互いを抱きしめ合いながら眠りに着いた。

 亜美、俺幸せだよ。亜美が隣にいてくれるから。

 小さな幸せも、大きな幸せも、いつも亜美が運んでくれるから。

 ホワイトデーだっていうのに、俺、貰ってばかりだな。

 亜美には少しずつ幸せという形で、返して行きたいな。

 愛してるよ、亜美。おやすみ。

京平「亜美が居たから、いつだって幸せなんだ」

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