番外編:ホワイトデーは大変だ②(京平目線)
「天王寺さん、異能の値も落ち着いてきましたね。あと、先月はバレンタイン有難うございました。これ、お返しです」
「深川先生、有難うございます! だいすき!」
「これからも治療、頑張って下さいね」
今日の診察は、主にバレンタインのお返しをする日になりそう。
そもそも先月の14日も金曜日で診察の日だし、その1月後となれば、今日になるよなあ。って。
こう言ったお返しも、大切なコミュニケーションだよな。
俺なりに考えて選んだけど、喜んで貰えるといいな。
そんな訳で、いつもよりちょっと多忙になるのであった。
今の患者様で午前中は最後だから、休憩に行こうかな。
「上木さん、休憩行きましょうか」
「そうね。今の患者様で午前中最後だものね」
久しぶりに上木さんと入ったけど、やはりベテランなだけあってやりやすかったな。
看護師の仕事を長く続けるだけでも大変だからな。
こういった人がいるのは有難いよ。
さーて、亜美も休憩入ってるかな?
今日の弁当は亜美が作ってくれたから、楽しみだよ。
亜美と過ごせる時間は、毎回テンションあがるんだ。
俺が休憩室に入ると、大きな口を開けてお弁当を食べている亜美を見つけた。そんな顔も可愛いよ、亜美。思わず俺は笑った。
「亜美、お疲れ」
「あ、京平。お疲れ様」
「のばらもいますわよ」
「のばらさんもお疲れ」
亜美とのばらさんは素早く弁当を食べたらしく、今からホワイトデーのお返しを食べるみたい。
のばらさんは朝、麻生からも貰ってたけど、全部食べるのかな?
「京平のお返しは何かな? あ、ガトーショコラだ。大好き!」
「亜美の口に合えばいいな」
「京平は私の好みを熟知してるでしょ?」
「ふふ、まあな」
「信次からはチョコケーキで、深川先生からはチョコチップクッキーで、麻生先生からはマシュマロを貰いましたわ。どれも美味しそうですわ」
「待てのばらさん、マジで全部食べるの?」
「当たり前ですわ!」
2人とも美味しそうにお返しを食べ進めた。
ふふ、亜美の美味しそうな顔、やっぱり好きだな。見惚れてしまうよ。
のばらさんも亜美に負けないくらい美味しそうに食べてるね。チョコケーキがみるみるうちに無くなっていくよ。あ、チョコチップクッキーに手を伸ばし始めてるや。
俺も弁当食べよっと。
「今日も亜美の唐揚げ美味しいや」
「えへへ、ありがと。京平のガトーショコラも、とても美味しいよ」
「そりゃあ、腕によりをかけたからな」
俺達がお互いを褒め合っていると。
「ふにゅう、のばら、信次に会いたいですわ」
「呼んだら来るんじゃね?」
「今日は信次もバイトですし、無理をさせたくないのですわ。でも、会いたいのですわ」
お返しを食べ終わったのばらさんは、少し寂しそうに俯く。シフトが合わないのは、のばらさんも一緒だよな。
ちょっとのばらさんが可哀想だったので、俺はこっそり信次に、のばらさんが寂しそうだぞって連絡をした。異能でぶっ飛んで来そうだな。
「ぐすん。まだお腹も減ってますし、パンでも買って来ますわ」
寂しさとお腹の減り具合がそれなりにあるのばらさんは、気を紛らわせる為に立ち上がったその時。
「はあはあ、のばら、お待たせ」
「信次、息を切らしてどうしましたの?」
「兄貴から、のばらが寂しそうだって聴いたからさ」
「深川先生ったら」
「後、夜に食べてもらおうと思って焼いたチーズケーキ持って来たよ」
「嬉しいですわ、信次!」
「これから寂しい時は、いつでも呼んでよ?」
おお、予想通りすっ飛んで来たか。しかもチーズケーキまで持ってくるとは準備が良い。
悲しそうにしてたのばらさんも、満面の笑みを浮かべながらチーズケーキを頬張ってる。
「良かったね、のばら」
「やっぱり信次の隣が愛しいのですわ」
「もっと甘えていいんだからね、のばら」
皆が幸せなお昼休憩になりそうで良かった。
かく言う俺も、亜美がいて弁当も美味くて、凄く幸せだよ。いつもありがとな、亜美。
「京平、ご飯食べ終わったら、仮眠室で寝てていいよ」
「亜美に傍に居て欲しいな?」
「うん、傍でポンポンするからね」
「じゃあ、素直に寝ようかな。診察疲れもあるし」
俺は大きな欠伸をひとつして、亜美と仮眠室へ向かう。
「おやすみ、兄貴」
「おう。おやすみ、信次」
仮眠室に着いた俺は、ベッドにごろんと横になる。
亜美はその隣で、早速ポンポンしてくれて、俺は瞬く間に落ち着いて来たよ。
甘えるの苦手なんだけど、亜美と付き合うようになってから、自然と甘えられるようになってきたよ。
亜美の優しい気持ちが、俺をゆっくり溶かしてくれたんだ。
「亜美、いつもありがとな」
「当たり前のことをしてるだけだよ」
「亜美がいるから、毎日が楽しいよ」
「もっともっと、楽しくさせるからね」
亜美は俺に笑ってくれた。その笑顔に、何度も助けられて来たよ。ありがとな。
「ふわあ。おやすみ、亜美」
「おやすみ、京平」
安心感に包まれた俺は、亜美に癒してもらいながら眠りに着いた。
その時見た夢は、とても優しい夢だったよ。
◇
「京平、そろそろ時間だよ」
「おはよ、亜美」
夢見の良かった俺は、優しい気持ちで目覚めることが出来た。
全部、亜美のおかげだよ。ありがとな。
「亜美のおかげで体力も回復したし、午後からの診察も頑張るよ」
「えへへ、お互い頑張ろうね」
俺達は笑い合いながら、それぞれの職場に向かった。
診察室に戻った俺は、気を引き締め直して、再び患者様に向き合う。
「あら、深川さん、顔色良くなりましたね」
「ん、ちょっと昼寝したら元気になりましたよ」
「午後からも頑張りましょうね」
それから、診察をしてお菓子を渡して、診察をしてお菓子を渡して、を、午後からもひたすらに繰り返す。
先月はほぼ全員の患者様から、チョコ貰ったからな。本当にありがたいよ。
「深川さん、患者様から好かれてますよね」
「信頼してくれてるのは嬉しいな」
集中しまくって、体力も削られるんだけど、心は患者様の笑顔で満たされてるよ。
寧ろ貰ってるのは、いつだって俺の方なんだ。
「さ、今日も次の患者様で最後ですね」
「あとちょっと頑張るよ」
「248番の患者様、23番診察室にお越しください」
最後の患者様は。
「深川先生、お久しぶりです」
「映出さん、元気にしてましたか?」
「やるべきことがあったので、治療も走ることも頑張りましたよ」
「やるべきことがなくても、治療はして下さいね?」
今回映出さんの結果は、と。
「でも頑張りましたね。ヘモグロビンA1cは6.5。平常値まであと一歩ですよ」
「仕事があるとやる気が湧くんですが、ない時が大変なんですよ」
「気持ちを上げるのは苦労しますよね。私だったらそんな時はコーヒーを飲んだり、恋人と過ごしたりしますかね」
これも今だから、だな。昔はそれが見つからなくて、ひたすら泣いてたからな、俺。
頑張れないのに頑張って、大体無理ばっかしてたよ。亜美がいたら怒るだろうな。
「そう言えば亜美ちゃん元気ですか?」
「ええ。今日も巡回業務頑張ってますよ」
「あの子頑張ってますもんね。私も頑張らなくては」
「お互い頑張りましょうね」
これで映出さんの診察は終わりだな。と、思っていたんだけど。
「そうだ。今日ホワイトデーですよね。深川先生が好きそうなクッキー買って来ました。良かったらどうぞ」
「有難うございます。よく知ってましたね、私がクッキー好きなこと」
「人を観察していればわかります」
確かに映出さん、これでも探偵だもんな。
そうだ、映出さんからはバレンタイン貰ってないけど、個人的にお世話になったからお菓子買っといたんだった。良かった、買っておいて。
「はい、私からもホワイトデーのお菓子です」
「うお、中々高そうなやつ。有難うございます」
「これからも治療、頑張ってくださいね」
「食べたら走れ! ってやつですね?」
「良く解ってらっしゃいますね」
こうして映出さんも診察室を後にし、俺の今日の仕事も無事終わった。
「と、上木さんにもお返し渡さないとですね。私が焼いたクッキーです」
「律儀にありがとね。深川さんのクッキー大好きだよ」
「喜んでもらえて良かったです」
今は17時半か。お返しを渡す時間もあったから、少し長引いちまったな。
同僚へのお返しがほとんど渡せてないから、それぞれの科に渡してこよう。
ふわあ、診察終わりはいつも眠たくなるよ。
少し昼寝しようかな。
俺はお返しをそれぞれの科に渡した後、少し仮眠室で昼寝する。帰りは亜美と帰ろうかな、って。
家族ライムに連絡済みだけど、寝過ごさないといいな。
疲れていた俺は、瞬く間に眠りに着いた。
眠りに着いた直後、俺は夢を見た。
ああ、昼間見た夢の続きだ。亜美と花畑で過ごす夢。
夢の中の亜美は満面の笑みで、俺に話しかけて来る。
そんな亜美が可愛くて、俺はギュッと亜美を抱きしめた。
こういう何気ないデート、俺は好きなんだよな。
亜美はどうかな? 花は好きだから、乗ってくれるかな?
亜美と色んなところに行きたいな。2人で笑い合いたいな。
亜美の色んな顔を見たいな。ぶーって怒った顔も、困り顔も、照れた顔も、笑った顔も全部。
夢の亜美になら言えるかな、愛してるって。
頑張って伝えようとしてみるんだけど、やっぱり照れくさくて言えなかった。
想っているだけじゃ伝わらないのにな、俺。
にしても、亜美が居ないのに、幸せな夢見だ。
これからも亜美を幸せにしていきたいな。
亜美には笑い続けて欲しいから。
夢の中の亜美はそんな俺に微笑んで、一言告げた。
「京平、そろそろ起きよ?」
幸せな夢だから、まだ浸ってたいんだけど、確かにもうそろそろ時間かな。
俺は欠伸をひとつして、目を開いた。
「あ、京平。おはよ」
「本物の亜美だ。おはよ」
「ふふ、私の夢を見てたんだね」
「幸せな夢だったよ」
「現実も幸せだよ。ほら、帰るよ」
「いつもありがとな」
寝坊しないと決めていたのに、結局亜美に起こされたな。
幸せなんだけどさ。迎えに来てくれてありがとな。
むっくりと起き上がった俺は、亜美の手を握って、一緒に帰るのであった。
「ふわあ、起こしてくれてありがとな」
「まだ眠そうだね? 診察もあったもんね」
「結構体力使うからな。飯食ったら今日も早めに寝ないと」
「今日もお疲れ様、京平」
「ありがとな、亜美」
俺は思わず亜美の頭を撫でる。亜美がいるから、いつも俺は幸せなんだよ。
亜美は少し照れながら、笑い返してくれた。
「あ、でもお茶会はしようね」
「だな。亜美にもクッキー食べさせたいし」
◇
今日の夜ご飯は、俺が眠かったのもあって、簡単に鍋にした。美味しそうな鱈も買ってあったし。
来週には暖かくなってくるかな?
もうそろそろ鍋の季節も終わりだな。寂しくなるけど。
「京平、そろそろうどん入れよ?」
「もうお鍋無くなりますわ」
「おお、すぐ持って来るよ」
「いくらでも進んでしまうな」
俺は鍋を再度火にかけて、うどんを煮込み始める。
どうせ皆、雑炊も食べるんだろうな。食欲旺盛で何よりだよ。
信次の分、先に分けといて良かった。
「よし、うどん煮えたぞ」
「わーい、うどん大好き!」
「出汁がたまらないのですわ」
「鍋のうどんはいいな」
その後は、卵雑炊を作って、綺麗に鍋は無くなった。皆良く食べるなあ。
「さ、亜美、のばらさん。父さんからもホワイトデーのお返しだぞ」
「お、お父さんも作ってくれたの? ありがとね」
「有難うございますわ。カップケーキですのね。のばら、コーヒー淹れて来ますわ」
のばらさんはルンルンしながら、コーヒーを淹れ始める。
なるほど、お茶会開始だな。
「俺のクッキーと、信次のチョコケーキも出すか」
「ああ信次、ショートケーキも作ってたぞ」
「え、また作ったの?」
「のばら嬉しいですわ」
明らかにのばらさんの為だよなあ。
信次、のばらさんを愛しまくってんなあ。
そんな訳で、クッキー、カップケーキ、チョコケーキ、チーズケーキ、ショートケーキというお菓子に溢れたお茶会がスタートした。
「お父さんのカップケーキ美味しいよ。程よい甘さなのがいいな」
「初めてなのに凄いですわ」
「うん、美味いな。流石お父さん」
「美味しく出来て良かったよ」
コーヒーとの相性もバッチリだしな。のばらさんの淹れてくれたコーヒーも美味しいし、幸せだな。
何気ない家族と過ごす時間だからだろうな。
「次はチョコケーキ食べよ!」
「のばらはショートケーキですわ」
「京平のクッキーも美味しいぞ」
「しかし皆、良く食べられるよなあ」
「甘いものは別腹だぞ、京平」
◇
「んー、やっぱりラストは京平のクッキーだよね。美味しいな」
「結局全部食べたもんな、亜美。太るぞ?」
「この後走るもん!」
「そのお腹で走れるのか?」
「た、確かに、く、苦しいや」
明らかに食べ過ぎの亜美は、悔しそうにクッキーを頬張るのであった。
ふわあ、俺の眠気もかなり増して来たよ。
幸せにお腹いっぱいになったもんな。
眠たいし風呂は明日にして、もう寝ちゃおうかな。
「亜美、俺はもう眠いから寝るよ」
「あ、私も京平と寝る!」
「明日一緒に風呂入ろうな」
俺達はパジャマに着替えて、お互いを抱きしめ合いながら眠りに着いた。
亜美、俺幸せだよ。亜美が隣にいてくれるから。
小さな幸せも、大きな幸せも、いつも亜美が運んでくれるから。
ホワイトデーだっていうのに、俺、貰ってばかりだな。
亜美には少しずつ幸せという形で、返して行きたいな。
愛してるよ、亜美。おやすみ。
京平「亜美が居たから、いつだって幸せなんだ」




