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天然で鈍感な男と私の話  作者: 九條リ音
新しい季節
210/242

番外編:ホワイトデーは大変だ①(京平目線)

「よーし、早速始めるか」

「僕も美味しいの作るぞ!」

「父さんも頑張るぞ」


3月13日。亜美とのばらさんが出掛けた後、俺達はホワイトデーのお菓子を作る。

 俺は亜美にガトーショコラ、のばらさんを始め、同僚へのお返しにはチョコチップクッキーを作る。

 患者様には規則で手作りあげられないのが、ちょい残念だけど。勿論患者様用のお返しチョコレートは購入済みだ。


 信次は大きなチョコレートケーキを作るみたい。

 亜美ものばらさんも喜びそうだな。

 お父さんには俺と信次で、カップケーキを教える。

 まずは、常温に戻したバターに砂糖を入れて、泡立て器で白っぽくなるまで混ぜ合わせよう。


「中々力がいるな」

「根気よく、だな」

「がんばれ、お父さん!」


 泡立て器で混ぜるのは大変だもんな。でも、いつも思うことだけど、やっぱりお父さん筋がいいなあ。教えたことを、すぐに吸収してくれてるよ。

 まずはお父さんのカップケーキを完成させるかな?


「次は溶き卵を作って3回に分け入れて、泡立て器で混ぜ合わせるよ」

「泡立て器沢山使うなあ」

「3回に分けるのも大変だよね」


 お父さんは戸惑いながらも、卵を割って溶いて、少しずつ溶き卵を入れて混ぜていく。

 3回も溶き卵を混ぜなきゃなのは面倒だし、大変だよなあ。

 でもお父さんは黙々と作業をしてくれた。

 着実に完成へと近づいているな。


「お父さん、さっき測った小麦粉をふるいにかけてな」

「こ、こんな感じかな?」

「うんうん、そんな感じだよ」

「俺、オーブン余熱しておくよ」


 今のうちに余熱しといた方がいいからな。俺はオーブンを170度に余熱する。

 その間にお父さんも、小麦粉をふるい終わったようだ。


「じゃあさっき混ぜたやつに、小麦粉とベーキングパウダーを入れて、さっくりゴムベラで混ぜてな」

「次はゴムベラかあ。それでさっくりか」

「ちゃんと出来てるじゃん。流石お父さん」


 さっくり混ぜ終わったら、チョコチップをいれて、また混ぜる。


「混ぜるのはこれで最後だからな」

「混ぜ終わったら、どうするんだ?」

「ああ、型にいれるんだよ。膨れるから、パンパンに入れすぎないようにね」

「おお。こぼさないように気をつけて、と」


 お父さんはゆっくり型に生地を流し込む。

 やっぱり筋がいいんだよな。綺麗に入れているもんなあ。

 俺、最初にやった時なんて、盛大にこぼしたから、その才能が羨ましいよ。


「さ、入れ終わったら、遂に焼くよ!」

「わくわくするな」


 初めてお菓子を焼いた時って、こんな気持ちだったなあ。

 俺も亜美と信次に喜んで欲しくて、夜な夜なわくわくしながら練習してたっけ。

 で、盛大に失敗したりしてさ。

 2人と暮らすようになってからだもんな、俺がお菓子作り始めたの。

 そんな2人が、今は俺の為にクッキー焼いたりしてくれることもあってさ。幸せだよ、俺。


「よおし、170度のオーブンで20分、と!」

「後は様子を見ながら待つばかりだな」

「上手に焼けるといいが」


 大丈夫。ここまで出来たら成功は保証されたもんだよ。

 俺も見てるしな。安心しろよ、お父さん。


「じゃ、僕達のお菓子の準備しよっか」

「そうだな」


 ◇


「おお、美味しそうに焼けたぞ!」

「少し冷めたらラッピングしような」

「でも、4個あるけど、亜美とのばらに2個ずつなの?」

「京平と信次の分もあるぞ。今日のお礼さ」

「ありがとな、お父さん。楽しみにしてるよ」

「わーい、ありがとね!」


 それなら俺もお父さんにあげたいな。クッキー、少し多めに焼こうかな?

 そう思った俺は、バターと小麦粉の量を増やして作り始めた。

 

「兄貴、クッキー何枚作るのさ!」

「んー、150あれば足りるかなあ。20人くらいにお返ししなきゃだからさ」

「ほぼ義理にしても、沢山もらってたもんね」

「そ。嬉しかったからお返しはしないとな」


 ふー、家にある一番大きなボウルでもサイズが足りないから、分けて練るしかないな。毎年のことだけど、これは体力勝負だな。


「僕、先に焼くね?」

「おー。俺はまだまだ時間掛かるしな」


 生地は出来たから、生地を伸ばして型抜きだな。

 楽しい気持ちで食べて貰いたいし、いろんな型を使うかな。

 新しく桜型も仕入れたし、薔薇型と合わさって華やかになりそう。

 さー、気合いで150個抜いてくぞ。


「チョコケーキはあと15分で焼けるよ」

「ラッピングも終わったぞ」

「うおお、後140個ー!」


 ◇


「はあはあ、やっと亜美のガトーショコラも焼けたぞ」

「お疲れ、兄貴。お昼何食べたい?」

「ごめん。かなり疲れたから、ちょい昼寝するよ。昼は炒飯食いたい」


 クッキーの作りすぎで疲労困憊の俺は、布団まで歩けなくて、ソファでごろんと横になる。

 結局クッキー200枚焼いたもんなあ。

 余ったクッキーは、明日皆で食べような。


「もー。ソファで寝ちゃダメでしょ。でも起こすのも可哀想だし、布団持ってこよ」

「毎年こうなのか?」

「うん。毎年こんな感じ。僕が学校の時は、夕方までソファで寝てたこともあるもん」


 ああ毎年だな。学習能力ねえな、俺。

 大丈夫、今日は少し寝るだけでいいから。亜美を笑って出迎え……。


 ◇


「京平、そろそろ起きよ?」

「むにゃ。あれ、亜美?」

「おはよ、京平」

「おはよ、亜美」


 思わず、俺は亜美を抱きしめた。ずっとこうしたかったんだ。

 でも、今亜美が居ると言うことは19時くらいだよな? やべえな、かなり寝ちまったよ、俺。


「あ、兄貴やっと起きた。もう夜ご飯出来るよ」

「お腹ぺこぺこですわ」

「炒飯出来たら起こしてくれよ」

「何度も起こしたってば」

「ふわあ、思った以上に疲れていたみたい」

「ご飯食べたら早めに寝ようね」

「だな。明日は診察の日だし」


 気持ち良く眠れて、亜美に起こして貰えるって幸せだな。と、感じながら、俺はまだ亜美を抱きしめていた。

 こんな時間があるから、生きていけるよ、俺。

 亜美と家族がいるから、生きていけているから。


「ごめん、もうちょっと充電させて」

「京平、大丈夫だからね」


 亜美も俺を抱きしめてくれた。疲れていた身体も、亜美と居ると癒されていくよ。


「ご飯出来たけど、もうちょっと後に呼ぼうかな」

「その方がいいな」

「ですわ」


 ◇


 そんなこんなで翌日。お弁当を作り終わった亜美が、満面の笑みで。


「京平、ホワイトデーのちょうだい!」

「え、今?」

「お昼に食べるんだもん」

「俺の真似をするんじゃないよ」

「だって早く食べたいもん!」


 しょうがないなあ。俺は用意していたガトーショコラを亜美に渡す。亜美のと同じくらい、美味しく出来てるといいな。


「いつもありがとな、亜美」

「ありがとね、京平」


 俺がガトーショコラを渡すと、朝ご飯を作り終えた信次が。


「あ、兄貴もうホワイトデーの渡してんの?」

「ずるいですわ!」

「亜美、昼に食べたいんだってさ」

「信次、のばらにもお菓子を渡すのですわ!」

「解った、今渡すよ」

「深川先生のお菓子も食べるのですわ!」

「沢山食べるな?!」

「朝から騒がしいな、我が家は」


 付き合ってから初めてのホワイトデーだけど、寧ろ俺が亜美の笑顔に(ほだ)されていくよ。

 食べてる姿をみたら、もっと愛しくなるんだろうな。

 そんな予感を感じつつ、照れ隠しをしつつ、俺は食卓に着くのであった。


「あ、クッキーも食べたい!」

「察しがいいな。帰って来たら皆で食べよ」

作者「番外編とはいってますが、作者がうっかり書き忘れたエピソードをば」

亜美「もうちっとだけ、続くんじゃよ」

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