番外編:ホワイトデーは大変だ①(京平目線)
「よーし、早速始めるか」
「僕も美味しいの作るぞ!」
「父さんも頑張るぞ」
3月13日。亜美とのばらさんが出掛けた後、俺達はホワイトデーのお菓子を作る。
俺は亜美にガトーショコラ、のばらさんを始め、同僚へのお返しにはチョコチップクッキーを作る。
患者様には規則で手作りあげられないのが、ちょい残念だけど。勿論患者様用のお返しチョコレートは購入済みだ。
信次は大きなチョコレートケーキを作るみたい。
亜美ものばらさんも喜びそうだな。
お父さんには俺と信次で、カップケーキを教える。
まずは、常温に戻したバターに砂糖を入れて、泡立て器で白っぽくなるまで混ぜ合わせよう。
「中々力がいるな」
「根気よく、だな」
「がんばれ、お父さん!」
泡立て器で混ぜるのは大変だもんな。でも、いつも思うことだけど、やっぱりお父さん筋がいいなあ。教えたことを、すぐに吸収してくれてるよ。
まずはお父さんのカップケーキを完成させるかな?
「次は溶き卵を作って3回に分け入れて、泡立て器で混ぜ合わせるよ」
「泡立て器沢山使うなあ」
「3回に分けるのも大変だよね」
お父さんは戸惑いながらも、卵を割って溶いて、少しずつ溶き卵を入れて混ぜていく。
3回も溶き卵を混ぜなきゃなのは面倒だし、大変だよなあ。
でもお父さんは黙々と作業をしてくれた。
着実に完成へと近づいているな。
「お父さん、さっき測った小麦粉をふるいにかけてな」
「こ、こんな感じかな?」
「うんうん、そんな感じだよ」
「俺、オーブン余熱しておくよ」
今のうちに余熱しといた方がいいからな。俺はオーブンを170度に余熱する。
その間にお父さんも、小麦粉をふるい終わったようだ。
「じゃあさっき混ぜたやつに、小麦粉とベーキングパウダーを入れて、さっくりゴムベラで混ぜてな」
「次はゴムベラかあ。それでさっくりか」
「ちゃんと出来てるじゃん。流石お父さん」
さっくり混ぜ終わったら、チョコチップをいれて、また混ぜる。
「混ぜるのはこれで最後だからな」
「混ぜ終わったら、どうするんだ?」
「ああ、型にいれるんだよ。膨れるから、パンパンに入れすぎないようにね」
「おお。こぼさないように気をつけて、と」
お父さんはゆっくり型に生地を流し込む。
やっぱり筋がいいんだよな。綺麗に入れているもんなあ。
俺、最初にやった時なんて、盛大にこぼしたから、その才能が羨ましいよ。
「さ、入れ終わったら、遂に焼くよ!」
「わくわくするな」
初めてお菓子を焼いた時って、こんな気持ちだったなあ。
俺も亜美と信次に喜んで欲しくて、夜な夜なわくわくしながら練習してたっけ。
で、盛大に失敗したりしてさ。
2人と暮らすようになってからだもんな、俺がお菓子作り始めたの。
そんな2人が、今は俺の為にクッキー焼いたりしてくれることもあってさ。幸せだよ、俺。
「よおし、170度のオーブンで20分、と!」
「後は様子を見ながら待つばかりだな」
「上手に焼けるといいが」
大丈夫。ここまで出来たら成功は保証されたもんだよ。
俺も見てるしな。安心しろよ、お父さん。
「じゃ、僕達のお菓子の準備しよっか」
「そうだな」
◇
「おお、美味しそうに焼けたぞ!」
「少し冷めたらラッピングしような」
「でも、4個あるけど、亜美とのばらに2個ずつなの?」
「京平と信次の分もあるぞ。今日のお礼さ」
「ありがとな、お父さん。楽しみにしてるよ」
「わーい、ありがとね!」
それなら俺もお父さんにあげたいな。クッキー、少し多めに焼こうかな?
そう思った俺は、バターと小麦粉の量を増やして作り始めた。
「兄貴、クッキー何枚作るのさ!」
「んー、150あれば足りるかなあ。20人くらいにお返ししなきゃだからさ」
「ほぼ義理にしても、沢山もらってたもんね」
「そ。嬉しかったからお返しはしないとな」
ふー、家にある一番大きなボウルでもサイズが足りないから、分けて練るしかないな。毎年のことだけど、これは体力勝負だな。
「僕、先に焼くね?」
「おー。俺はまだまだ時間掛かるしな」
生地は出来たから、生地を伸ばして型抜きだな。
楽しい気持ちで食べて貰いたいし、いろんな型を使うかな。
新しく桜型も仕入れたし、薔薇型と合わさって華やかになりそう。
さー、気合いで150個抜いてくぞ。
「チョコケーキはあと15分で焼けるよ」
「ラッピングも終わったぞ」
「うおお、後140個ー!」
◇
「はあはあ、やっと亜美のガトーショコラも焼けたぞ」
「お疲れ、兄貴。お昼何食べたい?」
「ごめん。かなり疲れたから、ちょい昼寝するよ。昼は炒飯食いたい」
クッキーの作りすぎで疲労困憊の俺は、布団まで歩けなくて、ソファでごろんと横になる。
結局クッキー200枚焼いたもんなあ。
余ったクッキーは、明日皆で食べような。
「もー。ソファで寝ちゃダメでしょ。でも起こすのも可哀想だし、布団持ってこよ」
「毎年こうなのか?」
「うん。毎年こんな感じ。僕が学校の時は、夕方までソファで寝てたこともあるもん」
ああ毎年だな。学習能力ねえな、俺。
大丈夫、今日は少し寝るだけでいいから。亜美を笑って出迎え……。
◇
「京平、そろそろ起きよ?」
「むにゃ。あれ、亜美?」
「おはよ、京平」
「おはよ、亜美」
思わず、俺は亜美を抱きしめた。ずっとこうしたかったんだ。
でも、今亜美が居ると言うことは19時くらいだよな? やべえな、かなり寝ちまったよ、俺。
「あ、兄貴やっと起きた。もう夜ご飯出来るよ」
「お腹ぺこぺこですわ」
「炒飯出来たら起こしてくれよ」
「何度も起こしたってば」
「ふわあ、思った以上に疲れていたみたい」
「ご飯食べたら早めに寝ようね」
「だな。明日は診察の日だし」
気持ち良く眠れて、亜美に起こして貰えるって幸せだな。と、感じながら、俺はまだ亜美を抱きしめていた。
こんな時間があるから、生きていけるよ、俺。
亜美と家族がいるから、生きていけているから。
「ごめん、もうちょっと充電させて」
「京平、大丈夫だからね」
亜美も俺を抱きしめてくれた。疲れていた身体も、亜美と居ると癒されていくよ。
「ご飯出来たけど、もうちょっと後に呼ぼうかな」
「その方がいいな」
「ですわ」
◇
そんなこんなで翌日。お弁当を作り終わった亜美が、満面の笑みで。
「京平、ホワイトデーのちょうだい!」
「え、今?」
「お昼に食べるんだもん」
「俺の真似をするんじゃないよ」
「だって早く食べたいもん!」
しょうがないなあ。俺は用意していたガトーショコラを亜美に渡す。亜美のと同じくらい、美味しく出来てるといいな。
「いつもありがとな、亜美」
「ありがとね、京平」
俺がガトーショコラを渡すと、朝ご飯を作り終えた信次が。
「あ、兄貴もうホワイトデーの渡してんの?」
「ずるいですわ!」
「亜美、昼に食べたいんだってさ」
「信次、のばらにもお菓子を渡すのですわ!」
「解った、今渡すよ」
「深川先生のお菓子も食べるのですわ!」
「沢山食べるな?!」
「朝から騒がしいな、我が家は」
付き合ってから初めてのホワイトデーだけど、寧ろ俺が亜美の笑顔に絆されていくよ。
食べてる姿をみたら、もっと愛しくなるんだろうな。
そんな予感を感じつつ、照れ隠しをしつつ、俺は食卓に着くのであった。
「あ、クッキーも食べたい!」
「察しがいいな。帰って来たら皆で食べよ」
作者「番外編とはいってますが、作者がうっかり書き忘れたエピソードをば」
亜美「もうちっとだけ、続くんじゃよ」




