一緒に泣いて笑い合おう。
「お客様、そろそろ閉店のお時間になります」
「解りました」
この体勢を見られたのはちょっと恥ずかしいな。でも、京平疲れているもんね。
家でゆっくり寝かせてあげるとして、そろそろ起こさなきゃ。
「京平、もう閉店の時間だって」
「あ、やば、俺寝てた? おはよ」
「おはよ、京平」
京平は笑顔で起きてくれた。この笑顔には敵わないなあ。
時刻は22時。まだ電車も充分に間に合うね。
私はお支払いを済ませた後、眠い目をした京平の手を繋いで帰路に着く。
「ホテルで寝たのにな。ごめんな、亜美」
「ううん、京平がゆっくり眠れたなら良かったよ」
「ふわあ、ほとんど動いてねえのにな」
「昨日頑張ったからだよ。帰ったら早めに寝ようね」
「うん。そうする」
京平は目をトロンとさせながらも、歩幅を私に合わせながら歩いてくれる。
眠たくても優しいね、京平。
私達は駅まで辿り着いて、朝より少し空いた電車に乗り込んだ。
ちょうど1人分席が空いていたので、私はそこに京平を座らせて寝かせることにした。
「俺はいいから、亜美座れよ」
「ダメ。最寄駅に着くまで寝てなさい」
「ありがとな。おやすみ」
京平、疲れ切ってるのにいつも私優先なんだな。
普通に座って寝たっていい体調なのにさ。
でもね、そんな京平だから守りたいんだ、私。こんな時くらい頼って欲しいな。
席に座った京平は、案の定すぐにすやすやと眠りに着く。
思えば金曜は診察からの、土曜は手術3連発だもんね。そりゃ疲れるよね。
そして、京平の中では多分悔しくもあるだろうな。って。
時短……とは言っても、きっかり8時間は働いてるんだけど、普段より短い時間なのに、なんでこんなに疲れてんだよ。ってさ。責任感強いからね。
4月からも休憩しっかりとるんだよってことに加えて、ここら辺しっかりフォローしなきゃね。
京平は頑張ってるんだもん。帰ったら沢山褒めてあげたいな。
京平、自分を責めたりしないでね。
「ふふ、寝顔も愛しいな」
◇
「京平、もうすぐ最寄駅だよ」
「ああ、おはよ。亜美。ありがとな」
「おはよ。京平は疲れてるんだもん。寝かせるのは当たり前だよ」
最寄駅に着く前に京平の隣の席も空いたから、座って京平をポンポンしながらここまで来たけど、気持ちよさそうに眠ってくれて良かった。
「あー、帰ったら風呂入んなきゃだから、寝ないようにしないと」
「私がフォローするから大丈夫だよ」
「ありがとな。俺、めちゃ亜美に甘えてんな」
「いつも甘えてよ。支えるからさ」
最寄駅に着いた私達は手を繋いで、家まで歩いて行く。
京平はかなりうつらうつらとしている。相当眠いんだろうなあ。私は京平に肩を貸しながら歩く。
「ごめんな、亜美」
「謝らないで素直に甘えてよ」
「亜美にはかなり甘えてるさ」
「もっともっと!」
京平は甘えなすぎだよ。もっともっと寄りかかっていいんだからね。
「そんな亜美だから、一緒に居るといつも安心するよ」
「私も京平の隣が1番安心できるよ」
帰ったらすぐに抱きしめたいな。もっともっと安心して欲しいから。
京平が京平を、もっと愛せますように。京平は凄く魅力的な人なんだから。だから私も安心出来るんだもん。
そんな話をしながら、私達は我が家にたどり着いた。
京平と私は手を洗って、すぐ部屋に行く。抱きしめ合うって約束したもんね。私達はギュッと抱きしめ合う。
すると京平が、私に持たれかかって泣きじゃくる。
「ダメだ、亜美には嘘吐けねえや。本当はさ俺、すぐ疲れちまう自分が情けなくて悔しくて。今でさえも眠たいしよ」
「自分を責めないで、京平。京平は充分頑張ってるよ」
「毎日診察したり、手術したり、それくらいやれて当たり前なのにさ」
「京平は丁寧にやってるもん。だから大丈夫」
京平、自分を責め続けていたんだね。
ダメだよ、そんなの悲しいよ。京平が頑張ってること、私は解っているよ。
体力を付ける為に走ってるし、診察だって私、色んな先生に着いてるけど、京平が1番親身になって応対しているし、加えて麻酔科医までやってんだもん。
「もっと自分を褒めてあげてよ、京平。こんなに頑張ってるんだから」
「俺、頑張れてるかな?」
「うん、誰よりも頑張ってるよ」
「ありがとな、亜美。もう少し、こうさせて」
うん、私の胸の中でいっぱい泣いてね。
悔しくて仕方ないんだよね、頑張れてるか不安だったんだよね。
私はずっと傍にいるからね。何があっても、京平の味方だからね。
「亜美、ごめん。こんなに弱くて」
「ごめんが多すぎるよ。私はありのままの京平を愛してるもん。全部受け止めるから、無理に強くなろうとしないで」
「亜美が傍に居てくれて良かった」
京平はさっきよりも安心した顔をして、私を抱きしめてくれた。
「後、4月からもちゃんと休憩取ってね?」
「患者様が沢山いるなら、多少は無理しなきゃ」
「ダメ、自分を大切にしてよね。私の愛してる人を苦しめないで」
「亜美、ありがとな」
私も京平を抱きしめた。私のいる所で泣いてくれてありがとね。泣き場所にしてくれてありがとね。
これからも京平のこと、いっぱい支えるからね。
◇
それからは、思わず私も泣いちゃって、2人して涙塗れになりながら、お風呂に入る。
「亜美が泣く必要はないだろ?」
「だって京平、こんなに頑張ってるのに。悔しかったよね。うああああん」
「いつだって、俺の為にありがとな」
京平はそう言いながら、私の背中を流してくれた。眠たいだろうに、いつも私を気遣ってくれる。私なんてちょっと泣いてるだけなのにさ?
というか、私がフォローするって約束したのにさ? ダメ、フォローしなきゃ!
「えぐえぐ。背中流してくれてありがとね。こっからは私が丸ごと京平を洗うよ!」
「かなり眠いからそれはありがたいな」
私は京平が苦しかったことが辛くて、涙が止められないままではあるものの、まずは京平の背中を流す。
京平が動かなくていいように、真ん中にお風呂の椅子を動かして座って貰った。
広くて大きな背中、大好きだなあ。この背中に、何度もおぶわれてきたなあ。
背中の次はお腹。引き締まった良いお腹だね。
京平、かなりキツい筋トレもしてるしな。前に教わったんだけど、キツすぎて全然出来てないもん。
しかもサクッと10キロ走ってるしね。私はハアハアしまくって10キロだもんな、まだ。
「ぐすん。京平、お尻も洗うから立ってね」
「むにゃ。ありがとな」
ああ、やっぱり相当眠たそう。ただでさえ疲れてるのに、そこから更に目一杯泣いたもんね。もっと疲れるよね。
私は京平のお尻と太ももの裏側を洗う。引き締まって良いお尻だなあ。やっぱ京平は全部好きだな。
続いて……。
「おっと、待て亜美。そこは自分で洗うよ」
「えぐえぐ、感じちゃう?」
「だまらっしゃい」
京平は、ポンっと私に突っ込む。
そして京平はあそこを洗い終わったので、私は京平の全身をシャワーで流した。でも、まだ終わりじゃないよ。
「次は頭だね。どんな髪型にしちゃおっかな?」
「一応この髪型、俺のアイデンティティなんだけどな?」
「まあまあ、たまには楽しも!」
そんな訳で久しぶりに京平に泡で猫耳をつけたり、熊耳をつけたり、ショートヘアーにしたり、かなり私が楽しんだ。ああ、お風呂だとスマホが持ち込めないのが残念!
「亜美、めちゃ遊んでるじゃん」
「えへへ」
「でも、泣き止んでくれて良かった。笑ってくれてるし」
そんな京平も、笑ってくれてる。京平が笑ってくれて良かった。
悲しい時は一緒に泣こう。嬉しい時は一緒に笑いあおう。
そんな風に京平と生きていきたいな。
「こら、髪型落合くんにしないの」
「意外と似合ってるよ?」
「あんま嬉しくねえな」
京平を洗い上げた後、私も頭を洗おうとしたら、案の定京平に泡でいたずらをされて、髪型がのばらになったり京平になったりした。
もー。人の髪で遊ぶでないよ!
「亜美も遊んでたじゃん」
「うん。確かに!」
こうしてお互いの髪で存分に遊んだあとは、のんびり湯船に浸かる。
2人で抱きしめ合って過ごしたよ。
お互い笑えるようになって良かったね。
「亜美が居てくれて良かった」
「私も京平が居てくれてるから、笑えているよ」
「俺も。亜美が泣かせてくれたから、慰めてくれたから、笑えてるな」
京平は強く私を抱きしめて。
「亜美だけは絶対離さない」
「私もずっと傍にいるからね」
私も京平を抱きしめる。どんなことがあっても、私は京平を選び続けるし、離さないからね。
また怒られちゃうかもだけど、京平が私から離れていこうとしたとしても、ね。ガシッとしがみ付くからね?
だから、世界一大切にしたいな。愛しいからこそ。
「辛い時はいつでも頼ってね」
「まさに今日頼ったけど、また頼らせてな。亜美の傍だと素直に泣けるからさ」
日に日に近づく心の距離すら愛おしいと思いながら、私達はお風呂から出て、部屋で抱きしめ合う。
お互いが眠くなるまで、色々話そうね。
って、京平はすぐ寝ちゃうかな?
京平は私を抱きしめながら、私を太ももで挟んで。
「亜美と眠れるの、いつも幸せだよ。ありがとな」
「こうしてると、いつもぐっすり眠れるよ」
「ふわあ、やっぱり亜美と居ると安心できるよ。おやすみ」
「おやすみ、京平」
明日には京平の疲れも、綺麗さっぱりなくなりますように。
ふふ、京平の寝顔、可愛いな。凄く癒されるんだ。
京平の温もりが心地良いから、私も眠たくなってきた。ふわあ。
おやすみ、京平。誰よりも愛してるよ。
のばら「遊園地楽しかったですわ」
信次「のばらと1日遊べて僕も楽しかったよ」
作者「いつか番外編で書けたらいいな」




