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天然で鈍感な男と私の話  作者: 九條リ音
新しい季節
205/242

一緒に泣いて笑い合おう。

「お客様、そろそろ閉店のお時間になります」

「解りました」


 この体勢を見られたのはちょっと恥ずかしいな。でも、京平疲れているもんね。

 家でゆっくり寝かせてあげるとして、そろそろ起こさなきゃ。


「京平、もう閉店の時間だって」

「あ、やば、俺寝てた? おはよ」

「おはよ、京平」


 京平は笑顔で起きてくれた。この笑顔には敵わないなあ。

 時刻は22時。まだ電車も充分に間に合うね。

 私はお支払いを済ませた後、眠い目をした京平の手を繋いで帰路に着く。


「ホテルで寝たのにな。ごめんな、亜美」

「ううん、京平がゆっくり眠れたなら良かったよ」

「ふわあ、ほとんど動いてねえのにな」

「昨日頑張ったからだよ。帰ったら早めに寝ようね」

「うん。そうする」


 京平は目をトロンとさせながらも、歩幅を私に合わせながら歩いてくれる。

 眠たくても優しいね、京平。

 私達は駅まで辿り着いて、朝より少し空いた電車に乗り込んだ。

 ちょうど1人分席が空いていたので、私はそこに京平を座らせて寝かせることにした。


「俺はいいから、亜美座れよ」

「ダメ。最寄駅に着くまで寝てなさい」

「ありがとな。おやすみ」


 京平、疲れ切ってるのにいつも私優先なんだな。

 普通に座って寝たっていい体調なのにさ。

 でもね、そんな京平だから守りたいんだ、私。こんな時くらい頼って欲しいな。

 席に座った京平は、案の定すぐにすやすやと眠りに着く。

 思えば金曜は診察からの、土曜は手術3連発だもんね。そりゃ疲れるよね。

 そして、京平の中では多分悔しくもあるだろうな。って。

 時短……とは言っても、きっかり8時間は働いてるんだけど、普段より短い時間なのに、なんでこんなに疲れてんだよ。ってさ。責任感強いからね。

 4月からも休憩しっかりとるんだよってことに加えて、ここら辺しっかりフォローしなきゃね。

 京平は頑張ってるんだもん。帰ったら沢山褒めてあげたいな。

 京平、自分を責めたりしないでね。


「ふふ、寝顔も愛しいな」


 ◇


「京平、もうすぐ最寄駅だよ」

「ああ、おはよ。亜美。ありがとな」

「おはよ。京平は疲れてるんだもん。寝かせるのは当たり前だよ」


 最寄駅に着く前に京平の隣の席も空いたから、座って京平をポンポンしながらここまで来たけど、気持ちよさそうに眠ってくれて良かった。


「あー、帰ったら風呂入んなきゃだから、寝ないようにしないと」

「私がフォローするから大丈夫だよ」

「ありがとな。俺、めちゃ亜美に甘えてんな」

「いつも甘えてよ。支えるからさ」


 最寄駅に着いた私達は手を繋いで、家まで歩いて行く。

 京平はかなりうつらうつらとしている。相当眠いんだろうなあ。私は京平に肩を貸しながら歩く。

 

「ごめんな、亜美」

「謝らないで素直に甘えてよ」

「亜美にはかなり甘えてるさ」

「もっともっと!」


 京平は甘えなすぎだよ。もっともっと寄りかかっていいんだからね。


「そんな亜美だから、一緒に居るといつも安心するよ」

「私も京平の隣が1番安心できるよ」


 帰ったらすぐに抱きしめたいな。もっともっと安心して欲しいから。

 京平が京平を、もっと愛せますように。京平は凄く魅力的な人なんだから。だから私も安心出来るんだもん。


 そんな話をしながら、私達は我が家にたどり着いた。

 京平と私は手を洗って、すぐ部屋に行く。抱きしめ合うって約束したもんね。私達はギュッと抱きしめ合う。

 すると京平が、私に持たれかかって泣きじゃくる。


「ダメだ、亜美には嘘吐けねえや。本当はさ俺、すぐ疲れちまう自分が情けなくて悔しくて。今でさえも眠たいしよ」

「自分を責めないで、京平。京平は充分頑張ってるよ」

「毎日診察したり、手術したり、それくらいやれて当たり前なのにさ」

「京平は丁寧にやってるもん。だから大丈夫」


 京平、自分を責め続けていたんだね。

 ダメだよ、そんなの悲しいよ。京平が頑張ってること、私は解っているよ。

 体力を付ける為に走ってるし、診察だって私、色んな先生に着いてるけど、京平が1番親身になって応対しているし、加えて麻酔科医までやってんだもん。


「もっと自分を褒めてあげてよ、京平。こんなに頑張ってるんだから」

「俺、頑張れてるかな?」

「うん、誰よりも頑張ってるよ」

「ありがとな、亜美。もう少し、こうさせて」


 うん、私の胸の中でいっぱい泣いてね。

 悔しくて仕方ないんだよね、頑張れてるか不安だったんだよね。

 私はずっと傍にいるからね。何があっても、京平の味方だからね。


「亜美、ごめん。こんなに弱くて」

「ごめんが多すぎるよ。私はありのままの京平を愛してるもん。全部受け止めるから、無理に強くなろうとしないで」

「亜美が傍に居てくれて良かった」


 京平はさっきよりも安心した顔をして、私を抱きしめてくれた。


「後、4月からもちゃんと休憩取ってね?」

「患者様が沢山いるなら、多少は無理しなきゃ」

「ダメ、自分を大切にしてよね。私の愛してる人を苦しめないで」

「亜美、ありがとな」


 私も京平を抱きしめた。私のいる所で泣いてくれてありがとね。泣き場所にしてくれてありがとね。

 これからも京平のこと、いっぱい支えるからね。


 ◇


 それからは、思わず私も泣いちゃって、2人して涙塗れになりながら、お風呂に入る。


「亜美が泣く必要はないだろ?」

「だって京平、こんなに頑張ってるのに。悔しかったよね。うああああん」

「いつだって、俺の為にありがとな」


 京平はそう言いながら、私の背中を流してくれた。眠たいだろうに、いつも私を気遣ってくれる。私なんてちょっと泣いてるだけなのにさ?

 というか、私がフォローするって約束したのにさ? ダメ、フォローしなきゃ!


「えぐえぐ。背中流してくれてありがとね。こっからは私が丸ごと京平を洗うよ!」

「かなり眠いからそれはありがたいな」


 私は京平が苦しかったことが辛くて、涙が止められないままではあるものの、まずは京平の背中を流す。

 京平が動かなくていいように、真ん中にお風呂の椅子を動かして座って貰った。

 広くて大きな背中、大好きだなあ。この背中に、何度もおぶわれてきたなあ。

 背中の次はお腹。引き締まった良いお腹だね。

 京平、かなりキツい筋トレもしてるしな。前に教わったんだけど、キツすぎて全然出来てないもん。

 しかもサクッと10キロ走ってるしね。私はハアハアしまくって10キロだもんな、まだ。


「ぐすん。京平、お尻も洗うから立ってね」

「むにゃ。ありがとな」


 ああ、やっぱり相当眠たそう。ただでさえ疲れてるのに、そこから更に目一杯泣いたもんね。もっと疲れるよね。

 私は京平のお尻と太ももの裏側を洗う。引き締まって良いお尻だなあ。やっぱ京平は全部好きだな。

 続いて……。


「おっと、待て亜美。そこは自分で洗うよ」

「えぐえぐ、感じちゃう?」

「だまらっしゃい」


 京平は、ポンっと私に突っ込む。

 そして京平はあそこを洗い終わったので、私は京平の全身をシャワーで流した。でも、まだ終わりじゃないよ。


「次は頭だね。どんな髪型にしちゃおっかな?」

「一応この髪型、俺のアイデンティティなんだけどな?」

「まあまあ、たまには楽しも!」


 そんな訳で久しぶりに京平に泡で猫耳をつけたり、熊耳をつけたり、ショートヘアーにしたり、かなり私が楽しんだ。ああ、お風呂だとスマホが持ち込めないのが残念!


「亜美、めちゃ遊んでるじゃん」

「えへへ」

「でも、泣き止んでくれて良かった。笑ってくれてるし」


 そんな京平も、笑ってくれてる。京平が笑ってくれて良かった。

 悲しい時は一緒に泣こう。嬉しい時は一緒に笑いあおう。

 そんな風に京平と生きていきたいな。


「こら、髪型落合くんにしないの」

「意外と似合ってるよ?」

「あんま嬉しくねえな」


 京平を洗い上げた後、私も頭を洗おうとしたら、案の定京平に泡でいたずらをされて、髪型がのばらになったり京平になったりした。

 もー。人の髪で遊ぶでないよ!


「亜美も遊んでたじゃん」

「うん。確かに!」


 こうしてお互いの髪で存分に遊んだあとは、のんびり湯船に浸かる。

 2人で抱きしめ合って過ごしたよ。

 お互い笑えるようになって良かったね。


「亜美が居てくれて良かった」

「私も京平が居てくれてるから、笑えているよ」

「俺も。亜美が泣かせてくれたから、慰めてくれたから、笑えてるな」


 京平は強く私を抱きしめて。


「亜美だけは絶対離さない」

「私もずっと傍にいるからね」


 私も京平を抱きしめる。どんなことがあっても、私は京平を選び続けるし、離さないからね。

 また怒られちゃうかもだけど、京平が私から離れていこうとしたとしても、ね。ガシッとしがみ付くからね?

 だから、世界一大切にしたいな。愛しいからこそ。


「辛い時はいつでも頼ってね」

「まさに今日頼ったけど、また頼らせてな。亜美の傍だと素直に泣けるからさ」


 日に日に近づく心の距離すら愛おしいと思いながら、私達はお風呂から出て、部屋で抱きしめ合う。

 お互いが眠くなるまで、色々話そうね。

 って、京平はすぐ寝ちゃうかな?

 京平は私を抱きしめながら、私を太ももで挟んで。


「亜美と眠れるの、いつも幸せだよ。ありがとな」

「こうしてると、いつもぐっすり眠れるよ」

「ふわあ、やっぱり亜美と居ると安心できるよ。おやすみ」

「おやすみ、京平」


 明日には京平の疲れも、綺麗さっぱりなくなりますように。

 ふふ、京平の寝顔、可愛いな。凄く癒されるんだ。

 京平の温もりが心地良いから、私も眠たくなってきた。ふわあ。

 おやすみ、京平。誰よりも愛してるよ。

のばら「遊園地楽しかったですわ」

信次「のばらと1日遊べて僕も楽しかったよ」

作者「いつか番外編で書けたらいいな」

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