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天然で鈍感な男と私の話  作者: 九條リ音
新しい季節
204/242

ふわふわオムライス

「103番のお客様どうぞ」

「あ、京平呼ばれたよ!」

「ふう、やっと順番が回って来たか」


 私達は受付に向かう。受付では笑顔のお姉さんが、私達を出迎えてくれた。


「こんにちは、行き先などは決められていますか?」

「はい、掛川花鳥園に行きたいのですが、その周辺のホテルで、客室温泉付きの部屋はありますか?」

「お調べしますね」


 私がそう言うと、お姉さんは花鳥園周辺のホテルを探してくれた。


「いろは庵というお宿がありますね。掛川花鳥園から徒歩10分程度ですよ」

「5月14、15日で行く予定なのですが、客室の空きはありますか?」

「はい、この日でしたら空いてますよ」


 良かったあ。客室温泉の宿が見つかって。鳥さんを見た後、ご飯食べて、2人でゆっくり温泉に浸かって……。素敵すぎるね。


「この宿のプランだと、金額はどれくらいになりますか?」

「そうですねえ、お宿がSプランですので、新幹線代を含めてお2人で5万8000円です」

「お、この金額なら予算内だな」

「ご飯も美味しいお宿なので、お勧めですよ」


 ご飯も美味しいなら、何の問題もないね。

 私達は2人で頷いて、


「では、このプランでお願いいたします」

「かしこまりました。新幹線は何時の便にされますか?」

「えっと、掛川花鳥園は9時オープンかあ。荷物だけ先に宿に預けたいし、8時くらいに着けば……」

「お客様、掛川花鳥園は混みますよ? もう少し早めの便をお勧めします」

「え、開演前から結構並ぶの?」

「はい、並びます。私も個人的に掛川花鳥園には行くのですが、30分前には並びたいですね。でも、エミューが可愛くてついつい」


 掛川花鳥園、人気あるスポットなんだなあ。

 確かに早めに並んだほうが、後々のことを考えたら良いかもしれないね。

 そんな訳で、少し早めの7時半ごろに着く便を抑えてもらった。


「帰りの便は、いかがされますか?」

「えっと、チェックアウトは11時か。どこかで昼も食べたいし、亜美は他にどっか寄りたい?」

「名物って、他に何かありますか?」

「掛川花鳥園の帰りに寄るのがお勧めですが、さわやかってハンバーグ屋さんは美味しいですよ。混み合ってるんですけどね」


 そっか、掛川花鳥園を見終わった後にハンバーグかあ。でも、せっかく掛川花鳥園にいくなら、ギリギリまで楽しみたいしなあ。

 京平もそれを察してくれて。


「花鳥園の中には、食べ物屋さんとかありますか?」

「はい、ございますよ。確かに掛川花鳥園なら1日楽しめますからね」

「じゃあ、ハンバーグは次の日に食べるとして、余裕をもって15時くらいの便にするか」

「そうだね。混み合うらしいもんね」

「かしこまりました。新幹線のチケットは1ヶ月前から購入できる為、新幹線のチケットが取れましたら連絡いたしますので、またいらして下さいね」


 その後は旅行の申込書を京平が書いてくれて、料金のお支払い……ほぼ信次から貰った旅行券で支払って、旅行の手続きは終わった。

 新幹線のチケットも2人で座れる席を取ってもらうことにしたけど、無事に取れるかな?

 でも、色々楽しみなイベントもあるし、凄くワクワクするよ。何より、京平と一緒だもんね。


「ありがとうございました」

「お宿のパンフレット貰ったけど、凄くのんびり出来そう」

「ご飯も美味しそうだよな。客室温泉も露天風呂で景色良いし」


 私達は旅行代理店を後にして、旅行の話で盛り上がる。

 初めての旅行、掛川花鳥園にお宿にさわやかのハンバーグに。楽しみなことばっかりだよ。


「やべ、亜美との旅行楽しみ過ぎる」

「私も! いっぱい楽しもうね」

「この後はどうする? 予定通りまったりする?」

「うん!」


 やば、本音が声に出ちゃった。こんなに元気よくしたいって言うの、私くらいだろうなあ。

 流石にちょっと照れくさくなった。


「俺は嬉しいよ。ありがとな」


 そう言いながら京平は頭をポンポンしてくれた。

 いつも優しいね、京平。ありがとね。


 ◇


 それから私達は近くのホテルで、シャワーを浴びた後のんびり2人で過ごした。

 抱きしめ合ったり、キスをしたり、したり。

 こんな時間がすきだなあ。2人で息づく時間が。


「愛しいよ、京平」

「俺も。いつもありがとな」


 もう一度私達は抱きしめ合って、お互いに包まれながら過ごす。

 1番温かくて癒される場所。だからこそ、自然にこうなるんだ。

 こんな気持ちになるのは、京平にだけだよ。

 出会えて本当に良かったな。


 あれ、京平寝てるや。安心してくれたのかな、ありがとね。

 京平の長いまつ毛も、寝顔も、寝息も、愛しくてたまらないや。

 ふふ、京平の寝顔を見たら、私も眠たくなって来たよ。

 考えてみれば、世界一安心出来る場所で眠れるって幸せだな。

 おやすみ、京平。私は京平にキスをした。


 ◇


 むにゃむにゃ。寝心地が抜群に良すぎて、結構寝ちゃったなあ。おはよ。

 京平はまだ寝ているね。顔も少し疲れてるみたい。可哀想だけど、ホテルのチェックアウトも済ませなきゃだし、そろそろ起こさなきゃ。


「京平、そろそろ起きよ?」

「うーん。おはよ、亜美」

「おはよ、京平」


 私達は顔を見合わせて笑う。起き抜けの京平も可愛いな。私は思わずキスをする。


「ちょ、亜美、お返し!」


 そうしたら、京平もキスをしてくる。しかも、深く。京平にキスをされると、とろけそうになるんだよね。うっとりするよ。

 キスをした後は冷静になって、お互い着替えて、ギリギリではあったけど、何とかチェックアウトには間に合った。


「亜美とのこういう時間は何時間あっても足りないな」

「幸せな時間はあっという間だね」

「まだデートは終わりじゃないぞ。ご飯食べにいこ」


 時刻は21時。デートもご飯を食べたら終わりかな?

 久々のデートも、京平と一緒で楽しいな。

 ご飯はどんなご飯になるかな? ワクワク。

 私達はいつものように手を繋いで、街を歩く。


「今日はどこに行くの?」

「オムライス専門店。亜美、好きだろ?」

「うほ、それは楽しみ!」


 京平はいつも私を喜ばせてくれるなあ。ありがとね、京平。オムライスは大好きだよ。

 でも、区内でオムライス専門店があるのは知らなかったなあ。

 

「結構老舗なんだけど、オムライスの卵がふわふわらしいぞ。味を盗めたらいいな」

「ふわふわいいね!」


 って、ちゃっかり味を盗む気でいるのか、京平。

 家に帰ってからも、私を喜ばせたいんだね。愛されてるなあ、私。嬉しいや。

 私もそんな風に京平を喜ばせたいな。

 食べ物……ご飯系は京平さっぱりしたのが好きだけど、何がいいかなあ?


「私も京平のすきなもの、もっと腕をあげたいな。何が1番食べたい?」


 すると京平は、少し俯いて。


「俺、ラーメン好きなんだよな。家の近所だと良い店がないから、最近ご無沙汰してるけど」

「ラーメンかあ。出汁とったり麺を用意したり、大変そうだけど、作ってあげたいな」

「無茶苦茶大変だぞ? 気持ちだけで嬉しいよ。因みに濃厚豚骨が1番好き」


 とは言え、私もほとんどラーメン食べたことないからなあ。

 インスタントヌードルすら、京平は食卓に出したことないし。あ、1回激マズカップ麺はあったけど。

 それを除くと、かなり前に遊園地の帰りに、家の近所のラーメン屋さんに寄ったきり。

 そのラーメン屋さんが潰れてから、ラーメン食べてないんだよね。

 でも、あれがラーメンだとしたら、濃厚で温かくて麺も腰があって美味しかったんだよなあ。


「なんか、ラーメンの話してたら、ラーメン食べたくなって来たかも」

「ダメ、今日はオムライス! 味盗みたいもん」

「じゃあ、また今度ね?」


 ちぇ。でもまたの機会に、ラーメン屋さん連れてって貰おうっと!

 濃厚豚骨味ってなると、沢山の豚骨も必要だし、仕入れルートも調べて。


「亜美、ラーメンを作るのはやっぱり難しいと思うぞ?」

「でも、作ってみたいんだもん。京平が好きなら尚更!」

「豚骨を仕入れるのは難しいぞ? 普通に一緒に食べにいこ」


 確かに材料を仕入れられなかったら、作りようがないもんね。仕入れ先のアテもないし。


「うん。じゃあそうする。代わりにクッキーとか、いっぱい作るね」

「あ、それはかなり嬉しいや」


 そんなラーメンの話をしまくっているうちに、オムライス専門店に辿り着いた。

 オムライスふわふわって店名みたい。美味しそうな名前だなあ。

 私達が店に入ると、笑顔の店員さんが出迎えてくれた。


「いらっしゃいませ。お二人ですか?」

「はい、二人です」

「席に案内いたします」


 私達は小綺麗なテーブル席に案内された。

 店員さんはメニューを持って来てくれて、ごゆっくりどうぞと立ち去る。


「うわあああ、どれも美味しそうだよお」

「家だとやらない組み合わせも沢山あるしな」

「だねだね、ビーフシチューとかホワイトソースとか。たらこソースってのもある!」

「お、たらこ美味そうだな」


 たらこソースはニンニクをオリーブオイルで炒めて味付けしたご飯と合わせるみたい。確かにこれは美味しそう。

 私は何にしようかな? ホワイトソースにしようかな? ご飯は、マッシュルームバターライスだって。美味しそう。


「亜美決まった? 俺はたらこオムライス」

「うん。ホワイトオムライスにする。注文しなきゃ」

「すみませーん!」


 京平は店員さんを呼んで、素早く注文してくれた。


「楽しみだね」

「だな。写真も美味しそうだったしな」

「どんだけふわふわなのかな、卵」

「絶対物にするぞ」


 京平のことだから、味見ただけで大体掴んじゃうんだろうな。

 で、更なる美味しさを求めたりするんだろうな。

 京平の天才ぶりに、改めて感嘆するよ。


「ん、何ニヤニヤしてるんだ、亜美」

「んー、何でもないよ」

「そんな天才でもないぞ。俺」

「え、嘘だ。京平何でも出来るじゃん」

「亜美にそう思われたかったのはあるけどな。努力もしてるぞ」


 確かに京平、最初の頃はそんなに料理出来なかったよね。

 それでも私達の為に頑張って、今やプロ級の腕前になってるんだもんね。ん? プロ級?


「いや、普通努力しても、あそこまで上手にならない気が」

「いやいや、正直俺の唐揚げより、亜美の唐揚げの方が美味しいよ」

「え、それはないない!」

「そうか? 俺は亜美の唐揚げのが好きだぞ」


 ああバカ、好きって私じゃなくて、私の唐揚げだってば。なんか照れちゃうな。

 や、唐揚げ褒められたのも嬉しいんだけどね。


「えへへ、これからはお弁当に多めに入れとくね」

「それはむちゃ嬉しいぞ」


 これからは唐揚げ、多めに揚げなきゃ。

 そっか、好きだからつまみ食いも良くされたんだなあ、唐揚げ。

 そんな唐揚げの話をしているうちに。


「お待たせしました。たらこオムライスとホワイトオムライスです」

「うわあああ、本物はもっと美味しそう」


 見るからにふわふわな卵に、トロッとしたホワイトソースがそそられるなあ。


「「いただきます」」

「んー! 卵が凄くふわふわでホワイトソースも濃厚で美味しいし、バターライスの香ばしさもいいなあ、マッシュルームの歯ごたえも素敵!」

「うん、美味いな。この卵、どうやるんだろう?」

「こんなふわふわ卵、初めて食べたよ」


 ふふ、京平と美味しいオムライスを食べられて幸せだなあ。

 好きな食べ物を、愛してる人と食べているんだもんね。幸せじゃない訳がないね。

 それから私達はのんびり食べ進めていたんだけど。


「亜美、可愛いな」

「ん、急にどうしたの?」

「何でもない」


 もー。可愛いって急に言うし、何でもないって何なのさ!

 んもう、可愛いって言ってくれたこと、普通に受け止めれば良かったなあ。素直じゃないな、私。


「家帰ったら、しばらく抱きしめてもいい?」

「あ、可愛いなって言ったの、それを狙って?」

「そ、そういうんじゃねえけど、ダメかな……」


 もう、おバカ。ダメな訳ないでしょ。


「いっぱい抱きしめ合おうね」

「ありがとな、亜美」


 京平はそういうと、私の肩に顔を置く。

 そういえば昨日は手術で、麻酔科医として1日頑張っていたもんね。

 確か立て続けに3件だっけ? 疲れもそりゃ溜まるし、癒しも欲しいよね。


「疲れてる?」

「うん、肉体的にも精神的にも」

「いっぱいゆっくりしようね」

「ありがとな、亜美と居るだけで落ち着くよ」


 京平はそんな訳で、私の肩に頭を置いて休む。

 今日は疲れてるのに、一日中ありがとうね。楽しかったよ。私は京平の頭をポンポンする。


「やべ。安心しすぎて寝ちまいそう」

「少しならいいよ?」

「や。寝たらしばらく起きれない気がする」


 確かにホテルでも、かなり熟睡してたもんね。そこはお互い様ではあるけども。

 とりあえず、もうちょっとこうしてようかな。

 京平がちょっと元気になったら、お家に帰ろうね。


「すー、すー」


 ありゃ。寝ちゃったね。閉店までどれくらいかな? それまでは寝かせてあげよっと。

 おやすみ、京平。愛してるよ。

亜美「京平、お疲れ様」

京平「すー。すー」

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