ふわふわオムライス
「103番のお客様どうぞ」
「あ、京平呼ばれたよ!」
「ふう、やっと順番が回って来たか」
私達は受付に向かう。受付では笑顔のお姉さんが、私達を出迎えてくれた。
「こんにちは、行き先などは決められていますか?」
「はい、掛川花鳥園に行きたいのですが、その周辺のホテルで、客室温泉付きの部屋はありますか?」
「お調べしますね」
私がそう言うと、お姉さんは花鳥園周辺のホテルを探してくれた。
「いろは庵というお宿がありますね。掛川花鳥園から徒歩10分程度ですよ」
「5月14、15日で行く予定なのですが、客室の空きはありますか?」
「はい、この日でしたら空いてますよ」
良かったあ。客室温泉の宿が見つかって。鳥さんを見た後、ご飯食べて、2人でゆっくり温泉に浸かって……。素敵すぎるね。
「この宿のプランだと、金額はどれくらいになりますか?」
「そうですねえ、お宿がSプランですので、新幹線代を含めてお2人で5万8000円です」
「お、この金額なら予算内だな」
「ご飯も美味しいお宿なので、お勧めですよ」
ご飯も美味しいなら、何の問題もないね。
私達は2人で頷いて、
「では、このプランでお願いいたします」
「かしこまりました。新幹線は何時の便にされますか?」
「えっと、掛川花鳥園は9時オープンかあ。荷物だけ先に宿に預けたいし、8時くらいに着けば……」
「お客様、掛川花鳥園は混みますよ? もう少し早めの便をお勧めします」
「え、開演前から結構並ぶの?」
「はい、並びます。私も個人的に掛川花鳥園には行くのですが、30分前には並びたいですね。でも、エミューが可愛くてついつい」
掛川花鳥園、人気あるスポットなんだなあ。
確かに早めに並んだほうが、後々のことを考えたら良いかもしれないね。
そんな訳で、少し早めの7時半ごろに着く便を抑えてもらった。
「帰りの便は、いかがされますか?」
「えっと、チェックアウトは11時か。どこかで昼も食べたいし、亜美は他にどっか寄りたい?」
「名物って、他に何かありますか?」
「掛川花鳥園の帰りに寄るのがお勧めですが、さわやかってハンバーグ屋さんは美味しいですよ。混み合ってるんですけどね」
そっか、掛川花鳥園を見終わった後にハンバーグかあ。でも、せっかく掛川花鳥園にいくなら、ギリギリまで楽しみたいしなあ。
京平もそれを察してくれて。
「花鳥園の中には、食べ物屋さんとかありますか?」
「はい、ございますよ。確かに掛川花鳥園なら1日楽しめますからね」
「じゃあ、ハンバーグは次の日に食べるとして、余裕をもって15時くらいの便にするか」
「そうだね。混み合うらしいもんね」
「かしこまりました。新幹線のチケットは1ヶ月前から購入できる為、新幹線のチケットが取れましたら連絡いたしますので、またいらして下さいね」
その後は旅行の申込書を京平が書いてくれて、料金のお支払い……ほぼ信次から貰った旅行券で支払って、旅行の手続きは終わった。
新幹線のチケットも2人で座れる席を取ってもらうことにしたけど、無事に取れるかな?
でも、色々楽しみなイベントもあるし、凄くワクワクするよ。何より、京平と一緒だもんね。
「ありがとうございました」
「お宿のパンフレット貰ったけど、凄くのんびり出来そう」
「ご飯も美味しそうだよな。客室温泉も露天風呂で景色良いし」
私達は旅行代理店を後にして、旅行の話で盛り上がる。
初めての旅行、掛川花鳥園にお宿にさわやかのハンバーグに。楽しみなことばっかりだよ。
「やべ、亜美との旅行楽しみ過ぎる」
「私も! いっぱい楽しもうね」
「この後はどうする? 予定通りまったりする?」
「うん!」
やば、本音が声に出ちゃった。こんなに元気よくしたいって言うの、私くらいだろうなあ。
流石にちょっと照れくさくなった。
「俺は嬉しいよ。ありがとな」
そう言いながら京平は頭をポンポンしてくれた。
いつも優しいね、京平。ありがとね。
◇
それから私達は近くのホテルで、シャワーを浴びた後のんびり2人で過ごした。
抱きしめ合ったり、キスをしたり、したり。
こんな時間がすきだなあ。2人で息づく時間が。
「愛しいよ、京平」
「俺も。いつもありがとな」
もう一度私達は抱きしめ合って、お互いに包まれながら過ごす。
1番温かくて癒される場所。だからこそ、自然にこうなるんだ。
こんな気持ちになるのは、京平にだけだよ。
出会えて本当に良かったな。
あれ、京平寝てるや。安心してくれたのかな、ありがとね。
京平の長いまつ毛も、寝顔も、寝息も、愛しくてたまらないや。
ふふ、京平の寝顔を見たら、私も眠たくなって来たよ。
考えてみれば、世界一安心出来る場所で眠れるって幸せだな。
おやすみ、京平。私は京平にキスをした。
◇
むにゃむにゃ。寝心地が抜群に良すぎて、結構寝ちゃったなあ。おはよ。
京平はまだ寝ているね。顔も少し疲れてるみたい。可哀想だけど、ホテルのチェックアウトも済ませなきゃだし、そろそろ起こさなきゃ。
「京平、そろそろ起きよ?」
「うーん。おはよ、亜美」
「おはよ、京平」
私達は顔を見合わせて笑う。起き抜けの京平も可愛いな。私は思わずキスをする。
「ちょ、亜美、お返し!」
そうしたら、京平もキスをしてくる。しかも、深く。京平にキスをされると、とろけそうになるんだよね。うっとりするよ。
キスをした後は冷静になって、お互い着替えて、ギリギリではあったけど、何とかチェックアウトには間に合った。
「亜美とのこういう時間は何時間あっても足りないな」
「幸せな時間はあっという間だね」
「まだデートは終わりじゃないぞ。ご飯食べにいこ」
時刻は21時。デートもご飯を食べたら終わりかな?
久々のデートも、京平と一緒で楽しいな。
ご飯はどんなご飯になるかな? ワクワク。
私達はいつものように手を繋いで、街を歩く。
「今日はどこに行くの?」
「オムライス専門店。亜美、好きだろ?」
「うほ、それは楽しみ!」
京平はいつも私を喜ばせてくれるなあ。ありがとね、京平。オムライスは大好きだよ。
でも、区内でオムライス専門店があるのは知らなかったなあ。
「結構老舗なんだけど、オムライスの卵がふわふわらしいぞ。味を盗めたらいいな」
「ふわふわいいね!」
って、ちゃっかり味を盗む気でいるのか、京平。
家に帰ってからも、私を喜ばせたいんだね。愛されてるなあ、私。嬉しいや。
私もそんな風に京平を喜ばせたいな。
食べ物……ご飯系は京平さっぱりしたのが好きだけど、何がいいかなあ?
「私も京平のすきなもの、もっと腕をあげたいな。何が1番食べたい?」
すると京平は、少し俯いて。
「俺、ラーメン好きなんだよな。家の近所だと良い店がないから、最近ご無沙汰してるけど」
「ラーメンかあ。出汁とったり麺を用意したり、大変そうだけど、作ってあげたいな」
「無茶苦茶大変だぞ? 気持ちだけで嬉しいよ。因みに濃厚豚骨が1番好き」
とは言え、私もほとんどラーメン食べたことないからなあ。
インスタントヌードルすら、京平は食卓に出したことないし。あ、1回激マズカップ麺はあったけど。
それを除くと、かなり前に遊園地の帰りに、家の近所のラーメン屋さんに寄ったきり。
そのラーメン屋さんが潰れてから、ラーメン食べてないんだよね。
でも、あれがラーメンだとしたら、濃厚で温かくて麺も腰があって美味しかったんだよなあ。
「なんか、ラーメンの話してたら、ラーメン食べたくなって来たかも」
「ダメ、今日はオムライス! 味盗みたいもん」
「じゃあ、また今度ね?」
ちぇ。でもまたの機会に、ラーメン屋さん連れてって貰おうっと!
濃厚豚骨味ってなると、沢山の豚骨も必要だし、仕入れルートも調べて。
「亜美、ラーメンを作るのはやっぱり難しいと思うぞ?」
「でも、作ってみたいんだもん。京平が好きなら尚更!」
「豚骨を仕入れるのは難しいぞ? 普通に一緒に食べにいこ」
確かに材料を仕入れられなかったら、作りようがないもんね。仕入れ先のアテもないし。
「うん。じゃあそうする。代わりにクッキーとか、いっぱい作るね」
「あ、それはかなり嬉しいや」
そんなラーメンの話をしまくっているうちに、オムライス専門店に辿り着いた。
オムライスふわふわって店名みたい。美味しそうな名前だなあ。
私達が店に入ると、笑顔の店員さんが出迎えてくれた。
「いらっしゃいませ。お二人ですか?」
「はい、二人です」
「席に案内いたします」
私達は小綺麗なテーブル席に案内された。
店員さんはメニューを持って来てくれて、ごゆっくりどうぞと立ち去る。
「うわあああ、どれも美味しそうだよお」
「家だとやらない組み合わせも沢山あるしな」
「だねだね、ビーフシチューとかホワイトソースとか。たらこソースってのもある!」
「お、たらこ美味そうだな」
たらこソースはニンニクをオリーブオイルで炒めて味付けしたご飯と合わせるみたい。確かにこれは美味しそう。
私は何にしようかな? ホワイトソースにしようかな? ご飯は、マッシュルームバターライスだって。美味しそう。
「亜美決まった? 俺はたらこオムライス」
「うん。ホワイトオムライスにする。注文しなきゃ」
「すみませーん!」
京平は店員さんを呼んで、素早く注文してくれた。
「楽しみだね」
「だな。写真も美味しそうだったしな」
「どんだけふわふわなのかな、卵」
「絶対物にするぞ」
京平のことだから、味見ただけで大体掴んじゃうんだろうな。
で、更なる美味しさを求めたりするんだろうな。
京平の天才ぶりに、改めて感嘆するよ。
「ん、何ニヤニヤしてるんだ、亜美」
「んー、何でもないよ」
「そんな天才でもないぞ。俺」
「え、嘘だ。京平何でも出来るじゃん」
「亜美にそう思われたかったのはあるけどな。努力もしてるぞ」
確かに京平、最初の頃はそんなに料理出来なかったよね。
それでも私達の為に頑張って、今やプロ級の腕前になってるんだもんね。ん? プロ級?
「いや、普通努力しても、あそこまで上手にならない気が」
「いやいや、正直俺の唐揚げより、亜美の唐揚げの方が美味しいよ」
「え、それはないない!」
「そうか? 俺は亜美の唐揚げのが好きだぞ」
ああバカ、好きって私じゃなくて、私の唐揚げだってば。なんか照れちゃうな。
や、唐揚げ褒められたのも嬉しいんだけどね。
「えへへ、これからはお弁当に多めに入れとくね」
「それはむちゃ嬉しいぞ」
これからは唐揚げ、多めに揚げなきゃ。
そっか、好きだからつまみ食いも良くされたんだなあ、唐揚げ。
そんな唐揚げの話をしているうちに。
「お待たせしました。たらこオムライスとホワイトオムライスです」
「うわあああ、本物はもっと美味しそう」
見るからにふわふわな卵に、トロッとしたホワイトソースがそそられるなあ。
「「いただきます」」
「んー! 卵が凄くふわふわでホワイトソースも濃厚で美味しいし、バターライスの香ばしさもいいなあ、マッシュルームの歯ごたえも素敵!」
「うん、美味いな。この卵、どうやるんだろう?」
「こんなふわふわ卵、初めて食べたよ」
ふふ、京平と美味しいオムライスを食べられて幸せだなあ。
好きな食べ物を、愛してる人と食べているんだもんね。幸せじゃない訳がないね。
それから私達はのんびり食べ進めていたんだけど。
「亜美、可愛いな」
「ん、急にどうしたの?」
「何でもない」
もー。可愛いって急に言うし、何でもないって何なのさ!
んもう、可愛いって言ってくれたこと、普通に受け止めれば良かったなあ。素直じゃないな、私。
「家帰ったら、しばらく抱きしめてもいい?」
「あ、可愛いなって言ったの、それを狙って?」
「そ、そういうんじゃねえけど、ダメかな……」
もう、おバカ。ダメな訳ないでしょ。
「いっぱい抱きしめ合おうね」
「ありがとな、亜美」
京平はそういうと、私の肩に顔を置く。
そういえば昨日は手術で、麻酔科医として1日頑張っていたもんね。
確か立て続けに3件だっけ? 疲れもそりゃ溜まるし、癒しも欲しいよね。
「疲れてる?」
「うん、肉体的にも精神的にも」
「いっぱいゆっくりしようね」
「ありがとな、亜美と居るだけで落ち着くよ」
京平はそんな訳で、私の肩に頭を置いて休む。
今日は疲れてるのに、一日中ありがとうね。楽しかったよ。私は京平の頭をポンポンする。
「やべ。安心しすぎて寝ちまいそう」
「少しならいいよ?」
「や。寝たらしばらく起きれない気がする」
確かにホテルでも、かなり熟睡してたもんね。そこはお互い様ではあるけども。
とりあえず、もうちょっとこうしてようかな。
京平がちょっと元気になったら、お家に帰ろうね。
「すー、すー」
ありゃ。寝ちゃったね。閉店までどれくらいかな? それまでは寝かせてあげよっと。
おやすみ、京平。愛してるよ。
亜美「京平、お疲れ様」
京平「すー。すー」




