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天然で鈍感な男と私の話  作者: 九條リ音
揺れ動いたりしない心
202/242

蓮とさよならした後

「蓮、ごめんね」


 まさか出会った瞬間から好きでいてくれてたなんて。

 私、全然気付かなかったよ。苦しかったよね。

 私なんかを愛してくれてありがとね。助けてくれてありがとね。

 私、蓮に助けられなくてもいいように、頑張るからね。

 今まで助けてくれてありがとね。


 私は涙が止まらなかった。結局蓮をまた傷付けてしまったから。

 京平しか愛してないから、気持ちに応えることは出来ないのだけど、やっぱり苦しいよ。

 慣れないなあ。弱いな、私。


「亜美、早く家に入っておいで」

「京平、ありがとね」


 中々戻ってこない私を心配して、京平が迎えに来てくれた。

 私が泣いてることを察して、京平は私を抱きしめてくれた。

 京平の胸の中で、私は思い切り泣いた。京平は頭をポンポンして慰めてくれる。温かいよ、ありがとね、京平。この場所では、私も素直になれるんだ。


「私、また蓮を傷付けちゃった」

「亜美は悪くないよ、って日比野くんの時も言ったけど」

「中々慣れないよ……」

「優しいな、亜美は」


 優しくないよ。引っ叩いたし、こっ酷く振るし。そうすることしか出来ないし。

 

「誰が何と言おうと、亜美は優しいからな」

「ありがとね、京平」

「ここは寒いから、家の中に入ろ」

「うん、京平と行く」


 京平は冷え切った私の手を、優しく握ってくれた。

 京平の大きくて暖かい手、大好きだなあ。

 家に入った私達は手を洗って、まずは部屋に行く。

 もう少し京平を抱きしめたかったし、京平も私を抱きしめたかったのかな?


「亜美、身体が冷え切ってるじゃん。少しはこれで温かくなるかな?」

「うん。凄く温かい。ありがとね」

「早めにお風呂に行くべきなんだろうけど、もう少し抱きしめてていい?」

「うん、私もそうしたかったんだ」


 苦しかった心が、京平のおかげで溶かされていくよ。

 いつもありがとね、京平。愛してるよ。


「そうだ亜美、旅行なんだけどさ。5月、連休で休み取れるところある?」

「ん、取れなくはないけど、どうして5月なの?」

「多分来月は、俺が花粉症で死ぬからさ。だから、5月以降に行きたいなって」

「ああ、京平の花粉症毎年酷いもんね。今は大丈夫なの?」

「うん、なんとか。今の時期なら薬で抑えられるよ」


 確かに京平、毎年花粉症の時期は辛そうだもんね。特に花粉がよく舞う4月は。

 ゴーグルつけてマスクつけて薬を飲んでも、かなりくしゃみ鼻水が酷いしね。

 診察の時はくしゃみを我慢してるみたいだから、心配だなあ。

 そうだね、花粉が減る5月に行くのがベストかもしれないや。


「日付が決まったら、旅行会社で行くところ相談しに行こうな」

「うん、早めに休みを確定させるね」

「亜美と旅行って初めてだから、楽しみだよ」


 そうだね。お泊まり初めてだもんね。

 お互いが楽しめる場所を選べたらいいなあ。

 夜、いいムードになりすぎて、プロポーズしないように気をつけなきゃ。

 もう、日に日にプロポーズしたい欲が高まってきて、ヤバいんだよお。京平がそれだけ愛しすぎるんだ。

 でもプロポーズは京平にしてもらうって決めた以上は、しないように気をつけなきゃ。

 世の中の彼女さんは、そこら辺どうしてるんだろう?


「そろそろお風呂入ろうか」

「うん、ゆっくり過ごそうね」

「やっと笑ってくれた。良かった」


 京平のおかげで涙も乾いて、ようやく笑えたよ。

 私が泣いてたから、旅行の話とかしてくれたのかな?

 

 私達はお風呂に行って、冷えた身体を温め合う。

 お互いに背中を流したり、抱きしめたり、ね。

 そう言えば、最近肌の潤い感が前にも増して良いんだよなあ。

 京平と付き合うようになって、幸せだからかな?

 それとも単純に、卵肌のメイク落としがいいのかな?

 もう付き合って3ヶ月。冷めるどころか、日に日に愛が高まっていくよ。


「今日は疲れてるし、風呂上がったら寝ような」

「うん、そうする。かなり身体が怠いもん」

「1日に何回も泣けばそうなるさ」


 蓮のバカ! って気持ちと、蓮ごめんねって気持ちで、2回も泣いちゃったもんね。

 

「落合くんは明日とっちめるとするか」

「ダメだよ。蓮はもう反省してるし、傷付いてるからさ」

「亜美だって傷付いたじゃん?」

「私のことは良いから、蓮を怒らないで」


 確かに色々されたんだけど、それだけ私を手に入れたくて必死で、でも私は京平しか興味ないから、私が手に入ることはなくて。

 結局、蓮はかなり傷付くことになっちゃったから。

 ずっと蓮だって、守ってくれていたのにね。


「解った。でも、辛かったら無理するなよ?」

「明日は中番で少し多めに眠れるから大丈夫!」

「そういうことじゃなくて、精神的にさ」

「大丈夫だよ。だって京平がいるもん」


 すると京平は少し照れて、私を抱きしめてくれた。


「ずっと傍にいるからな。信じてくれてありがと」

「京平が居たら、いくらでも頑張れるもん、私」

「いつだって亜美を守るからな」

「うん、私も京平を支えるからね」


 私も京平を抱きしめた。京平って、いつも温かいな、癒されるな。

 こんなに大切な人が出来て良かったな。いつも幸せだもん。


「京平に出会えて良かった」

「俺も。亜美に出会えてなかったら、こんなに笑えてないよ」


 それから私達はお風呂に入って、お互いを抱きしめながらのんびり過ごした。こんな時間も好きだなあ。

 明日は中番だから、お風呂一緒に過ごせるかな?

 遅番だとそうもいかないから、一緒にお風呂に入れる時間も大切にしたいな。


「あー。明日は医師会合かあ。怠いんだよなあ」

「意見を言うことは大事だよ。病院の為になるしね」

「亜美達が少しでも楽になるような案が浮かべばいいんだけどな。看護師あっての俺達だし」


 他の病院にも言えることだけど、看護師の数は確かに少ないし、回すための努力はすごいしてるんだよね。

 看護師長の配分が的確だから、人が足りなくて困ったことはないけど、重労働ではあるしね。もう大分慣れたけど。


「来年看護師何人増えるか、人事担当にも確認取らなきゃな」

「もうとっくに決まってるだろうしね」

「来年度は亜美も先輩になるから、頑張れよ?」

「勿論! 負けないよ!」


 4月に新人が来るまであと僅か。少しでも成長しなきゃ。

 何か聞かれたら、解りやすく優しく教えてあげられるといいな。

 そう言えば朱音が、指導担当になるって言ってたな。

 新人の教育って、やっぱり大変なのかな?


「新人の栄養面が心配になるよ。研修医の内は給料も少ないからね。流石に弁当人数分はキツいから、パン奢るくらいしか出来ないけどさ」

「皆が皆、実家暮らしじゃないもんね」

「一人暮らしのやつは、仕送りないとキツいんじゃねえかな? 俺も研修医時代は麻生の実家に世話になったしな」


 育てる大変さより、新人の栄養面が心配、かあ。京平らしいよね。優しいな。

 そっか、2ヶ月の研修医期間は、麻生先生の実家で暮らしていたんだね。

 とは言え、京平は僅か2ヶ月だもんな。明らかに天才だよね。


「まあ、贅沢を言えば、新人教育をしている内は疲れた顔見せたくないから、17時から19時で休憩を取りたいくらいかな。院長にそれは禁止されたけど」

「そうだよ、働き詰めは良くないよ。休憩時間はしっかり休んでね?」

「そうだな、その時間だと、亜美の顔も見れないしな?」

「そうだぞ。ちゃんと会いに来てね!」

「今年の新人教育も頑張るよ」


 京平は今年も研修医指導者になるのかあ。

 内科に何人新人医師が配属されるか解らないけど、京平が無理しませんように。花粉症もあるしね。


「とは言え、やっぱ新人教育は疲れるから、亜美にポンポンしてもらいながら、休憩中は寝ようかな」

「休むことも大切だって、新人くん達にも教えなきゃだしね」

「そ。休憩時間に寝るのは大事だぞ。って、そろそろ出ようか。のぼせちまうし」


 私達はほかほかになって、お風呂から上がった。

 冷え切った身体もすっかり温まったよ。

 京平がのぼせなくて良かったなあ。


「蓮はもう温まってるかな?」

「家には着いてるんじゃないか?」

「寒くないといいな。身体冷え切って震えてたから」

「それは落合くんの自己責任でもあるんだけど、亜美は心配するんだな」

「だって友達だもん」


 もしかしたら私のせいで眠れないかもしれないね。

 だったらせめて、温かく過ごして欲しいな。

 お風呂入ったかな? ホットミルクとか飲んでるかな?

 私が心配出来るのは、これくらいだから。


「あんま気にすんなよ」

「うん、解ってる。逆に蓮を困らせちゃうしね」


 明日からしばらくシフト被らないのも、ちょうど良かったかもね。

 蓮が私への愛してるを、忘れられますように。


 私達は着替えて部屋まで向かう。ふわあ、めちゃくちゃ眠たいや。

 そんな私を、京平は優しく抱きしめてくれた。


「ゆっくりおやすみ、亜美」

「京平の腕の中、凄く安心出来るよ。温かい」


 気付いたら私はおやすみも言えずに、すやすやと寝入ってしまった。安心して、穏やかな気持ちになったからかな?


「おやすみ、亜美」


 京平が私に、優しくキスをしてくれた。

京平「亜美が眠れて良かった」

作者「京平も寝ろよ?」

京平「もう少し、亜美の寝顔を見てたいな」

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