蓮とさよならした後
「蓮、ごめんね」
まさか出会った瞬間から好きでいてくれてたなんて。
私、全然気付かなかったよ。苦しかったよね。
私なんかを愛してくれてありがとね。助けてくれてありがとね。
私、蓮に助けられなくてもいいように、頑張るからね。
今まで助けてくれてありがとね。
私は涙が止まらなかった。結局蓮をまた傷付けてしまったから。
京平しか愛してないから、気持ちに応えることは出来ないのだけど、やっぱり苦しいよ。
慣れないなあ。弱いな、私。
「亜美、早く家に入っておいで」
「京平、ありがとね」
中々戻ってこない私を心配して、京平が迎えに来てくれた。
私が泣いてることを察して、京平は私を抱きしめてくれた。
京平の胸の中で、私は思い切り泣いた。京平は頭をポンポンして慰めてくれる。温かいよ、ありがとね、京平。この場所では、私も素直になれるんだ。
「私、また蓮を傷付けちゃった」
「亜美は悪くないよ、って日比野くんの時も言ったけど」
「中々慣れないよ……」
「優しいな、亜美は」
優しくないよ。引っ叩いたし、こっ酷く振るし。そうすることしか出来ないし。
「誰が何と言おうと、亜美は優しいからな」
「ありがとね、京平」
「ここは寒いから、家の中に入ろ」
「うん、京平と行く」
京平は冷え切った私の手を、優しく握ってくれた。
京平の大きくて暖かい手、大好きだなあ。
家に入った私達は手を洗って、まずは部屋に行く。
もう少し京平を抱きしめたかったし、京平も私を抱きしめたかったのかな?
「亜美、身体が冷え切ってるじゃん。少しはこれで温かくなるかな?」
「うん。凄く温かい。ありがとね」
「早めにお風呂に行くべきなんだろうけど、もう少し抱きしめてていい?」
「うん、私もそうしたかったんだ」
苦しかった心が、京平のおかげで溶かされていくよ。
いつもありがとね、京平。愛してるよ。
「そうだ亜美、旅行なんだけどさ。5月、連休で休み取れるところある?」
「ん、取れなくはないけど、どうして5月なの?」
「多分来月は、俺が花粉症で死ぬからさ。だから、5月以降に行きたいなって」
「ああ、京平の花粉症毎年酷いもんね。今は大丈夫なの?」
「うん、なんとか。今の時期なら薬で抑えられるよ」
確かに京平、毎年花粉症の時期は辛そうだもんね。特に花粉がよく舞う4月は。
ゴーグルつけてマスクつけて薬を飲んでも、かなりくしゃみ鼻水が酷いしね。
診察の時はくしゃみを我慢してるみたいだから、心配だなあ。
そうだね、花粉が減る5月に行くのがベストかもしれないや。
「日付が決まったら、旅行会社で行くところ相談しに行こうな」
「うん、早めに休みを確定させるね」
「亜美と旅行って初めてだから、楽しみだよ」
そうだね。お泊まり初めてだもんね。
お互いが楽しめる場所を選べたらいいなあ。
夜、いいムードになりすぎて、プロポーズしないように気をつけなきゃ。
もう、日に日にプロポーズしたい欲が高まってきて、ヤバいんだよお。京平がそれだけ愛しすぎるんだ。
でもプロポーズは京平にしてもらうって決めた以上は、しないように気をつけなきゃ。
世の中の彼女さんは、そこら辺どうしてるんだろう?
「そろそろお風呂入ろうか」
「うん、ゆっくり過ごそうね」
「やっと笑ってくれた。良かった」
京平のおかげで涙も乾いて、ようやく笑えたよ。
私が泣いてたから、旅行の話とかしてくれたのかな?
私達はお風呂に行って、冷えた身体を温め合う。
お互いに背中を流したり、抱きしめたり、ね。
そう言えば、最近肌の潤い感が前にも増して良いんだよなあ。
京平と付き合うようになって、幸せだからかな?
それとも単純に、卵肌のメイク落としがいいのかな?
もう付き合って3ヶ月。冷めるどころか、日に日に愛が高まっていくよ。
「今日は疲れてるし、風呂上がったら寝ような」
「うん、そうする。かなり身体が怠いもん」
「1日に何回も泣けばそうなるさ」
蓮のバカ! って気持ちと、蓮ごめんねって気持ちで、2回も泣いちゃったもんね。
「落合くんは明日とっちめるとするか」
「ダメだよ。蓮はもう反省してるし、傷付いてるからさ」
「亜美だって傷付いたじゃん?」
「私のことは良いから、蓮を怒らないで」
確かに色々されたんだけど、それだけ私を手に入れたくて必死で、でも私は京平しか興味ないから、私が手に入ることはなくて。
結局、蓮はかなり傷付くことになっちゃったから。
ずっと蓮だって、守ってくれていたのにね。
「解った。でも、辛かったら無理するなよ?」
「明日は中番で少し多めに眠れるから大丈夫!」
「そういうことじゃなくて、精神的にさ」
「大丈夫だよ。だって京平がいるもん」
すると京平は少し照れて、私を抱きしめてくれた。
「ずっと傍にいるからな。信じてくれてありがと」
「京平が居たら、いくらでも頑張れるもん、私」
「いつだって亜美を守るからな」
「うん、私も京平を支えるからね」
私も京平を抱きしめた。京平って、いつも温かいな、癒されるな。
こんなに大切な人が出来て良かったな。いつも幸せだもん。
「京平に出会えて良かった」
「俺も。亜美に出会えてなかったら、こんなに笑えてないよ」
それから私達はお風呂に入って、お互いを抱きしめながらのんびり過ごした。こんな時間も好きだなあ。
明日は中番だから、お風呂一緒に過ごせるかな?
遅番だとそうもいかないから、一緒にお風呂に入れる時間も大切にしたいな。
「あー。明日は医師会合かあ。怠いんだよなあ」
「意見を言うことは大事だよ。病院の為になるしね」
「亜美達が少しでも楽になるような案が浮かべばいいんだけどな。看護師あっての俺達だし」
他の病院にも言えることだけど、看護師の数は確かに少ないし、回すための努力はすごいしてるんだよね。
看護師長の配分が的確だから、人が足りなくて困ったことはないけど、重労働ではあるしね。もう大分慣れたけど。
「来年看護師何人増えるか、人事担当にも確認取らなきゃな」
「もうとっくに決まってるだろうしね」
「来年度は亜美も先輩になるから、頑張れよ?」
「勿論! 負けないよ!」
4月に新人が来るまであと僅か。少しでも成長しなきゃ。
何か聞かれたら、解りやすく優しく教えてあげられるといいな。
そう言えば朱音が、指導担当になるって言ってたな。
新人の教育って、やっぱり大変なのかな?
「新人の栄養面が心配になるよ。研修医の内は給料も少ないからね。流石に弁当人数分はキツいから、パン奢るくらいしか出来ないけどさ」
「皆が皆、実家暮らしじゃないもんね」
「一人暮らしのやつは、仕送りないとキツいんじゃねえかな? 俺も研修医時代は麻生の実家に世話になったしな」
育てる大変さより、新人の栄養面が心配、かあ。京平らしいよね。優しいな。
そっか、2ヶ月の研修医期間は、麻生先生の実家で暮らしていたんだね。
とは言え、京平は僅か2ヶ月だもんな。明らかに天才だよね。
「まあ、贅沢を言えば、新人教育をしている内は疲れた顔見せたくないから、17時から19時で休憩を取りたいくらいかな。院長にそれは禁止されたけど」
「そうだよ、働き詰めは良くないよ。休憩時間はしっかり休んでね?」
「そうだな、その時間だと、亜美の顔も見れないしな?」
「そうだぞ。ちゃんと会いに来てね!」
「今年の新人教育も頑張るよ」
京平は今年も研修医指導者になるのかあ。
内科に何人新人医師が配属されるか解らないけど、京平が無理しませんように。花粉症もあるしね。
「とは言え、やっぱ新人教育は疲れるから、亜美にポンポンしてもらいながら、休憩中は寝ようかな」
「休むことも大切だって、新人くん達にも教えなきゃだしね」
「そ。休憩時間に寝るのは大事だぞ。って、そろそろ出ようか。のぼせちまうし」
私達はほかほかになって、お風呂から上がった。
冷え切った身体もすっかり温まったよ。
京平がのぼせなくて良かったなあ。
「蓮はもう温まってるかな?」
「家には着いてるんじゃないか?」
「寒くないといいな。身体冷え切って震えてたから」
「それは落合くんの自己責任でもあるんだけど、亜美は心配するんだな」
「だって友達だもん」
もしかしたら私のせいで眠れないかもしれないね。
だったらせめて、温かく過ごして欲しいな。
お風呂入ったかな? ホットミルクとか飲んでるかな?
私が心配出来るのは、これくらいだから。
「あんま気にすんなよ」
「うん、解ってる。逆に蓮を困らせちゃうしね」
明日からしばらくシフト被らないのも、ちょうど良かったかもね。
蓮が私への愛してるを、忘れられますように。
私達は着替えて部屋まで向かう。ふわあ、めちゃくちゃ眠たいや。
そんな私を、京平は優しく抱きしめてくれた。
「ゆっくりおやすみ、亜美」
「京平の腕の中、凄く安心出来るよ。温かい」
気付いたら私はおやすみも言えずに、すやすやと寝入ってしまった。安心して、穏やかな気持ちになったからかな?
「おやすみ、亜美」
京平が私に、優しくキスをしてくれた。
京平「亜美が眠れて良かった」
作者「京平も寝ろよ?」
京平「もう少し、亜美の寝顔を見てたいな」




