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天然で鈍感な男と私の話  作者: 九條リ音
信次の卒業式
191/238

亜美への愛が溢れて。(京平目線)

 亜美、ライムありがとな。いつも亜美に助けられているよ。おやすみ。

 そうライムを打って、俺は仮眠室へ行く。今日は疲れたから、寝るのを優先したかったんだ。

 亜美、わざわざ12時にライムくれて、俺の為に早起きまで有難う。ここまでして貰って、元気がないなんて、有り得ないしな。

 よく考えたら、同じタイミングで寝ているんだよな、俺達。

 なんだか、ぐっすり眠れそう。亜美も寝てるんだもん、な。おやすみ、亜美。


 ◇


 俺はアラームで目を覚ました。亜美のおかげで、ぐっすり眠ることが出来たよ。

 午後からの診察も頑張るぞ。亜美、眠れているかな。

 俺が診察室へ向かうと、看護師長が待機している。ん? 俺、1人で診るんだったよな?


「遅いわよ、深川。昼からは私が着くわ」

「や、そこまでして貰わなくても」

「ダメよ。仮眠室で熟睡してたって、落合くんからも報告を受けてるんだからね。無理させちゃったわね」

「お気遣いありがとうございます。看護師長」


 ただ、正直、看護師長が着いてくれるのはありがたい。適切な診断もより約束されるしな。


「さ、午後の診察、開始するわよ」


 看護師長が、患者様を呼んでくれた。

 よし、気を引き締めて、過集中で乗り切るぞ。


「深川先生、お久しぶり」

「こんにちは、大池さん。また痩せましたね」

「退院してからも走ってるからね」


 聞くと、毎日ゆったりと5キロ走ってるみたい。仕事もあるのに、頑張っていらっしゃるな。


「結果も出てますね。ヘモグロビンA1cは、6.0ですね。この調子で頑張ってくださいね」

「良かったあ。これからも頑張ります」

「この値なら、薬に切り替えてもいいかもしれませんね。切り替えてみますか?」


 今の大池さんなら、薬に切り替えても安定して過ごせるだろうからな。でも、大池さんは。


「インスリンに切り替えてから低血糖もないですし、安定しているので、今はこのままで行きたいです」

「解りました。大池さんの身体からも、インスリンが出るようになるでしょうから、低血糖が増えたなどがありましたら、すぐ病院に来てくださいね。インスリンも今月から少し少なめにしましょうね」


 確かに低血糖にならない、ということは、まだインスリンは身体からほとんど出てないってことだもんな。

 とはいえ、毎月痩せてるから若干不安だけど、大池さんの意思を尊重しつつ、身体に気を付けて貰おうかな。


「インスリン、出るようになるといいな」

「少しずつですよ。焦らないように、です。既に大池さんは頑張っていらっしゃるから、大丈夫。一緒に頑張りましょうね」


 頑張ってる人は、救われて欲しいな。それを俺も、サポートして行きたいな。助けたいな。


「有難うございます、深川先生」

「良くなるように、私もサポートしていきますね」


 こうして、大池さんは診察室を後にした。


「はあ、心配だけど、インスリンで安定してるのも確かだからなあ」

「深川は良くやってるわよ。安心しなさい」

「元気でいてくれますように」

「さ、次の患者様呼ぶわよ」


 ◇


 こうして、無事本日分の診察が終わった。

 ふう、惚気んなって言われそうだけど、亜美に会いたいな。


「深川、時任さんに会いたいんでしょ?」

「な、そんなことは……あります」


 嘘がつけない俺だった。


「今ならまだ内科に居るだろうし、待ってて貰うわ。今日、深川も頑張ったしね」


 看護師長はそう言うと、携帯で亜美に連絡をしてくれた。少しでも会えるのは嬉しいな。

 というか俺、そんなに亜美に会いたいって顔してたのかな。

 看護師長に見抜かれるとは思わなかったよ。


「時任さん内科に居るから、早く行ってあげてね」

「有難うございます、看護師長」


 俺は内科まで全力で走った。早く亜美に会いたい。

 亜美、亜美、亜美。

 しかし、勢い良く走った俺は、内科に着く直前に足を滑らせて盛大に転けた。いや、違うな。盛大に転けそうになった、だ。


「えへへ。セーフだね」

「亜美、ありがとな」


 亜美が即座の所で、俺を助けてくれた。


「そんなに走ってどうしたの?」

「亜美に会いに来たよ」


 俺は亜美の上から降りて、立ち上がる。

 俺は亜美を、両腕で起き上がらせた。亜美、顔を見せて。


「よっと。いつもありがとな。会えて良かった」

「わ、私も会えて嬉しいよ!」


 亜美は照れた顔を隠すことなく、俺に見せてくる。

 やべえ、可愛すぎる。俺も思わず照れてしまう。

 抱きしめたいのを抑えるのが精一杯。感情を隠す余裕が無い。


「また夜会いに来るよ」

「え、そんな無理しないで?」

「俺が会いたいの。休憩時間になったら教えて」


 会うことで充電して貰ってるんだよ、俺が。

 俺はそれだけ告げて、更衣室に向かう。

 照れた顔が、まだ元に戻らない。

 可愛い亜美を見ると、自分が制御出来ない。

 最近、亜美を愛しすぎているから。


 ◇


「京平、亜美に会いに病院に行くのか?」

「うん。連絡入り次第」

「実は亜美には、会えない時間も大事だと言ったばかりなんだが、京平は今元気だし、止める理由がないな」

「だって、惚れてるもん」


 ご飯を食べ終わった後、俺はお父さんと話していた。

 亜美はダメで俺はいいのか理論にもなるけど、俺、元気だしな。抜かりはないよ。

 

 信次はのばらさんと一緒に、部屋でご飯を食べている。バイトも訳を話して休んだようだ。

 

「のばらさん、ピルの変更と痛み止めも増量になったんだな」

「生理休暇も3日間になったしな。良くなるといいんだがな」


 無理せず休んだことで、明日は問題なく働けそうなのは良かったけどな。

 のばらさんの生理、中々軽くならないから心配だな。


「でも、信次が居るから問題ないかな」

「信次と一緒に居るのばらさん、幸せそうだしな」

「そう言うこと。じゃあ、俺、走りに行ってくるよ」

「亜美の連絡、見逃すなよ」

「見逃す訳ないだろ」


 亜美が居ない時でも俺は走る。診察の時、過集中しすぎてぶっ倒れるとかしない為に。体力はもっと付けたいしな。

 後、単純に程よい睡眠が出来るように。亜美が居ないと、本当に寝付きが悪いからさ。

 亜美が居ない時は、少し早いペースで走るんだけど、それでも俺は時折振り返ってしまう。

 亜美がいるんじゃないかって、気持ちになっちまう。

 病院に着いたら、亜美を寝かせてあげたいな。

 どうせ亜美は頑張りすぎてしまうから。だから、心配で会いたくなるのもあるんだけど。

 

「亜美、会いたい」


 数時間前にちゃんと会えてるのに、もう会いたくなってる。

 最近の俺、絶対重いよな? 亜美の迷惑になってないだろうか?

 でも亜美、良かったらこんな俺も、受け止めて欲しいな。

 それもひっくるめて、俺だからさ。


「いつもの亜美なら、そろそろ休憩時間になるかな。早めに病院行くか」


 会いたいが強くなった俺は、早めに病院へ向かう。亜美からライムが来たら、もう居るよって言って、驚かせてやろうっと。


 ◇


「すー、すー」

「京平、疲れてたんだね。会いに来てくれてありがとね」


 あれ、こんなはずじゃなかったんだけど、亜美に会えた瞬間、安心して寝ちまってる。

 亜美が優しく俺の頭をポンポンしてくれてるのが、また気持ちよくて。

 さっきから起きようとはしてるんだけど、幸せ過ぎて起きれないや。

 なんだよ、俺、疲れてたのかよ。亜美を心配させるだけじゃねえか。

 起きろ、俺。おーきーろー!

 

「京平、起きようとしてるでしょ? 寝てていいよ。おやすみ」


 ダメだ。もうギブだ。亜美の優しい笑顔を見たら、もう気持ち良く寝ちまうよ。

 会いに来といて、速攻寝てる俺にそんな優しい笑顔をくれるのは、亜美くらいだよ。

 そうだな。亜美だからこそ、俺達仲良く付き合えているんだろうな。こんなに優しい亜美だから。

 亜美に出会えて良かったよ。亜美だから幸せだよ。愛してる。おやすみ。


「ぐおー。すぴー」

「ふふ、寝てる京平も可愛いな。お父さんの言葉を、京平が簡単に壊しちゃった」


信一「会えない時間が……」

亜美「その理屈も、京平がぶっ壊しちゃった」

信一「無理はするなよ。亜美」

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