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天然で鈍感な男と私の話  作者: 九條リ音
信次の卒業式
190/238

会えない時間が2人を繋ぐ。

「ふわああ、おはよ」

「亜美、おはよ」


 京平のおかげでぐっすり眠れたけど、京平、お昼ご飯食べ逃しちゃったよね。こんな私に付き合うことないのに、優しすぎるよ。


「良かった。顔色も良さそうで」

「ごめんね。昼に起きれなくて。京平、昼ご飯食べてないでしょ?」

「お互い様だろ。前に俺の鬱症状が出た時、亜美はずっと傍にいてくれただろ。だから、気にすんなよ」


 京平こそ、そんなの当たり前なんだから、気にしなくていいのにな。ん、なんか外が暗いなあ。冬とは言え、今は3月だから、まだ明るくてもいいはずなのに。


「あ、そう言えば今何時?」

「18時。今日はよく寝たな」

「昼ご飯どころか、夜ご飯も遅くなっちゃってごめんね」

「いいよ。亜美とご飯食べたかったし。亜美はご飯食べられそう?」

「うん、お腹すいた」

「食欲があるなら良かった」


 そんな訳で、私達は食卓に向かう。今日は何かな?


「おはよう、信次」

「おはよう、亜美。元気そうで良かった」

「亜美、おはようございますわ」

「のばらはまだ怠そうだね」

「明日は中番だから、仕事前に産婦人科に行きますわ」

「2人とも大変だなあ」

「でも、充分休ませて貰いましたわ」


 お互い大変だね。のばら。のばらの生理は私よりも重たいし、よりしっかり診てもらわなきゃだもんね。

 顔も真っ青で辛そうだし、ね。


「のばら、座って食べられる?」

「しんどいけど、信次とご飯食べたいのですわ」

「僕が布団行くから無理しないの。一緒に食べよ」

「有難うございますわ、信次」


 のばらは信次に肩を抱えられながら、部屋まで歩いて行った。

 明日の通院で、のばらが少しでも楽になりますように。

 そんな今日のご飯は、コロッケ。前に信次がのばらに作ってあげたら、美味しそうに食べてたんだって。のばら曰く、グラタンの次に好きみたい。

 コロッケ、美味しく食べられるといいね。

 信次はのばらと自分の分のコロッケを部屋に運ぶと、ドアを閉じてのばらとの時間を過ごす。


「俺達も食べよっか」


 私達もコロッケを食べ始める。


「少し荒めのじゃがいもがまた良いんだよね。そしてひき肉との相性もジューシーでさあ」

「亜美、コロッケ揚げたてだから、火傷しないようにな」

「信次ものばらさんと一緒に居たかっただろうに、ご飯を作ってくれて。私も料理を覚えないとな」

「亜美の傍に俺が居た分、のばらさんが我慢してたって考えると俺も料理しなくちゃ」


 そうだよね。私も今日は京平に甘えちゃったけど、その分のばらが辛い思いをしたんだもんね。

 あんなに辛そうだったのに、ご飯一緒に食べたいって。


「ごめんね、のばら……」

「亜美が責任感じることないよ。俺が亜美の傍に居るって決めたんだから」

「亜美も体調悪かったし、仕方ないさ。やはり父さんが料理出来ないのが」


 生理の時は、のばらも私も寂しくなるタイプだもんね。大切な人を求めちゃう。ひっきりなしに。


「ま、平等に1日交代だな。心配だけどさ」

「そうするしかないよね」


 お互い寂しいんだから、どっちかが妥協しなきゃなのは確かだもんね。

 とは言え、お互いの休みが今後合えば良いのだけど。少なくとも、今日は京平が居なきゃ乗り切れなかったよ、私。


「信次は明日学校午前中だけ休んで、のばらさんに付きそうんだって。そもそものばらさん、働けるのかが心配だけど」


 京平は今信次から届いたライムを読みながら言う。

 一応私達にも家族ライムグループがあって、信次はそこに送ったみたい。のばらの体調、悪そうだったもんね。


「看護師長に、のばらさんが厳しいって相談しとくか。今のうちなら、代わりの人材見つかるかもだし」

「だよね。すごい顔真っ青だったもんね。私明日遅番だから、最悪中番から通せるし」

「おいおい、亜美も無理すんなよ」

「私は2日目過ぎたら、普通になるし大丈夫だよ」


 私も2日休ませて貰ったし、その分しっかり働かないとね。のばらに無理はさせたくないし。


「ダメ。看護師の通し勤務は基本禁止だからな」

「遅番から早番やってる人いるもん!」

「それも本人の予定次第であるけど、亜美の場合は、病院がお願いをする形になるからダメなの。そこは看護師長を信じなさい」


 ぶー。京平は遅番からの早番、無茶苦茶やってたのに!

 それどころか、早番から中番通しもあったのに! 後で院長に怒られたの知ってるもん!

 看護師と医者だって、命に関わるって意味では一緒のはずなのになあ。

 多分そんなルールはないけど、京平が個人的に私を心配してるんだろうなあ。

 もう大分良くなったのに。


 ◇


 結局のばらの代わりは、人員もいるということで、そのままで行くみたい。

 明日は頑張ってね。って看護師長からもライムが来た。

 ついでに明日の京平は、1人で診察をすることも決まった。

 深川なら大丈夫よね。なんだって。信頼されてるなあ。


「まあ、俺なら担当なしで回せるし妥当な判断だな」

「京平に無理させたくなかったんだけどな」

「起きれたら、昼にライムちょうだい。起きれたらでいいからな?」

「うん、絶対送るね!」

「ありがとな、亜美」


 なんだかんだで甘えてくれてるのかな?

 こう言う時頼ってくれるのは、悪い気はしないね。

 寧ろ、何があっても応えたくなっちゃう。

 明日は電話にしようかな。京平の声聞きたいし。


「じゃあ、私はもう寝るよ。おやすみ、亜美、京平」

「おう。お父さんおやすみ」

「おやすみ、お父さん」


 私達もお風呂入ったし、少し2人でのんびりしたら寝ようねって話して、まったり過ごした。

 信次のこともお父さんのことものばらのことも愛してるんだけど、やっぱり京平を一番愛してる。

 一緒に居ると落ち着くし、癒されるし。それに、素直になれるんだ。


「京平、愛してるよ」


 私はそう言いながら、京平を抱きしめる。お風呂上がりでホカホカした京平も、なんかいいなあ。


「ありがとな、亜美。亜美に抱きしめられると落ち着くよ」

「だよね、私もいつも落ち着くもん」


 京平も抱きしめてくれた。こうやって抱きしめ合いながら過ごすのもいいな。

 2人だけの世界だって錯覚しそうになるのも、なんだかすきで。

 日に日に京平が特別になっていくよ。こんなに愛しいって思える人がいるって幸せだな。


「俺、こんなに幸せになっていいのかな?」

「当たり前でしょ。私が幸せにするから」


 本音だよ。ずっとずっと前から、京平の事、幸せにしたかったんだもん。

 何があっても、私は京平を幸せにするんだから。

 私は強く京平を抱きしめた。


「それは心強いな」


 京平はくしゃくしゃの笑顔を見せてくれた。

 何があっても、私の傍では安心して欲しいな。この笑顔を守るのは、私なんだから。

 京平は色々あったし、頑張ってるんだから、誰よりも幸せになってね。


「でも俺も、亜美を幸せにしたいんだからな?」

「もう充分幸せにして貰ってるよ。いつも助けてくれてありがとね」


 今日もずっと傍に居てくれてありがとね。優しく頭をポンポンし続けてくれてありがとね。京平がいるから、生理が辛くても笑っていられてるよ。


「そろそろ寝ようか。って、俺が一緒に寝たいんだけどさ」

「そうだね。私も眠たくなってきたや」


 今日も京平の腕に包まれて眠れるなんて、幸せ以外の何物でもないよ。

 私こそ、こんなに幸せでいいのかな。

 私達は部屋に入ってすぐ、布団にくるまって京平の腕に包まれながら、眠りに着いた。

 京平に抱きしめられると、よく眠れるんだよね。あんなに寝たのに、まだ私の身体は睡眠を欲してるみたい。

 いや、違うな。京平のぬくもりに安心してるから眠れるんだ。愛しいな。


 ◇


 朝、私はアラームに起こされた。今日は京平にライムしたかったから、11時半にアラームをセットしたよ。

 のばらは今信次と病院みたい。ライムが届いてる。やっぱり生理が今日も重たいみたいで、大事を取っておやすみするようだ。

 のばらの生理が、落ち着きますように。

 今日はゆっくりしてね、ってライムを送る。


 さてと、今から早めに着替えてご飯食べて、のんびりしながらライム……いや、電話したいな。

 京平、今日は特に頑張ってるもん。

 仕方ないんだけど、寝起きに京平の顔が見られないのは寂しいな。勤務が合わないから、仕方ないし、今日遅番なのも、看護師長が私の身体を気遣ってくれて、なんだけど。


 昨日から3月だけど、まだまだ寒いな。

 温かい格好にして、風邪ひかないようにしなきゃ。

 まだ生理だし、腹巻きとカイロも必須だね。

 さてと、着替え終わったぞ。今日の朝ご飯は何かな?

 私がリビングに行くと、お父さんがリモートで仕事をしている。会議中みたいだから、静かにご飯食べなきゃ。

 私はこそこそと冷蔵庫からご飯を取り出して、温め直す。

 静かにしてたんだけど、優しいお父さんは笑って、


「亜美、おはよう」

「お父さん、おはよう。ごめんね、会議中なのに」

「亜美へのおはようのが大切だよ。でも亜美遅番だろ? 早くないか?」

「今日は京平が頑張ってるから、電話するんだ!」

「そかそか。電話したら、また寝るんだぞ」

「うん、そうするよ」


 そんな会話をお父さんとして、私は温め直したご飯を食べる。

 今日は鯵の開きと、ほうれん草のお浸しと、大根と豆腐のお味噌汁。お味噌汁の香りが、食欲を(そそ)るなあ。

 

「いただきます!」


 うん。鯵は香ばしく焼けているし、お味噌汁も信次が作ったのは一味違うし赤味噌だし、朝から助けられてるなあ。力貰えているよ。

 お弁当は京平が作ったよって、ライムで連絡をくれていたし、夜も楽しみだな。何作ってくれたんだろ?

 私も皆の力になれてるかな? いつも幸せにして貰ってるもん。だから、幸せにしたいな。

 なんて、我儘かな?

 

「ごちそうさまでした」


 ご飯を食べ終わった私は歯を磨いて、顔を洗って、部屋にまたこもる。

 ちょうど今は12時。京平に電話するんだ。

 って、診察が長引いてる可能性もあるし、まずはライムを返そっと。

 お弁当ありがとね。すごく楽しみだよ。今日は無理しないでね。って送った。

 まだかな、返信まだかな。ちょっとドキドキしながら、私は待つ。

 うーむ。今日は診察が長引いてるみたいだな? 中々返信が来ないや。

 そもそも1人でやってるんだし、そりゃそうだよね。


 どうしよう。自分の体力とも要相談なんだけど、段々会いたくなってきた。

 疲れた京平をポンポンしながら寝かせてあげたい。

 傍にいてあげたいよ。

 もうダメだ、会いたい。私は出かける用意を即座に済ませて、家を飛び出そうとしたんだけど。


「亜美、京平に会いにいくのか」

「うん、会いたいんだもん」

「ダメだ。京平を心配させるだけだぞ。家でゆっくり休んでから、病院に行くんだ」

「心配……させちゃうかな」

「当たり前だろ。京平は亜美のこと、愛してるんだから。勿論、私も」


 そっか。そうだよね。愛されてるんだもんね。

 私が無理して会いにいっても、心配させちゃうだけだよね。


「会えない時こそ、その時間を大切にしなさい。その思いやりが、2人をより繋ぐから」

「そうだね。会えない時間も大切だよね」

「そう、だからゆっくりおやすみ」


 会いたいのは山々だけど、無理しちゃダメだよね。

 私はおずおずと部屋に戻って、布団に入り込む。

 京平からはそもそも、ライムちょうだいとしか言われてないのだし、心配させたくないから、仕事に備えて寝なきゃ。京平、おやすみ。

 それでも寂しい私は、京平の枕を抱きしめながら眠りに着いた。京平の匂いが心地良いや。

亜美「でも、やっぱり会いたかったよ。ぐすん」

信一「京平を心配させたくないだろ?」

亜美「うん、ゆっくり休んで欲しいよ」

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