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天然で鈍感な男と私の話  作者: 九條リ音
信次とのばら
183/238

相変わらず理性の効かない私達

 むにゃむにゃ。あれ、なんだか温かいな。

 身体全体が包まれていて落ち着くな。

 そっか。帰って来たんだね。


「お帰り、京平」

「ただいま、亜美。疲れた顔してるぞ、もうちょっと寝てな。側にいるから」


 京平は優しく私を抱きしめてくれていた。

 帰って来てから、ずっと抱きしめてくれていたのかな?

 本当に優しいな、愛しいな。


「でも京平ご飯作らなきゃでしょ? 私も起きるよ」

「まだ18時だから、もうちょっとこうさせて。亜美を充電したくて」


 あ、京平も疲れた顔してる。今日は診察の日だったもんね。

 一緒に休もうね。京平。

 私も優しく京平を抱きしめた。少しでも、京平を癒せますように。


「バカ亜美、眠たくなっちゃうよ」

「一緒に休も?」

「……少しだけだぞ?」


 京平は私を抱きしめたまま、眠り始めた。

 疲れてるんなら、初めから眠れば良かったのに。

 それだけ私が心配だったのかな?

 いつだって優しい。そんな京平に救われてるよ。

 京平と眠れるの嬉しいな。寝顔も可愛い。

 おやすみ、京平。


 ◇


「亜美、兄貴、起きて。ご飯出来たよ」

「むにゃ、おはよ。信次」

「あ、おはよ。ごめん、亜美と寝てたよ」

「兄貴も疲れてたでしょ。ご飯食べたら、早めに寝るんだよ」


 どうやら私達がすやすや寝ている間に、信次がご飯を作ってくれたみたい。

 今日は信次の合格祝いのパーティーなのに、ちょっと申し訳ないな。

 同じことを京平も考えていたようで、お互い申し訳ない顔をしながら、食卓に向かう。


「おはよ、皆」

「信次、のばら、お父さん、おはよー」

「あら、おはようございますわ。のばら頑張りましたの!」

「じゃじゃん! 今日はのばらと、カツ丼と金平牛蒡(きんぴらごぼう)作ったよ」

「おお、美味しそうだね!」


 そっか、のばらと一緒に作ったんだね。最近よく一緒にご飯作るよね。仲良くて微笑ましいな。

 私達は席に着いた。


「味噌汁は父さんが作ったぞ」

「深川先生、デザートも沢山あるからお楽しみにですわ」

「お、何かな?」


 デザートは買って来たケーキと、のばらと作ったレモンパイと、私の作ったクッキーだよ。って、言いたいなあ。でも、びっくりさせたいもんね。我慢我慢。


「さ、食べよ! お腹減った」

「「「「「いただきます」」」」」

「カツ丼ジューシーで美味しいな。卵の半熟具合も素敵!」

金平牛蒡(きんぴらごぼう)も上手になったな。美味えよ」

「喜んでもらえて良かったね、のばら」

「嬉しいのですわ」

「お父さんのお味噌汁も、前よりも美味しいよ!」

「それなら良かった」


 うん。すっごく美味しい。皆レベル上がってるんだなあ。

 私もうかうかしてらんないぞ。もっと頑張らなきゃ。


「亜美は頑張りすぎ。今日、何か作ってくれたんだろ? 疲れが顔に出るくらいまで」

「にゃはは、デザートをのばらと作っただけだよ?」

「無理すんなよ。休みなのに15時くらいから寝てるって聞いて、心配したんだぞ」

「心配させてごめんね、京平」


 京平、私のことが心配で見守っててくれたんだね。

 私よりも疲れてただろうに。いつだって優しい。

 私は嬉しくて、また泣いてしまった。


「おい亜美、泣くほどのことじゃないから」

「だって、嬉しくて」

「よしよし。でも俺、当たり前のことしかしてないからな?」


 でも、泣きながらでもご飯を食べるのは、私らしいよね。うわあああん、美味しいよおお。

 カツ丼も金平牛蒡(きんぴらごぼう)もお味噌汁も、全部。


「うわああああん、ごちそうさま」

「亜美、泣きながら完食したよ」

「うわ、器用なことするね。亜美」


 京平がポンポンし続けてくれたことと、美味しいご飯を食べていたから、涙はようやく治った。

 私はようやく笑う。


「良かった。亜美が笑ってくれて」


 あ、京平も笑ってくれた。京平の笑顔が、私を温めてくれたよ。ありがとね。

 私は思わず、京平を抱きしめた。


「亜美、待って、止められんくなるよ」

「だって、抱きしめたかったんだもん」

「お風呂入ったあと、のんびりしような?」


 京平、私を慰めてくれてたもん。本当に優しいんだもん。愛してるが止まらないよ。

 今も私が食べ終わったからか、少し慌てて食べてくれている。

 ゆっくりでいいのにな。


「京平、慌てなくていいよ?」

「亜美を待たせなくないだけ」

「京平の食べているとこ見るの、好きだよ」

「そう? じゃあ、普通に食べるよ」

「そうだよ兄貴、ちゃんと味わってよね」

「ごめんな。信次、のばらさん、お父さん」


 京平が美味しそうに食べる姿も、私は幸せをもらえるんだ。

 私はニマニマしながら京平を見つめていたんだけど、あれ? 京平、ちょっと照れてる?

 そう言えば私が京平を見つめる機会って、あんま無かったなあ。

 それでも見ていたかったから、見ていたんだけど。


「ごめん亜美、流石にちょっと照れる。ソファに座って待ってて」

「京平だって、よく見つめてくるのに!」

「されるのは、慣れてないの」


 ぶー。納得は出来ないけど、京平がご飯食べられなくなるのも嫌だったから、私はソファに座る。

 ふう、私の愛してるは重すぎるのかなあ。迷惑しか掛けてないじゃん。京平を幸せにしたいのにな。

 自分自身が許せなくて、ちょっと落ち込んだ。

 そして私は隠し事が出来ないので。


「亜美、落ち込ませるつもりじゃなかったんだ。ごめんな。ただ、ご飯食べたくて」

「私こそごめんね。京平が好き過ぎてしまうよ」

「それは嬉しいよ。ありがとな。すぐそっち行くから」


 そうだね、私が落ち込んでる時、いつも1番に気付いてくれるのは京平だったね。

 そんなとこも愛してるよ。

 それより問題は私だよ。ご飯食べてる時くらい、なんで理性が効かないの。

 好きが溢れに溢れて、どんな時も止めらんないよ。

 これじゃ、完全なる獣だよ。バカバカバカ。

 うう、また落ち込んじゃう。心配させるだけなのに。


「亜美、お待たせ。バカ、俺めっちゃ耐えてたんだからな? 亜美からだからな?」


 京平は私を強く抱きしめて、何度も深いキスをする。

 待って京平、皆居る前なのに!

 でも、先に仕掛けたのは私なんだよなあ。こんなに我慢出来なくなってたの? 京平。


「そうだぞ、亜美のせいだぞ?」

「なんか兄貴と亜美、最近獣化がすごいな」

「父さん、気まずくなって来たぞ」

「大丈夫、正直皆気まずいから。兄貴のバカ」

「仲が良すぎですわ」


 ◇


 私達は信次に勢い良く引っぺがされて、いよいよデザートの時間。


「獣は止めなきゃ」


 本当にお互い理性が効かなくなっちゃったね。

 でも、そんな私も愛してくれてありがとね。京平。


「ごめん亜美、歯止め効かなくて」

「私から抱きしめたもんね。ごめんね」

「もう、最近2人共獣過ぎるから、少しは人間らしくね?」


 そう言いながら信次は、レモンパイとクッキーを持って来てくれた。

 京平の目の前には、今日買って来たケーキも既に置かれてる。


「え、レモンパイとクッキーもあるの?」

「レモンパイはのばらと亜美で作りましたのよ」

「クッキーは、もさもさと1人で作ったよ」

「亜美が疲れていた理由はこれか。ありがとな」

「はい、コーヒー。少しは落ち着いてね」


 私達はデザートを食べ始めた。うん、レモンパイもクッキーも美味しく出来たぞ。

 京平のテンションもなんだか高いなあ。そうなの、その笑顔が見たかったんだ。


「レモンパイ美味しい! のばら、亜美、ありがとね」

「亜美、めちゃくちゃクッキー作ってくれてんじゃん。どれも美味しいよ」

「えへへ、喜んで貰えて良かった」

「嬉しいのですわ」


 早々とクッキーを食べ終わった京平は、私の顔を覗き込んで、呟く。


「でも亜美、もう無理すんなよ。嬉しかったけど、亜美には笑ってて欲しいから」

「疲れちゃったけど、作ってる時は楽しかったよ」

「バレンタインの時もそう言ってたぞ」

「確かに。学習能力ないなあ、私」


 喜んで欲しくて、ついつい張り切り過ぎるんだよな。

 それですら、京平は心配なんだね。


「亜美、お風呂入ろ。まだ疲れた顔してるし、早めに寝よ」

「そういう京平もね。なんなら、眠そうじゃん」

「うん、お腹いっぱいになったし眠い。早く一緒に寝たい」

「お互いお風呂で寝ないようにしなきゃね」


 獣だし、綺麗に身体を洗わないとね。

 そんな訳で、2人でお風呂に入り始める。


「俺、マジで眠いから、寝そうになったら起こせよ」

「そう言いながらも、私の背中流してくれてありがとね」


 だけどやっぱり眠いのか、段々動きが遅くなっていって、私の背中で京平の寝息が聞こえ始めた。

 ありゃりゃ、寝ちゃったか。起こすの可哀想だし、寝ている間に身体を洗ってあげよ。

 いつ見ても、綺麗な顔してるよなあ。守りたいなあ。

 よし、お互いの身体も洗えたし、お湯を掛けて。


「むにゃ。亜美、起こせって言ったのに」

「まあまあ、後は髪を洗うだけだよ」


 お湯を掛けたら、京平が起きたみたい。

 髪も洗ってあげるからね。


「今日の風呂、亜美にやらせてばかりだな」

「たまには甘えてよ。私は嬉しいよ」


 私は京平の髪を洗いながら、ヘッドマッサージもしてみる。


「いつもありがとな」

「肩も揉むね。うー、こってるなあ」

「あー。気持ち良いわ。また寝そう」


 京平、前より肩が硬くなってる。今日は診察で座りっぱなしだったから、身体に負荷が掛かったのかな?

 そうだよね、京平だってもう若くないもんね。

 お風呂上がった後も、ゆったり寝て欲しいな。

 私が京平の髪をお湯で流すと。


「亜美の髪洗うよ」

「無理しないでよ」

「大丈夫、俺が亜美にしてあげたいだけ」


 疲れてるんだし、さっさとお風呂入って寝に行けばいいのに。

 そんな京平だから、こんなに好きなんだろうな。


「亜美、髪伸びたなあ」

「うん、今伸ばしてるの」

「どんな亜美も可愛いよ」

「えへへ、ありがとね」


 可愛いの一言も、京平から言われるのが1番嬉しいな。

 京平の為に、もっと可愛くなりたいな。


「だから充分可愛いってば」

「髪の毛アレンジとかしてみたいし」

「結べるかな、俺」

「え、やってくれるの? ありがと」

「頑張って覚えるわ」


 ◇


「すー、すー」

「おやすみ、京平」


 私達は着替えて布団に潜り込んだのだけど、京平は私を抱きしめて、すぐ寝てしまった。

 かなり疲れていたのに、私を慰めてくれてありがとね。

 私、いつだって京平に助けられてるよ。


 これからも今日みたいに迷惑掛けちゃうかもだけど、ずっとずっと愛してるからね。

 ずっとずっと傍にいるからね。


「亜美……」


 どんな夢見てるんだろう。京平が幸せでありますように。

 私はそっと京平に、キスをした。

亜美「京平が気持ち良く眠れますように」

作者「好きな人の寝顔って、ときめくよね」

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