漫画喫茶にて
「ねえ、京平、次は何処行こっか?」
「腹ごなしに漫画喫茶でのんびりしよっか」
カフェを後にした私達は、近くの漫画喫茶まで足を進める。
とは言っても、辺りは真っ暗。冬は陽が落ちるのが早いよね。
「そういえば漫画喫茶にいくのも久しぶりだな」
「うん、中々休み合わなかったもんね」
家の近所の漫画喫茶だから、よく行くんだけど、最近行けてなかったもんな。
前に眠たい京平を引きずって、行ったきり。
2人で一緒にのんびり出来るのは、幸せだなあ。
17時頃に漫画喫茶に着いた私達は、いつものカップルシートを頼んで、部屋でゴロンと横になる。
「くっついて過ごそうか」
「そうだね」
そんな訳で、私達は寄り添って過ごすことにした。
2人で色んな話をしたり、時には抱きしめあったり、着飾ることなく2人で過ごしたよ。
本当は1人で寝るのが悲しいこととか、もっと上手に甘えたいこととか、京平のことをもっと知りたい、とか。
「とは言っても、亜美には大体話してるけどな?」
「でも、京平の小さい頃の話とか、全然知らないよ」
昔から聞き続けているんだけど、京平はいつも笑って誤魔化していたから。
でも、今日は答えてくれた。
「前にも話したけど、亜美に出会う前の俺は、夜になると1人きりで泣いてたよ。必死に走ったりして、やっと眠れたんだ。小さい頃も、ずっとそうだったよ」
「そっか。小さい頃から双極性障害だったんだもんね」
「投薬治療もできなかったしな」
「精神薬は基本成人してからだもんね」
私が心配そうに京平を見つめていると、京平は私の頭をポンポンして笑う。
「でも、どんな薬よりも、亜美と信次に会えたから、こうして笑っていられるよ」
「京平の力になれてるかな?」
「亜美にいつも支えられてるよ」
京平は静かに微笑む。
京平は普段、飄々(ひょうひょう) としているけど、誰よりも繊細で優しい人だから。
でもその分、傷付きやすい人でもあるから。
だから私は、そんな京平を守りたいって思ってるんだ。
「それと小さい時は、かなり感情的になりやすかったから友達も居なかったし、そういった空白も辛かったかな」
「そっか。それを埋めるように泣いていたんだね。京平のことだから、他人に対する理不尽なことにはすぐに口を出しそうだし」
「俺も若かったしな。理不尽ないじめが許せなくて。すぐ俺がいじめの標的にされたから良かったけど」
昔から京平は京平だね。人の為に動いて、それで自分が苦しむことになっても、それに対しては何も言わないところとか。
「もっと自分を大切にしてね、京平」
「昔に比べたらかなり大切にしてるよ。すぐ亜美に泣きついてるしさ、俺」
「これからも無理しないでね」
「どうかな。俺の無理で誰かを助けられるんなら、そっちを選ぶだろうし」
「もー! ダメだよ!」
「大丈夫だよ。いざとなったら、亜美に甘えるから」
頼ってくれるのは嬉しいんだけど、無理する前提、だもんなあ。
京平らしいんだけど、苦しんで欲しくないな。
京平が無理しようとしてたら、すぐに気付かなくちゃ。
そんで、すぐに止めなきゃ。本当に放っておけないな、京平は。
そんな心配をよそに京平は。
「ふわあ、腹いっぱいだから、なんか眠くなってきた。亜美、一緒に寝よ?」
「うん。起きたらまたいっぱい話そうね」
「おやすみ、亜美」
「おやすみ、京平」
私達は抱きしめあって、眠りに着いた。
京平に抱きしめられると、いつも安心して眠れるよ。
温かいなあ、幸せだなあ。
京平の寝息が心地良いよ。おやすみ。
◇
それから私達は自然と寝入ってしまった。
2人でいると安心して眠れるもんね。
おかしいなあ、デート前に沢山寝たんだけどな?
んー、良い目覚め。どれくらい寝たんだろう。
すっかり目は冴えているんだよなあ。
京平はまだ気持ちよさそうに眠っている、けど、1人で起きてるのも寂しかったから、起こすことにした。
私は、京平を揺さぶりながら。
「京平、おはよ」
「んん、おはよ。亜美」
京平は大きな欠伸をひとつして、むっくりと起き上がった。
「軽く寝るつもりだったんだけど、結構熟睡しちゃったよ」
「私も。京平と一緒だと、いつもそうなんだ」
「一昨日は眠れてなかったじゃん。次からはちゃんと甘えろよ?」
「心配させてごめんね、京平」
明らかに眠れてないのに、何で何も言わないんだろうって、不安にさせたかもしれないね。
京平も眠れてない、って、解ってた癖にね。
「いや、謝るのは俺の方だな。亜美が眠れてないの知ってたのに、俺、声すらかけなかった……ごめんな」
「いやいやいや、言わなかった私が悪いからね。そんなしょげないでよ!」
「亜美はすぐ無理するって、知ってたのにな」
あーん、明らかに私のせいなのに、京平が凹んじゃったよ。
ただ私が甘えるのが下手なのと、京平は京平で私の自主性を重んじてくれただけなはずなのに。
しょうがないなあ。私は京平にキスをした。
「あ、亜美」
「悪いのは私なんだからね」
私はマジマジと京平を見つめる。全部を自分の責任にしないでね、京平。
「これから、隠し事や遠慮は無しだからな」
「うん、頼りたい時はすぐ頼るね」
「いつでも傍にいるからな」
京平はそう言うと、優しく抱きしめてくれた。
いつだって私を守ってくれる王子様。
ずっとずっと、傍にいてね。
「てか、今何時だ?」
「20時、だね」
「思ったより寝入っちゃったな。夜ご飯どうしようか?」
「え、京平もうお腹空いたの?」
私はまだケーキがお腹にいるんだけどなあ。
育ち盛りだなあ、京平ってば。
「亜美はまだお腹いっぱいか。じゃあ、もう少し抱きしめてようかな」
嬉しいんだけど、私はだんだんと京平が欲しくなっていた。
でも、我儘だよね。気分じゃないかもしれないよね。
そもそもお腹空いてるよね、京平。
でもでも、隠し事は無しだよって、約束したばかりだよ、ね?
だったら、ちょっと甘えようかな。
「京平、私まったりしたい」
「そっか。じゃあ、場所移動しようか」
「うん」
京平、愛してるよ。世界中の誰よりも。
亜美「へへ、甘えちゃった」
京平「これからもっと甘えろよ」