亜美とのばらの誕生日会
んもう、誕生日なのにお弁当取られるってどういうことなの!
しかも、貰ったミートボールまで食べられちゃったし。
そんな星の下に生まれちゃったんだな、私。
「亜美、ごめんな。おやすみ」
「あ、そんなに気にしてないよ。おやすみ、京平」
そうだよね、京平の場合は勘違いもあったしね。
間接キッスを気にして、だなんて。
それだけ私のことを大事にしてくれてるんだもんね。
私は京平に、膝掛けを掛けた。
「愛しいよ、京平」
「僕たちが入る隙はありませんね、蓮」
「それでも……なんでもねー」
◇
「京平、そろそろ起きた方が良いよ」
「うーん、よく寝た!」
「体調は大丈夫?」
「おう、バッチリ」
京平の体調も問題ないみたいだね。
「膝掛けもありがとな」
京平が膝掛けを渡してくれた。
「京平もいつもやってくれてるからさ」
「亜美のおかげで安心して眠れたよ」
「じゃ、診察室に戻ろうか」
私達は2人並んで、更衣室を経由して診察室まで戻る。
私も頑張るぞ。成長した私を見せられるように。
「俺達も戻るか」
「今日僕達、小児科ですもんね」
「新人ペアを普通に組む看護師長もどうなんだ」
「それだけ僕達を信頼してるんですよ。期待に応えなければです」
◇
それから私達は、糖尿病の患者様を診たり、異能の患者様を診たり、忙しく駆け回っていた。
京平は凄く集中しているのが伝わってくるし、私も、なるべく京平がスムーズに診察できるよう、サポートに徹する。
簡単じゃないけど、少しずつ成長は出来てるかな?
こうして、最後の患者様をお見送りして、今日の診察サポートは終わった。
「お疲れ。そうだ明日の昼、俺、精神科の診察あるから、亜美も来いよ」
「うん。看護師長から聞いてるよ。明日は中番だから、出勤したらすぐいくね」
「いい加減普通の勤務に戻して欲しいんだけどな」
責任感のある京平だから、残業出来ないとか通常勤務じゃないことに、悔しさを覚えているんだろうなあ。
でも、私としては無理して欲しくないから難しいところ。
せめて、今の勤務のままで残業くらいはって、麻生愛先生にも相談してみようかな?
残業が出来ないことで、鬱状態にもなっちゃった訳だしね。
「じゃあ、お疲れ。亜美はこの後巡回かな?」
「うん、あとちょっと頑張るよ。お疲れ、京平」
京平は少し慌てて、更衣室に向かった。
何か用事でもあるのかな?
もしかして、プレゼントまだ買ってないのかな?
もう、おっちょこちょいなんだから。
私も巡回する為に、ナースステーションに戻らなきゃ。
今から中番の看護師さんも、休憩に入るだろうしね。
◇
「時任さん、お疲れ様。上がっていいわよ」
「有難うございます。お先に失礼致します」
今日のお仕事終了!
帰ったら、のばらにプレゼント渡そうっと。
体調、良くなってるといいけどなあ。
誕生日に体調崩すなんて、可哀想すぎるよ。
同じ誕生日を、一緒に仲良く祝えたらいいな。
私は早々と着替えて、帰路に着く。
勤務時間が元に戻ったのも、だいぶ慣れて来たよ。
京平と過ごせる時間が短くなったのは悲しいけれど、ライムだったり家で寝る時間だったりを、大切にしていきたいな。
そういえば誕生日だし、オムライスおねだりしても良かったかなあ。
いや、ダメダメ。迷惑かけちゃうもん。
京平だって疲れてるだろうし、今日はのばらの誕生日でもあるんだもん。
のばらはグラタンとビーフシチューとシーザーサラダが好きだよね。
作ってなかったら、京平と信次をこらしめなきゃ。
「ただいまー!」
「「「「おかえりなさいー!」」」」
うお、皆一斉に出て来た。のばらも元気そうで良かった。
「のばら、誕生日おめでとう!」
「亜美も誕生日おめでとうですわ」
私達は抱きしめあって、お互いにおめでとうを言い合う。
それをみた京平も駆け寄って来たよ。
「2人ともおめでとう。パーティを始めよっか」
「ほえ? パーティ?」
「こっちですわ、亜美」
のばらに引っ張られてリビングに向かうと、そこには沢山のご馳走と、誕生日おめでとうの飾り付けが、すごく綺麗にされていた。
ご飯も、オムライスがある。しかも、滅多に食べられないステーキまで。
他にもオニオンコンソメスープやポテトサラダ、ビーフシチューや、グラタン、シーザーサラダも。
ケーキも2つある。生クリームで苺たっぷりのケーキと、大きなフルーツタルト。
のばらの好きなものも、私の好きなものも、揃い踏みだね。
「プレゼントってこれだったんだね。すごい嬉しいよ」
「おめでとう、亜美。誕生日プレゼントは別にあるからね」
「え、マジで? 幸せすぎるよお! ありがとね、信次」
「亜美、おめでとう」
「ありがとね、お父さん」
私は素早く丁寧に手を洗って、食卓についた。
「皆揃ったね。じゃあ、ろうそくに火を灯すよ」
京平は二つのケーキに刺さっているろうそくに火を灯す。
のばらのは23本、私のは22本。そうだね、仲良し過ぎて忘れてたけど、のばらのがお姉さんだもんね。
「電気を消して、と」
皆がハッピーバースデーを歌ってくれた。
私も、のばらにむけてハッピーバースデーを歌ったよ。
そして私達は、ろうそくの火をふーっと消した。
「おめでとう、亜美、のばらさん」
「のばら、亜美、おめでとう!」
「2人ともおめでとう」
お父さんが電気をつけてくれた。
そういえば信次の誕生日の時もだったけど、今日も京平はビデオカメラを回してる。
もうお父さんもいるんだし、撮影は要らない気がするんだけどな。
「ん、俺が見るんだよ。休みの日、1人でのんびりみたりするぞ」
「また心を読むなあ。そうだったんだね」
「亜美の成長が嬉しいからさ」
そうだね、ここまで育ててくれてありがとね。京平。
私は京平を抱きしめた。
「亜美、ちょ、お父さんもいるから」
「だって嬉しいんだもん、ありがとね」
「2人ともイチャついてないで、ご飯にするよ?」
あ、しまった。ついつい抱きしめちゃった。
「「「「「いただきます」」」」」
「んー、ステーキ最高に美味しいよ。ソースから察するに、京平が焼いてくれたよね? すごく濃厚で、お肉との相性抜群だね。オムライスもふんわり半熟卵で」
「亜美、ゆっくり食べような?」
いけない、いつもの癖でやっちった。
今日は沢山ご飯あるから、焦りは禁物だね。
うーん、全部美味しいよお!
ビーフシチューは信次だな。肉の旨みが出ててとっても美味しいよ。
というか、食べ切れるかな? 私。
「兄貴、やっぱり作り過ぎたんじゃない?」
「2人の好きなものを全部作ったからなあ」
「のばらは余裕ですわ」
「うん、知ってる」
「おい、亜美、無理するな。サラダはどっちかにしなさい」
「だって食べたいもん!」
んー、全部美味しい。
家族にお祝いしてもらって、本当に幸せだなあ。
京平がいて、信次がいて、のばらがいて、お父さんがいて。
皆がいるから、私は幸せだよ。
「それにこのワインも美味しいね」
「亜美が生まれた年のワインなんだ」
「のばらのは、また違うワインですわ」
「のばらさんが生まれた年のワインだよ。両方とも、京平が見繕ってくれてな」
「お金はお父さんが出してくれたぞ」
22年物と23年物だと?!
それは美味しいに決まってるね。
「お父さん、京平、ありがとね」
「有難うございますわ」
本当に楽しいな。美味しいな。嬉しいな。
そして、酔ってきたなあ。
「ふにゃあ、酔ったあ」
「相変わらず亜美は弱いですわね」
「でもご飯食べたからか、いつもより酔うの遅かったな」
私はふにゃあとしながら、椅子にもたれ掛かって寝てしまった。
「しょうがないなあ。ソファに寝かせとくか」
「起きなかったら、起こさなきゃですわ」
幸せだよ。ありがとね、皆。むにゃむにゃ。
亜美「むにゃむにゃ」
京平「おめでとう、亜美」
のばら「気持ちよさそうに寝てますわ」