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天然で鈍感な男と私の話  作者: 九條リ音
お受験戦争
157/238

飛び級試験真っ最中!(信次目線)

「そこまで。回答用紙を、前に回してください」


 一限目の国語が終わった。

 予想以上に文章問題が多く出て、時間は掛かったけれど、見直しの時間も確保出来たぞ。

 10分休憩した後、次は数学だね。

 海里、大丈夫かな?

 僕の後ろの席なんだけど、やっぱり心配になるよ。


「信次、おっつー」

「お疲れ様。海里はどうだった?」

「のばらさんのおかげで、大分解けたよ」

「あの問題集、かなり要点絞ってくれてたもんね」


 そうだ、お守りの手紙まだ読んで無かったや。

 今のうちに読んでおこうかな。

 僕はおまもりの紐を緩めて、中に入ってる手紙を取り出した。


「信次まだ読んで無かったん?」

「うん、結構ギリギリになっちゃったからさ」

「俺、貰った日に家帰って読んだからさ」

「海里、こういうのは受験の日に読むもんでしょ?」


 僕は手紙を読み始める。

 のばら、字も綺麗だなあ。


『信次、今までよく頑張りましたわ。


 のばらもここまで信次をサポート出来て良かったですわ。


 信次はいつも家族の為に頑張る人だから、試験も問題なく突破出来ると思いましてよ。


 そんな中でも、家事も手を抜かずにやっていて、ますます選んだのが信次で良かったと思いましたわ。


 信次に会うまでののばらは、自分のことばかり考えてましたわ。


 明らかに亜美のことを好いていた深川先生の時間を使ってしまったり、それでも選んで欲しいって相手の気持ちも考えず、触れてしまったり。


 そんなのばらが、守りたいって、大切にしたいって思えたのは、信次が初めてでしたわ。


 大切な信次が、試験を乗り越えられますように。


 試験を一緒に受けることは叶わないけれど、心は傍にいますわ。


 信次の思うように、試験が進みますように。


 愛してますわ。のばらより』


 のばら、ありがとね。

 でも、これじゃあラブレターじゃん。

 のばらの気持ちがひしひしと伝わってくるよ。

 でも、だからこそ力を貰えたよ。

 僕、絶対負けないからね。


「僕、絶対合格する!」

「目付き変わったな。のばらさんの手紙の力か?」

「うん、気合い入ったよ」


 ◇


 無事、二限目の数学も終わった。

 こんなにスラスラ解けたの、初めてかもしれない。

 去年の飛び級試験の時は、知らない公式だらけでかなり混乱していたしね。

 大学レベルの公式も、兄貴から教わったからバッチリ解けたよ。


 因みに飛び級試験は、国語、数学、英語、理科、社会と、5教科全部が対象だ。

 暗記物が最後に来るあたり、鬼畜としか言いようがないよね。

 体力も奪われる。一気に受けるんだもん。

 その対策で、朝から夜までガッツリと勉強してきたんだけどね。


「ふいー。やっと二教科か」

「今からお昼休みで、そっからが長いけどね」


 お昼ご飯は別室で食べるように言われていたので、僕達は試験会場を出て、休憩室に向かう。


 飛び級試験は、毎年500人近くが受けにくる。

 若い人だとまだ幼稚園児では? って人もいたりするし、学力自慢はこぞってくる感じだね。

 だけど、青春が短くなるって理由で、好き好んで受ける人は未だ少ないのが現状だ。

 僕は今年高2で、充分青春も満喫出来たし、合格した後も青春は謳歌出来るから後悔ないけどね。

 本音を言えば、もっと早くから飛び級試験受けたかったけど、五十嵐病院でバイトしてなかったら、のばらを好きになることは無かったから、これも運命だったんだろうな。


「今日はねえちゃんが弁当作ってくれたんだ」

(あかり)作かあ。今まで、海里の弁当作らなかったのにね」


 (あかり)も元気にしてるかなあ。

 振ってから、気まずいし傷付いて欲しくないから会えてないけど、心配はしてる。


「ちょっと前は、信次のこともあったからかなり落ち込んでたけど、最近は仕事帰りに友達と遊びに行ったりして、笑うようになったよ。料理も、その友達の影響でやるようになってさ」

「そっか。それなら良かった」


 (あかり)(あかり)の人生を楽しめてるようで、安心したよ。


「それより、早く弁当食おうぜ。休憩時間中に単語帳見たいし」

「そうだね」

「「いただきます」」


 うわ、今日のお弁当、唐揚げと卵焼きがめちゃ入ってるや。

 なんなら、おかずはそれだけで、ごはんに海苔で「Fight!」って書いてくれてる。

 飛び級試験は体力も糖分も使うから、こういうお弁当はありがたいなあ。

 亜美なりに調べてくれたんだろうなあ。

 なにより、僕の大好物だしね。


「今日の弁当は亜美さんの?」

「そ。試験弁当って感じ。テンションあがるよ」

「ねえちゃんも、俺の好きな炒飯作ってくれたよ。それと餃子」

「お互い姉に気遣われているよね」


 亜美も元気付けてくれてありがとね。

 この後も、僕、負けないからね。


「あ、卵焼き、いろんな味にしてくれてる。だし巻きに塩に砂糖に。なんか楽しいな」

「亜美さん、手間掛けてくれたんだなあ」

「あんなに朝起きれなかったのにね。亜美、本当に頑張ってくれてるよ」


 疲れた頭を、卵焼きが優しく癒してくれた。

 僕の心も、ね。

信次「唐揚げも卵焼きも美味しいな」

海里「ねえちゃんの炒飯と餃子も美味かった!」

作者「ふたりともがんばれよー!」

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