好きな時間
「ただいまー!」
「「「「「おかえりー」」」」」
今日も疲れたなあ。
でも、なんかいい匂いがするんだよね。
これはチキンライスとバターライスとケチャップと卵が合わさったあの匂い!
「わーい、今日はオムライスだ!」
「手洗ってこいよ」
嬉しいなあ。
オムライス作ってくれるなんて、何かあったのかな?
京平のオムライス美味しいから楽しみだなあ。
そんな事を考えながら、私は手を洗う。
「信次達も席つけよ」
「お腹空いたー」
「ずっと勉強してたもんな」
「信次も海里くんも頑張りましたわ」
あ、もう皆席に着いてるや。私は駆け足で、食卓に向かう。
「おまたせ!」
「皆揃ったな」
「「「「「「いただきます」」」」」」
「うん、バターライスの香ばしさもさることながら、チキンライスの芳醇な香りも最高で。それらが卵にくるまれて、お祭り騒ぎ。ハートのケチャップも可愛いし、つまりまとめて食べると最高だよお!」
「半分ずつご飯変えてみたんだけど、もう見抜かれたか」
「どっちも美味しいよ!」
ああ幸せ。
オムライス食べると、なんか幸せって感じがより増して最高に幸せなんだよね。
しかも、愛する京平の手作りだしね。
「今日は元気そうで良かった」
「皆が家事を手伝ってくれたからだよ」
「亜美もお弁当ありがとね。しかも、皆の分まで」
「美味しかったかな?」
「美味しかったぞ。ありがとな」
京平も信次も優しく笑ってくれたから、私も嬉しかったよ。
今日がオムライスで良かったな。
幸せな時は、好きなもの食べたくなるもんね。
「亜美のお弁当、昨日初めて食べましたけど、唐揚げが特に美味しかったですわ」
「ああ、私も唐揚げは好きだったなあ。卵焼きも美味しかったぞ」
「俺っちのご飯は炒飯にしてくれてましたよね。美味かったっす!」
「皆有難う! 作った甲斐があったよおお」
うう、優しみが深いよお。
これだからやる気でるし、早起きして作っちゃうんだよね。
嬉しすぎて、涙が出て来たよ。
「泣くほどのことじゃないだろ」
「皆が美味しいって言ってくれて、嬉しくて」
本当はね、朝起きるの苦手だから、毎朝かなり眠たい中でお弁当作ってて。
私が作っても、京平や信次には勝てないだろうなって、内心しょんぼりしてたし、自信もなかったんだ。
それでも、役に立ちたくて、料理本を見たり、実際1人で休みの日に作ったりして努力したんだ。
そんな中で、皆が美味しいって言ってくれたことが、嬉しかったんだよ。
頑張っていたことが報われた気がしたんだよ。
「いつもありがとな、亜美」
京平は泣いてる私を、優しく抱きしめてくれた。
私は京平の胸でわんわん泣きじゃくる。
本当に泣き虫だなあ、私。
「亜美は頑張ってますものね」
「そうだな、娘の手作り弁当が食べられる私は幸せだよ」
◇
私はひとしきり泣いた後、オムライスを美味しく頂いた。
その後、京平と走りに行って、10キロ走れたよ。
最近安定して走れるようになってきたなあ。
でも、まだまだ京平のスピードには追いつけないのが悔しいなあ。
「亜美も長距離走れるようになってきたな」
「ほぼ毎日走ってるもん!」
「無理はすんなよ」
いつも京平は優しいなあ。
だから、私も頑張れてるんだよ。
「そうだ、来週の日曜日、久々に休み合うな」
「そうなの! 久々にデートしようね」
「亜美が行きたがってたケーキ屋さんに行こうか」
「ケーキ解禁されたし、それは素敵!」
「久々に亜美と夜景も見たいな」
2人でしたいことがいっぱいだね。
いっぱいいっぱい楽しもうね、京平。
そんな事を話しながら、2人手を繋いで帰路に着く。
私、汗だくの手なんだけど、京平気にならないかなあ。
そう思って、手を少し緩めたら、京平が力強く握り返してくる。
繋いでていいんだね。ありがとね。
私はもう一度、京平の手を握り返した。
「「ただいまー」」
「おかえりー、兄貴、亜美」
「おかえりっす!」
「おかえりなさいまし」
「おかえり、2人とも。じゃあ私は寝ようかな」
お父さん、お風呂上がりでかなり眠たそう。
私達のことを待っててくれたんだね。
ありがとね、お父さん。
「おやすみ、お父さん」
「お父さん、おやすみ」
「湯たんぽ作ってあるからね。おやすみ」
「おやすみ、亜美、京平、信次」
「おやすみなさいまし」
「おやすみっす」
「のばらさんに海里くん、おやすみ」
冷え性のお父さんは湯たんぽをもって、部屋に入っていった。
毎回信次がこまめに作ってるんだよね、湯たんぽ。
「俺達も風呂入ろっか」
「そう言えばもう信次達は入ったんだね」
皆、お風呂上がりでほかほかしてるし、パジャマに着替えていた。
「明日学校だから、先お風呂にしたんだよ」
「俺っちも信次と入ったっす!」
「ほかほかですわ」
「じゃあ、私達が最後だね」
私と京平は、お風呂に入る準備をする。
「今日も汗かいたし、さっぱりしような」
「走ると冬でも汗かくもんね」
私達は着替えを棚に置いて、一目散にお風呂に入る。
汗ベタベタで気持ち悪かったから、早く入りたかったんだよね。
京平も同じだったみたいだね。
「ほら亜美、背中流すぞ」
「ありがとね、京平」
でも、私の背中から流してくれるんだよね。
いつだって優しい京平に感謝だよ。
「そういえば、信次の誕生日もうすぐだな」
「ね、今年は何しようね?」
1月31日は信次の誕生日。
ちょうど試験の日だけど、何かお祝いしたいよね。
「前日も試験の験担ぎでカツ丼食べたいって言ってたし、ご飯何がいいかなあ?」
「あ、それはのばらとも相談しててね、のばらと私でカツ丼作ろうかなって」
「後、ケーキは亜美のレモンパイだな。信次、好きだもんな」
「誕生日だし、大きいの作るぞ!」
カツ丼2連続になるけど、信次はカツ丼好きだし、私達が作るから味も変わるし大丈夫だよね。
「お父さんも、カツ丼に合うお漬物作るって言ってたよ」
「じゃあ俺はお味噌汁とおかず作ろうかな」
「良い誕生日になるといいね」
「だな。あ、そろそろ交代しよ」
「髪も洗ってくれてありがとね」
信次の誕生日は、楽しい誕生日になるといいな。
◇
「ふいー、さっぱりした」
「運動後のお風呂はいいね」
お互い身体を拭きながら、何気ない話をする。
こういう時間も私は好きだよ。
「京平、愛してる」
「お、急にどうした?」
ふいにそう思ったから言っただけなんだけど、京平は優しく私を抱きしめてくれた。
肌と肌が触れ合って、お互いの温もりを確かめ合って。
京平、ずっと傍にいてね。
京平が傍にいれば、私は笑えるんだよ。
「私ね、京平が居ると安心出来るんだ。今日も、京平の事を思いながら頑張ったんだ」
「俺も、亜美が笑顔でいってきますって言ってくれたから、安心して眠れたよ。ありがとな」
「あの後眠れたなら良かった」
どうしてこんなに愛しいんだろう。
京平がいるだけで、どんなことも頑張れるし力をもらえるし、安心出来るんだ。
初めて出会った時には、こんなに大切な人になるなんて思いもしなかったよ。
こんなに愛しくなるなんて、思いもしなかったよ。
この場所が、1番安心出来る場所なんだ。
「亜美に出会えて良かった」
「私も、京平に会えて良かった」
「それと、今日……」
「うん、まったりしようね」
「ありがとな」
そんな申し訳なさそうな声出さないでよ。
私だって、京平と一緒にまったりしたいんだから。
私は力強く京平を抱きしめた。
「私は心から京平とまったりしたいんだよ」
「ありがとな、亜美」
私だって嫌な時は、嫌って言うよ。
多分そんな日はないと思うけど。
こんな事言うのもあれだけど、好きな時間だよ。
でも、私のことを気にしてくれてありがとね。
「って、いい加減着替えようか」
「そ、そうだね。なんか盛り上がっちゃったね」
どうせ脱ぐんだけどね。
って、何考えてんだろ、私。
最近思考が変態になって来てるよ、私。
作者「気遣ってくれる彼氏っていいよね」
亜美「それはありがたいけど、私京平とのそういう時間すきだもん」