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天然で鈍感な男と私の話  作者: 九條リ音
お受験戦争
155/238

好きな時間

「ただいまー!」

「「「「「おかえりー」」」」」


 今日も疲れたなあ。

 でも、なんかいい匂いがするんだよね。

 これはチキンライスとバターライスとケチャップと卵が合わさったあの匂い!

 

「わーい、今日はオムライスだ!」

「手洗ってこいよ」


 嬉しいなあ。

 オムライス作ってくれるなんて、何かあったのかな?

 京平のオムライス美味しいから楽しみだなあ。

 そんな事を考えながら、私は手を洗う。


「信次達も席つけよ」

「お腹空いたー」

「ずっと勉強してたもんな」

「信次も海里くんも頑張りましたわ」


 あ、もう皆席に着いてるや。私は駆け足で、食卓に向かう。


「おまたせ!」

「皆揃ったな」

「「「「「「いただきます」」」」」」

「うん、バターライスの香ばしさもさることながら、チキンライスの芳醇な香りも最高で。それらが卵にくるまれて、お祭り騒ぎ。ハートのケチャップも可愛いし、つまりまとめて食べると最高だよお!」

「半分ずつご飯変えてみたんだけど、もう見抜かれたか」

「どっちも美味しいよ!」


 ああ幸せ。

 オムライス食べると、なんか幸せって感じがより増して最高に幸せなんだよね。

 しかも、愛する京平の手作りだしね。


「今日は元気そうで良かった」

「皆が家事を手伝ってくれたからだよ」

「亜美もお弁当ありがとね。しかも、皆の分まで」

「美味しかったかな?」

「美味しかったぞ。ありがとな」


 京平も信次も優しく笑ってくれたから、私も嬉しかったよ。

 今日がオムライスで良かったな。

 幸せな時は、好きなもの食べたくなるもんね。


「亜美のお弁当、昨日初めて食べましたけど、唐揚げが特に美味しかったですわ」

「ああ、私も唐揚げは好きだったなあ。卵焼きも美味しかったぞ」

「俺っちのご飯は炒飯にしてくれてましたよね。美味かったっす!」

「皆有難う! 作った甲斐があったよおお」


 うう、優しみが深いよお。

 これだからやる気でるし、早起きして作っちゃうんだよね。

 嬉しすぎて、涙が出て来たよ。


「泣くほどのことじゃないだろ」

「皆が美味しいって言ってくれて、嬉しくて」


 本当はね、朝起きるの苦手だから、毎朝かなり眠たい中でお弁当作ってて。

 私が作っても、京平や信次には勝てないだろうなって、内心しょんぼりしてたし、自信もなかったんだ。

 それでも、役に立ちたくて、料理本を見たり、実際1人で休みの日に作ったりして努力したんだ。

 そんな中で、皆が美味しいって言ってくれたことが、嬉しかったんだよ。

 頑張っていたことが報われた気がしたんだよ。


「いつもありがとな、亜美」


 京平は泣いてる私を、優しく抱きしめてくれた。

 私は京平の胸でわんわん泣きじゃくる。

 本当に泣き虫だなあ、私。


「亜美は頑張ってますものね」

「そうだな、娘の手作り弁当が食べられる私は幸せだよ」


 ◇


 私はひとしきり泣いた後、オムライスを美味しく頂いた。

 その後、京平と走りに行って、10キロ走れたよ。

 最近安定して走れるようになってきたなあ。

 でも、まだまだ京平のスピードには追いつけないのが悔しいなあ。


「亜美も長距離走れるようになってきたな」

「ほぼ毎日走ってるもん!」

「無理はすんなよ」


 いつも京平は優しいなあ。

 だから、私も頑張れてるんだよ。


「そうだ、来週の日曜日、久々に休み合うな」

「そうなの! 久々にデートしようね」

「亜美が行きたがってたケーキ屋さんに行こうか」

「ケーキ解禁されたし、それは素敵!」

「久々に亜美と夜景も見たいな」


 2人でしたいことがいっぱいだね。

 いっぱいいっぱい楽しもうね、京平。


 そんな事を話しながら、2人手を繋いで帰路に着く。

 私、汗だくの手なんだけど、京平気にならないかなあ。

 そう思って、手を少し緩めたら、京平が力強く握り返してくる。

 繋いでていいんだね。ありがとね。

 私はもう一度、京平の手を握り返した。


「「ただいまー」」

「おかえりー、兄貴、亜美」

「おかえりっす!」

「おかえりなさいまし」

「おかえり、2人とも。じゃあ私は寝ようかな」


 お父さん、お風呂上がりでかなり眠たそう。

 私達のことを待っててくれたんだね。

 ありがとね、お父さん。


「おやすみ、お父さん」

「お父さん、おやすみ」

「湯たんぽ作ってあるからね。おやすみ」

「おやすみ、亜美、京平、信次」

「おやすみなさいまし」

「おやすみっす」

「のばらさんに海里くん、おやすみ」


 冷え性のお父さんは湯たんぽをもって、部屋に入っていった。

 毎回信次がこまめに作ってるんだよね、湯たんぽ。


「俺達も風呂入ろっか」

「そう言えばもう信次達は入ったんだね」


 皆、お風呂上がりでほかほかしてるし、パジャマに着替えていた。


「明日学校だから、先お風呂にしたんだよ」

「俺っちも信次と入ったっす!」

「ほかほかですわ」

「じゃあ、私達が最後だね」


 私と京平は、お風呂に入る準備をする。


「今日も汗かいたし、さっぱりしような」

「走ると冬でも汗かくもんね」


 私達は着替えを棚に置いて、一目散にお風呂に入る。

 汗ベタベタで気持ち悪かったから、早く入りたかったんだよね。

 京平も同じだったみたいだね。


「ほら亜美、背中流すぞ」

「ありがとね、京平」


 でも、私の背中から流してくれるんだよね。

 いつだって優しい京平に感謝だよ。


「そういえば、信次の誕生日もうすぐだな」

「ね、今年は何しようね?」


 1月31日は信次の誕生日。

 ちょうど試験の日だけど、何かお祝いしたいよね。

 

「前日も試験の験担ぎでカツ丼食べたいって言ってたし、ご飯何がいいかなあ?」

「あ、それはのばらとも相談しててね、のばらと私でカツ丼作ろうかなって」

「後、ケーキは亜美のレモンパイだな。信次、好きだもんな」

「誕生日だし、大きいの作るぞ!」


 カツ丼2連続になるけど、信次はカツ丼好きだし、私達が作るから味も変わるし大丈夫だよね。


「お父さんも、カツ丼に合うお漬物作るって言ってたよ」

「じゃあ俺はお味噌汁とおかず作ろうかな」

「良い誕生日になるといいね」

「だな。あ、そろそろ交代しよ」

「髪も洗ってくれてありがとね」


 信次の誕生日は、楽しい誕生日になるといいな。

 

 ◇


「ふいー、さっぱりした」

「運動後のお風呂はいいね」


 お互い身体を拭きながら、何気ない話をする。

 こういう時間も私は好きだよ。


「京平、愛してる」

「お、急にどうした?」


 ふいにそう思ったから言っただけなんだけど、京平は優しく私を抱きしめてくれた。

 肌と肌が触れ合って、お互いの温もりを確かめ合って。

 京平、ずっと傍にいてね。

 京平が傍にいれば、私は笑えるんだよ。


「私ね、京平が居ると安心出来るんだ。今日も、京平の事を思いながら頑張ったんだ」

「俺も、亜美が笑顔でいってきますって言ってくれたから、安心して眠れたよ。ありがとな」

「あの後眠れたなら良かった」


 どうしてこんなに愛しいんだろう。

 京平がいるだけで、どんなことも頑張れるし力をもらえるし、安心出来るんだ。

 初めて出会った時には、こんなに大切な人になるなんて思いもしなかったよ。

 こんなに愛しくなるなんて、思いもしなかったよ。

 この場所が、1番安心出来る場所なんだ。


「亜美に出会えて良かった」

「私も、京平に会えて良かった」

「それと、今日……」

「うん、まったりしようね」

「ありがとな」


 そんな申し訳なさそうな声出さないでよ。

 私だって、京平と一緒にまったりしたいんだから。

 私は力強く京平を抱きしめた。


「私は心から京平とまったりしたいんだよ」

「ありがとな、亜美」


 私だって嫌な時は、嫌って言うよ。

 多分そんな日はないと思うけど。

 こんな事言うのもあれだけど、好きな時間だよ。

 でも、私のことを気にしてくれてありがとね。


「って、いい加減着替えようか」

「そ、そうだね。なんか盛り上がっちゃったね」


 どうせ脱ぐんだけどね。

 って、何考えてんだろ、私。

 最近思考が変態になって来てるよ、私。

作者「気遣ってくれる彼氏っていいよね」

亜美「それはありがたいけど、私京平とのそういう時間すきだもん」

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