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天然で鈍感な男と私の話  作者: 九條リ音
お受験戦争
152/238

俺の太陽(京平目線)

「京平、おはよ」

「おはよ、亜美。起こしてくれてありがとな」


 今日は亜美も早番で、俺を起こしてくれた。

 亜美が早番の時は、いつもお弁当を作ってくれたり、朝の家事をしてくれたり。

 おかげで俺は、朝ゆっくり寝かせて貰ってる。

 俺自身が、人より睡眠が必要な体質なのを、家族が気遣ってくれていて、本当にありがたい。


「朝ご飯出来てるよ。今日は私が作ったよん」

「亜美、またかなり早起きしただろ」

「信次には、起きてすぐご飯食べて欲しかったからさ。もう皆で勉強してるよ」


 信次達、起きるの早いしもう勉強しているのか。受験勉強、頑張ってるな。


「その前に」

「もう、欲しがりさん」


 ご飯の前に亜美が欲しかったから、俺は躊躇(ためら)いなく亜美を抱きしめるのであった。


「おはよー」

「兄貴おはよ」

「おはよっす、お邪魔してるっす」

「おはようございますわ」


 本当だ。

 信次達はもう勉強を始めていた。

 

「あ、お父さんは?」

「おやすみだから、もう少し寝とくって」


 お父さんも仕事大変そうだったしなあ。

 疲れが溜まっててもおかしくないよな。

 ってことは、今日の朝ご飯は亜美と2人かあ。


「「いただきます」」

「お、今日はピザトーストかあ。好きだから嬉しいな」

「ちょうどピーマンもあったしね」

「亜美も成長してるよな。美味しいよ」


 朝早くからありがとな、亜美。


「沢山焼いたからおかわりもあるからね」

「あ、じゃあもう一枚食べよっと」

「ピザソースもこだわったんだよ」

「うん、いつもより美味しいよ」

「でも、京平のに比べるとコクが少ないんだよね。何入れてるの?」

「ほんのちょっとだけオイスターソース入れてるよ」

「なるほど! 次回やってみよ!」


 亜美と朝に2人で話すの久々だから、なんか楽しいな。

 最近シフトは被るようになったけど、休みは被らないからな。

 亜美、愛してるよ。

 もっともっと、亜美の事を知りたいな。

 11年一緒に暮らしてるから、大体知ってる自信はあるけどさ。

 

「亜美、今日も可愛いな」

「あ、ありがとね。急に改まって何?」

「そう思ったから、言っただけだよ」


 亜美が思ってる以上に、俺は亜美の事がすきだよ。

 いつだって可愛いって、思ってるんだからな。


 ◇


「「いってきまーす」」

「いってらっしゃーい」

「頑張ってくださいね!」

「お仕事頑張ってくださいね」


 俺達は皆に見送られながら、病院へ向かう。

 亜美と手を繋いで、病院に行くまで会話して歩く。

 

「それで蓮がお弁当2個も持ってきててね」

「よく食べるな、落合くん」

「あ、違うの。あと1個は友の分なの」

「落合くんのお母さん優しいなあ」

「友も顔色良くなってきたしね」


 手作り弁当の方が、栄養もしっかり摂れるしな。

 日比野くんも元気になってきて良かった。

 一人暮らしで、料理全然出来ないもんな。あの子。


「今日もお互い頑張ろうね」

「亜美は早起きしてるし、昼は寝とくんだぞ」

「昨日は京平と眠れたから大丈夫だよ。心配ありがとね」


 可愛い事言うじゃん。思わず俺は、亜美の頭を撫でた。


「俺も亜美と一緒なら、すぐ寝付けるしな」

「私も。安心して、すぐ寝ちゃうもん」

「亜美がすぐ眠れたなら良かった」

「京平だからだよ」


 亜美がちょっと照れて笑う。


「俺も、亜美だからだよ」

「お互いがお互いに安心してるんだね」

「お昼に話せるの、楽しみにしてるぞ」

「うん、私も」


 そんな話をしながら、俺達はそれぞれ更衣室に向かう。

 更衣室には、落合くんと日比野くんと麻生がいた。

 皆して被ってるんだなあ、今日。


「おはようございます」

「おはようございます、深川先生」

「ちっす、深川先生」

「京殿、お疲れ様じゃの」


 麻生は相変わらず輝いてるし、日比野くんも落合くんも若いなあ。

 でも、歳が近い彼らより、亜美は俺を選んでくれたんだよな。

 俺、おっさんだけど、亜美を大切にするからな。


「京殿は以前より、優しい顔つきになったのお」

「ん、そうか?」

「ああ、確かに。元々話しかけやすかったですけど、今は深川先生から話しかけてくれますし」

「確かに、前より優しくなったよな」

「明らかに亜美のおかげだと思う」


 と、言った途端、俺の顔は赤く染まる。

 確かに明らかに亜美のおかげである事は間違いないけど、それを堂々と言いやがる俺って。


「可愛いのお。京殿」

「黙れ、麻生」

「へいへい、お幸せに」

「仲良いですもんね」

「もー。早く着替えろよ」


 ダメだな、亜美を会話に出すと、冷静じゃいられねえや。

 でも、そんな俺も、俺は嫌いじゃないよ。

 今笑えているのも、俺が変われたのも、全部亜美のおかげだよ。


「でも俺、諦めてないから」


 落合くんが、何か呟いた気がした。


 ◇


「深川も麻生も、土曜だってんのに普通に出てくるよね」

「土曜は希望休多いしな。月曜診療だから、日曜日は休ませて貰ってるけど」

「じゃな、若い子達は忙しいからのお」

「あんた達の立場なら、土日休みでもいいのにね」


 看護師長の言う通り、それはお互いに院長からも打診されたんだけど、逆にしんどいんだよな。

 麻生も愛さんと勤務合うけど、手術の予定はずらせないから、土曜出勤せざる得ないらしい。

 むしろ眠れるから、遅番有りのが楽だったまであるし。


「じゃ、頼りにしてるから2人とも頑張ってね」

「有難うございます、看護師長」

「感謝じゃ!」

「あ、そうそう、来週の日曜日は、時任さん休みにしたから、デート連れてってあげてね」

「久しぶりに休みが合う! 有難うございます!」


 よっしゃ。来月にはなるけど、久々にデート出来るじゃん。

 今月は頑張ってたし、ケーキ食べ放題にでも連れてってやるかな。

 そう言えば、亜美も良い店見つけたって言ってたし、そこに行くのもありだな。

 昼に亜美と相談しよっと。

 と、回診いかなきゃ。集中。


 ◇


「うん、値も良くなってるね。この調子だよ」

「運動も頑張れば、退院できるよね?」

「インスリンポンプでの血糖コントロールも忘れずにな」

「よおおおし、頑張るぞ! 京平、ありがとね」


 最近入院した都築さん、俺は楓ちゃんって呼んでるけど、大分値も良くなってきた。

 後はインスリンポンプでの血糖コントロールが上手くいけば退院だ。

 ポンプの使い方も覚えていかないとな。

 俺は楓ちゃんにちょっと指導する。


「もうすぐ朝ご飯がくるからね。来たらその糖分と炭水化物の量に応じて、インスリンを注入するんだよ」

「あ、それは一昨日冴崎さんから教わったよ! お肉のカロリーは入れないんだよね」

「そ。血糖上がりそうだけど、急激には上がらないからね。カーボカウントっていう計算方法だよ」


 のばらさんの指導の確認も含めて聞いてみたけど、楓ちゃんはしっかり覚えてるみたい。

 良かったな、のばらさん。


「だけど、病院のご飯は糖質とか解るけど、家のご飯じゃ解らないような……」

「目安はこの前渡した成分表もあるけど、今は大体の糖質や炭水化物量が解る便利なアプリもあるから、利用してみてね。うちの病院でも出してるからさ」

「あ、本当だ! 撮影した食べ物の糖分と炭水化物の量が解るんだ。これは使わなきゃだね」


 このアプリ、俺が院長に頼み込んで、外注で作ってもらったんだよな。

 他にもあるんだけど、もっと精密に出るのがあればいいなって。

 精密さが評判を呼んで、結構使ってくださる人も多くて、俺としては嬉しい限り。


「じゃあね、楓ちゃん」

「ばいばーい、京平!」


 患者様の笑顔には、俺の方が救われるよ。

 皆、少しずつ元気になってくれよな。

 真剣に治療していくから。

 向き合っていくから。


「次は245号室の宇久森さんだな」


 ◇


「お疲れ様、京平」

「お疲れ、亜美」


 休憩室に向かうと、同じように休憩室に向かう亜美と出会した。

 朝は大丈夫って言ってた亜美だけど、やっぱり少し疲れた顔をしていて。

 これは寝かせないとなあ。


「席空いてるかなあ?」

「日向の良い席が空いてるといいな」


 じゃなきゃ、亜美が風邪ひいちゃうからな。

 一応俺の白衣の内ポケットに、カイロ仕込んであるけど。


「あ、深川先生に亜美、お疲れ様です」

「お疲れ様、亜美に深川先生」

「おつおつ、蓮に友」

「2人ともお疲れ」


 お、2人ともいい席取っといてくれてんじゃん。

 これは有難い。亜美も気持ちよく眠れるだろう。


「亜美、疲れた顔してんじゃん。寝た方がいいぞ」

「あ、やっぱり? なんか眠たかったんだよね」


 落合この野郎。先を越されたわ。

 

「弁当食べたら寝とけよ」

「うん、午後からも大変だからそうするよ」

「あ、友、いつもの弁当な」

「いつも助かります」


 ああ、これが例の弁当かあ。

 落合くんのお母さん、優しいなあ。


「「「「いただきます」」」」

「亜美、めちゃ美味しいよ。ありがとな」

「それなら良かった」

「蓮、今日のお弁当可愛いです」

「野菜型抜きしてんじゃん。お袋、いつもそんな事しないのに」

「うわあ、可愛い。蓮のお母さん頑張ったね」


 本当だ。日比野くんの弁当の野菜が、星型にくり抜かれている。

 日比野くんの写真でも見せたのかな?

 日比野くんがイケメンだから、落合くんのお母さんも頑張ったのでは?


「毎日美味しいお弁当、有難うございます」

「休み明けからも顔色悪かったもんな。栄養を摂る事は大事だぜ」

「自炊して、結局黒い残骸をいつも食べてましたからね」

「人に頼ることも覚えろよ」


 亜美が会話に入ってこないなあと思ったら、亜美はかなりうつらうつらしてる。

 やれやれ、お腹いっぱいになって、眠たくなったのかな?


「亜美、そろそろ寝た方がいいぞ」

「ちょうどお弁当も食べ終わったよ。ごちそうさま。おやすみ、皆」


 俺が声をかけると、間髪入れずに亜美は寝た。

 相当眠たかったんだな。俺は白衣を亜美に被せる。


「頑張りすぎなんだよ、いつも」


 時には沈んだっていいのに。

 俺の隣で気持ち良さそうに眠る亜美が、愛しくて仕方なかった。


「ゆっくり眠るんだよ。亜美」


 俺は、亜美をポンポンしながら呟いた。

作者「タイトルと、最後の京平の沈んだっていいのには、和角さんの太陽って曲をモチーフにしてます。和角さんはいいぞ」


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