家族団欒
「で、奈美達をどう追い払うかなんだが」
私達はお昼ご飯を食べながら、今後のことを話し合う。
信次は絶対渡さないし、邪魔者には消えて頂きたいしね。
「話を聞く限りだと、浮気相手のがまだ理性あったよな」
「だよね、あの女には理性なんてなかったし」
寧ろあの人なら、しっかり話し合えば理解はしてくれそうだ。
ただ、生い先短い人でもあるから、手段を選ばない可能性もあるけど。
理性はあっても、言ってる事は無茶苦茶だったしね。
「取り敢えず、皆で行こう。皆で解ってもらお」
「だな。コソコソするのは性に合わないし」
「さっき全然コソコソしてなかったけどね」
「お父さんはどうする? あの女に会える?」
「行くさ。信次は絶対渡さない」
お父さんもいるなら心強いね。
「のばらも行きますわ。のばらも家族ですわ」
「ありがとね、のばら」
「家族じゃないですが、責任は私にもあるので、私も行かせてください」
「えっと、貴方のお名前は?」
あ、そっか。信次は映出さんと面識が無かったんだ。
「名乗り遅れました。私は映出透と申します。あの性格悪い女に依頼された探偵です」
「時任信次です。よくも見つけてくれましたね?」
「ひー、ごめんなさい」
「ごめんなさい、冗談です」
信次も冗談が言えるようになって良かった。
「そういえば、私も急に時任家に戻って来てしまったが、寝る場所とかあるかな?」
「お父さんの部屋は今も残してあるよ。掃除もしてるから安心して」
「そうか。ありがとな」
そう、お父さんがいつ帰って来てもいいように、毎日掃除してたもんね。
最近は私を傷付けた罰で、京平が床掃除と一緒にしてたけど。
いつの間にか2か月に増えてたもんね、罰掃除。
そもそもお父さんの部屋は罰掃除の対象じゃなかったんだけどなあ。
京平がやりたいって言って、聞かなかったんだよね。
「でも、今日はお父さんと寝たいかも。僕」
「あ、私も!」
「俺も一緒に寝たいな。今日はリビングに布団敷くか」
「久しぶりだしな」
「皆で寝ましょ。のばらだけぼっちは嫌ですわ」
「家族っていいですねえ」
色々あったけど、家族が戻って本当に良かった。
まだまだ問題はあるけど、私達なら大丈夫だよね。
「あ、話し合う日付が決まったら教えてくださいね」
「そうだな、映出さんとも連絡先交換しないと」
そんなこんなで、京平と映出さんはライムの交換をした。
「お父さんまだ食べれる?」
「さっき作ってくれた炒飯でお腹いっぱいだよ」
「えー、まだ作りたかったのに」
「夜ご飯も楽しみにしているよ」
「夜はパーティだね。家族が戻ったお祝い!」
お父さんがすきなものを並べて、皆でご飯するの。絶対楽しいよ!
「昼ご飯終わったら、俺とのばらさんは病院に戻るか。鈴木先生に押し付けっぱなしは良くないし」
「問題も取り敢えずは片がつきましたしね」
「という訳で、パーティの準備は頼んだぞ、亜美、信次」
「うん、任せてね!」
今は13時半。昼休憩内には戻るんだな。ちょっと寂しいけど、仕事だからしょうがないね。
「ごちそうさま。亜美、今日も美味しかったぞ」
「ありがとね。お仕事頑張ってね」
「おう。また何かあったら連絡してな」
「のばらもごちそうさまですわ。今日も美味しいお弁当有難うございますわ、信次」
「無理しないでね」
「信次が笑ってるから、大丈夫ですわ」
そんな訳で、2人は病院に戻っていく。
「私も帰りますね。楽しかったです」
「運動も忘れずにですよ!」
「いやあ、疲れたんで寝ます。ぐー」
「ここで寝ないでください!」
映出さんも帰っていく。
「僕はいまから買い物してくるよ。お父さんもいこ!」
「折角なら空飛びたいな」
「オッケー、任せてね!」
「あ、私もいくー!」
「2人は流石に抱えられないよ」
「それもそっか。じゃあ素直に留守番してるよ」
こうして、信次とお父さんも出かけていく。
さっきまであんなに人がいたのに、1人になっちゃったなあ。
洗い物しながら、一抹の寂しさを覚えていた。
と、色々あったから、ちょっと眠いかも。
アラーム掛けて、少しだけ寝ようかな。
起きたら勉強頑張るぞ!
寂しいから、京平の枕を抱いて寝よう。
おやすみ。
◇
ーー想像を創造で超えろ!!♪
「うーん、よく寝た」
アラームに起こされた私は、早速勉強を始める。
眠ったと言っても30分くらいだったし、まだ信次達も帰って来ないしね。
今日は久しぶりに内科の勉強をしよう。
私も内科の看護師だし、1番診る可能性が高いしね。
任せてもらえる患者様も増えたし、責任持って看護していくよ。
でも、本当に良かった。お父さんがやっぱりお父さんで。
お父さんがお父さんなら、信次の事は大丈夫だと思ってたからさ。
まさか今回の件で、あの女への未練も立ち消えて、また家族で暮らせるようになるなんて。
幸せだね。家族がやっとひとつになったんだもん。
今日は呑むぞー! 明日は仕事だけど、幸せな日には呑みたいし。
「「ただいまー」」
「2人ともおかえり! 早速準備しよっか」
◇
「ただいまー」
「おかえり京平。もう準備できてるよ」
京平は徐ろに冷蔵庫を開ける。
「お、海産物揃いなパーティだな」
「お父さんのリクエストだよ」
信次達はお刺身や蟹を中心に買って来てくれたから、私達はその盛り付けをしていた。
もう盛り付けは終わったから、いまは冷蔵庫で冷やしてるよ。
今は信次が蟹を捌いてる。生で食べられる蟹を買って来てくれたよ。
ふへへ、美味しい日本酒も買って来てくれたから、沢山呑むぞ。
「今日だけはお父さんも京平も、呑んでいいよ」
「深酒しない程度に、一杯だけ呑もうかな」
「今日はお祝いだしな」
「後はのばらが来るのを待つだけだね」
「のばらもびっくりするだろうなあ」
すっごいワクワクするね。
「お、信次、蟹何匹買って来た?」
「二匹。兄貴も捌きたいでしょ」
「解ってるじゃん」
「兄貴の出刃包丁も研いどいたからね」
「ありがとな」
◇
「ただいま帰りましたわ」
「おかえり、のばら」
「うわあああ。パーティとは聞いてましたが、豪勢ですわねえ」
「我が家にしては珍しいでしょ?」
「テンション上がりますわ!」
よーし、血糖値測って、インスリン注入っと。
今日は呑むけど、ローカロリーだから打ちすぎないようにしなきゃ。
特に蟹は、低インスリンダイエットする人にもお勧めだぞ。高いけど。
「そうだよな、亜美は毎日頑張ってるもんな」
「あ、インスリン注入と血糖測定のこと? もう慣れたよ」
「亜美が健康に過ごせているのも、京平のおかげだな。亜美を育ててくれて有難う」
「寧ろ俺が、亜美に育てられてるよ。亜美は優しいから」
「2人が恋仲になったのも、必然的だったんだろうな」
そうだね。京平が居たから、病気の事も頑張れたよ。
でも私、京平を育てた覚えはないんだけどなあ?
「お待たせしましたわ」
のばらが手を洗い終わった。いよいよパーティの始まりだね。
「「「「「いただきます」」」」」
「蟹美味しいいい。プリプリとしてて、味も濃くて! しかも食べやすくしてくれてるから最高だよおお!」
「京平、しっかり呑めよ」
「ありがと、お父さん。ほら、お父さんも呑めよ!」
「ありがとな、京平」
「じゃあ、亜美にはのばらが注ぎますわ」
「ありがと! のばらも蟹食べなね」
「いっぱい食べますわ」
「じゃあ、のばらには僕が注ご!」
家族団欒だね。凄く楽しいや。これはお酒も進むね。
「本当に良かった」
「やっぱり家族は一緒にいた方が楽しいな」
「これからも素敵な思い出を築いていこう」
「うん、いっぱい遊びにいこうね」
「楽しみですわ」
もっともっと、素敵な家族になっていくね。
「取り敢えず、話ぶった斬るけど、あの女達にはいつでもいいよって言っといたよ。もう僕に、怖いものはないから。皆いるし」
「おう、皆一緒だぞ」
「信次は渡さないもんね!」
「のばらパンチを繰り出しますわ」
「邪魔者でしかないからな」
私達も仕事あるからいつでもとはいかないんだけど、これは行かざるを得ないからね。
看護師長に明日相談しなきゃ。
今ライムしたら、文章にならない気がする。
既に私はかなり酔っ払っていた。
「亜美、大丈夫か?」
「幸せだからまだ呑みたい」
「亜美、明らかにもう限界でしょ。顔真っ赤だよ?」
「お刺身とか食べなさい、亜美」
そういえば最初に蟹食べてから、呑んでばかりだったなあ。
楽しいとお酒が進んじゃうんだよね。
「はい、お酒はしばらくお預けですわ。蟹たべましょ。あーん」
「はむはむ。美味しい」
「ほら、水も飲めよ」
「京平、ありがとね」
ぐびぐび。水が私の身体に巡りわたっていく。
確かに今の私は普通じゃないね。身体中が熱ってる。
「亜美、いつも真っ先に酔うんだよな」
「むにゃむにゃ。すー。すー」
「しかもすぐ寝ちゃうのですわ」
「よっこらしょ。ソファに寝かせとくよ」
幸せだよ。皆、愛してるよ。すー。すー。
亜美「家族がひとつになれてよかった。すー、すー」
京平「良かった。亜美低血糖になってなくて」
のばら「日本酒かなり呑んでましたものね」