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天然で鈍感な男と私の話  作者: 九條リ音
変化する日常
140/238

優しい温もり

 それからはお父さんと電話したり、京平と一緒に寝たりして、朝……いや、昼を迎えた。

 アラームが11時に鳴り響いて、私は目を覚ます。

 京平、本当に寝かせてくれたんだなあ。

 疲れてるだろうに申し訳ないな。

 京平、いつの間に起きたんだろ? アラーム聞こえなかったぞ?


 私が起きると、食卓には朝ご飯が置かれていた。ついでに信次の入院セットも。

 そっか、信次、退院してすぐに学校に行ったんだね。偉すぎる。

 お弁当も冷蔵庫に入ってる。京平の手作り弁当、久しぶりだから嬉しいな。

 というか、お弁当なり信次なりで、家は騒がしかったはずなのに、一切気付かなかった私って!

 すっかり熟睡していたんだなあ。

 そんな感じで、久々の中番の朝? 昼を迎えた。


 ◇


「あ、亜美おはよ」

「朱音、おはよ」

「久々の中番だね。辛かったらフォローするからね」

「しっかり寝てきたし頑張るよ!」


 今日は京平とのばらと友が早番で、私と朱音が中番。蓮と麻生先生は遅番だね。

 

「さ、巡回いくよ!」

「いってきまーす!」


 うん、寝かせて貰えたおかげで、身体は問題なく動いてる。

 患者様がご飯をしっかり食べてるか確認して、と。

 最近のご飯が美味しくなったのもあって、完食率が増えてきて嬉しいな。

 口から食べる事って、凄く大事な事だからね。


映出(うつしで)さん、ご飯食べられましたか?」

「ああ、問題ないよ」


 そう言う映出(うつしで)さんは、綺麗に完食をされていた。

 映出(うつしで)さん、食が細い人だったのに最近はよく食べてくれるようになったなあ。


「じゃあ食後の運動に行きます」

「いってらっしゃーい!」


 運動も欠かさずしてくれてる。これは退院も見えてきたんじゃないかな?

 この後の血糖測定が楽しみだね。


 次は大池さん。実は明後日に退院が決まった。

 京平から聞いた時は嬉しかったなあ。頑張ってたもんね。


「大池さん、ご飯食べられましたか?」

「ああ、亜美ちゃん。今日も完食だよ」

「良かったあ。それと、退院が決まったそうですね。おめでとうございます」

「ありがとう。亜美ちゃんと深川先生のおかげだよ」

「これからもお互い、治療頑張りましょうね!」

「うん。さてと、病院内をウォーキングしてくるよ」

「いってらっしゃーい!」


 因みに糖尿病患者様は、その階にあるナースステーションにある外出表に名前を書いて、外にいくなり病院を回るなりしてもらっている。

 これで、糖尿病患者様が食後の運動をされてるかどうかを確認する。

 おおよそだけど、1時間程度で戻られるから、その後私達看護師が、血糖測定をしているよん。

 これも中番の担当なのだ。


「よしよし、みんな運動に出かけたね」


 糖尿病患者様は皆運動に出かけたので、通常の内科患者様の巡回に向かう。

 皆様、元気になるといいな。そんな皆様に、適切な看護が出来たらいいな。


 ◇


「時任さん、そろそろ休憩行っといで。2時間ね」

「ありがとうございます、行ってきます」


 17時。遅番の看護師さんもやってきたので、私は看護師長から休憩に出してもらえた。

 京平も仕事終わった頃合いだね。お疲れ様だよ。

 休憩室に入ると、意外な顔がそこにあった。


「よ、亜美。お疲れ様」

「京平! もう仕事終わったよね?」

「そ。だから会いに来たよ」


 京平、仕事で疲れてるはずなのに、会いに来てくれたんだ。優しいな。

 

「お弁当もありがとね。久々の京平のお弁当楽しみ」

「あはは、腕によりをかけたからな」


 私は血糖測定をして、インスリンを注入すると、一目散にお弁当に向かう。


「それじゃ、早速いただきます!」


 お弁当箱を開けると、私の大好きなものばかり入ってて気持ちがあがるね。


「うん、京平のオムライス美味しい! 卵がとろけるのがまたいいなあ。唐揚げもジューシーだし、コールスローもさっぱりしてて良いね!」

「だから亜美、一気に食べ過ぎだぞ。でも、ありがとな。その顔が見たかったんだ」


 京平は笑って、私を撫でてくれた。

 今日の疲れも吹き飛ぶくらい嬉しいや。


「今日は寝かせてくれてありがとね」

「中番だし、当たり前だろ。この後も頑張ってな」

「うん、頑張る!」

「元気そうで良かった」


 京平はそう言うと、机に突っ伏して寝始めた。

 もー、疲れてるんなら帰ればいいのに。

 でも、会いに来てくれてありがとね。

 私は膝掛けを京平に掛ける。お疲れ様だよ、京平。


「亜美ー、お疲れ! ありゃ、深川先生寝ちゃったんだね」

「うん、疲れてるのに会いに来てくれたんだ」

「優しいね、深川先生」


 朱音がにっこり笑って呟く。そうなの、いつだって京平は優しいの。


「でも、無理しないで欲しいんだけどな」


 でも、私の隣で気持ち良さそうに眠る京平は、やっぱり愛しくて。

 私は京平をポンポンしながら、そう思ったんだ。


「亜美も深川先生も、想いあっているよね」

「うん。お互いを大切にしたいって話したりするよ」

「なんかいいな。そういうの」


 とは言っても、私も京平だからそう思えるんだけどね。

 京平以外にそこまで思えない気がするもん。


「今日会えて嬉しかったよ。ありがとね、京平」


 ◇


「んー、いつの間にか寝てたわ。おはよ」

「あ、ちょうど起きたね。おはよ」

「深川先生、お疲れ様です」

「すまんな。寝ちまって」

「寧ろ疲れてるのに、会いに来てくれてありがとね」

「俺も会いたかったからさ」


 この後も京平のおかげで頑張れるよ。

 だから、家に帰ったら、ゆっくり休んでね。


「じゃあ、私達仕事に戻るね。京平も帰ったらゆっくり休んでね」

「ありがとな、今日は早めに寝るよ」

「それなら良かった。じゃあ、また明日研修でね」

「おう」


 京平、悲しい顔しないでよ。

 私だって、本当は側に居たくて仕方ないんだから。

 

 ナースステーションに戻ると、緊急外来からヘルプが入り、私と朱音は緊急外来へ。

 通常診察が終わったばかりの緊急外来って、結構混み合うからなあ。

 既に緊急外来に入ってた看護師長から、指示を受けた。


「ああ、佐藤さんに時任さん、ありがとね。私は麻生に着くから、2人は落合くんを宜しくね」

「かしこまりました。今日、めちゃくちゃ患者様いらっしゃいますね」

「インフル、風邪、コロナのトリプルパンチね。検査の手伝いが主になると思うわ」


 なるほど、だから京平も疲れ切っていたのか。

 おそらくだけど、自分の患者様を診た後、内科のヘルプに入ったのだろう。

 それなのに会いに来てくれたんだなあ。


「さ、回すわよ」

「「はい!」」


 ◇


「回、し終わったああ」

「もー、自分がまだまだすぎて腹立つ!」

「お疲れ。協力助かったぜ」

「ちょ、冷た!」


 床に座ってる私達に、蓮が缶コーヒーを持ってきてくれた。


「ぷはー、生き返る。ありがとね」


 疲れた時のアイスコーヒーは格別だよね。


「呼吸落ち着いたら帰れよ。もう22時回ってるし」

「あ、本当だ。蓮、コーヒーありがとね」


 朱音はコーヒーを持って、診察室を後にした。


「亜美も、久々の中番なのにありがとな」

「当たり前の事だから気にしないで」

「亜美がいるとやっぱり違うな。亜美もりっぱな戦力だぜ」

「蓮も頑張ってたからだよ。じゃ、私もそろそろ帰るね」

「おう、おつかれさん」


 自分だって疲れてるだろうに、労ってくれる蓮も優しいね。

 あー、お腹減った。夜ご飯何かなあ?

 私は着替えて、家に向かう。寝る時は京平を抱きしめるんだ。楽しみ。


 でも、1人の帰り道は寂しいな。いつも隣にいる、京平が居ないから。

 おかしいな、こんなの初めてじゃないのにな。

 京平が足りてないんだ。寝る時めちゃくちゃに抱きしめなきゃ。充電大事!


「ただいまー」

「亜美、おかえりー。ご飯温めてあるからね」

「ありがとね、信次」


 京平はもう寝てるみたいだね。良かった。


「無事退院出来て良かったね」

「中々異能がしまえなかったけど、兄貴のおかげで回復したよ」

「もう無茶はしないでね」

「なるべくしないけど、でも僕、家族のが大事だからさ」


 そう言われると何も言えなくなるじゃんか。

 今回も信次のおかげで京平は助かったようなもんだし。

 私は手を洗って、血糖測定とインスリン注入をしてご飯を食べ始める。


「いただきます」


 今日のご飯はとろろ月見うどん。

 ふむふむ、この出汁は京平が取った出汁だね。

 あんなに疲れてたのに、ご飯作ったんだ、京平。


「うどんに合う出汁もさることながら、とろろと月見たまごの相性も抜群だね! 温まるやあ」

「兄貴、相当眠そうだったのに、夜ご飯作ってくれたもんね。ご飯食べてすぐ寝てたけど」

「うん、休憩室でも寝てたもん。それなのに、ありがたいよね」


 やっぱり相当眠たかったんだね。

 朝も早かったし、勤務も大変だっただろうし。


「明日は僕も家事するし、多少楽になればいいんだけどね」

「やっぱり私も起きた方がいいかなあ?」

「だめ、無理しないで!」

「それはダメなんだ」

「当たり前でしょ!」


 明日も中番だけど、起きようと思ったら起きれるんだけどなあ。

 2人とも私を気遣ってくれてるね。


「じゃあ、僕はもう寝るね。お風呂は温めてあるからね」

「ありがと。おやすみ信次」

「おやすみ、亜美」


 さーて、いよいよ寂しくなってきたぞ。

 私は1人でごちそうさまをして、食器を洗う。

 これが慣れたら当たり前になるんだよね。

 ただ、そうなるまでに時間が掛かりそうな気がするよ。

 それだけ、ずっと一緒に居たから。

 でも、慣れなくちゃだね。

 ダメだなあ、ちょっと泣いちゃった。お風呂入らなきゃ。

 お気に入りの入浴剤でも入れようかな?


  ◇


 お気に入りの入浴剤も、寂しさを拭う役目は果たさなかったけど、良い香りを楽しめたから良しとして、と。

 この寂しさを、京平を抱きしめる事で帳消しにしなきゃ。

 抱きしめられてる京平は何も感じないのは寂しいけど、今は京平の温もりが欲しいんだ。


「おやすみ、京平」


 と、私が京平をギュッとすると。


「やっときた。おかえり、亜美」


 京平がもっと強く、抱きしめてくれた。


「京平、起きてたの?」

「早めに寝過ぎて、目が覚めちゃった。睡眠薬も飲んだんだけどな」

「早く寝なさいって言いたいのに、どうしよう。嬉しいよ」

「俺もまた会えて嬉しいよ」


 お互い寂しがりだね。お互いに会いたくて仕方ないんだね。


「でも、亜美と一緒だと、俺、すぐ寝ちゃうや」

「えへ、私もだよ。一緒に寝ようね」

「おやすみ、亜美」

「おやすみ、京平」


 安心できる場所がある私達は、そのまま眠りに着いた。

 優しい温もりに敵うものなんて、ありはしない。

 そう答えるかのように。

作者「ライブ終わったぜ!寝るぜ!」

信次「みんなおやすみモードだね。おやすみ」

作者「因みに、蓮には明らかに風邪とかの患者様しか回してません。まだ8ヶ月だしね。解らない患者様は、すぐ麻生先生に聞いてます。それ以外の重篤な患者様は、全て麻生先生が診ています」

風太郎「京殿が中番、遅番が出来ぬ今は、ほぼ我は緊急外来じゃぞ」

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