表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天然で鈍感な男と私の話  作者: 九條リ音
変化する日常
139/238

ペチ、ペチ、ペチ

「ただいまですわ」


 むにゃむにゃ、のばらの声が聞こえるや。

 って、私、いつの間に寝ちゃったんだろう。

 そうだ、京平の顔を見たら安心して、それで寝ちゃったんだ。

 しかも私、京平を抱きしめてるし。はしたないな、私!


「あら、やっぱり寝てましたのね。寂しいから起きて下さいまし!」

「おはよ、のばら。ほら、京平もそろそろ起きよ?」


 私は京平を揺さぶって起こそうとする。けど。


「むにゃむにゃ、あと5分いいよね?」


 何をもって後5分なんだ! そう言えば、アラーム鳴ってても起きなかったもんな。もっと強めに起こさなきゃかな?

 と、思っていたら。


「深川先生、起きるのですわ!」


 のばらが薔薇を鞭のように使って、京平をペシペシする。ペシ、ペシ、ペシ!


「ちょ、のばら。京平が可哀想だよ」

「ご飯食べれられない方が可哀想ですわ!」


 と、ペシペシすること5分。


「むにゃ、痛いなあ。今何時……やべ、寝過ごした!!! 」

「おはよ、京平。もうご飯できてるよ」

「お寝坊さんですわ、深川先生」

「ごめん、めちゃ寝てたわ。ありがとな、亜美、のばらさん」


 京平は大きな欠伸をしながら目覚めた。起き抜けの京平も愛しいな。


「ごはんたべよ」

「お腹空きましたわあ」

「待たせちゃってごめんな」


 そんな訳で無事3人揃ってご飯にする。

 血糖値を測って、インスリンを注入して、と。


「「「いただきます」」」


 今日のご飯は天茶。起き抜けの京平にも、優しいご飯だよん。


「美味しそうですわ。実はのばらも亜美のライムで起きたとこなんですの」

「そっか。信次と話しながら寝ちゃった感じ?」

「鋭いですわ。そうなんですの」

「信次と話してると落ち着くもんな」


 ああ、それは解るなあ。信次の口調は優しいから、なんかまったりするんだよね。

 のばらも信次のそんなとこを、すきになってくれて嬉しいな。


「亜美、天ぷらも上手になったな。サクサクして美味いぞ」

「本当、美味しいのですわ」

「ありがとね、2人とも」


 料理の腕も少しずつ上達してるようで良かった。

 2人の笑顔を見れて、私もとっても嬉しいよ。


「あ、そうですわ。あの後、信次の異能も無事しまえるようになりまして、明日退院が決まりましたわ」

「ああ、院長から連絡貰ってるよ。後は信次自身がどこまでコントロール出来るか、だな」

「異能を維持するのも大変だね」

「楽ではないな。でも、それも含めて自分だって人がいる限り、俺はサポートしていくよ」


 異能の維持を選択出来る医師は、京平を含めても数少ないもんね。

 需要が少なくても、患者様1人1人の為に京平は異能を維持する治療を続けてる。

 それだけじゃなくて、寄り添った治療をしてくれるから安心出来るって患者様も言ってたな。

 1型糖尿病の治療も、京平が主治医だから頑張れてるよ。


「これからも、京平らしく治療していってね」

「おう!」


 京平らしい治療が、もっとスタンダードになればいいな。きっと救われる人は、沢山いるよ。

 京平は、とても温かい人だから。

 私も、そんな看護が患者様に出来てたらいいな。


「のばらも亜美も、深川先生が主治医で良かったですわね」

「うん、いつもありがとね。京平」

「改めて言われると照れるな。どういたしまして」


 これからも一緒に頑張ろうね。京平。


「ごちそうさま」

「私もごちそうさま」

「のばらはご飯おかわりしますわ」

「じゃあ、先にお風呂入ってるよ」


 そうそうお風呂お風呂、あ、しまった。


「ごめん、まだ湯張してないや」

「じゃあ湯張終わるまで勉強してよっか。亜美、ボタン押して来て」

「りょっかい!」


 まだまだボタン押すの、わくわくするんだよね。

 私は湯張のボタンを押して、部屋へ勉強用具を取りに行く。

 京平と勉強出来るのは嬉しいな。


「さ、今日は何をやる?」

「ペインクリニック関係をやろうかな」

「内科で出来る事は痛み止めの処方くらいだけど、覚えといて損はないしな」


 私は生理が重くて、今ピルも飲んでるんだけど、痛み止めの限界、副作用を知らなくて、飲みすぎちゃうからね。

 ちゃんと勉強しとかなきゃ。


「はい、これ。俺はもう暗記したから亜美使っていいよ」


 京平は医学書を私に渡してくれた。


「ペインクリニックの医学書もあったんだ! ありがとね」

「副作用結構怖いからな。覚えとけよ」


 うわ、本当だ。カロナールの副作用なんて、しれっと腹痛が副作用にあるし。

 副作用でちゃったら、永遠に腹痛じゃん。

 とはいえ、身体の相性もあるから難しいよね。

 そんなカロナールだけど、副作用が少ない安全なお薬って言われてるし。

 どんな薬が良いかも、過去にどんな薬剤で副作用が出たかも問診で確認要だね。思い込みはダメだぞ。


「そう言えば亜美、ピルの副作用は大丈夫そうか?」

「うん、目立った副作用は無さげ。後は生理が落ち着くか、だね」

「のばらも大丈夫ですわ。と、ごちそうさま」


 のばらも副作用出てないなら良かった。これで私達の生理の痛みが減らせるといいね。


「それなら良かった。何かあればすぐ相談するんだぞ」

「「はーい!」」


 薬の副作用ほど怖い物はないからね。

 そんな話をしているうちに。


『お風呂が沸きました』

「あ、お風呂沸いたね!」

「じゃあ、風呂いこっか」


 運動した後だから気持ち良いだろうなあ。

 何より、京平と一緒だしね。

 明日からお風呂も一緒に入れなくなるだろうし、しっかり楽しまなきゃ!


 ◇


「亜美、明日は俺が弁当作るから、寝てていいぞ」

「大丈夫だよ。京平もやってくれてたじゃん」

「楽じゃなかったから言ってるんだよ。早番の時にまた作ってくれよな」


 ぶー。でも確かに、楽ではないんだよなあ。

 明日は信次も居ないから尚更だよね。

 

「解った。心配してくれてありがとね」

「これから亜美も忙しくなるしな。後、火曜は研修だぞ」

「え、そうなの?」

「亜美と日比野くんと佐藤さんに、糖尿病療養指導士の研修するの。しっかり勉強しとけよ」


 糖尿病療養指導士になる為の勉強会だね。のばらはもう、療養指導を患者様にしてるし、まずはそこを目指して、だね。

 どちらにしても、まだ始めたばかりだからすぐには試験出来ないけど、頑張らなくちゃ。


「3年後には皆合格出来るといいな」

「うん、頑張るぞ!」

「この勉強をする事で、亜美の糖尿病への理解もより深まるだろうしな」


 確かに。私の病気の事だもんね。より病気を理解して、治療に励めるよ。

 私達は身体と頭を洗いながら、また話し始める。


「亜美とお風呂一緒に入れる日も、そんな無いよなあ。これから」

「すれ違っちゃうもんね」

「勤務が合う日は、2人で楽しも」

「うん、約束だよ」


 ずっと京平と一緒に居たから、かなり寂しいんだけど、私の看護師としての力を必要としてくれてるんだから、頑張らなくちゃ。

 だけど、一緒の時は充電させてね。


「あー、何で短時間なんだ。充分元気なのにな、俺」

「また無理するからでしょ」

「う、それはやりかねんな。俺なら」

「今は無理せず休む時だよ」


 また鬱症状が出てしまうと、京平が苦しい気持ちになってしまう。そんなのやだもん。

 京平には、世界一幸せになって欲しいんだもん。

 でも、どうしても辛い時は甘えて欲しいな。


「俺も、双極性障害の治療、頑張らなきゃ」

「頑張るんじゃないよ、流れに身を任せたらいいんだよ。また無理しようとする!」

「辛い時は休む、嬉しい時は笑う、悲しい時は泣く、だな。弱音は亜美にじゃないと吐けないや」

「なるべくライムも返すようにするからね」

「どうだか。亜美、ライム全然返さねえからな」


 ぐさ。確かに普段全然返せてないけどさ! 

 すれ違いが多くなったら、ライムだって利用するよ私だって!


「ちゃんと返すよ。京平の言葉だもん。過ごせる時間は少なくなるけど、側に居るから」

「ありがと。素直に甘えさせてもらうな。亜美の休憩時間には電話架けよ」

「あ、それは嬉しいかも」


 私達らしく、これからもお互いを大切に出来たら良いね。

亜美「ライムをちゃんと返す、よし頑張る!」

京平「俺、亜美に甘えてばかりだな」

亜美「京平だからいいんだよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ