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天然で鈍感な男と私の話  作者: 九條リ音
変化する日常
131/238

麻生愛先生の判断

 時はまた過ぎ去って、1/9の昼休み。

 今日は京平の担当になって、テンション高い私も居たりして。

 13時から、麻生愛先生の診察もあるから、早めにご飯食べなくちゃね。


「「「「いただきます」」」」

「うん、だし巻き卵も出汁が効いてるし、金平(きんぴら)も味付けが好みだな。つくねだんごを添えてくるとこも天才的だな、亜美」

「深川先生が亜美みたいなこと言ってますわ」

「ふふ、ありがとね。京平」


 京平がこんなにお弁当褒めてくれた事ってないから、凄く嬉しいな。

 まあ、それだけ急いで食べてるって事なんだけどね。

 私も京平に付き添うよう言われてるから、早めに食べなきゃ。


「亜美の料理の腕も上がってますね。僕も練習しようかなあ」

「一人暮らしなら、出来たほうが良いもんな」

「あ、のばらもやりたいですわ!」

「「だめ!!!」」

「亜美と深川先生意地悪ですわ!」


 のばらは料理が友以上にダメなタイプで、まずレシピ通りに作らないからなあ。

 それであんな物やこんな物とか入れちゃいかねないし。

 私達が見張ってないと、これからも何も出来ないだろうなあ……。

 のばらは笑顔で食べてくれれば充分だよ。


「のばらも信次の為に、何か作りたいんですの」

「信次にかあ。たまには皆で信次のやつに作るのもいいかもな」

「前は京平にだったしね」

「そうですの、受験勉強頑張ってますし」


 そうだよね、好きな人の為に何か作りたいとかはあるよね。

 今度は私と京平がサポート出来たらいいよね。

 でも、何を作ればいいのかな?


「信次は何が好きなんでしょうか?」

「のばら」

「何が、ですわ。信次がのばらを好きなのは当然ですわ!」


 自信もってそう言える位愛されてるんだね。本当に幸せそう。いいねいいね。


「そうだねえ、カツ丼と金平牛蒡(きんぴらごぼう)と、お菓子だとレモンパイかなあ?」

「じゃあ、全部作るのですわ!」

「ちょ、せめて一個にしよ」


 付き添う方が全部はしんどいのじゃよ。


「それなら何がいいかしら?」

「カツ丼なら皆好きだし、いいんじゃないかな?」

「じゃ、今度の休みに一緒に作りましょ!」

「うん、私もシフォンケーキ焼きたかったし、その間ならいいよ」

「亜美のシフォンケーキ、大分のびのびになってたもんな。色々ありすぎて」


 そうなんだよね。まったりしすぎちゃったり、生理になったり、色々あったからね。


「休み変わるかもだから、休み合うとこが解ったら計画立てような」

「この後精神科ですものね」

「まあ、時間変更くらいだろうけど」

「どうなるかは解りませんものね」

「このままって訳にはいかないよね、やっぱり」


 私的には、このまま京平が安定して過ごせるように、このままの勤務でいて欲しいんだけどな。

 勤務が元に戻ったら、また無理をしてしまう気がして。

 優しい人だから。


「ごちそうさま」

「私もごちそうさま。そろそろ行こっか」

「だな」


 今回の診察は精神科で行うらしいので、私達は精神科に向かう。

 時間を作ってくれた麻生愛先生にも感謝だね。

 今度は前みたいに、休憩時間をオーバーしてもいないしね。

 いやあ、風邪をひいた京平を膝枕してる姿を見られた時は、正直恥ずかしかったけど。


 私達が精神科に到着すると、麻生愛先生が出迎えてくれた。


「あ、来たわね。そのまま診察室入ってね」

「休憩時間中にわざわざ済みません」


 私達が診察室に入るなり、京平がすぐにアピールを始めた。


「今の勤務体で鬱症状も出てないし、時間だけでも元に戻して欲しいんだけど」

「それは院長にも相談したけど、まだダメよ。もう少し休まなきゃ」

「患者様としっかり話がしたくて」

「患者様は深川くんの体調を心配してるよ。無理したら、余計に迷惑かけちゃうわ」


 麻生愛先生としては、京平の事をもう少し様子見したいみたいだね。

 確かに患者様皆、京平の体調を第一に、って仰っていたし、私もそうであって欲しい。


「なんだけど、実は看護師長から相談があって、時任さんだけでも元の勤務に戻せないかって言われててね」

「つまり、京平1人で今の勤務に耐えられるかを見たい、って事ですか?」

「察しがいいわね。時任さんに甘えてなんとかなってる、じゃ、意味ないしね」


 確かに私がずっと早番かつ早上がりをしてるが為に、友やのばらの中番、遅番は増えているし、看護師全体で仕事量は増えてしまっている。

 最近では別の意味で私のせいなんだけど、友も体調を崩してしまったりしているしね。


「付き合ってるから一緒に居たいだろうけど、看護師が足りない状態だからごめんなさいね」

「解りました。で、私のシフトはどうなりますか?」

「ああ、看護師長から預かってるわ」


 私は麻生愛先生からシフト表を受け取ると、休みが合うとこはおろか、シフトが合う所もほとんどなかった。

 でも、それをしなきゃいけないほど、看護師は足りていないのだろう。

 正直、京平と一緒、に慣れてしまったから寂しくはあるけど、これが現実だよね。


「他、何か体調の変化とか、話したい事はあるかしら?」

「亜美と勤務がズレるなら、睡眠薬欲しいかも。その、恥ずかしい話なんだけど、亜美が居ないと眠れなくて」

「解ったわ。久々にデエビゴとベルソムラを出すわね。眠れそうな日は使わないでよ?」

「なるべく飲まないで済むようにするよ」


 京平、本当は寝付き良くないって言ってたもんね。京平がぐっすり眠れますように。


「じゃ時任さん、月曜日から宜しくね」

「解りました。見れる範囲で京平の事も見ます」

「ありがとね。深川くん、すぐ無理するからね」


 つまり、明日明後日の休み以降は、バラバラのシフトかあ。

 

「これで診察は終わり。何かあったらすぐに相談してね」

「愛さん、ありがとな」

「ありがとうございました」


 こうして、15分くらいで診察は終わった。


「はあ……」

「京平、いくら時間が変わらなかったからって、そんなにショック受けなくても」

「いや、それより亜美と過ごせる時間が減るのが、思いの外辛くて」

「寧ろそれが普通だから仕方ないよ。勤務が合う時、休みが合う時を大事にしようね」


 医療従事者は中々シフトが合わないってのが、そもそもあるからね。

 私達は一緒に暮らしてるから、まだ恵まれてるよ。


「浮気すんなよ?」

「する訳ないから安心して」


 あちゃあ。凄い弱気になってんなあ。

 こんなんで、京平は大丈夫なのかな?

 京平の気持ちは心配になるけど、私が居なくちゃ気持ちが保てない、じゃダメだもんね。

 私は私、京平は京平。これは付き合ってても変わらないのだから。

 一抹の不安を残したままだけど、私達は休憩室に戻る。


「ただいまー」

「ただいま……」

「おかえり。診察早く終わりましたのね。って、深川先生、落ち込みすぎじゃなくて?」

「亜美の勤務が元に戻るからさ」


 京平が大きなため息を吐くと、のばらがそんな京平を諭す。


「亜美は1.5人分、今まで働いてましたわ。そんな亜美が時短になってたのは、正直しんどかったのですわ」

「ですね。僕達も中番遅番ばかりは、きついですもんね」

「私、それだけ貢献出来てたんだね」

「当たり前ですわ」


 京平には申し訳ないけど、仕事で必要とされてるのは正直嬉しいな。

 まだ1年目の看護師が力になれる部分は少ないはずなのに、だもん。


「そうだよな、亜美は必要とされてるんだもんな」


 少し落ち込みながら、京平が呟く。

 でも、そんな京平をのばらが慰める。


「深川先生も、ですわ。深川先生が早番になった事で、病気が早く判明した患者様も沢山いらっしゃいますわ」

「確かに深川先生が中番とかやってた時は、週一の診療体制にせざるを得なかったから、糖尿病の治療が遅くなるケースもありましたもんね」

「そっか、今のままでも力になれてるんだ、俺」

「ですわ」


 そうだよ、今のままでも充分京平は頑張ってるよ。

 寧ろ年齢や役職を考えたら、もう早番一本でもいい位だし。

 

「お互い頑張ろうね、京平」

「だな、しょげてる暇はないよな」

「その意気ですわ!」


 京平が無理をしなきゃな勤務体系じゃなくて良かった。

 少しずつ、治療していかなきゃだもんね。

 そりゃ本音を言えば、甘えたい時に甘えられないのは辛いけど、さ。


「亜美も久々のフル勤務かつ中番、遅番になるし、頑張り過ぎんなよ」

「大丈夫だよ、京平と付き合ってるもん。笑顔で乗り切れるよ」

「必要としてくれてありがと」

「当たり前でしょ」


 私は私、京平は京平だけど、大事なのは、必要なのは確かなんだからね。


「ああん、カツ丼作る日を決めたかったのに、もう休憩時間終わりますわ!」

「それ、僕も参加していいですか? 覚えたいです」

「じゃあ、帰ったらグループライム作っとくわ」

「美味しいのが作れたらいいね!」


 楽しいお料理会になりそうだね。皆の休みを考慮すると、日曜日でほぼ確定な感じだね。

 そんな話をしながら、私達は持ち場に戻っていった。


「亜美とも一緒になる事は少なくなるかな」

「元々多い訳じゃなかったしね」

「昼からもサポート宜しくな」

「うん、任せてね!」


 ◇


「よし、グループライム完成。日曜日で良いか聞いてみるな」

「ありがとね、京平」


 仕事終わり、京平がグループライムを作ってくれた。

 美味しいカツ丼が出来たらいいね。

 

「なあ、亜美」

「なあに? 京平」

「土曜日はデートしよっか。暫く出来なくなるし」

「うん、沢山楽しもうね」


 久々のデート、何処に行こうかな?

 たまには私がリードしなきゃ。

 でも、一言いわせてね。


「京平、明日はしっかり寝るんだよ。無理に早起きしなくていいからね」

「ありがとな。最近は亜美のお陰で眠れてるし、大丈夫だぞ」

「15時から、のんびり何処かに出かけようね」

「気を遣わせちまって悪いな。一緒にいれるのが嬉しいよ」


 いつも京平は頑張ってるから、気持ちよく寝て欲しい。いつもみたいに眠るんだよ。

 またゆっくり公園を歩くのもいいし、夜景も一緒に見たいなあ。

 でも、京平とならどこでもいいよ。愛してるから。


「楽しみにしてるね」

「おう、任せとけ」

「変に頑張らなくていいからね」


 なんだかんだで京平に任せちゃうなあ、私ってば。

 でも、現時点で思いつかないし、まあいっか。


「亜美が喜んでくれたらいいな」

「京平といれるなら何処でも嬉しいよ」

「出来れば笑って欲しいからさ」


 いつもそうやって、私の事を考えてくれるよね。

 そんな京平だから、側に居たいんだよ。

 力を貰えるんだよ。

 愛おしいって思うんだよ。

亜美「京平、愛してる」

京平「ちょ、不意打ちは反則だぞ」

信次「医療従事者あるあるだけど、シフト合わないの辛いよね」

のばら「深川先生が心配ですわね」

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