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天然で鈍感な男と私の話  作者: 九條リ音
変化する日常
130/238

幸せだよ。

「京平、起きて」

「んん、おはよ、亜美」

「おはよ、京平」


 京平はむっくり起き上がった。しっかり眠れたようだね。


「膝掛けありがとな。お陰で気持ちよく眠れたよ」

「それなら良かった。愛してるよ」

「ちょ、不意打ちすぎるだろ、バカ」


 だって愛してるもん。寝起きの京平もさ。


「お互い昼からも頑張ろうな」

「うん、頑張ろ!」


 私達は笑顔でお互いを見合わせて、お互いの持ち場に向かった。

 勿論京平は転けそうになったから、ちゃんと助けたもんね!


「巡回頑張るぞ!!」


 ◇


「大池さん、お昼食べられましたか?」

「ああ、亜美ちゃん。美味しかったし、運動も済ませて来たよ」

「流石大池さん! それなら食後血糖値も安定してるかな?」


 私はそのまま大池さんの血糖値を測ると、110。お、めちゃめちゃいいじゃん!


「ほっ。最近かなり安定して来たんだよね」

「そう言えば、気持ちスリムになったような」

「あ、解る? 年末も頑張って、もう5キロ痩せたんだ。深川先生のおかげだよ」

「この調子なら、退院も間近ですね」


 大池さんの努力が、少しずつ花開いて来て良かった。ずっと頑張ってたもんね。


「退院となれば嬉しいけど、深川先生や亜美ちゃんとあんまり会えなくなるのは寂しいなあ」

「定期通院で会えます! 大事なのは、大池さんが笑って過ごせる事ですよ!」

「そうだね、頑張るよ」


 病気が悪化すると、身体が怠くなったり喉が渇いたり吐き気がしたり辛いからね。

 人生を楽しむ為にも、治療を続けて頑張ってね。


「それでは、引き続き頑張って下さいね」

「ありがとね、亜美ちゃん」


 ◇


 こうして巡回も無事終わり、退勤時間となった。

 んー、正月の怠さも大分抜けて来たんだけど、やっぱり疲れるなあ。

 これで元の勤務に戻ったら、慣れるまで時間掛かるかもなあ。

 

「お疲れ、亜美」

「京平、お疲れ様」

「巡回お疲れ、ちょっと疲れた顔してるぞ」


 京平は私の肩に腕を回して、労ってくれた。

 こういうの、なんか嬉しいな。


「時短なのに疲れちゃってるから、やばいなあ」

「明日の診察次第では、元の時間になるしな。ま、お互い頑張ろ」

「うん、じゃあ着替えてくるね」

「おー」


 そう、明日は京平の精神科の日。

 とは言っても、休みが中々合わなかったので、休憩時間中に麻生愛先生が診察してくださるのだ。

 京平は時間だけでも元に戻したいって言ってるし、最近抑うつ症状も出てないから、元に戻る可能性は高いだろうなあ。

 でも、頑張るもんね!


 っと、早く着替えなきゃ。京平待たせちゃうや。


「ごめん。京平お待たせ!」

「ああ、俺も今来たとこだよ」

「じゃ、帰ろ」


 たまには私から手を繋いじゃえ。あ、京平、ちょっとドキッとしたね。ふふふん。

 

「帰ったら少し寝とけよ。走りたいだろうし」

「そうだね。ソファでちょっと寝とくね」

「ご飯もゆったりめに用意するな」


 疲れた私を気遣ってくれてありがとね。

 走れるようにしっかり昼寝しなきゃ。


「生理が終わってからは走れてるし、頑張るぞ」

「頑張ってるもんな、偉いぞ」


 少しずつ走れる距離も伸びて来てるし、今日も頑張るよ。


「「ただいまー」」

「おかえりー」

「おかえりなさいませ」


 お、信次とのばら、勉強頑張ってるね。

 問題集も赤文字で、メモがびっしり。


「2人が勉強してるとこ申し訳ないけど、ソファでお昼寝するね。おやすみ」

「ちょっと疲れた顔してるもんね。おやすみ、亜美」

「ご飯出来たら起こすからな。亜美、おやすみ」

「おやすみなさいませ」


 私がソファにごろんとすると、誰かが布団を掛けてくれた。この手の感触は、京平だね。

 いつもありがとね。私、助けられてばかりだね。

 今日のご飯も楽しみにしてるぞ。おやすみ。皆。


 ◇


「亜美、ご飯出来たぞ」

「うーん、よく寝た。おはよ、京平」

「おはよ、亜美」

「顔色も良くなったね」

「ご飯もしっかり食べるんですわよ」


 頭も大分すっきりしたし、体力も回復出来たぞ。

 今日のご飯は何かな? 楽しみ!


「今日の夜ご飯は?」

「鶏胸肉の和風ステーキだよ。後、お味噌汁と切り干し大根とかの煮物」

「ヘルシーで嬉しい。ありがとね」


 血糖値も安定させやすいし、すごく嬉しいや。

 鶏胸肉は、筋肉に変えやすいから、今日のランニングは頑張るぞ。

 よし、血糖測定もインスリン注入も完了!


「「「「いただきます」」」」

「うほ、鶏胸肉のステーキ、ジューシーで柔らかい。美味しい。お味噌汁も塩梅がいいし、切り干し大根の煮物も優しい味わいが良いね!」

「亜美、一気に食べ過ぎだよ!」

「だって美味しいんだもん」


 京平、また腕上げてるなあ。シンプルなのに凄く美味しいや。

 私も明日のお弁当頑張らなきゃ!


「喜んで貰えて良かった」

「確かにめちゃくちゃ美味しいのですわ」

「これで夜からも勉強頑張るぞ」


 私もこの後、ランニング頑張るぞ。

 終わったらお父さんと電話して、勉強して、京平とお風呂に入って。お布団で京平と眠って。

 こんな毎日が、本当に愛しい。幸せだなって感じるよ。


「本当に私、幸せだな。皆ありがとね」

「亜美こそありがとな、俺も幸せだよ」

「うん、僕も亜美の笑顔に力を貰ってるよ」

「いつも有難うございますわ、亜美」


 皆の何気ない優しさが、毎日力になるのを感じるよ。

 私、まだまだ頑張る。頑張れる。


「ごちそうさまでした。ジャージに着替えよっと」

「俺もごちそうさま。信次、留守番頼んだぞ」


 私達は食器を流しに運んで、部屋で着替え始めた。

 ジャージも大分肌に馴染んできたよ。


「今日も沢山走るぞ!」

「昨日は2キロ走れたもんな。成長著しいな」


 今日は目指せ3キロだ。京平は軽くで10キロ走れるし、私もそれくらいになりたいな。


「まだまだ頑張るもんね!」

「頑張り屋だな、亜美は」

「だって、今月はケーキ食べたいもん!」

「ヘモグロビンA1cが下がったら、一緒に行こうな」

「うん!!!」


 って、折角下がってもケーキ食べ過ぎたら、元に戻っちゃうから気をつけなきゃな。

 でも、のばらともケーキ食べたいから、運動は続けなきゃ。


「よし、着替え完了!」

「じゃあ、走りに行こっか」

「「いってきまーす」」

「いってらっしゃーい」

「気をつけるのですわよ」


 私達はいつも走るとこまで行って、準備体操をしてから走り始めた。

 少しずつ走りやすくなって来たんだよね。

 京平曰く、心拍機能が上がったからじゃないかとの事。

 ゆっくり、だけど確実に前に進めてるね。


「走り慣れて来たじゃん。フォームも良くなってきたぞ」

「京平の走り方を、少しずつ真似したんだよ」

「ちゃっかりしてんな」


 京平はそう言うと、颯爽と走り抜けていった。

 京平の走り方が綺麗なのは、素人の私でも解るからね。走ってる京平も好きだなあ。


 最近ではお互い好きなペースで走ってる。

 それでも京平はたまに併走してくれるし、私も1人で走る事に慣れて来たよ。

 自分のペースを守って、着実に走る事。

 それを意識すれば、私でも長距離走れるみたい。

 まだまだ余裕あるし、今日こそ3キロ走るぞ。


 長距離走るようになってから、欠かせないのが水分。

 京平がローカロリーのスポーツドリンクをいつも作ってくれるんだよね。

 それをペットボトルに入れて渡してくれる。

 ぷはー。美味しい。瑞々しくていいね。

 よーし、もうひと踏ん張り。


「亜美、良い感じだな」

「ありがとね。もうちょい頑張るぞ」

「無理はすんなよ。でも後少しで3キロだぞ」


 本当だ。走る前は1キロを表示してたスマホの万歩計が3.5キロになってる。

 後ちょっとだ。よっしゃ!! 心拍機能あげたいし、京平と一緒に走っちゃえ!

 私は速度を上げて走り出した。


「お、亜美。無茶は良くないぞ!」

「後ちょっとで3キロだもん」

「しゃあねえな、ちゃんと着いてこいよ?」


 あれ、いつもより速度落としてくれてる。

 無理せず着いてきてって事だね。優しいな。

 私はそんな京平のお陰もあって、無理なく3キロ走る事が出来た。やったね。

 走り終わった私はその場にうずくまった。


「亜美、大丈夫か?」

「へへ、流石に疲れちゃったや」

「昨日2キロで、今日一気に3キロだもんな。お疲れ様」


 京平は私に微笑みかけると、そのまま私をおんぶしてくれた。

 ちょっと照れくさいけど、文句を言う体力も私には残されていない。でも。


「ありがとね」


 お礼くらいは言わせてね、京平。


「当たり前の事だから気にすんな」


 いつもそう言う。その優しさにいつも救われてるよ。

 外は真っ暗闇。肌に風が突き刺さる。

 それでも、京平におぶわれた私は、温かさしかなかったんだ。

 それだけ、幸せだったんだ。

亜美「すー、すー」

京平「おやすみ。亜美」

信次「頑張ってるね、亜美」

のばら「のばらも頑張らなきゃですわ」

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