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天然で鈍感な男と私の話  作者: 九條リ音
変化する日常
129/238

元気になった友

 それから月日が経って、今日は1月8日。友が出勤する日だ。

 友は中番なんだけど、すごく心配。

 だって、私や京平だけでなく、蓮や朱音にも友からのライムが帰って来ないみたい。

 体調、まだ良くないのかなあ。眠れてないのかな。

 私が、傷付けちゃったせいだ。ごめんね、友。


「友、あいつ来れるのかな。相当眠れてなかったし」

「まさか蓮にもライム返ってきてないなんて」

「俺は大丈夫だと思うけどな。何もないから返さないだけであって」

「でも友くん打たれ弱そうだしなあ」


 私達が友の話をしていると、看護師長が呆れ顔で覗いてきた。


「貴方達、日比野くんからは欠勤の連絡もないし、心配しすぎないの。本当に無理なら、欠勤連絡くらいするだろうし」

「でも、休み取る前、顔色も悪かったですし……」

「またあんな顔して出勤してきたら追い返すわよ、もっと休めってね。だから安心して」


 確かに看護師長がちゃんと見てくださるなら安心出来るかな。

 確かに今から今日来れる? って聞いても、まだ寝てるだろうしね。


「さ、仕事仕事。時任さんと佐藤さんは巡回、深川と落合くんも回診行って来な!」

「看護師長は?」

「黙れ深川。麻生と緊急外来ぶん回すのよ!」


 今日揃いも揃って、早番ばっかなんだよなあ。

 のばらに関しては休みだしね。

 とは言っても、夜は信次の勉強見るみたいだけど。

 後、買い物に行ってくれるから助かるなあ。


 と、友の事は心配だけど、巡回行かなきゃ。

 今日は糖尿病の患者様中心な担当だから、より頑張らなきゃ!


「おはよう御座います。本日担当する時任です」

「おお、亜美ちゃんか。こりゃ楽しくなりそうだね」

「運動療法も頑張って下さいよ、映出(うつしで)さん」

「えー、運動嫌いだもー」

「ヘモグロビンA1c下げないと、白米無くなりますよ!」


 映出(うつしで)さんは長い事I型糖尿病で入院してる黒髪で前髪が長くて、黒縁メガネで細身のお兄さんなんだけど、かなり病気が悪化してて、一時は失明の危機もあった。

 京平と私達看護師の説得もあり、食事療法と喫煙禁止は守って下さるようになったんだけど、いかんせん運動してくれないのだ。

 今はその時じゃない、とか訳解んない事言うしね。

 どう考えても、今がその時なんですけど!


「亜美ちゃんがそこまで言うなら、と言うのは嘘だけど時期も来たし歩こっかな」

「ほ、本当ですか! じゃあ、朝ご飯食べたらウォーキングコース歩いて下さいね」


 お、映出(うつしで)さん的その時が来たみたい。大分下がっては来たんだけど、退院とするにはまだ随分高いんだよね。血糖値もヘモグロビンA1cも。

 今までが今までだから、ちゃんと下がるまでは退院させない方針だしね。


「さ、血糖値測りますね」

「チクッとするのは嫌だ」

「ちょっとの我慢ですよ!」


 どう考えても、この後の注射の方が痛いんだけどなあ。変わった人だね。


 ◇


 ふー、ようやく巡回が終わった。映出(うつしで)さんには困ったもんだけど、やる気になってくれて良かった。

 さ、お昼休み! 今日は唐揚げにしたんだよね。楽しみ。


「亜美、お疲れ」

「京平、お疲れ様!」

「聞いたぞ、あの映出(うつしで)さんが運動療法始めたって?」

「そうなの、なんか時期が来たとかなんとか」


 映出(うつしで)さんは京平の担当でもあるから、ずっと気にしてたもんね。

 私も心配で朝ご飯の後見に行ったんだけど、ちゃんと歩いてくれてたしね。


「俺達が管理して、やっとヘモグロビン1桁だもんな。まだ全然高いから、良かったよ」

「本当にねー」


 そんな事を話しながら、休憩室に入ると。


「あ、亜美に深川先生」

「よ、亜美と深川先生! こっちこっち」

「友! に、蓮!」


 友、私達に挨拶しに来てくれたのかな。元気そうで良かった。


「よ、日比野くん。顔色も良くなったな」

「聞けよ亜美、こいつ休み取ってから3日間眠り続けてたらしいぜ?」

「マジで?!」

「はい、3日眠り続けて、起きて3日分飲み食いしたら、また眠くなって2日間寝て……ご心配おかけしました」


 友、相当眠れてなかったんだね。とっても不健康な改善法ではあるけども!


「あ、亜美に蓮おっつ! って、友くんじゃん。顔色めちゃ良いじゃん」

「ああ、朱音さん。はい、おかげさまで」

「後、皆に挨拶終わったら緊急外来来てって、看護師長が言ってたよ」

「今ちょうど終わったので行きますね。今日からまた頑張ります」


 友は笑顔で休憩室を後にした。本当に良かった。


「流石の俺も、3日間寝続けた事はないなあ」

「え、友くんそんなに寝てたの?! そらライムも返って来ない訳だ」

「あいつ、1週間くらいまともに眠れてなかったからな。やっと眠れたようで良かったよ」

「蓮、ずっと心配してたもんね」

「し、心配なんてしてねーよ」


 確かに京平はめちゃくちゃ寝るけど、3日間起きないなんて事はないもんね。

 そんなに寝てたら、私泣いちゃうかも。心配過ぎて。

 そして蓮は、朝から友の事心配してたのに、照れ屋さんだなあ。


「さ、飯食おうぜ」

「おっと、忘れてた!」

「「「「いただきます」」」」


 唐揚げ、唐揚げ、やっと食べられる!


「うーん、自分で作ってなんだけど、ジューシーな唐揚げとコールスローが良いハーモニーを醸し出しててめちゃ美味しい!!」


 私がお弁当に舌鼓を打っていると、蓮が話題を切り出した。


「そいや今日休みだけど、のばら、信次くんと付き合ったらしいな」

「そうなの。で、色々あって今一緒に暮らしてるよ」


 のばらん家の問題も解決すると良いんだけどなあ。


「マジか。信次くん理性保つの大変だろうな」

「だな、俺は亜美に惚れてから保てなかったしな」

「ああ、亜美から聞いてます。寝てる亜美のおでこにキスしてたんですよね?」

「そうなの。京平ってお茶目だよね」

「お茶目じゃなくて、理性崩壊してんだよ、それ」


 ぶー。蓮ってば変な事言うなあ。

 好きな人がこっそりキスしてた、なんて、可愛い以外の何物でも無いのに!


「もー、蓮が変な事いう」

「や、蓮のがここは正しいかな。深川先生も男ね」

「8年くらいは耐えたんだぞ、これでも」

「私から手を繋いでる時点で、私の気持ちには気付いて欲しかったよ!」


 そう、小さい頃からずっとアピールしてたのに、全然気付いてくれなかったんだもん。

 京平、自分の事には自信がない故に鈍いもんなあ。そんな京平だからこそ守りたくなるんだけどさ。


「まさか、好きになってくれるだなんて、思わなかったんだよ。俺なんかを」

「ずっとずっと愛してるよ」

「ちょ、あちいな。俺タバコ吸ってくるわ」

「私も外の空気吸ってこよ。ごゆっくり」


 ああ、皆行っちゃった。気を遣ってくれるのは嬉しいんだけどさああああ。


「と、タイミングが悪いけど、ちょい昼寝するな。亜美、ポンポンして」

「午前中もお疲れ様。ゆっくり休んでね」


 いつも頑張ってるもんね。私は京平の頭をポンポンする。京平が笑ってくれた。


「亜美のポンポン落ち着くわ。おやすみ、亜美」

「うん、おやすみ、京平」


 私は膝掛けを京平に掛けて、そっと笑う。

 愛してる人の寝顔って、どうしてこんなに愛しいのだろう。

 京平といるとね、いつも温かい気持ちになるんだよ。

 私に出来る事は少ないけど、少しでも京平を守れますように。

 ずっと、笑ってて欲しいな。私が京平を、笑顔に出来たらいいな。

 おやすみ、京平。

友「しっかり寝て食べると、身体も動きますね」

看護師長「今日は良く動くじゃん。偉いぞ」

風太郎「ありがたいことじゃ!」

友「皆さん、お餅はよく噛んでくださいね!」

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