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天然で鈍感な男と私の話  作者: 九條リ音
変化する日常
128/238

眠たい内科医(京平目線)

「おやすみ、京平」

「おやすみ、亜美」

「すー、すー」


 亜美、すぐ寝ちゃったな。やっぱり体調あんまり良く無かったんだな。

 朝までゆっくり眠るんだぞ。


 そう言えば、あれから日比野くんからライム来てないけど大丈夫かな?

 亜美曰く、日比野くん料理作れないらしいからな。

 出歩けるくらい眠れたなら良いけど。


 ふー、のばらさんが帰ってくるまでまだ時間あるから、お父さんに電話架けよう。早い方がいいもんな。

 俺は亜美を撫でて、部屋を出た。

 部屋を出ると、信次が既にお父さんと電話していた。何を話しているんだろ。

 俺は信次に近づいた。


「お父さん、昨日は眠れた? 体調は大丈夫?」

『ああ、元気だぞ。昼間は少し寝たしな』

「まだ抑うつ症状はあるみたいだね」

『仕事に支障は出ないレベルになって来たよ。信次達のお陰だよ』


 良かった。お父さん、少しずつ体調回復してるみたいだ。

 お父さんは、岡山県のご実家で、リモートワークにて不動産管理で生計を立てている。

 後は前の職場からも仕事を貰ってるようだった。

 ただ、鬱があるから、何も出来ない時もあると嘆いていたからな。

 そこは配慮して貰って、休憩時間と休みは少し多めに取ってるみたい。


「お父さん実家暮らしなんだし、無理せず休んだ方がいいよ。今は辛い時なんだし」

『いや、寧ろ仕事してた方が気晴らしになるぞ。身体が動く時はな』


 あの女の件は、お父さんに取ってはかなりのダメージだろうからな。

 忘れようとしてるところに、声を聞いちまった訳で。

 俺も仮に亜美に捨てられたら……ダメだ、考えるのもキツいや。何なら涙が出て来た。

 亜美は絶対そんな事しないのに。

 俺が死んだ夢を見て泣く亜美も、こんな気持ちなのかな。

 解ってるはずなのにな、俺が亜美を置いて死んだりしないって。


「抑うつ症状が出たら、その日は寝とくんだよ。心がいっぱいいっぱいな証拠なんだから」

『心配ありがとな。しっかり寝とくよ』

「お父さんは無理しがちだからなあ、心配だよ」


 今のは俺にもグサッと来たぞ。

 そうだよな。抑うつ症状が出た時点で休むべきだよな。

 無理した結果、過半数に泣き顔見られちまったしな、俺。

 後々恥ずかしくなるから、お父さんに同じ思いはして欲しくないな。


『そんな時は信次達の声を聞きたくなるよ』

「4日までなら僕休みだから、架けて来てよ。無理しないで」

『たまには甘えさせてもらうな』

「うん、そうして!」


 お父さんから架けてくることは、滅多にないもんなあ。

 甘えてくれたっていいのにな。


『その、朝早くてもいいか?』

「朝5時には起きてるから安心して」

『そっか、相変わらず家事やってるんだな。信次こそ受験生なんだから無理するなよ』

「大丈夫、好きでやってるもん。僕」


 信次、俺を気遣って今も朝の家事やってくれてるもんな。

 全然俺、やるのになあ。年寄りは早起きなんだぞ?

 確かに俺、超ロングスリーパーだけどさ。

 亜美が毎朝起こしてくれるのも、超嬉しいけどさ。

 朝の家事もやりたい、って俺は我儘だな。


『ふわあ、すまん信次、もう眠たくなって来たから寝かせてもらうな。京平におやすみだけ伝えようかな』

「うん、兄貴に代わるね。おやすみ、お父さん。愛してるよ」

『おやすみ信次、愛してるよ』


 信次の電話がお父さんを安心させてくれたのかな?


「兄貴、お父さんが兄貴におやすみ言いたいって」

「ありがとな、信次」


 俺は信次から電話を受け取った。


『京平、ごめんな。今日は話せなくて』

「気にすんなよ。おやすみ、お父さん」

『おやすみ、京平。いつもありがとな』

「俺こそ。愛してるぞ」

『愛してるよ、京平。おやすみ』


 お父さんが安心して眠れそうで良かった。


「ありがとな信次、お父さんかなり安心した声してたよ」

「それなら良かった」

「のばらさん帰ってくるまで勉強でもしてよ」

「僕も受験勉強しなきゃ」


 内科医として、己のスキルアップは常にやらなきゃ。

 新しい薬も日々出てくるし、患者様の選択肢を増やしてあげたいし。

 とは言え、お父さんの安心した声を聞いたら、眠たくなってきたな。

 いけないいけない、一点集中だぞ、俺。


「って、兄貴また医学書買ったでしょ?!」

「失礼な、3冊しか買ってないぞ」

「充分だよ、おバカ!」


 ◇


「一冊丸暗記完了。これでこの医学書についても、指示が出せるな」

「流石天才。僕には真似出来ないや」

「内科は日々新しい薬が出るからな」


 集中して、何とか眠気に打ち勝てたかな。

 物を人よりも早く覚えられる才能は、正直かなり助かっている。

 身体がそれを覚えるのに、俺は人の数倍は掛かるから。

 記憶してしまえば、身体に染み込まなくても何とかなるからな。


「ただいまですわー!」

「おかえり、のばら」

「のばらさんおかえりー」


 お、のばらさんも帰って来たね。雑煮作るか。


「お風呂にする? 少し待つけどご飯にする?」

「じゃあ、信次とお風呂にしますわ」


 おー、仲の良い事で。

 信次は半ば強引にのばらさんに引きずられ、お風呂に入っていった。

 2人が出るまでに美味しい雑煮作るからな。

 とは言っても、白菜も切ってあるし、出汁も作ってあるからもう煮るだけだけど。

 そうだ、信次も勉強頑張ってたし、夜食に作ってやるか。

 白菜を切って、煮込んで、と。

 醤油と料理酒とみりんを入れて。

 うん、良い匂い。後は火を切るタイミングを間違えなければ大丈夫。

 よし、餅が少しとろけだしたら完成だな。

 後はいい感じに盛り付けて、っと。


 信次達、2人で風呂入ったし、まだ出ないよなあ。

 お雑煮とお節は机に並べておいて、もう寝てしまおう。

 大分眠いんだよな、昼寝してないし。勉強に集中し過ぎたのもあるかな?


 よっこらしょ。亜美、ただいま。

 俺は亜美を抱いて、眠る体勢に入る。

 心地良いんだよな、亜美って。

 絶対失いたくない。傍に居続けて欲しい。

 なんて、本人には言えないけど、俺から手を離す事は絶対ないからな。

 亜美が明日も笑顔を見せてくれたらいいな。


 おやすみ、世界一愛してる亜美。

京平「亜美、傍にいろよ。すー。すー」

信次「兄貴、眠かったみたいだね」

のばら「でも、作ってくれたお雑煮美味しいですわ」

信次「僕の分まで作ってくれたもんな。夜も勉強頑張るぞ!」

のばら「のばら、明日遅番だから付き合いますわ」


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