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天然で鈍感な男と私の話  作者: 九條リ音
変化する日常
127/238

お疲れ様!

「亜美、お疲れ」

「京平もお疲れ!」


 ふいー、久しぶりの仕事もようやく終わったよ。

 うちの病院は今日から休み明けだけど、患者様も定期通院以外はほとんどいなかったなあ。

 蓮に1日着いてたけど、17時までに予約患者様は診終わってたしね。

 私達はお互い着替えて、今から帰るとこ。


「それと、友、大丈夫だった?」

「飯は食わせたし、本人も寝るって言ってたし大丈夫。何かあったらライムするよう言っといたし」

「ごめんね京平、私の代わりに。まだ、友、私をみると震えてたから」


 本当は私、友が調子悪い事知ってたんだ。

 でも、私を見た友は、凄い作り笑いしてるのと、震えていたのが解ったから、京平に相談したんだよね。

 ごめんね、友。友達なのに傷付けて。


「だから亜美は悪く無いってば」

「ありがとね、京平」


 京平、いつもありがとね。愛してるよ。


「じゃ、帰ろ」


 京平は私の手を握って、優しく笑いかけてくれた。


「今日のお節とお雑煮も楽しみ!」

「亜美お節好きだもんな」

「我が家のお節は世界一だもん」

「皆の食べっぷりを見てると、今日でお節も終わりかな」


 確かに昨日の段階で、タッパーまで行ったしなあ。

 我が家のお正月は早々と終わりそう。


「「ただいまー」」

「おかえりなさーい」

「今日はのばらさん中番だよな」

「そ。のばらのお節はもう分けといたよ」


 流石信次。行動が早いなあ。

 のばらも我が家のお節、気に入ってくれたもんね。

 のばらは黒豆にハマってたよ。


「と、亜美、ちょい部屋来て」

「え、いいけど、なあに?」


 早めの晩御飯になるかなあ、と思ったら、なんなんだろ?

 部屋に入ると、京平が深妙な面持ちで語り始めた。


「亜美、日比野くんにごめんねする時に、俺に嫌われても、俺を愛し続けるって言ったらしいな?」

「そうだよ、私の本音だよ。しつこい、よね」


 京平が私を嫌いになってもね、私は京平の事を愛する自信があるよ。

 これはもう揺るぎない真実だから。

 しつこいかな、やっぱり。

 すると京平は、私をギュッと抱きしめてくれた。


「バカ、そんな事嘘でも言うなよ。俺が亜美を手離す訳、ないだろ」

「ごめんね、確かに京平が私を手離す訳無かったよね」

「日比野くんの為に言ったんだろうけど、もう言うんじゃないぞ。亜美に傷付いて欲しくない」

「ありがとね、京平」


 やっぱり優しいね、京平。俺の愛を疑うなボケが! って言われても仕方ない事いっちゃったのに、そうじゃなくて、私を心配してくれて。

 私も嬉しくて京平を抱きしめた。

 そしたら、京平は目をとろんとさせて、私にキスしてくれた。


「いつだって抱きしめたいし、キスしたいんだからな。忘れんなよ」

「うん、ありがとね。愛してる」

「じゃ、ご飯食べよ」

「お雑煮も楽しみだよ」


 京平ね、お雑煮も美味しく作るんだよ。

 金平(きんぴら)と一緒に、感動しながら食べるんだ!

 そんな訳で、2人で食卓に向かった。


「信次お待たせ、今から雑煮作るな」

「夜にはのばらの分も作ってあげてね」

「了解、雑煮は出来立てが美味いからな」


 京平は手際良く白菜を切って、お雑煮の準備を始めた。

 京平のお雑煮は、京平の生まれ故郷ので、白菜とお餅だけのシンプルなものだけど、すごく美味しいんだよね。


 そもそも京平は愛知県の養護施設で育って、大学入学と同時に東京へ来たみたい。

 京平が東京へ来てなかったら、私達会えてなかったし、なんか運命的だよね。


「ほい、お雑煮できたぞー」

「うほ、今日も美味しそう!」

「お雑煮も兄貴には敵わないなあ」

「あ、並べるの手伝うね!」


 うーん、良い匂い。この鰹出汁の匂いがまたそそられるんだよね。

 私は皆のお雑煮を配膳した後、ピルを飲んで、血糖測定とインスリン注入を行った。


「お節もあるし、正月2日目だな」

「「「いただきます」」」

「うおお。お雑煮の鰹出汁が、醤油とお餅と絡み合って美味しいよおお。金平(きんぴら)もシャキシャキ美味しいし、数の子のプチプチ感も!」

「亜美、一気に食い過ぎだぞ」

「てへ」


 でも、そうしたくなるくらい美味しいんだよね。

 

「我が家のお正月も、今日で最後かあ」

「お節無くなるしな」

「今年も良い年になるといいね!」


 うん、家族皆で笑って過ごせますように。そんで、のばらはお仕事頑張ってね。夜は京平とのばらのお雑煮作ろうかな?


「僕も5日から学校だし、普通の生活に慣れていかなきゃ。学校の授業の時間も受験勉強したいよ」

「こら、真面目にやるんだぞ」

「はーい」


 うわ、絶対信次授業中にも受験勉強やるな、こりゃ。信次が嘘つく時はやたら返事が良いもん。後、妙に明るかったり。

 京平は気付いているのかなあ?

 まあ、いいや。ああ伊達巻美味しい。


「よーし、この後は走るぞ」

「ダーメ。まだ生理終わってないだろ」

「もう痛く無いから大丈夫だよ」

「無理は良くないぞ。今日も早めに寝な」


 ぶー、京平の意地悪。もう大分体調良いのに。

 確かに出血量は、まだまあまああるし、ちょっと貧血気味だけどさ。


「亜美、無理は良く無いよ。いつもより顔青いもん」

「そうそう。バレバレだよな」

「ぶー!」


 皆意地悪! 解ってるんなら、そう言えばいいじゃんよー!


「ははは、俺達に隠し事は出来ないな、亜美」

「解ったよ、早めに寝とくよ」

「それがいいよ、無理しないでね」


 でも、心配してくれてるんだよな。そこはありがとね、2人とも。


「ごちそうさまでした」

「俺も、ごちそうさまでした」

「お風呂作ってあるから、入っといでね」

「ありがとね、信次」


 久々の仕事で疲れたからなあ。お風呂すぐ入れるのは嬉しいね。

 私と京平は着替えを持ってお風呂に向かう。

 ふふ、もう一緒に入るのが当たり前になって来たね。


「そう言えば京平は走らなくて良かったの?」

「亜美が青い顔してる時に、走りに行けっかよ」

「ありがとね、京平」


 いつも優しいね、京平は。

 私達は服を脱いで、お風呂に入る。


「背中流すからな」

「いつもありがとね」


 いつも真っ先に、私の背中を流してくれてありがとね。

 すごい癒されてるんだよ。


「はううう、気持ち良いいい」

「久々の仕事で疲れただろうしな。亜美も結構こってるなあ」

「そうなの、最近疲れが簡単に取れなくて」

「重労働だしな、看護師って」


 まだ私も若いのに、最近疲れが残っちゃうんだよね。

 それだけ頑張ったってことかな?


「でも、京平の顔を見ると、いつもホッとするんだよ」

「亜美を安心させられてるなら良かった」


 すれ違って京平を見た時、お疲れ様って言い合えた時、全部癒されてるんだよ。


「ほい、交代な」

「気持ち良かったあ。ありがとね」


 よし、次は私が流すからね。

 京平の広い背中に、毎回ドキドキしちゃう。

 私もマッサージしてあげよ。

 肩と肩甲骨の辺りをほぐしてみた。


「あー、気持ち良いわ。俺、かなりコリが激しいからな」

「京平がこってるの、いつもこの辺だもんね。次は腰行くね」


 いつも頑張ってる京平だから、身体も疲れているもんね。

 少しでも楽になるといいな。


「ああ、効くわあ」

「それなら良かった」


 でも京平のマッサージって体力使うんだよね。

 ガチガチに硬いからさ。そんな訳で。


「疲れたああ」


 疲れちゃった私は、洗い立ての京平の背中にもたれかかった。


「ああ、ごめんな、亜美」

「謝らないで。私が勝手にやっただけだから」

「ありがとな。いつも俺を癒してくれて」

「へへ、どういたしまして」


 それから、疲れた私の代わりに京平が私の頭と顔も洗ってくれた。

 本当にありがとね、京平。


「はい、くまさん」

「もー!」


 悪戯もされるんだけど、ね。


 お互い全身を洗ったら、湯船に浸かりながらまったりタイム。

 京平が湯船で後ろから私を抱きしめてくれたよ。

 

「亜美とこうしてる時、なんかいいな」

「うん。私もこういうの好き!」

「それなら良かった」


 と言いながら、京平は強く抱きしめてくれた。

 こうやって京平は、愛してるを伝えてくれるよね。

 いつもいつも愛してる。


「ずっと抱きしめてたいけど、のぼせちゃうからそろそろでよっか」

「うん、今日も幸せだったよ」


 この後はお雑煮手伝いたかったけど、明日もあるから早めに寝ようかな。

 自分の体力と向き合うと、もう眠たかったりするんだよなあ。

 着替える体力がギリ残ってる感じ。


「ふわあ」

「眠そうだな。この後は寝るんだぞ」

「うん、寝付くまで側にいてね?」

「勿論、側にいるよ」


 京平は私の髪を拭きながら、微笑んでくれた。

亜美「友が眠れたなら良かった」

京平「日比野くんなりに、亜美を守ろうとしてくれたしな」

亜美「そんで私の体調、中々万全にならない!」

京平「生理の日は無理するなよ」

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