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天然で鈍感な男と私の話  作者: 九條リ音
お正月モード
124/238

明けましておめでとう!

 小さい頃だから京平が大好きだった。

 それが歳を重ねるごとに愛してるになって、長年片思いをしてたけど、恋人同士にもなって。

 それで、1番落ち着く場所になったんだ。

 笑ってて欲しいな。自分を卑下しないで欲しいな。

 ずっと、傍にいて欲しいな。


「亜美、そろそろ起きよ」

「ふわあ、おはよ。京平」

「おはよ、亜美」


 京平は笑って、おはようをくれた。

 京平の笑顔、大好きだよ。


「亜美と寝たからかな、大分すっきりしたよ」

「夜はすき焼きに紅白、楽しみだな」

「無理はすんなよ」


 そんな訳で私達は食卓に向かう。

 と、すぐ目に入ったのは、一緒に眠っているのばらと信次だった。


「信次のやつ、問題集渡したというのに」

「のばらが心配だったんだよ、きっと」

「誰かさんが急に俺のとこ来るもんな」

「ぶー」


 京平は今からすき焼きの準備をするので、私が信次達を起こすことになった。

 でも、気持ちよさそうに寝ているから、起こすのちょっと可哀想。


「信次、起きて。もう18時だよ」

「んん、もう問題集はやったよ。すー」


 うー、中々起きないなあ。

 それなら、のばらから起こそうかな。

 私達、そろそろ薬飲まないと激痛が走るしね。


「のばら、そろそろ起きよ。薬のも!」

「ふわあ、おはようございますわ」

「あ、2人共、薬、机の上に置いといたからな」

「お、いつのまに。京平ありがとね」


 私達は京平が出してくれたピルとロキソニンと胃薬を飲んで、ソファでのんびりだべる。

 あ、信次? 起きなかったよ。のばらが起こしても!


「信次ね、のばらが寂しいって言ったら、問題集かなり早く終わらせて、のばらの隣に来てくれましたの。だから、疲れてるんだと思いますわ」

「ほええ、信次頑張ったね。いいとこあるじゃん」

「いつも優しいですの。受験勉強大変なのに」


 そうだね、信次優しいもんね。のばら、すごい幸せそうな顔してるもん。


「京平も優しいよ。私が勝手に布団に潜り込んだのに、優しく抱きしめてくれて、お腹も温めてくれて」

「深川先生は亜美にベタ惚れですものね」

「え、そうかなあ。全然普通だと思うんだけどな」

「亜美鈍すぎますわ。深川先生可哀想ですわ!」


 そっか、私はにぶにぶ亜美ちゃんだから気付けてなかったけど、愛されまくってるんだね。

 京平が愛してくれているから、私はいつも幸せだよ。いつもありがとね、京平。


「そんな訳で、のばらはすき焼きが出来るまで、信次とおねんねしますわ」

「ちょ、信次起こしてよ!」

「起きないから、のばらから傍に行きたいのですわ」


 そう言ってのばらは、再び布団に潜り込んでしまった。

 なんだかんだで、信次の傍にいたいんだね、のばら。


「なんだ、もうすき焼き準備できたのに、のばらさんまで寝ちゃったのか」

「うん、信次が中々起きないからね。一緒にいたいみたい」

「信次には2冊目の問題集渡してたけど、もう終わってたしな。相当集中して終わらせたんだろうな」


 え、もう2冊目だったの?!

 じゃあ、まっさらな問題集をものの数時間で片付けたって事か。恐ろしい集中力だね。


「2人が起きるまで紅白でも見てるか。今日の夜は長いしな。亜美も起きてたいだろ?」

「うん、あけおめしたい!」


 あけおめする為に、今まで寝てたんだしね。

 身体は怠いんだけど、京平とのんびり過ごそうっと。


「亜美とテレビ見るのって、年末くらいな気がする」

「だね。いつも仕事だったり、勉強だったりで、あまりテレビ見ないもんね」


 最近の曲は解らないんだけど、紅白で最近の流行りを知る部分はあるなあ。

 でも最近はテンポの早い曲が多くて、私じゃ全然歌えないのだけど。

 あ、でも京平は知ってるし歌えるみたい。足でリズム取ってるし鼻歌歌ってるや。


「京平この歌知ってるんだね」

「ああ、入院患者様でこの歌手好きな人がいてな」


 そっか、患者様の為に覚えたんだね。京平らしいや。

 私も患者様の好きなアーティスト、覚えなきゃなあ。

 や、病気の勉強が先なんだけどね。


「最近の流行り、全然解らないや」

「患者様に教えて貰えばいいじゃん。俺、結構聞くぞ」

「確かに京平は診療の時、色々聞いてるよね」


 患者様の事を知っていた方が、診療もしやすくなるしね。

 私も色々聞くようにしなくちゃ。

 どうせなら仲良くなりたいし!


「ま、そういう事するから変人って言われるんだけどな」

「普通のお医者さんは、そんな事聞かないもんね」

「病気を治す事とは関係ないけど、信頼して貰いたいからさ。笑って過ごして欲しいし」


 京平は本当に優しいね。笑って過ごしてもらう為に、いつも頑張ってる。

 そんな京平の優しさは患者様にも伝わってて、京平が17時までになった事で時間変更の電話を私も手伝ったんだけど、皆京平の心配をしてたよ。

 事がすんなり行きすぎて、院長とびっくりしてたもん。

 京平が優しいから、患者様も京平に優しいんだね。


「むにゃ、おはよ、亜美、兄貴」

「やっと起きたか。おはよ、信次」

「信次おはよー!」

「あ、もう紅白始まってるじゃん。寝過ごした!」


 信次は起きてすぐに、隣で寝ていたのばらを起こす。


「ふわあ、おはよ、信次」

「のばら大丈夫? 薬は飲んだ?」

「はい、薬は亜美と一緒に飲みましたわ。心配してくれてありがとうございますわ」

「よし、皆起きたし、すき焼き始めよっか」


 よし、血糖値測って、インスリンも注入完了。

 すき焼き、初デートの時以来になるなあ。

 あの時も美味しかったんだけど、緊張でそれどころじゃなかったもんな。

 まったり幸せな気持ちで、すき焼きを食べられるって、幸せだね。


「と、ガスコンロセットして」


 おっと、京平を手伝わなきゃ。卵と卵入れる器と箸出さなきゃ。


「お、ありがとな、亜美」

「どういたしまして」

「あ、亜美とのばら呑む?」

「呑みたいですわ!」

「あ、私も!」


 そんな訳で信次がキンキンに冷えたビールも出してくれた。テンション上がるね!

 

「ほい、お待たせ。食べよーぜ」

「「「「いただきます」」」」

「うん、お肉がめちゃめちゃジューシーで、とろけるネギも最高だよお。白菜もお出汁を吸ってビールに合うし! お豆腐も最高! 白滝も美味しい」

「最高ですわ!」

「兄貴のすき焼きも好きだなあ、僕」

「喜んで貰えて良かった」


 いやあ、すき焼き食べながらのビールは最高だね!

 何より京平のすき焼き美味しいからさ。


「お肉も野菜もまだあるからな」

「そろそろ第二弾作ろ!」

「お肉! お肉! ですわ!」

「お肉多めにいれてね」

「野菜もちゃんと食べろよ」


 4人いると、すき焼きもすぐ無くなっちゃう。

 でもそれも、私は温かく感じたんだ。

 やっぱり家族っていいね。いつも助けて貰ってるよ。

 

「ほい、第二弾完成ー」

「お肉ー! ですわ」

「私ネギと豆腐ー!」

「第二弾はえのきも入れたぞ!」

「えのき良いよね」


 えのきどこかな?


「ほい亜美、えのき」

「ありがと、京平!」


 京平が私の器にえのきをよそってくれた。早速食べよっと。


「うーん! えのきすき焼きに合いすぎるよ! 美味しい!!」

「最初は入れ忘れちゃったからな。沢山食えよ」


 年末のすき焼きは、いつもより豪華に作ってくれるんだよね。お肉だったり豆腐だったりも、いつもより良いのだったりさ。

 だから余計にワクワクしちゃうんだよね。

 そんで、沢山食べちゃうんだよね。体重やばあああああい。


「ほら亜美、肉も食えよ。あーん」

「あ、あーん」

「遠慮せずに食えよ」


 ちょっと京平ってば、みんなの前であーんは反則だよ。もしゃもしゃ。お肉美味しいけどさ。


「亜美ずるいですわ。信次、のばらも!」

「ちょ、のばら。流石に恥ずかしいよ」

「じゃあ、信次のお肉もらいますわね」

「もー。僕のお肉!!」


 うん。そりゃ恥ずかしいよね。京平に反応した私も私だったけど。


「もういいや、体重は気になるけど、年明けに走ればいいや。沢山食べよ!」

「年末は楽しまなきゃな。ほい、ビールのお代わり」

「ぷはー。冷え冷えのビールも最高!」

「お肉が無くなって来ましたわ!」


 家族でこうやって笑い合いながら食べるすき焼きって、本当に美味しいよね。

 来年も皆笑顔で過ごせたらいいな。


 ◇


「今年は紅組の勝ちかあ」

「名曲揃いだったもんね」

「推しの特集あったのに、白組が負けるなんて」

「信次の推しは、別枠だと思いますわ」


 紅白も終わって、今年も後僅か。

 京平の胸にもたれ掛かりながら見る紅白も、それはそれで良かったなあ。身体は怠いけど癒されたよ。


 年末カウントダウンのタイミングでお父さんに電話する予定だったんだけど、お父さんから20時には寝るってライム来たみたいだから、明日京平から電話する事になった。

 抑うつ症状、酷くなってるみたい。朝の電話で元気付けられたらいいな。


 もうお風呂も入って、年越し蕎麦も食べて、後は次の年を待つばかり。

 のばらの実家では、年越し蕎麦の文化も無かったようで、「蕎麦食べてもいいんですの?!」と、可愛い顔してたなあ。

 

「今年も後ちょいだけど、皆来年も宜しくな」

「うん、宜しくね!」

「ああ、2日からの仕事が憂鬱ですわ」

「そっか、皆2日から仕事かあ」


 そうなんだよね。とは言っても、かなり休ませて貰ったし、頑張らなきゃね。

 明日以降は体調も落ち着いてくるはずだし。


「お、あと30秒だぞ!」

「ジャンプしよっかな?」

「とか言ってる間に10秒前だ」

「9」

「8」

「7」

「6」

「5」

「4」

「3」

「2」

「1」

「「「「明けましておめでとーう!」」」」

「ですわ」


 今年で2047年。皆おめでとう!


「兄貴、お年玉ちょーだい!」

「準備してるよ。はい、どーそ」

「はい、私からも。明けましておめでとう」

「信次、明けましておめでとうですわ」


 信次はまだ学生だし、皆でお年玉を渡したんだけど、信次、ちょっとブスっとし始めた。


「皆有難う、兄貴から貰うのは何ともないけど、亜美とのばらから子供扱いされるのは、なんだかなあ」

「おい、俺はいいのかよ!」

「ぷっ、あはははははは!」

「うふふふふふ」


 そういう事言うのが、余計子供っぽくて私達はむちゃくちゃ笑った。ついでに呆れ顔の京平にも、ね。

 これからも皆で笑って生きていこうね。


 ◇


 それから皆、各々の部屋で寝て、夢見心地。

 私の初夢は、家族で笑ってる夢。

 どんな富士山も鷹もなすびも、この夢の幸せには勝てないね。

 その中にはお父さんもいて、より幸せだったよ。

 会いたいな。生理辛いよって甘えたいな。

 ダメダメ、今辛いのはお父さんなんだから。

 少しでも助けになれたらいいな。


「おはよ、亜美」

「おはよ、京平」


 今は8時。ちょっとお寝坊さんだけど、これもお正月の特権だ。

 お節があるから、いつもより家事も少なめに済むしね。


「ご飯の前に、お父さんに新年の挨拶をするよ」

「あ、私もお父さんと話したい」

「俺の電話の後に聞いてみるな」


 私達がリビングに向かうと、1人抜け駆けしてる奴がいた。


「うん、大丈夫だよお父さん。お父さんのペースでゆっくり治していけばいいんだからね。僕の身は僕で守れるから安心してよ」


 あ、信次、電話してる! きー、先越された!

 でもそれだけお父さんの事、信次も心配してたし、お父さんも信次の事が心配だったんだね。


「何があっても、心は傍にいるからね。無理しないでね。逆に電話したい時はいつでも架けてよ」


 うん、私達は離れてるけど、心はずっと傍にいるよ。

 だから、お父さんだって甘えていいんだからね。


「あ、兄貴起きて来たから変わるね。愛してるよ、お父さん」


 あ、私達に気付いたみたい。


「兄貴、お父さんに話したい事あるんでしょ?」

「おお、ありがとな」


 京平、どんな風に電話の頻度上げてもいいか聞くのかな?

 てか、既に頻度高めになってる気がするけど。

 私は京平の横で、お父さんの話してる事を聞く事にした。


「もしもし、父さん。明けましておめでとう。体調は大丈夫か?」

『明けましておめでとう、京平。寧ろ話したかったよ』

「ありがとな、お父さん。用件なんだけど、お父さん、今抑うつ症状が出てるし、亜美達も俺も心配なんだ。だから、出来れば毎日電話って難しいかな?」


 うん、それは確かにそう。1人で抑うつ症状と闘ってるんじゃないかと心配になるよ。


『毎日話してくれるのか?』

「当たり前だろ、もちろんお父さんの体調がキツい時は無理しなくていいからさ」

『いつも気に掛けてくれてありがとな。家族の存在に私はいつも救われてるよ。まだ、顔を合わせる勇気は無いのだけど』

「お父さんのペースで大丈夫。無理すんなよ」


 毎日の電話はいいけど、ライムに付いてるビデオ通話とかはまだ厳しいか。

 そうだね、悔しいけど、私達、あの女から産まれてるから、やっぱり似てるしね。

 思い出しちゃうよね。


「愛してるよ、お父さん」

『ありがとな、京平。そうだ、亜美に代わってくれないか?』

「うん。亜美も話しがってたしな」


 お父さんから私の事気に掛けてくれた。ありがとね、お父さん。


「もしもし、お父さん。明けましておめでとう」

『亜美、明けましておめでとう。生理大丈夫か? 信次から一昨日聞いたけど』

「うん、もう大分良くなったよ。3日目だしね」

『治療も亜美に合う事を願ってるよ』


 そっか、私の事お父さんに話してたんだ。

 心配してくれてありがとね、お父さん。


「低用量ピルと痛み止め貰って、暫くは低用量ピルで治療していくよ」

『調べたけど、ピルも合う合わないがあるからな。副作用が酷かったら、すぐ病院に相談するんだぞ』

「調べてくれてありがとね。何かあったらすぐ病院いくね」


 お父さんの優しさに私が救われてるよ。いつもありがとね、お父さん。


『亜美の元気な声を聞けて安心したよ。明日から仕事だろう。また話、聞かせてくれよ』

「うん、明日もいっぱい話そうね! 愛してるよ」


 こうして電話は終わった。少しでも、力になれたかな? 寧ろ力を貰った気しかしないけど。


「じゃ、のばらさん起こして、朝ご飯にしよっか」

「お雑煮はもう出来てるよ」

「あれ、のばらまだ寝てるんだ」

「お正月の朝だし、そんな早く起こさなくていいかな、って」


 のばら拗ねそうだなあ、と思いながらも、我が家の正月の朝は始まったのであった。

作者「作中ではお正月だけど、現実世界は明日から5月だね」

亜美「大分暑くなってきたもんね」

京平「風邪ひかないようにな」

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