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天然で鈍感な男と私の話  作者: 九條リ音
お正月モード
123/238

お節作り(京平目線)

「煮物は日高昆布と鰹節と干し椎茸で出汁を取って」


 やっぱり信次、めちゃこだわって作り始めたよ。

 普段のお節でそこまでしてないだろ!

 でも、いっか。傍に亜美も居る事だしな。


 亜美達は、やはり体調が体調という事もあり、朝ご飯を食べ終わって横になったら、すぐ眠った。

 最初はソファで寝ていたのばらさんも、人恋しくなったのか、結局亜美の布団に潜り込んで一緒に寝ている。

 亜美なんて、最初はあんなにいがみ合ってたのに、すっかりのばらさんと仲良くなったよなあ。


 おっと、俺は酢和えを作らなければ。人参と大根と柚子を細切りにして、と。

 今年は4人前だし、ちょっと多めに刻んでおこう。


「兄貴ー、数の子皮剥いとくね」

「おー、ありがと信次」


 実は数の子の皮剥きも苦手なんだよな、俺。

 信次はいつも綺麗に剥いてくれるから助かるよ。


 次は伊達巻を作ろうかな。はんぺんと卵、みりんと醤油と砂糖をフードプロフェッサーにかけて、と。

 沢山焼くから、3回くらいこの作業を繰り返す。亜美、伊達巻好きだしな。

 さあ、後は焼くだけなんだけど、既に4つのコンロが埋まってる!

 信次、器用すぎるだろ。同時に4つ調理か。

 しゃあねえ、IHだすか。まさか改築した後も使う事になるとはな。


「あ、ごめんね兄貴。今、煮物と黒豆とたつくりと昆布巻作ってた」

「一気に作るなあ。すげえな」

「コンロ4つあるよな、って思ったら、気合い入ってさ」


 信次の器用さに驚きながらも、俺はIHを繋いで伊達巻を焼き始めた。

 お、いい匂いしてきたな。焼く時のこの匂い好きだなあ。


「むにゃむにゃ。伊達巻の匂いがする」


 亜美、察しがいいな。うん、今焼いてるからな。

 両面焼き色がついたら、巻き()で巻いて、輪ゴムで止めて冷蔵庫へ。

 これを3回繰り返す。亜美、今年も沢山作るからな。


「よし、黒豆以外は完成っと!」


 うお、信次手際がいいなあ。信次、どんどん料理の腕が上がっていくな。


「そういや、もう12時か。亜美達一旦起こすか」

「そうだね。薬飲ませなきゃね」

「昼ご飯も作らなきゃな」

「あ、それは僕に任せて」


 料理をやりだすと時間が過ぎ去るのは早いな。


「亜美、のばらさん、そろそろ起きな」

「んん、おはよ、京平」

「おはようございますわ」

「昼ご飯はこれから作るけど、まずは薬飲んどきな。そろそろ効き目切れる頃だし」


 俺は、亜美とのばらさんに薬と水を渡した。


「んぐんぐ。切れ目なく飲めてるといいな」

「ですわね。切れたら激痛ですものね」


 って事は、まだ薬の効き目はあるって事か。

 ちょうどいいタイミングで飲ませられたな。


「それじゃあ、おやすみ」

「ちょ、ご飯は?」

「身体が怠いのですわ。だからおねんねしますわ」

「おやすみ、京平」


 おいおい、2人共寝ちゃったよ。

 信次に2人のご飯いらないって伝えとかなきゃ。

 と、思ったら。


「あー、やっぱり寝ちゃったか。お茶漬けにしといて良かった」

「信次、読んでたのか」

「だっていつも亜美、2日目の昼は怠がってご飯食べないからさ」


 そう言えばそうだ。仕事ある時でさえ、ご飯食べずに薬飲んでひたすら寝てたもんな。

 昼にお弁当食べれなくてごめんね、っていつも夜に食べてくれてたな。それだって辛かっただろうに。

 そんな亜美と同じくらい生理が重いのばらさんも、亜美と一緒って事か。


 そんな訳で、俺達は茶漬けを啜って、お節の続きに取り掛かった。


「後はきんぴらとかまぼこと、確か鯛もあったよね」

「じゃあ、かまぼこと鯛頼んでもいい?」

「了解」


 一応縁起物だから、鯛も買ってきて貰ったんだ。

 塩焼きにすると美味いしな。


 よーし、伊達巻3本完成。今から金平牛蒡(きんぴらごぼう)作るぞ。

 牛蒡(ごぼう)をささがきにするけど、多めに切っとかなきゃ。

 亜美も信次も、金平牛蒡(きんぴらごぼう)好きだもんな。

 

「かまぼこ切って、鯛は今焼いてるから、銀杏爆ぜさせとくね。あ、金平(きんぴら)だ。楽しみ!」

「今年も沢山作るからな」


 因みに銀杏は、紙封筒に入れて、口を閉じて、40秒ほどレンジでチンすると、簡単に皮が剥けるのだけど、封筒の中で爆ぜるんだよね。

 毎年亜美が面白がってやるんだけど、今年は信次がやるのか。


 さてと、牛蒡(ごぼう)は充分に切れたし、次は唐辛子を刻んでおくか。風味漬けだね。

 それが出来たら強火で一気に炒めながら、油とみりんと醤油を入れて、っと。

 シンプルに牛蒡(ごぼう)だけの金平(きんぴら)なんだけど、これが我が家の定番だ。


「うわあ、いい匂いだなあ」

「ふふ、美味そうだろ?」

「うん、今すぐ食べたくなるよ!」


 武の金平牛蒡(きんぴらごぼう)も美味かったけど、俺も負けないもんね!


「よし、黒豆も煮えたし、鯛も美味しそうだよ」

「じゃ、早速詰めてくか」


 我が家の場合は、お重に詰めれるだけ詰めといて、1月2日以降はタッパーから取り出して食べてる。

 お重、意外と入らないんだよな。

 だから、煮物に銀杏を塗すのもお重だけだな。


「今年は何日で無くなるかな?」

「家族増えたし、いつもより早いんじゃない?」

「え、雑煮もあるのに?」


 でも確かに家族が増えたし、早く無くなるかもな。

 美味しく食べてくれたら、俺達は満足だけど。

 

 こうしてお節をお重に詰めたり、タッパーに詰めたりしてるうちに時間は過ぎ去り、作業を終える頃には15時になっていた。


「へい、信次おつかれ」

「兄貴もね」


 俺達はハイタッチをして、お互いを労う。

 さ、お節を作り終わったから、亜美を抱きしめたいんだけど、のばらさんと寝てるしなあ。

 ちょっとのばらさんに嫉妬した。


「ああ、亜美と一緒に寝たい」

「しー、起こしちゃ可哀想だよ」


 そうだよな、ぐっすり寝てるもんな。

 亜美が友達と一緒に寝られるようになって、お兄ちゃんの立場としてはかなり嬉しいし。


「久々に1人で昼寝すっかな」

「ちょっと、僕の勉強みてよ」

「問題集渡しただろ?」

「もう昨日終わったから丸付けしてよ」

「早!!」


 ◇


「流石信次、全部正解じゃん」

「ここ数日、勉強漬けだったしね」


 難しい問題にしたんだけど、ミスなく解けるようになってきたな。

 勉強も大分成長したな、信次。


「この調子で頑張れよ。はい、次の問題集」

「次の作ってたの?!」

「そりゃあ、勉強合宿用に前もって作ってたさ。じゃあ、昼寝してくるわ」


 朝から長時間料理やって疲れたからな。少しだけ寝かせてもらおう。


「おやすみ、信次」

「あんま寝過ぎないようにね。おやすみ」


 ふわあ、取り敢えず18時くらいには起きようかな。

 1人で寝るの久々だから、すぐには寝付けないかもだけど。おやすみ。

 と、1人で布団に潜り込んで横になっていたんだけど。


「京平、勝手にどっか行かないでよ」

「あ、亜美?! お前寝てたじゃん」


 亜美が俺の布団に潜り込んできた。


「だって、京平の声が聞こえなくなっちゃったから、目が覚めちゃった」

「ごめんな、寂しい思いをさせて」


 欲しがりさん。でも、そんなとこが可愛いよ。

 そんな俺も亜美が居なくて中々眠れなかったよ。

 俺は亜美を抱きしめた。寂しかったぞ。


「この後はずっと一緒にいれるよね」

「だな、お節も完成したしな」

「やっぱ京平の腕の中が1番すき」


 亜美はニコリと笑ったかと思えば、すぐに寝てしまった。何だ、やっぱり眠いんじゃん。

 それとも安心してくれたのかな?


「おやすみ、亜美」


 俺も単純だな。亜美を抱きしめたら、眠たくなってきたな。

 亜美といる時が1番安心出来るし、落ち着いて眠れるんだよ。

 愛してる。亜美が幸せな気持ちで眠れていますように。

亜美「もう勝手に別の部屋行かないでね」

京平「ごめんな、亜美」

信次「まさか亜美がここまでしつこい女になるなんて。生理って怖いや」

亜美「ぶー」

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