お節作り(京平目線)
「煮物は日高昆布と鰹節と干し椎茸で出汁を取って」
やっぱり信次、めちゃこだわって作り始めたよ。
普段のお節でそこまでしてないだろ!
でも、いっか。傍に亜美も居る事だしな。
亜美達は、やはり体調が体調という事もあり、朝ご飯を食べ終わって横になったら、すぐ眠った。
最初はソファで寝ていたのばらさんも、人恋しくなったのか、結局亜美の布団に潜り込んで一緒に寝ている。
亜美なんて、最初はあんなにいがみ合ってたのに、すっかりのばらさんと仲良くなったよなあ。
おっと、俺は酢和えを作らなければ。人参と大根と柚子を細切りにして、と。
今年は4人前だし、ちょっと多めに刻んでおこう。
「兄貴ー、数の子皮剥いとくね」
「おー、ありがと信次」
実は数の子の皮剥きも苦手なんだよな、俺。
信次はいつも綺麗に剥いてくれるから助かるよ。
次は伊達巻を作ろうかな。はんぺんと卵、みりんと醤油と砂糖をフードプロフェッサーにかけて、と。
沢山焼くから、3回くらいこの作業を繰り返す。亜美、伊達巻好きだしな。
さあ、後は焼くだけなんだけど、既に4つのコンロが埋まってる!
信次、器用すぎるだろ。同時に4つ調理か。
しゃあねえ、IHだすか。まさか改築した後も使う事になるとはな。
「あ、ごめんね兄貴。今、煮物と黒豆とたつくりと昆布巻作ってた」
「一気に作るなあ。すげえな」
「コンロ4つあるよな、って思ったら、気合い入ってさ」
信次の器用さに驚きながらも、俺はIHを繋いで伊達巻を焼き始めた。
お、いい匂いしてきたな。焼く時のこの匂い好きだなあ。
「むにゃむにゃ。伊達巻の匂いがする」
亜美、察しがいいな。うん、今焼いてるからな。
両面焼き色がついたら、巻き簀で巻いて、輪ゴムで止めて冷蔵庫へ。
これを3回繰り返す。亜美、今年も沢山作るからな。
「よし、黒豆以外は完成っと!」
うお、信次手際がいいなあ。信次、どんどん料理の腕が上がっていくな。
「そういや、もう12時か。亜美達一旦起こすか」
「そうだね。薬飲ませなきゃね」
「昼ご飯も作らなきゃな」
「あ、それは僕に任せて」
料理をやりだすと時間が過ぎ去るのは早いな。
「亜美、のばらさん、そろそろ起きな」
「んん、おはよ、京平」
「おはようございますわ」
「昼ご飯はこれから作るけど、まずは薬飲んどきな。そろそろ効き目切れる頃だし」
俺は、亜美とのばらさんに薬と水を渡した。
「んぐんぐ。切れ目なく飲めてるといいな」
「ですわね。切れたら激痛ですものね」
って事は、まだ薬の効き目はあるって事か。
ちょうどいいタイミングで飲ませられたな。
「それじゃあ、おやすみ」
「ちょ、ご飯は?」
「身体が怠いのですわ。だからおねんねしますわ」
「おやすみ、京平」
おいおい、2人共寝ちゃったよ。
信次に2人のご飯いらないって伝えとかなきゃ。
と、思ったら。
「あー、やっぱり寝ちゃったか。お茶漬けにしといて良かった」
「信次、読んでたのか」
「だっていつも亜美、2日目の昼は怠がってご飯食べないからさ」
そう言えばそうだ。仕事ある時でさえ、ご飯食べずに薬飲んでひたすら寝てたもんな。
昼にお弁当食べれなくてごめんね、っていつも夜に食べてくれてたな。それだって辛かっただろうに。
そんな亜美と同じくらい生理が重いのばらさんも、亜美と一緒って事か。
そんな訳で、俺達は茶漬けを啜って、お節の続きに取り掛かった。
「後はきんぴらとかまぼこと、確か鯛もあったよね」
「じゃあ、かまぼこと鯛頼んでもいい?」
「了解」
一応縁起物だから、鯛も買ってきて貰ったんだ。
塩焼きにすると美味いしな。
よーし、伊達巻3本完成。今から金平牛蒡作るぞ。
牛蒡をささがきにするけど、多めに切っとかなきゃ。
亜美も信次も、金平牛蒡好きだもんな。
「かまぼこ切って、鯛は今焼いてるから、銀杏爆ぜさせとくね。あ、金平だ。楽しみ!」
「今年も沢山作るからな」
因みに銀杏は、紙封筒に入れて、口を閉じて、40秒ほどレンジでチンすると、簡単に皮が剥けるのだけど、封筒の中で爆ぜるんだよね。
毎年亜美が面白がってやるんだけど、今年は信次がやるのか。
さてと、牛蒡は充分に切れたし、次は唐辛子を刻んでおくか。風味漬けだね。
それが出来たら強火で一気に炒めながら、油とみりんと醤油を入れて、っと。
シンプルに牛蒡だけの金平なんだけど、これが我が家の定番だ。
「うわあ、いい匂いだなあ」
「ふふ、美味そうだろ?」
「うん、今すぐ食べたくなるよ!」
武の金平牛蒡も美味かったけど、俺も負けないもんね!
「よし、黒豆も煮えたし、鯛も美味しそうだよ」
「じゃ、早速詰めてくか」
我が家の場合は、お重に詰めれるだけ詰めといて、1月2日以降はタッパーから取り出して食べてる。
お重、意外と入らないんだよな。
だから、煮物に銀杏を塗すのもお重だけだな。
「今年は何日で無くなるかな?」
「家族増えたし、いつもより早いんじゃない?」
「え、雑煮もあるのに?」
でも確かに家族が増えたし、早く無くなるかもな。
美味しく食べてくれたら、俺達は満足だけど。
こうしてお節をお重に詰めたり、タッパーに詰めたりしてるうちに時間は過ぎ去り、作業を終える頃には15時になっていた。
「へい、信次おつかれ」
「兄貴もね」
俺達はハイタッチをして、お互いを労う。
さ、お節を作り終わったから、亜美を抱きしめたいんだけど、のばらさんと寝てるしなあ。
ちょっとのばらさんに嫉妬した。
「ああ、亜美と一緒に寝たい」
「しー、起こしちゃ可哀想だよ」
そうだよな、ぐっすり寝てるもんな。
亜美が友達と一緒に寝られるようになって、お兄ちゃんの立場としてはかなり嬉しいし。
「久々に1人で昼寝すっかな」
「ちょっと、僕の勉強みてよ」
「問題集渡しただろ?」
「もう昨日終わったから丸付けしてよ」
「早!!」
◇
「流石信次、全部正解じゃん」
「ここ数日、勉強漬けだったしね」
難しい問題にしたんだけど、ミスなく解けるようになってきたな。
勉強も大分成長したな、信次。
「この調子で頑張れよ。はい、次の問題集」
「次の作ってたの?!」
「そりゃあ、勉強合宿用に前もって作ってたさ。じゃあ、昼寝してくるわ」
朝から長時間料理やって疲れたからな。少しだけ寝かせてもらおう。
「おやすみ、信次」
「あんま寝過ぎないようにね。おやすみ」
ふわあ、取り敢えず18時くらいには起きようかな。
1人で寝るの久々だから、すぐには寝付けないかもだけど。おやすみ。
と、1人で布団に潜り込んで横になっていたんだけど。
「京平、勝手にどっか行かないでよ」
「あ、亜美?! お前寝てたじゃん」
亜美が俺の布団に潜り込んできた。
「だって、京平の声が聞こえなくなっちゃったから、目が覚めちゃった」
「ごめんな、寂しい思いをさせて」
欲しがりさん。でも、そんなとこが可愛いよ。
そんな俺も亜美が居なくて中々眠れなかったよ。
俺は亜美を抱きしめた。寂しかったぞ。
「この後はずっと一緒にいれるよね」
「だな、お節も完成したしな」
「やっぱ京平の腕の中が1番すき」
亜美はニコリと笑ったかと思えば、すぐに寝てしまった。何だ、やっぱり眠いんじゃん。
それとも安心してくれたのかな?
「おやすみ、亜美」
俺も単純だな。亜美を抱きしめたら、眠たくなってきたな。
亜美といる時が1番安心出来るし、落ち着いて眠れるんだよ。
愛してる。亜美が幸せな気持ちで眠れていますように。
亜美「もう勝手に別の部屋行かないでね」
京平「ごめんな、亜美」
信次「まさか亜美がここまでしつこい女になるなんて。生理って怖いや」
亜美「ぶー」