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天然で鈍感な男と私の話  作者: 九條リ音
お正月モード
122/238

可愛すぎる亜美(京平目線)

 夜中、目を覚ましたのは俺だった。

 あれ、まだ風呂に入ってないのに、いつの間に寝てしまったんだろう。

 そうだ、亜美に言おうとしてた事が言えて、感極まって泣いちまって、疲れ果てたのと安心して寝ちゃったんだ。

 亜美、一緒に寝てくれてありがとな。抱きしめてくれてありがとな。

 不安定な時はいつもそうしてくれる。


 明日、一緒に風呂入ろうな。亜美の体調が、少しでも良くなりますように。

 今からは俺が亜美を抱きしめるからね。ゆっくり眠って欲しいな。お腹も温めるよ。


 ◇


「んんー、おはよ!」

「ふわあ、亜美、おはよ。体調は大丈夫か?」

「へへ、薬が切れてるみたいで、痛いや」

「じゃあ、薬飲んでからお風呂入ろうか。持ってくるね」


 ロキソニンも大体6時間くらいだから、夜から朝まで持たないんだよな。

 また亜美が真っ青な顔をしてるのを見て、身体が自然と動いた。

 部屋を出ると、すでに信次が朝の家事をしてくれてた。まだ5時半なんだけど、行動が早いな。


「あ、兄貴おはよ。昨日は早く寝たみたいだね」

「ああ、疲れてたみたいで気付いたら、な」

「後、電話なくてお父さんが心配してたよ。兄貴が寝ちゃった事は伝えたけど」

「俺からもライムで謝らなきゃ。折角だから正月に架けようかな」


 俺はお風呂の湯張のボタンを押しながら、信次と話した。

 お父さん、電話もせずにぐーすか寝ててごめんな。

 心配してくれてありがとね。


「あ、亜美に薬飲ませたら手伝うよ。効くまで時間かかるだろうし」


 昨日も信次に全部やらせちまったしな。流石に俺もやらなきゃ。


「いいよ、亜美の傍に居てあげて」

「でも、信次だってのばらさんの傍にいたいだろ?」

「大丈夫、のばらソファで待ってくれてるから」

「うお、本当だ。おはよ、のばらさん」

「寝ながらで申し訳ないですわ、おはようございます。深川先生」


 のばらさんは青い顔をして、俺におはようをくれた。

 それなら、亜美の傍にいようかな。

 俺は亜美の薬と水を持って、部屋に戻る。


「おまたせ、亜美」

「ありがとね、京平」


 亜美は喉を鳴らしながら、ロキソニンと胃薬を飲んだ。


「薬が効くまでのんびりしてよっか」

「うん、傍にいてくれてありがとね」


 亜美は布団に潜り込んで、ちらちら俺を見てくる。なんなんだ、この可愛い生き物は。

 俺は思わず、亜美の頭をポンポンする。

 そして、自然に抱きしめてしまった。


「抱きしめて欲しかったの?」

「うん」


 亜美は小さく頷く。可愛すぎるだろ、俺の彼女。


「薬効くまで寝てていいよ」

「やだ。京平とお喋りしたいな?」

「無理すんなよ。大丈夫か?」

「京平と話してる時間がすきなんだ」


 本当に可愛いが過ぎる、亜美のやつ。

 でも、俺が知ってて亜美が知らない事って、何かあったかな?

 知ってるかもだけど、同僚の話でもするか。


「そういえば、鈴木先生、最近彼女出来たらしいぞ」

「嘘、真面目一辺倒で、女に興味あるとは思わなかった」

「この前半日有給使った時に告白したらしいぞ。幸せが続くといいな」

「ね、続くといいね」


 鈴木先生、内科所属の総合医という事もあって、普段から勉強尽くしで彼女作る暇ないだろうって思ってたんだけど、やる事はちゃっかりやってたようで。

 慌ててシフト変更して、クリスマスは休みにしてあげたしな。


「後ね、朱音から、蓮の事どう思ってるの? って聞かれて、友達だと思ってるよって言ったら、それだけ? ってライムで言われたんだけど、どういう意味なんだろ……」

「落合くんは、それだけじゃないのかもしれないな」

「え、蓮が友達じゃないなんて嫌だよ。大切なのに」


 かなり大ヒントをあげたんだけど、やっぱり亜美は鈍いな。全然気付かない。

 亜美の中では、友達でしかないから解らないんだろうな。

 ただ、亜美は好意を持たれると寧ろ傷付くタイプだから、気付かない方が幸せなのかもだけど。

 それだけ俺の事を愛してくれてるんだよな。本当可愛すぎるわ。


「前作ったお弁当、口に合わなかったのかなあ。メシマズ亜美って思われてたらどうしよう」

「そんな事落合くんが思ってたら、落合くんは俺がとっちめなきゃいけないな」

「京平、とっちめちゃダメ!」


 いや、あれは寧ろかなり喜んでただろ。わざわざあんな馬鹿でかい弁当箱を亜美に渡す位、楽しみにもしてただろうし。

 まあ、そのおかげで俺は亜美の手作り弁当を食べられるようになった訳だから、若干の感謝もあるけど。


「友にごめんねって言ってから、友とも話せてないし、何だか悲しいな」

「ああ、それはそもそもシフト合わないんだから、仕方ないだろ」

「何時もなら、なんかしらのライムくれてたもん。それもなくなっちゃって」


 日比野くんの中で、まだ折り合いが付いてないんだろうな。

 まだ亜美の事が好きで仕方ない、けど、思い続ける事で亜美は傷付く。

 だから引き下がるしかないんだけど……な、状況だよな。

 でも、それを亜美に言ったら傷付くだろう。だから、俺は。


「忙しいだけじゃないか。勉強もあるしな」

「そっか、友も忙しいんだね」


 日比野くんのメンタルも心配だな。

 好きで居る事すら許されないなんて、過酷すぎるだろ。

 今度会ったら、愚痴でも聞いてあげようかな。

 や、俺に愚痴なんて吐きたくないかな?


「あ、薬効いてきた。から、お風呂はいろ!」

「良かった。入ろっか」


 亜美の友人達のメンタルは心配だけど、1番は亜美だからな。

 亜美が幸せになるよう、動いていこう。


「信次、のばら、おはよー!」

「ああ、亜美、おはよ」

「亜美、おはようございますわ」


 のばらさんも亜美と同じタイミングで薬を飲んだのかな? 大分顔色が良くなってる。


「今から風呂行ってくるよ」

「じゃあ、兄貴達が入ったら洗濯機回しとくね」

「ありがとな、信次」


 こうして、俺達は脱衣所に行ったのだけど。


「うわあ、履くタイプの生理パットにしたのに、すごい血みどろだよ」

「明らかに出血多量だな。落ち着くといいんだけど」


 初日でこの量は多すぎる。亜美が苦しむ訳だ。

 今日はもっと苦しむだろうし、傍にいたいのだけど、朝ご飯終わったら、お節作らなきゃだし。

 お節、なる早で作らなきゃ。

 と、考え事しちまった。早く脱いでお風呂に入ろう。


「背中流すからな」

「ありがと!」


 亜美、苦しそうだったし、かなり汗かいてる。

 気持ち悪かっただろうし、綺麗に洗うからな。

 ついでにマッサージでもしとくか。

 って、見慣れたはずなんだけど、やっぱり亜美の(うなじ)を見ると照れるな、俺。


「はうう、気持ちいい」

「はは、それなら良かった。じゃ、交代な」


 ふー、亜美とのお風呂、楽しいんだけど、照れる要素がふんだんにあって身が持たない。

 感情が昂ってしまう。亜美は生理だというのに。

 こういう時は麻生の禿頭(はげあたま)を想像して、気を落ち着かせなくては。

 と、自分の身体を洗いながら思ったり。

 麻生の頭、脱毛までしてるもんな。俺も一緒に連れて行かれたから、(ひげ)を脱毛したけど。

 

「京平、何考えてるの?」

「ああ、麻生の禿頭(はげあたま)を……」

「ちょっと、一緒にお風呂入ってるんだから、私の事も考えてよ?」


 考えちゃうと身体の生理反応がやべえんだよ!

 とは言えないので、「ごめんな」って言っといた。

 寂しい思いをさせてごめんな。でも、俺も男なんだよ、亜美。

 すると亜美は、ぶーと鳴いて、俺を後ろから抱きしめた。


「生理の時は寂しくなるんだよ」


 もうダメだ。俺の負けだよ、亜美。

 耐え切れなくなった俺は、亜美を強く抱きしめた。

 いつだって俺を夢中にさせるのは、亜美なんだよ。


 ◇


「今日も履くタイプにしとこ」

「今日が1番辛いだろうしな。朝ご飯食べたらすぐ寝とけよ」


 薬は効いてるみたいだけど、亜美は疲れ切った顔をしている。

 相当身体が怠いんだろうな、可哀想に。

 

「あ、しまった。パジャマ洗濯機に入れちゃった。もう洗濯機回ってるや」

「そう思って、俺の服持ってきたよ。俺のならゆるゆるで着れるだろ?」

「彼シャツってやつだね。照れるなあ」


 そう言えば、亜美に俺の服着せるの初めてだな?

 亜美は俺の服に着替えると、少しダボっとしてそれがまた可愛いかった。


「京平の服、大きいね」

「まあ、流石に亜美よりは大きいよ」

「やっぱ160センチと180センチは違うなあ」


 ちょっと嬉しそうに亜美が跳ねてる。やっぱり俺の彼女可愛すぎるわ。


「さーて、そろそろご飯出来たかな? 寧ろ手伝おうかな?」

「こら亜美、無理しないの」


 俺達が食卓に向かうと、既に信次が机にご飯を並べ始めていた。

 のばらさんも顔色良く、ご飯を待っている。


「よーし、兄貴達もお風呂から出てきたし、ご飯にしよっか」

「「「「いただきます」」」」


 最近信次に家事やらせてばかりで申し訳ないなあ。

 今日はオムレツとブロッコリー茹でたのとコンソメスープだ。亜美が好きなメニューだな。


「やっぱ信次のオムレツ最高! ふんわりとろける味わいだよ。ブロッコリーにかかってるドレッシングも手作りだね。美味しい。コンソメスープも癒されるわああ」

「んー、最高ですわ」

「また腕あげたな、信次。美味いな」

「ふふ、ありがとね」


 俺との差をまた広げられたな。お節を作る事で挽回したいぞ。


「そうだ、数の子塩抜きしてるからね」

「うほ、楽しみ!」

「亜美は数の子すきだもんな」

「かず、のこ?」


 あれ、のばらさんがキョトンとしてるな? 数の子の話しかしてないんだけど、まさか。


「もしかしてのばらさんち、お節作ってない感じ?」

「おせち? おせちってなんですの?」

「のばらお節知らないのかあ。美味しいの作るから楽しみにしててね」

「食べ物ですのね! 待ってますわ!」


 お、信次が本気の顔になったな。これなら早くお節が出来るかな。

 いや、逆だな。細かい事めっちゃこだわりそうだ。


「のばらはソファで信次達を見てますわね」

「あ、ずるーい! 私も見たいよ」

「2人とも素直に寝なさい」

「のばらはソファで寝ますわ!」

「私も布団持ってこよ!」


 信次、俺達のお姫様は中々我儘だな。

 でも、そんなとこも可愛いよ、な。


「止めるべきなんだろうけど、気合い入るよ!」


京平「亜美、可愛い」

亜美「うひゃ、ありがとね」

のばら「信次、のばらも欲しいのですわ」

信次「のばら可愛い、愛してるよ」

のばら「ありがとうございますわ!」

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