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天然で鈍感な男と私の話  作者: 九條リ音
お正月モード
121/238

京平だからだよ。

 それから私は夢をみた。

 お父さんが緊張しながら私の手を握って、バージンロードを歩く夢。

 お父さんと歩いた先には、京平が笑って待ってくれている。

 京平のタキシード姿、かっこいいなあ。

 夢の中では、信次とのばらも出席してくれた。

 幸せだなあ。皆で幸せになりたいな。


 誓いの言葉で、京平は。


「亜美、起きて」


 ん、起きて? 私は今結婚式してるから、起きてるよ?

 いや待て、これは夢だぞ。亜美。と言う事は、京平のこの台詞って。


「そうだよな、夢だよなあ」

「おはよ、亜美。途中から顔色も良くなったし、安心したよ」

「そう言えば、痛みも引いてる。薬が効いたみたい。後は京平の手が、優しかったから」

「少しでも亜美の役に立てて良かった」


 いつも変に謙遜するもんなあ。腹温めてやったぞ! くらい言ってもいいのにな。

 もっと前向きになって欲しいけど、そんな京平だから守りたくなるんだよ。


「食卓まで歩けるかな?」

「歩けるよ。あれ、てことは、もう、夜?」

「18時だよ。夜ご飯たべよ」


 生理で辛かったとはいえ、よく寝たなあ、私。

 

「亜美の寝顔可愛かったな」

「あれ、京平もしや寝なかったの?」

「亜美を眺めていたかったからさ」


 もー、照れる事を普通に言ってくるなあ。

 じゃあ、ずっとお腹温めてくれてたんだ。


「ありがとね、京平。愛してる」

「ほら、早く食卓行くぞ」


 私はもったりと起き上がった。

 ははん、こやつ、ちょっと照れてるな。

 照れ隠しをしたい京平は、私の手を握って食卓まで一緒に歩く。


「あ、亜美おはよ。顔色良くなったね」

「落ち着いて良かったっす。かなり調子悪そうだったですもんね」

「海里くん、お昼ご飯ありがとね。レバニラ美味しかったよ!」

「完食してくれて嬉しかったっす」


 あれ、そう言えばのばらが居ないなあ。


「のばらはまだ体調良くない感じ?」

「うん、もうちょっと寝たいって」


 同じ薬貰ったのに、良くなるならないは違うみたいだね。

 いや、薬が効いても、怠さとかメンタルとかは治らないからそっちかもしれない。

 私はずっと傍に京平がいたけど、のばらは途中から1人だったもんね。


「信次はのばらの隣でご飯食べたら? 多分のばら、寂しいのもあるんだよ」

「うん、そうするつもり。ご飯は食べられるって言ってたし」

「生理の時って、人肌恋しくなるしね」

「欲しがりさんだな、のばら」


 とは言いながらも、信次何だか嬉しそう。必要とされるのは嬉しいよね。


「じゃあ、早速僕はのばらと食べてくるね」


 信次はそう言って、一足先にご飯を持ってのばらのいる部屋まで向かった。


「のばらさん心配だなあ」

「ね、寝付けなかったのかなあ」

「心配っすね」


 寂しい時に誰もいないと、目だって冴えちゃうよね。悲しくなるもんね。

 のばらの体調が少しでも落ち着きますように。


「よし、血糖測定とインスリン注入完了」

「さ、ご飯食べよっか」

「「「いただきます」」」

「今日の夜ご飯は誰が作ったの?」

「俺と信次の合作。鉄分多めなメニューにしたっす」


 お、それはありがたや。出血量は相変わらず多いからね。

 メニューは砂肝と小松菜の炒め物と、あさりの酒蒸し。うほ、美味しそう!!


「んー、砂肝のプリプリ感と小松菜のシャキシャキ感が合わさるとこんなに美味しいんだね。あさりの酒蒸しもめちゃご飯に合うし!」

「亜美達にはちょうどいいご飯だな。ありがとな」

「喜んで貰えて良かったっす」

「とっても美味しいよ!」


 それに、私達の事を考えて作ってくれたってのが、本当に嬉しいよ。信次、海里くん、ありがとね。

 

「とりあえず俺、今日は勉強終わったら帰るっす。うちのお節作らなきゃなんで」

「瀬尾家は人数多いから大変だよなあ」

「特にねえちゃんの好みがうるさいんすよね」


 (あかり)、好みにうるさいのかあ。どんなのが好きなんだろう。

 ああん。こんなん聞いてると、明日手伝いたくなるよおお。多分無理なんだろうなあ。く、生理め。


「あああ、煮物作りたかった。銀杏封筒に入れて爆ぜさせたかった」

「亜美は2日目、本当に体調悪くなるからなあ」

「ああ、うちのねえちゃんも2日目だけはキツそうっすね」

「明日の夜ご飯はすき焼きだから、楽しみにして休んでな」

「うん、素直に休んどくよ。今だって少し怠いし」


 明日は京平もお節に掛かり切りになるから、のばらと一緒に寝てようかな。

 すきなお節の具材を語り合いながら、眠るのも悪くないよね。


「ごちそうさまでした。じゃあ勉強でも」

「亜美はお風呂入って、すぐ寝なさい。俺も一緒に入るからさ」

「ぶー、勉強なら出来そうなのに!」

「後、ピルとロキソニンと胃薬飲んどけよ」


 いけない、薬はちゃんと飲まなきゃ。

 京平は私の目の前に、薬と水をおいてくれた。


「ありがとね。んぐんぐ」

「低用量ピル、合うと良いんだけどな」

「今回のピルは、三相性ってタイプみたい」

「一口に三相性と言っても色々あるし、最初は頭痛や不正出血もあるだろうから、キツかったらすぐ教えろよ」

「うん、心配ありがとね」


 副作用については、御手洗(みたらい)先生からも説明があったけど、あまりに副作用がキツかったら直ぐに相談しなきゃね。


「ごちそうさまっす。じゃあ、先にお風呂入りますね」

「俺もごちそうさま。いってらっしゃい」


 私は生理だから最後にお風呂入んなきゃな。それまでの時間は、どうしようかな?


「布団でゆっくりしてな」

「勉強は?」

「だから無理すんなって」


 ぶー。って言うより先に、私は京平に部屋へ連行されたのであった。

 私達は布団にごろ寝して、だらりと話し始める。


「最近仕事はどうだ? 虐めとかないか?」

「うん、皆いい人だよ。友達も増えたしね」

「それなら良かった。亜美はどんどん成長してるしな」

「京平にそう言って貰えて嬉しいな」


 少しずつかもしんないけど、成長してるみたいで良かった。これからも頑張るぞ。


「後、無理してないよな?」

「寧ろもっと勉強しなきゃなのに、最近出来てなくて不安なくらいだよ」

「無理してないなら良かった。元は亜美が無理するからいけないんだぞ」

「誰かが居ないと勉強しちゃいけないなんて、難しいよお」


 そう、いい加減このルールはなしにして欲しい!

 私のペースでやりたいのに、そんな時に限って、信次はお風呂に入るし、京平はご飯作り始めたりするからさ。


「でもまた亜美、無理しそうだもんなあ」

「そう言わずにさあ。ちゃんと自分で布団に入るからさ」

「眠たかったらすぐ寝るんだぞ?」

「よっしゃ、ありがと! 生理明けたら頑張るぞ!」


 これで、勉強時間が確保出来るね!

 京平がご飯作ってる時にでも、いま持ってる患者さんの病気を復習したいな。


「頑張る亜美は素敵だな」

「ありがとね。京平の頑張る姿も好きだよ」

「ありがと。本当に辛い時は、また泣かせてね」


 あれ、確かに京平が私の前で泣く事はあったんだけど、泣いてるっていつも言わないのに。


「泣いてるって認めたの初めてだよね」

「そこは素直になろうかなって。でも、亜美の前だけだよ」

「辛い時はいつでもおいでね」

「ありがとな」


 京平は人より傷つきやすくて、更には病んじゃう時もあるけれど、その分いつも頑張ってるから。だから、愛してる。

 泣きたい時は無理しないでね。


「惚れたのが亜美で良かった。病気の事まで受け入れてくれたし、亜美の前だと素直に泣けるし、生きようって思えるし」

「京平だからだよ。だから愛してるんだもん。生きててくれて、ありがとね」


 京平が今まで生きててくれたから、私達は付き合えてるし、幸せなんだもん。

 そんな優しい京平だから、全てを受け止めるし、傍にいるんだよ。


「ありがとな、亜美。亜美に出会えて良かった」


 京平は私を抱きしめて、わんわん泣き始めた。

 ずっと心に溜め込んでいたものが言えたんだね。

 それさえも優しい。私も京平に出会えて良かった。

 私は京平を、ポンポンしながら抱きしめる。


「すー、すー」


 ありゃ、京平ってば泣き疲れて眠ったみたい。

 朝から、私の生理の事で心配させちゃったしね。

 それじゃ、私も寝よっかな。

 私は電気を消して、布団に潜り込む。

 京平にも布団を掛けて、っと。


「おやすみ、京平。愛してる」

京平「亜美が全てを受け止めてくれたから、俺達付き合えてるようなもんだしな」

亜美「違うよ。京平がどんな時でも優しいから、私は愛したんだよ?」

京平「いつもありがとな、亜美」

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