おねんねする亜美
「さ、2人とも、昼になったら薬飲めるから、それまではゆっくり寝てなね」
「のばら、寂しいのですわ。信次と一緒に居たいのですわ」
「私も、京平と居たいな」
私ものばらも、生理の時は甘えたくなるタイプみたいだね。
困らせちゃうのは解ってるんだけど、傍に居て欲しいよね。
「しょうがないな、一緒に寝よ。亜美」
「僕も、ちょっと昼寝したかったから、のばらと寝ようかな」
私達の王子様は、優しく私達の要望に応えてくれた。ありがたいね。
「じゃあ、のばらは僕の部屋にいこっか。よっこらしょ」
「の、のばら歩けましてよ?」
「僕が抱きしめたいの」
のばらはお姫様抱っこで、信次の部屋に連れて行かれた。
「亜美、傍にいるからな」
「ありがと、嬉しいよ!」
私が辛い時にはいつだって傍にいてくれる。そんな京平も愛してるよ。
京平は私を抱きしめながら、お腹も温めてくれた。
「水もあるからな」
「今は、京平が欲しい」
「そっか、このまま抱きしめさせてね」
どんなに辛くても、京平が傍にいたら安心するんだ。すごいね、京平って。
「眠くなって来たや」
「おやすみ、亜美」
「おやすみ、京平」
京平の腕に包まれながら眠れるの、本当にすきだなあ。幸せだなあ。
◇
それから、お腹が痛いながらも、京平に抱きしめられているから気持ちよく眠れて、どれだけ経っただろう。
京平、ずっとお腹を温めてくれたみたい。少し痛みも和らいだよ。
「おはよ、亜美」
「おはよ、京平。お腹温め続けてくれて、ありがとね」
「ん、当たり前のことだから気にすんなよ」
全然当たり前じゃないよ。いつも、本当に優しい。
「いま何時くらいかな?」
「1時だよ。薬飲むついでに昼ご飯も食べよっか」
「やっと薬が飲めるよお」
「じゃあ、ちゃっと作ってくるから待ってろよ」
そっか、信次もお昼寝してるし、ご飯作る人が今いないんだ。
昼寝した信次、絶対起きないもんね。
寂しいけど、薬もご飯も欲しいから待ってなきゃ。
ところが、思ったより早く京平はやって来た。
「お待たせ」
「え、早。もう作ったの?」
「海里くんが昼ご飯作ってくれたんだ。良いとこあるよな」
確かに海里くんのお味噌汁美味しかったし、そこは心配ないだろう。
ひとりぼっちにさせちゃったのに、優しい所もあるんだなあ。
「信次も海里くんが起こしてくれてたしな」
「海里くんマジ天使じゃん」
京平は私のご飯と自分のご飯と、薬を持ってきてくれてた。
ご飯の時でさえ、傍にいてくれてありがとね。
「うほ、炒飯だ!」
「ちゃんとパラパラだし、やっぱ海里くん料理出来るなあ」
「「いただきます」」
うん、海里くんの炒飯、京平のとも信次のとも違うんだけど。
「独特の味わいが核となって、炒飯全体をまとめていて美味しいなあ。しかもパラパラなのが良い!!」
「海老炒飯だな。海老の殻で出汁を取って、それも炒飯に入ってるんだ。小さい海老、奥にしまってたのによく見つけたなあ」
なるほど、海老の出汁かあ。また一つ勉強になるなあ。
「後、亜美に食べさせてあげてって、これも」
「お、レバニラ炒め! いま貧血だから嬉しいな」
海里くん、普段は空気読めないのに、今日はめちゃくちゃ気が効くじゃん。
「灯さんは生理軽い方らしくって、亜美達の状態見て、海里くん、かなり心配してたみたいだな。灯さんから、生理の時によく頼まれるから作ったんだって」
「ほええ、灯も、よく食べてるんだね。このレバニラ炒め」
にしても、灯は生理軽いのかあ。羨ましいなあ。
それでも鉄分不足にはなるから、レバニラ炒めなのかな? 姉弟仲良くていいね。
「うん、レバーの歯応えとニラのシャキシャキ感がすごい美味しい。生理の時ってただでさえ食べ過ぎちゃうのに、完食まっしぐらだ」
「はは、海里くんも喜ぶな、それは」
はむはむ、美味しいなあ。京平と一緒だから、尚更美味しいよ。ありがとね。
でも、私といる事で信次達の勉強合宿が進まなくなっちゃうよなあ。
「今日は、亜美の傍にいるから気にすんなよ?」
「でも、信次達の勉強が……」
「手作り問題集渡しといた。今日明日は自習で、明後日に丸付けだな」
「ああ、よく考えたら、明日は年末かあ。お節作りたかったなあ」
我が家では、年末にお節を皆で作っている。
今日は12/30。もう明日が年末。つまり、生理とモロ被りな訳で。
今年も後わずかだなあ。
「薬が効けばいいけど、貧血や怠さもあるし、無理しない方がいいな。亜美の好きなお節にするから、安心して寝てろよ」
「数の子と伊達巻多めね?」
「ん、了解。お節の黄色いのすきだもんな」
「後ね、きんぴら!!」
「沢山作るからな」
お手伝いは出来なそうだけど、京平と信次が作るお節は楽しみだなあ。
夜には一緒にテレビ見れるように、明日もゆっくり寝とこっと。
「ごちそうさまでした」
「完食できたな。薬飲むんだぞ」
「薬、今度こそ効くといいなあ」
イヴも飲まないよりは良かったけど、痛み残っちゃったからなあ。
仕事の時はこっそりイヴを二倍飲んで何とかしてたけど、京平がいる時はそれは無理な相談で。
あんまりロキソニンは飲まないんだけど、どうかな?
んぐ。ロキソニン60mgを2錠と、ロキソニンの副作用を考慮した胃薬。
効くまでゆっくりしてよ。私はもう一度布団に潜り込む。
「食器片付けてくるな」
ああ、また京平が行っちゃった。ちょっと寂しいな。
京平ってば、自分が寂しい時は行かないでって言う癖に、私が寂しい時は普通にどっか行くからなあ。
寂しいって言えば良かったかな?
でも、食器持ってくだけだぞ。我慢しなさい、亜美。
本当に我儘すぎる、私の本音。常に京平を欲しがってしまう。
「いいんだぞ、弱ってる時こそ甘えろよ」
「京平、寂しかった」
「いっぱい抱きしめるからな」
今日だけでどれだけ本音を読まれた? そんで、いつも欲しがってるものをくれる。
すっぴんパジャマで、全然可愛くない亜美なのにな。優しい。
京平は私をギュッと抱きしめて、また見抜いてくる。
「今の亜美も可愛いよ。可愛くないなんて思うなよ」
「ありがとね。いつも助けてくれるよね」
「本音言っただけ。助けたつもりはないよ」
そう言いながら、京平は私にそっとキスをする。
今日はキスでさえも優しいね。
薬もちょっとずつ効いてきた。から、私も京平に、そっとキスをする。
そしたら、頭をポンポンしてくれた。無理をしないでねって言いたいんだね。
そうだね、身体も怠いしまだお腹も痛むから、ゆっくり寝ようかな。
そもそも抱きしめられた時から、段々と眠たくなって来たしね。
「私、幸せだな。愛してる人の腕の中で眠れるんだもん」
「俺も幸せだよ、亜美」
「おやすみ、京平」
「おやすみ、亜美」
なんで京平と寝てると、こんなに安心するんだろう。
今だってお腹温めてくれてるし、そんな優しい人だからかもしれないね。
だから、今、愛してるんだもんね。
私を幸せにしてくれてありがとね。京平。
京平「ゆっくりおやすみ、亜美」
信次「てか、兄貴の問題集難しいよお!」
京平「ふふ、甘えさせねえからな?」
海里「俺なんて昼飯作って問題集やってんだぞ。彼女もいねえし」
信次「良い出会いがあるといいね」