2人は大丈夫?(京平目線)
亜美が眠ってから凡そ30分後、まずはのばらさんが呼ばれた。
のばらさんも眠ってたらしく、信次が揺さぶって起こしてる。
「のばら、呼ばれたよ」
「んん、少し楽になりましたわ。ありがとね、信次」
その次が亜美かな。顔色はあまり良く無いな。
出血量が多いんだろう。可哀想に。
せめて気持ち良く眠れるよう、俺は亜美のお腹を温め続けた。
亜美に何事もありませんように。
そう祈りながら。
「むにゃむにゃ、京平ありがとね」
何言ってんだよ、お礼を言うのは俺の方だよ、亜美。
いつも傍に居てくれてありがとな。いつも笑ってくれてありがとな。
亜美の存在が、いつだって俺を勇気付けてくれているんだぞ。
「ありがとな、亜美」
◇
「218番のお客様、4番診察室前までお越しください」
おっと、亜美が呼ばれたな。よっこらしょ。
折角寝てるのに、起こしちゃ可哀想だしな。
しばらくは診察室前で待つのだし。
診察室前まで行くと、のばらさんと信次も待っていた。検査の結果待ちかな?
「あら、深川先生。今亜美も呼ばれたのね」
「ああ、どうせ待つだろうから、亜美は起こさずに来たよ」
「亜美の顔、かなり青いですものね」
そういうのばらさんの顔も青いんだけど、座って話せるくらいにはなったのか。
「のばらは子宮の検査を色々して、いま結果待ちだよ」
「エコーとかもありましたわ」
「そっか。色々検査があるんだなあ」
俺もまだまだ勉強不足だな。生理の医学書もポチらねばなるまい。
亜美、検査多くなるから、頑張るんだぞ。傍にいるからな。
「217番の患者様、5番診察室へどうぞ」
「あ、のばら呼ばれましたわ。行きましょ、信次」
「うん、何事も無いと良いね」
信次とのばらさんは、診察室に入っていった。
その次は亜美が呼ばれるかな?
「218番の患者様、4番診察室へどうぞ」
「亜美、起きな。今呼ばれたぞ」
「んん、おはよ。京平」
「おはよ、亜美。スリッパそこにあるからな」
そう、俺達は慌てて亜美達を抱えて出て来たから、亜美とのばらさんの靴を持ち忘れたのだ。
そんな訳で、スリッパを病院から借りといた。
亜美にスリッパを履かせて、俺達は4番診察室に入る。
「こんにちは。検査担当の看護師のさと……って、亜美じゃん。顔真っ青じゃん」
「朱音! いやあ、生理痛が重くてさ」
「佐藤さん内科なのに手伝いかな?」
「そ、御手洗先生に呼ばれてね。もうすぐ先生くるから、亜美はその椅子にパンツ脱いで座って」
パンツ脱いで、ということは……。
「俺は出た方がよさそうだな」
「え、傍にいてよ……」
「いや、でも、亜美の」
そうだぞ、ただの子宮の検査だぞ。亜美の傍にいるって決めたんだから。
でも、だからとはいえ。
「絶対勃つから外に出なさい、深川先生」
「あ、御手洗先生」
「時任さん、男は難しい生き物なのよ」
御手洗先生は、産婦人科の女医さんで、はっきり物事を言う人だ。黒髪のショートヘアがいつも凛々しい。
口答えもしたいんだけど、先輩なんだよなあ。
あ、亜美に何か耳打ちしてる。やめろ、恥ずかしいだろ。
「という訳で、俺は一旦部屋を出るからな」
「う、うん。解ってなくてごめんね」
解らなくて良かったんだけどな!
御手洗先生、昔から俺をいじり倒してくるからなあ。
俺は恥ずかしい思いをしながら、部屋を出た。
部屋を出ると、既に結果を聞き終えたのばらさんが、信次の膝枕でゆったり寝ていた。
「兄貴追い出されたの?」
「まあそんなもん、のばらさんどうだった?」
「出血量は多いけど、病気ではないみたい。低用量ピルとロキソニンと胃薬を貰ったよ」
「そっか、まずは安心だな」
のばらさんに病気が無くて良かった。後は亜美だな。何もないといいんだけど。
「信次、先に帰ってていいぞ。のばらさんも布団で寝かせた方がいいだろうし」
「じゃあ、そうしようかな。タクシー呼ぼ」
信次はタクシーアプリでタクシーを呼ぶと、安心した顔でのばらさんを見つめていた。
そうだよな、心配だったよな。
「深川先生、もういいよー。戻っておいで」
「お、呼ばれたからいくな。のばらさんに無理させんなよ」
「帰ったらすぐ休ませるよ」
さて、次はどんな検査かな?
呼ばれたってことは、普通の検査なんだろうけど。
「次はエコー検査ね。2種類やるからね」
子宮と卵巣をエコーでみて、大きさを確認する検査のようだ。
子宮に関しては、プローブとよばれる器具を膣内に挿して確認するようで、卵巣は、お腹に当てる経腹エコーで見るようだ。
おい亜美、変な事考えるんじゃ無いぞ。顔に出てるぞ。
「じゃあ亜美、プローブを膣内に挿してね」
「う、うん……緊張するなあ」
「えー、深川先生のあそこはプローブ並、と」
「御手洗先生、黙りましょ」
なんのかんのあったが、エコーを診る事は出来た。
「次はX線検査ね。これで最後の検査よ」
亜美が着替えて検査機の前で寝そべると、機械はぐいぐい動いていき、あっという間に亜美のレントゲンを撮影する。
こうして検査は無事終わった。
「はいお疲れ様。検査結果出たらまた呼ぶからね」
俺達は再び診察室前で、検査結果が出るまで待つ事になった。
「ふひー、疲れた」
「検査多かったもんな。帰ったらすぐ寝ろよ」
「うん、そうする」
「水飲んどけよ。まだ痛いんだろ?」
「ありがとね、正直ずっと痛くて」
だろうな、顔真っ青なまんまだもん。
亜美の症状が少しでも落ち着くといいな。
「少し膝枕で寝てもいい?」
「おいで。ゆっくりおやすみ」
「ありがと。おやすみ京平」
少しでも、亜美の体調が落ち着きますように。
「おやすみ、亜美」
◇
「218番の患者様、5番診察室へどうぞ」
「亜美、呼ばれたぞ」
「んん、おはよ、京平」
「おはよ、亜美。立てるか?」
「うん、大丈夫」
亜美に何事もありませんように。
そう祈りながら、俺達は診察室へ入った。
「検査お疲れ様でした。生理痛辛い中、ありがとね。無事検査の結果が出ました」
「亜美は、大丈夫なんですか?」
「ええ、特に病気は無かったわ。けど、出血量も多いみたいだし、低用量ピルでの治療をしたいのだけど、主治医の深川先生、大丈夫かしら?」
「はい、亜美は血糖コントロールも良好ですし、問題ありません」
ああ、なるほど。俺、この確認の為だけに呼ばれたんだな。
本来なら、主治医に確認を取ってから治療になっちまうもんな。
「それと痛みも強いようだから、ロキソニンと胃薬出しとくわね。強めのイヴを飲んだって聞いてるから、イヴの効き目の切れる12時頃から飲んでね」
「今のんじゃあ……」
「ダーメ。痛み止めを2種類飲むのは危ないのよ?」
亜美、相当痛むんだろうな。傍にいるから、もう少しだけ頑張ろうな。
「注意事項としては、最初は不正出血や頭痛などの副作用が起きやすくなるわ。3ヶ月は様子をみて欲しいけど、あまりに合わないようならすぐ病院に来てね」
「解りました」
「ピルは今日から毎日飲んでね。また来月、次の深川先生の診察の日に予約入れとくわね。深川先生の診察が終わったらおいでね」
「はい、有難うございます」
確かにそれなら、確実に診察できるもんな。
「今日、明日は出血量も多いだろうし、ゆっくり休んでね。次回生理の時は、無理せず生理休暇使ってね。院長にも話しておくから」
「何から何まで有難う御座います」
「じゃあ、また来月ね」
「有難うございました」
そう、亜美生理重いのに、今まで休んで無かったんだよな。
御手洗先生からみても、重い生理ではあるようだから、来月はしっかり休めよ。
こうして、亜美の診察は終わった。
「タクシー呼ぶから待ってろよ」
「膝枕がいいな」
「いいよ、おいで」
ふう、亜美に病気が無くて良かった。
でも、つまりは生理の重さとは長い付き合いになるもんな。
無理はしないで欲しいな。
よし、タクシーアプリでタクシーは呼べた。もうすぐ来るみたい。
俺は恥ずかしがる亜美を抱えて、タクシー乗り場まで向かうのであった。
膝枕のが恥ずかしいだろうになあ?
京平「2人とも病気とかなくて良かったよ」
亜美「長い間抱えなきゃだけど、向き合っていかなきゃ」
京平「帰ったら、ゆっくり休めよ」
亜美「京平と一緒に寝たいな」
京平「うん、一緒に寝ような」