愛し合う。
私達が家に帰ると、京平はジャージに着替えて走りに行こうとしていた。
もー、勉強の続きするんじゃなかったの?!
なんだかんだでマイペースだな、もう!
「あ、私も行く!」
「お、頑張るじゃん。一緒に行こ」
一緒に走るって約束だから、そりゃ走るよ。
忘れちゃってんのかな、京平。
「じゃあ、僕達はその間、順番にお風呂入るね」
「勉強もちゃんとするんだぞ」
「そこはお任せくださいな」
お腹いっぱいで元気になったのばらは、やる気満々で笑ってる。
「あ、追い焚き押してくるね!」
温いお風呂がボタンひとつで温かくなるなんて、本当に不思議だよね。
私はドキドキしながらボタンを押した。
『熱め』
「うお、また喋った!」
すると、お風呂はボコボコし出す。何これ?
「うわ、お風呂を再度沸かしてくれてんだね」
「ビビった。また見に来たんだね。信次」
「僕だって初めてだもん。気になるよ」
この気持ちは私達にしか解らないもんね。
こういう時間もなんだか愛しいや。
「おっと、早く着替えなきゃ」
いけない、お風呂に見惚れてる場合じゃなかった。
私は部屋に戻って、ジャージに着替える。
このジャージ、やっぱり可愛いな。やる気上がって来たぞ。
「お待たせ、京平!」
「じゃ、行こっか」
「「いってきまーす」」
「「「いってらっしゃーい」」」
今日も寒いなあ。走って暖かくならなきゃね。
いつか京平と同じ位走れるように、毎日を重ねていかなくちゃ。
そんな事を考えてたら、京平が手を握ってくれた。
いつも走るとこまでまだあるし、今は京平で温まろう。私も手を握り返す。
「今日も冷えるな。ゆっくり走ろうな」
「うん、無理は身体に良くないしね」
いつも私の事を見てくれて、寄り添ってくれる。
ありがとね、京平。
「なんだかんだ、亜美といると落ち着くわ」
「うん、私も。ずっと側にいるね」
寒かったからかな。私は手を繋ぎながら、寄り添って歩いた。
お互いちょっと寂しかったのかな。走るとこに着いても、お互いすぐに手を離せなくて。
そうなると、私達のする事は決まっていた。
「亜美……」
「京平……」
私達はお互いに抱きしめあって、キスをする。
お互い寂しい時は、自然にこうなるんだよね。
「愛してるよ、京平」
「俺もだよ、亜美」
おかしいね。一緒に暮らしてるし、毎日会ってるのに、いつだって欲しくなっちゃう。
片思いしてる時は大丈夫だったのに。どんどん弱くなってるなあ。
「俺もそうだよ、いつだって亜美が欲しくなる。落ち込まなくていいぞ」
「ありがとね。ずっと側にいてね」
私達はまた抱きしめあって、キスをした。何度も、何度も。
◇
「亜美も走れるようになってきたな」
「少しずつだけど、成長はしてきたかな」
「継続が大事だからな。これからも頑張ろうな」
私達はお互いの寂しさを拭った後、軽くジョギングをした。すっかり遅くなっちゃったよ。
京平はまた手を繋いでくれた。
「汗だくなのにありがとね」
「お互いさまだろ。繋ぎ返してくれてありがとな」
また優しく笑ってくれる。京平の笑顔に、いつも力を貰ってるよ、私。
私を笑わせてくれるのは、いつだって京平なんだよ。
私達が家に着いた頃、信次達は勉強の真っ最中。すごく集中してるや。
これは静かに入らなくては。そろりそろりとリビングに入る。でも。
「「「おかえりなさーい」」」
「普通にバレたか。ただいま」
「ただいまー!」
どんな時でも挨拶を忘れないのは、我が家の良い所だよね。今日は海里くんもいるけど。
「皆お風呂入ったから、兄貴達も入って来なよ」
「そうするわ。亜美、行こ?」
「うん!」
やった、今日は一緒にお風呂入れる。嬉しいな。
私達は着替えを脱衣所に置いて、お風呂に入る。
「亜美、やけに嬉しそうだな」
「だって最近、京平とお風呂別々で、寂しかったんだもん」
「ごめんな。これからは一緒に入ろうな」
絶対だよ? と、私は呟きながら、2人で指切りげんまんした。
ひとりぼっちのお風呂が寂しくなるくらい、私は2人でのお風呂が大好きなんだよ。
またシフトがバラバラになったら、そうもいかないのは解ってるんだけどさ。
そんな約束をした後、背中を流しあったり、シャンプーで髪型を自由自在に変えてみたり。
京平とだから面白いんだろうな。
私達は湯船に浸かった。
「亜美、おいで」
「うん」
京平は私を呼ぶと、後ろから抱きしめてくれた。
安心するなあ。落ち着くなあ。癒されるなあ。
「ごめんな、寂しい思いをさせて」
「私もこんなに寂しくなるなんて思わなかったよ」
「日に日に、亜美が欲しくなるよ」
「私も。毎日増してってる」
そっか、必要としてるのはお互い様なんだね。
京平に必要とされるのは嬉しいな。
「これからは我慢せずに、ちゃんと言えよ」
「うん、ちゃんと言うね。京平もだよ?」
「俺の場合、我慢出来なくて苦労しそう」
我慢しなくていいのになあ。あ、でも、時と場合によるのか。
大人ってそういう部分が大変だよね。
「この後、いいかな?」
「信次達の勉強見なくていいの?」
「今、頭の中、亜美でいっぱいだもん」
「しょうがないなあ、いいよ」
自分の気持ちに正直に生きてるよね、京平って。
そんなとこも愛してるよ、京平。
◇
それから私は愛を確かめ合って、繋がって、キスをしたり、抱きしめあったり。
信次達が勉強しまくってる中、欲望のままに生きてるね、私達。
でも、そんな時間が愛しいんだよ。京平と一緒だから。
「ありがとな、亜美」
「私もありがとね、京平」
繋がった後も、私達の気持ちは昂っていたから、キスが止まらなかった。
とろけあう感覚が愛しくて、愛しくて。でも。
「なんだか、眠くなってきたかも」
「続けて運動したしな。もう寝ちゃおっか」
私達は着替えて、布団で抱きしめあった。
京平の腕の中は、やっぱり落ち着くなあ。
そして、今日は京平の両足も、私を抱きしめてるみたい。温かいなあ。
「俺も眠くなって来た。おやすみ、亜美」
「愛してるよ、京平。おやすみ」
愛してる。一緒に眠れて幸せだな、私。
亜美「すー、すー」
信次「僕達が頑張ってる中、羨ましいな」
のばら「お受験の為ですわ、信次!」
信次「僕だってのばらと……なんでもない」
のばら「合格したら、ね」
信次「頑張るぞ!!」