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天然で鈍感な男と私の話  作者: 九條リ音
クリスマス事変
102/238

2回目のデート

「よし、プレゼントは置けたな。今日は信次も寝てくれたし。喜んでくれるといいな」


 ◇


「うーん、よく寝た!」


 昨日早く寝たのもあって、アラーム無しで5時に起きれたぞ。

 信次、大丈夫かなあ。泣いてたよね。

 京平に俺が行くからいいよ、って言われて、慰めには行けなかったけど、滅多に信次は泣かないから、やっぱり心配になる。

 まだ5時なのもあって、京平は気持ちよさそうに寝ていた。早いから寝かせといてあげよ。


 おや、プレゼントが2つ置いてある。

 そうだ、昨日はクリスマスイブ。あちゃあ、私置き忘れてたよ。

 京平のだけでも、今から置いとこ。

 中身は皆で一緒に見ようっと。

 信次には、直接プレゼント渡さなきゃ!


「信次、おはよー!」

「亜美早。おはよ」

「信次、遅くなってごめん。クリスマスプレゼント!」

「寝てる時に置いて欲しかったな、ありがと」


 信次は笑いながら受け取ってくれた。


「兄貴起きたら、兄貴のと一緒に開けるね」

「ありがとね。後、昨日泣いてたでしょ。大丈夫?」


 すると信次は少し恥ずかしそうな顔をして、応えてくれた。


「うん、兄貴が泣かせてくれたから、もう大丈夫だよ。亜美も心配してくれてありがとね」

「何で泣いてたの?」

「亜美にはまだ内緒。いつか言うから」


 ぶー。私には内緒って、なんか除け者にされたみたいな気持ちになる。

 でも、信次の気持ちの問題だろうし、無理強いは出来ないしな。


「私もお弁当作ろうか?」

「大丈夫、もう3つ作ってるから。洗濯も焦る必要ないし、亜美は兄貴を抱きしめてあげて」


 確かに京平は昨日も落ち込んでいたしなあ。少しでも、京平を癒したい。

 ここはお言葉に甘えようかな。


「じゃあ、もうちょい寝てるね。ありがとね」

「おやすみ、亜美」

「おやすみ、信次」


 そんな訳で部屋に戻った私は、ギュッと京平を抱きしめた。

 京平の寝息が、何だか心地良い。

 広い肩幅と温もりが、寧ろ私を安心させてくれる。

 いつでも私は京平の味方だからね。


 私が抱きしめたら、京平も寝ながらではあるんだけど、抱きしめ返してくれた。

 いつだって、受け止めてくれてありがとね。

 気付いてくれてありがとね。愛してるよ。

 私はそっと、京平の唇にキスをした。


 ◇


「じゃあ、お仕事頑張ってね。のばらさん」

「信次くんも、夜からのバイト頑張ってくださいまし」


 むにゃむにゃ、のばらの声がする。

 そっか、お弁当取りに来たのか。のばらって今日確か……中番じゃん!

 やば、寝過ぎた。私が慌てて飛び起きると、京平も欠伸をしながら起きて来た。


「ふわあ、おはよ。亜美」

「おはよ、京平。まだ眠い?」

「や、充分眠れたよ。ありがとな」


 京平は私を抱きしめてくれた。お礼言われる事なんて、何もしてないんだけどなあ。

 でも、やっぱり京平に抱きしめられるの好きだなあ。心がふわっと安心するの。

 私も京平を抱きしめた。


「落ち込んでたけど、亜美が側にいてくれると安心出来るよ。ありがとな」

「それなら良かった。今日は一緒に楽しく過ごそうね」

「俺達が付き合って、初めてのクリスマスだもんな」

「じゃあ、そろそろプレゼント持って、皆で開けよ」


 これも多分我が家だけかもしれないけど、プレゼントは皆で一緒に開けるんだ。

 何でかって言われると困るけど、こんな時間も私は好きだよ。


 私達はプレゼントを持って、リビングに向かう。

 ちょうど信次も、リビングに居た。


「おはよ、兄貴、亜美」

「おはよー。信次」

「信次、おはよ」

「お、そろそろ開ける? 楽しみ!」


 皆考える事は一緒だね。それぞれがプレゼントを持って、ソファーに腰掛ける。


「じゃあ、せーので開けよ。せーの!」


 私の掛け声で、皆プレゼントを開け始めた。

 これは誰のかな? うさちゃんの団扇と、来年から使える手帳だ!


「ああ、それ僕から。亜美、まだ手帳買ってないなあって思って。団扇もそれなら使えるでしょ?」

「ありがとね、信次! 信次が今開けたのは、私のだね」

「医学書だ! 今月結構使っちゃって、医学書買えなかったから嬉しいな。ありがとね」

「俺のは、マグカップだ。これは信次かな?」

「うん、兄貴の小さかったから、おっきいの買ったよ!」

「コーヒー沢山飲めるから嬉しいや。ありがとな」


 と言う事は次で私と、京平のプレゼントがお目見えってことだね。

 京平のなんだろ? 箱自体は小さいのだけど、かなり嫌な予感がする。

 いいや、開けちゃえー!!


「お、亜美は冬用のパジャマか。ありがとな」

「兄貴……!」

「京平……!」

「ん、どうした?」

「どうしたじゃないよ!!」


 何と、京平が私にプレゼントしたのは、お風呂の改造工事を行う案内書。つまり、発注済みと言う訳で。


「風呂沸かすの、コレで楽になるだろ?」

「そうだけど!」

「因みに僕のは、キッチンの改造工事をする案内書」

「2人とも頑張ってるからな」


 京平、私達のプレゼントにどんだけお金掛けてんのよ! 明らかに高額すぎるよ。

 それがプレゼント出来ちゃうくらい稼いでいるのだろうけどさ!


「はい、お礼は?」

「ありがと! 京平! 私、お風呂溢れさせちゃうから嬉しいよ!」

「キッチンも広くなると使いやすいね。ありがとね」


 でも、何だかんだで私達が欲しかったものなんだよね。ありがとね、京平。


「じゃ、朝ごはん食べよ」

「僕は昼ご飯だけど、準備するね」

「あ、信次。昨日の余ったやつ食べるから出しといて」


 確かに京平は昨日イブのご飯食べてないから、余ってるはずだよね?


「あ、それなんだけど、のばらさんと楽しく食べきっちゃった。ケーキ以外」

「マジか。結構量あったと思ったんだけど。楽しく食べてくれたんなら良かった」

「じゃ、私達はデザートにケーキ食べようね」


 信次とのばらの食欲にはびっくりだけど、それだけ楽しい時間を過ごせたみたいだね。

 そうなると、ますます信次の泣いてた理由が解らなくなるのだけど、ね。


 ◇


「お待たせ、京平!」

「お、今日も可愛いじゃん」

「今日の亜美は、プレゼントに包まれてるね」


 そう、服はのばら。真っ赤なワンピースがおしゃれ。ブレスレットは蓮、イヤリングは友、髪飾りは朱音と、皆が選んでくれたプレゼントを身に纏ってみた。


「じゃ、行こっか」

「おう、任せとけ」

「いってらっしゃーい」

「「いってきまーす」」


 京平は、優しく手を繋いでくれた。私も、笑って握り返した。久々のデートだし、楽しむぞ!


「で、どこにいくの?」

「そうだなあ、しばらくは亜美と一緒に歩きたいな」

「奇遇だね。私もそうしたかったの」


 一緒に手を繋いで歩ける機会ってそんなに無いし、ゆっくりのんびり一緒に過ごしたいな。

 京平といれば、どこでも楽しいしね。

 そんな訳でご近所の、樹々が生い茂る公園を歩く事にした。

 森林浴って言うのかな。気持ち良いや。


「たまには自然に触れるのもいいな」

「うん、なんか癒されるよね」


 樹々のざわめきだったり、木漏れ日だったり、身近な公園なんだけど、ゆったり2人で歩くと、本当に安心できるんだ。

 ね、京平とだからだよ。愛してるよ。


「あの木陰でちょっと休もうか」

「うん、いいよ」


 あれ、京平もう疲れたのかな? おじさんだからしょうがないか。若くないもんね。

 でも、私が座ると、京平は私の膝に頭を乗せて来て、ニヤリと笑った。


「亜美に膝枕して貰いたかっただけ」

「もう、甘えん坊なんだから」


 いいよ、京平。いっぱい甘えてね。京平は頑張ってるもんね。

 木陰はちょっと寒いけど、京平が私に触れてくれてるから、温かいよ。


 あれ、京平寝てるや。疲れちゃったのかな?

 毎日頑張ってるもんね。寝かせといてあげるね。

 私は京平をポンポンしながら、優しい気持ちに包まれていた。

 ずっと側にいるからね。安心してね。

 ふわあ、私も京平の顔を見てたら、眠たくなって来たなあ。おやすみ、京平。


 ◇


「ふわあ、いつの間に寝たんだ、俺。亜美、そろそろ起きよっか」

「ふわああああ、京平、おはよ」

「おはよ、亜美。寝かせてくれてありがとな」


 今は、えっと15時か。1時間くらい寝てたのかな?

 うう、少し冷えてきたなあ。


「寒くなってきたな。どこいこうか?」

「京平と、イチャイチャしたい……です」

「奇遇だね。俺も。後、敬語禁止だぞ」


 いつも夜にそういう事するから、ゆっくりまったり京平と交わった事ないんだよね。時間なくて。

 京平にもいつも気を使わせちゃうし。

 だから、ゆっくりじんわり、したいなあ。って。


「そういうとこってどこにあるんだろ?」

「区内ならあるんじゃね?」

「じゃ、駅までいこう!」


 私達は手を繋いで、駅までの道を歩いてく。

 京平、なんだか楽しそう。そんな顔を見てると、私も楽しくなってくるよ。

 色々あったけど、私、京平に会えて良かった。

 私の病気も、京平に会う為になったんじゃないかな? って、思っちゃうくらい。

 そう思うと、病気も愛しくなるよね。


「私、糖尿病になって良かったかもしんない」

「ん、急にどうした?」

「だって、病気のお陰で京平に会えたんだもん、私」

「確かにな。でも、亜美には健康でいて欲しいから、治療は怠るんじゃないぞ」

「勿論!」


 人生には限りがあるけど、めいいっぱい京平と居たいもん。その為にも、治療はしっかりやらなきゃね。


「こういう時間も愛しいよ、京平」

「ずっと側にいるからな、覚悟しとけよ」


 私は頷いて、京平の手を少し強く握る。


「私も、ずっと側にいるよ」

「ありがとな、心強すぎるよ」


 私ね、京平と信次は手離さないって、もうずっと前から決めてるから。

 だって、家族だし、愛してる人達だから。

 何があっても味方だし、助けるからね。


 ◇


 それから私達は、区内のラブホテルに行って、お互いに抱きしめて、愛を確かめ合った。

 いつもみたいに時間を気にしなくていいから、まったり幸せになれたよ。

 とろけるような優しさに包まれて。


「幸せだよ、京平」

「うん、俺も」


 愛を確かめ合った後、京平は腕枕をしてくれた。京平の腕枕、好きだなあ。

 お互い休みながら、まったりする。

 落ち着くんだよね。腕枕。


「疲れたか、亜美」

「ううん。腕枕落ち着くからさ」

「でも、ゆっくり休みな。無理はすんなよ」

「ありがとね。まったりしとく」


 京平はギュッと抱きしめてくれて、頭をポンポンする。


「もー、眠たくなるじゃん」

「寝てていいぞ」

「やだ、もっと一緒にまったりしたい」

「我儘だな、でも俺もそうしたいな」


 そんな訳で、私達はまた愛を確かめ合って、お互いに疲れて、お互いを抱きしめあった。


「京平、愛してる」

「俺もだよ、亜美」


 お互い笑い合いながら、抱きしめ合ったり、キスしたり。

 幸せだなあ、私。ずっとこうしてたい。

 私も京平を幸せに出来てるといいなあ。


「と、そろそろチェックアウトの時間だな」

「まったりしてると時が過ぎ去るのは早いよね」


 私達は慌てて着替えて、チェックアウトを済ませた。

 京平が全部出そうとしてたから、ちゃんと割り勘にしたよ。


「全然俺が出すのに」

「私も稼いでるんだし、甘えてばっかは嫌だよ」

「ありがとな、亜美」

「この後は、どうするの?」


 って、私何も考えてないじゃん。なんか考えとかなきゃダメでしょ、私。


「実は、クリスマスディナーを予約してあるんだ」

「嘘、ディナー! 初めて聞く単語」

「亜美に喜んで貰いたくて」


 私達家族は、滅多に外食しないし、ましてやしたとしても、お財布に優しいとこにしか行かないから、ディナーなんて生まれて初めてだった。

 

「どんなのなんだろ、すごい楽しみ!」

「予約しといてなんだけど、俺も経験ないから楽しみだな」


 お互い初めましてのディナーなんだね。2人で楽しく食べようね。


「今から歩けばちょうどいい時間になるから、行こうか」

「うん!」


 私達はまた手を繋いで、ディナー会場のホテルまで歩いていく。

 ホテルに併設されてるレストランのディナーみたい。なんか豪華だなあ。


「信次に申し訳ないなあ、なんか」

「実はこのディナー。信次が俺達の為に予約してくれたんだ。たまには亜美を幸せにしてあげて、って」

「え、そうなの。信次にも帰ったらお礼言わなきゃ」

「本当なら、せめて1週間に一度くらいはデートしたいだろうに、俺が寝てばかりで滅多に出来なくてごめんな」


 私は首を横に振る。


「京平の体調のが大事だよ。だっていつも頑張ってるもん。ありがとね」

「亜美の優しさに甘えてばかりだな、俺」

「甘えてよ、京平の事は私が守るから」

「亜美も甘えろよ。俺だって亜美の事、守るから」


 京平ってば、私は既に甘えさせて貰ってるし、守って貰ってるのに。

 そんな優しい京平だから、私は心から守りたくなるんだろうな。


「でも、毎週昨日くらいに寝れば」

「不健康だよ。ご飯食べずに寝るなんて。昨日で最後にしてね」

「亜美には敵わないな。ありがとな」


 そりゃデートもしたいけど、京平のが大事だよ。

 私は京平が笑ってくれてるなら、それでいいんだよ。


 そんな話をしている内に、目的地のホテルへ辿り着いた。


「うわああ、高級ホテル!」

「レストランは30階みたいだな」

「夜景が綺麗そうだね」

「信次に感謝だな」


 私達はエレベーターで、一気に30階まで登っていく。

 エレベーターはガラス張りで、そこまでいく夜景も綺麗で、京平と笑い合った。


「なんか緊張してきた」

「レストランに行くだけなのに?」

「こんな高級レストラン来るの初めてだからさ」


 京平の手がちょっと震えてる。なんか可愛いな。


「さ、行こ!」

「お、おう」


 レストランに入ると、ウェイターさんが私達に話し掛けてきた。


「いらっしゃいませ」

「予約してた深川です」

「深川様ですね、こちらへどうぞ」


 ウェイターさんは、私達を夜景の見える特等席に案内してくれた。

 信次、席まで良いところを予約してくれたんだな。競争率激しかっただろうに。

 優しい弟を持って幸せだよ、私。


「うわああ、夜景むちゃむちゃ綺麗だよ」

「亜美と綺麗な夜景を見れて、幸せだな」


 夜景を眺める京平がとても綺麗で、うっとりしてしまう。

 日に日に京平への愛してるが、高まっていくよ。


「深川様、最初のドリンクは如何なさいますか?」

「お酒は飲めないので、ノンアルコールのもので。亜美は好きなの飲みな」

「え、じゃあ、赤ワインを」

「かしこまりました。少々お待ち下さい」


 毎度ながら、私だけ飲んじゃって申し訳ないなあ。

 でも、私がノンアルたのむと、京平もっと不機嫌になるんだよ。優しいよね。


「さ、今の内に血糖測定とインスリンな。カロリー高いだろうから、多めにな」

「ディナーだもんね」


 血糖値は85。運動したから良い感じ。

 ディナーだからインスリンは多め、っと。

 ディナーの内容が解らないから、糖分計算出来ないや。足りなかったら、後で追加しなきゃ。


「お待たせしました。赤ワインと、ノンアルコールの赤ワインです」

「ノンアルの赤ワイン、ありがとうございます」

「赤ワイン、ありがとうございます」

「それじゃ、乾杯しよっか」

「「乾杯」」


 2人でいっぱい楽しもうね、京平。

のばら「亜美達楽しんでるみたいですわ」

信次「苦労したけど、予約取っといて良かった」

のばら「亜美、全然デート出来てないみたいだし、たまには楽しんで欲しいのですわ」

信次「兄貴の体調を気にするからなあ、亜美」

のばら「そんな亜美だから、だいすきなのですわ」

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