繋がり
とてもみじかいですよ〜
小早川 加藤小西が 世にあらば 今宵の月を どう見るらん
寺内正毅
皆はこの詩を知っているか。これは、内閣総理大臣にもなった寺内正毅が、朝鮮総監部、総督府についていた時に詠まれた詞だ。(朝鮮併合の時の喜びを表したものとされる)僕はこの詞が大好きだ。別に僕は詩的な表現が得意だったりする訳では無いから、文章の表現が好きな訳では無いし、特段歴史が得意だったり、好きな訳でもない。じゃあ何故なのか、繋がりを感じるからだ。安土桃山時代の武将たちと、近代を生きる人々の繋がり。僕は人と人、今と昔、その繋がりを感じられるものが大好きなのだ。
そして僕とあの子、もちろん僕たちにもちゃんと繋がりはある。いつも一緒に登下校しているし、クラス内でも話す。いつしかクラスでは、僕とあの子が付き合ってるなんて噂もできているらしい。
クラスでの噂話、何気ない会話、毎日の登下校。これこそが、僕たちが繋がっているという証拠なのだ。嗚呼、神さま仏さま天皇陛下、僕をあのこと同じ時代に産んでくれてありがとう。繋がりを感じさせてくれてありがとう。
おそらく、普段から僕は真面目にしているから繋がりをもたせてくれているのだろう。これからも真面目に生きよう、そう思ったのに。
僕は日課の夜の散歩をしていた。夜の散歩と言っても、僕は学生だからそんなに遅くまでは外に出られない。だから、8時9時ぐらいの比較的早い時間を散歩しているのだ。僕は、いつものように比較的人通りの少ない道で、小さく鼻歌を歌 散歩していた。通りを曲がったその時、僕は見てしまった。通りで男に絡まれているあの子を。僕は怖くなってその場から逃げようとした。ふと下を見ると、都合よくトンカチが落ちていた。僕はなぜ落ちているかなんて気にする間もなく男に向かって走り出し、大きく振りかぶった。
僕の手に大きな衝撃と不快感がが走った。男は一言「うおっ...」と声を上げて地に伏せた。今この瞬間、僕は彼とこの世界との関係を断ち切ってしまったのだ。彼はそのまま動かなかった。僕は事の重大さに気がついた。どうしよう。本来、こんな大切なことは時間をかけて決めるはずなのに、僕は人の生死をあんな一瞬で決めてしまったのだ。そしてさらに僕を絶望させたのは、人が、僕の好きな人の目の前で殺してしまったことだ。これで僕とあの子の繋がりは切れるだろう。僕はこれから人殺しのレッテルを貼られ、前科者として生きる。ずっと真面目にやってきて、少しづつ仲良くなれたのに。嗚呼、神さま仏さま天皇陛下、どうしよう。僕の視界は、夜なのも相まって真っ暗だった。様々な場所につながっていたはずの僕の糸はほとんどが切れていた。
しかし1本赤黒い――――――
「2人だけの秘密だね♪」
そんな声が聞こえた。後ろから抱きつかれた瞬間、僕に赤黒い糸がぐるぐると巻きついてきた。
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小早川 加藤小西が 世にあらば 今宵の月を どう見るらん
寺内正毅
皆はこの詩を知っているか。これは、内閣総理大臣にもなった寺内正毅が、朝鮮総監部、総督府についていた時に詠まれた詞だ。(朝鮮併合の時の喜びを表したものとされる)私はこの詞が好きだ。別に私は詩的な表現が得意だったりする訳では無いから、文章の表現が好きな訳では無いし、特段歴史が得意だったり、好きな訳でもない。じゃあ何故なのか、繋がりを感じるからだ。安土桃山時代の武将たちと、近代を生きる人々の繋がり。私は人と人、今と昔、その繋がりを感じられるものが大好きなのだ。そしてそれは彼もおなじ。私は登下校時に彼が私のことを付きまとっていることは知っている。それでも私は、毎朝彼にあいさつをしている。それだけで、彼は私と繋がりを持っていると思いこんでいる。彼が私に付きまとっているのでは無いのか、そういう噂も経つ程に、彼はわかりやすい人間だ。クラスではとても真面目に振舞っているが、クラス内での彼の印象はとてもいいものとは言えない。でも別にいい。そんな哀れな彼が大好きだから。自分は真面目だと思って、誠実に過ごしていると思い込んでいる彼、全てを自分の都合のいいように解釈する彼。そんな弱い彼が大好きだ。
彼はとても繋がりを大切にしている。なんで知ってるか。もちろん私も彼の後をつけているから。でも別にいいでしょう。彼も私と同じことをしているのだから。彼は、いつも同じルートを夜に回っている。えへへ。
私はちゃんと計画を立てた。彼がここまで築き上げたと思い込んでいる、全てをぶち壊す。そして私だけが、彼との繋がりを持つために。考えただけでドキドキが止まらない。私は実行をするためにこの日のために仲良くして、作っておいた彼氏を呼んだ。
「ねぇ...ここ、人通り少なし...シよ...?」
彼は分かりやすく興奮していた。気持ち悪い。彼以外の男子になんて興味ない。そいつが服を脱ぎ始めた。
10...9...8...私は心の中で数え始めた。だいたいどのくらいの時間で彼が来るのかわかっているから。
タッ
小さかったが、何かを蹴飛ばすような音がした。目の前の穢れは興奮していて何も気がついてない。私の目の前に彼が来た。刹那、彼は私が用意しておいたトンカチを、勢いよく振り下ろした。目の前の穢れは地に伏せた。
嗚呼、やってくれたんだ。私のために。嬉しい。倒れた肉塊をじっと見つめる彼。今頃自責の念で押しつぶされそうだろう。えへへ。彼なら私のため(と、思い込んで)やってくれるだろうと思っていた。
ずっとその場から動かない彼の後ろに回り、私は耳元で囁いた。
「2人だけの秘密だね♪」
これで彼と私には切っても切れない縁ができた。彼氏には悪いけど私たちの縁結びの土台になってもらう。私のためにと、彼からたんまり貰ったお金も、全部私と彼のために使う。えへへ。
私は嬉しくなり彼に抱きついた。ぎゅっと、強く、強く。
はっぴーえんど
こういうのかいてみたかったんですよ〜