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*完結* COYOTE   作者: terra.
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 もうすぐ病院の近くに着く頃。ほどよく席が埋まる車内では、乗客がスマートフォンに釘付けになっていた。そこでふと、ある事を思い出すと、アクセルはポケットからスマートフォンを抜いた。




 開いたニュースサイトでは、テレビで聞いた情報がトップにきていた。そこに寄せられるコメントは、警察を急かす言葉が多かったが、中には、容疑者の妻を怪しむ声もある。見ている限り、妻はそれに対して何もアクションを起こしていない。もはや、その力も残されていないのではないかと感じた。




 また、さほど知らない彼女の事を考えている。まるでリードを引かれる様に、思考の渦に導かれていた。何故か、その渦の流れを読もうとし、そこを冷静に泳ぎ切ろうとしてしまう。



“ハンティングの歴史に、のめり込みすぎたんじゃないか”



“ハンターを阻止するために、自ら狼男になるなら、薬品開発のための施設があるだろう。地下とか空き地も、徹底的に調べるべきだ”



“警察がこんなにてこずるなんて。自分の身は自分で守るしかないんだわ”



“狼男の子っていうなら、自分の身体にそんな仕掛けをする目的が、皆目分からない”



 アクセルは画面を切り、立ち上がったところで、バスが停車した。そこはまだ、比較的自宅に近い停留所だったが、足早に降りた。








 小雨になりゆく中、立ち尽くした。幸い、周囲は無人だった。不可解な感情で曇った顔を、気にせずにさらすことができる。

 街灯から抜け、目深に下ろしたフードの中で、雨に歪む影をじっと見下ろす。両目に熱を感じるあまり、水溜りに異変を探ってしまう。

 雨の強い匂いに、辺りを取り囲む自然の香りを感じた。朝よりも冷たい風が、不意にフードを払い除ける。

 やり場のない焦燥を噛み締めていた。まるで自分の事の様に思えてしまう、煮え切らないものを見てしまったせいだ。




 姉は、講師ホリー・ラッセルを高く評価している。多くの命のために、国境を越えて環境捜査をしてきた人だ。その人は、自分がきっと見る事ができないであろう未来のために、身を粉にしていた。姉が、絶えず生き物について思考を巡らせ続けられるのも、時に反対の言葉を受けながらも立っていられるのも、その人が関わっているからだろう。

 なのに、関わりのない他人が、一体、その人の何を言え、何を評価できるのだろう。




 アクセルは、見聞きしてきた他人の言葉を思い返す内に、熱が込み上げてきた。

 ホリーが遠くから指差されている光景は、自分の姉がそうされている様にも思えてならなかった。そして、その繋がりは知らぬ間に誰かに特定され、伝染していくのだろう。人に限らず、動物達にも――




 顔を上げ、目を見開いた途端、昨晩、部屋で聞いたコヨーテの言葉が浮かんだ。そこから、断片的になっていた記憶が線になり始める。




 画面がさらしてくる気味の悪い出来事は、悪夢を長々と見ている様だった。それを見なかった事にはできず、また、身体もそうはさせまいと訴えているのか、足は既に、自宅近くの自然公園に向かっていた。









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サスペンスダークファンタジー


COYOTE


2025年8月下旬完結予定


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています

インスタサブアカウントでは

短編限定の「インスタ小説」も実施中


その他作品も含め

気が向きましたら是非




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― 新着の感想 ―
こんにちは! お忙しい中、投稿お疲れさまです( ・∀・)っ旦 アクセルも自分がコヨ-テ化するのを、更に疑わしく考えるようになりましたね(-_-;) そうあって欲しくないです。 もしくは、未知の何かに変…
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