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COYOTE  作者: terra.
Harvest Moon
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6




 清々しい朝は冷えるが、キッチンのカフェカーテンからの陽光は心地よい。




 アクセルは、トースターから飛び出した2枚のブランパンを取ると、潰してペースト状にしたアボカドを塗り、スライスしたトマトと目玉焼きを乗せた。仕上げに、ブラックペッパーを降らせると、ソニアの習い通り、母と並んでブラックコーヒーを淹れてみる。




 母はタンブラーに注ぐと、それを片手に慌ただしく荷物を取り、息子の頬にキスをした。



「ソニア、さっさとしなさい! もうアクセルも出るわよ!」



 気怠そうな返事が2階から落ち切る前に、母は出て行った。




 アクセルはコーヒーを啜ると、表面に歪む自分を見つめる。香りも味も悪くはないが、やはり、1日の始まりにも甘味が欲しい。冷え始める時期は、温かいハニーミルクを飲むのが習慣だった。しかし今日は、仄かに甘いカフェオレで、身体に朝を知らせていく。




 ダイニングに現れたソニアが溜め息を吐くと、冷蔵庫から例のものを取り出した。昨晩からミルクに浸されているオーツは、どういうこだわりか、(ジャー)に入っている。そこに木製のスプーンを挿すと、ブルーベリーやマンゴー、イチゴのドライフルーツがテーブルに置かれた。ついでに、アクセントとして香ばしいナッツも混ぜられていく。




 前髪を掻き上げて固めたヘアスタイルに、明らかに濃いメイクが不気味でならず、アクセルのトーストを運ぶ手の方こそ固まる。中学になって2週間だというのに、妹に何が起きているのか。



「……夜勤だったのか?」



「まぁ、そんなところよ」



 長く引かれたアイラインと、瞼にたっぷり盛られたシャドウに広げられた目に、背筋が騒ぐ。どこまでを目としたいのかと訊ねそうになる口に、慌ててトーストを突っ込んだ。フレッシュな食事の香りはどこへやら。妹が食卓についた途端、花かフルーツかも判別できない匂いで充満した。




 もったりとしたオートミールが、ソニアの口に重たく運ばれていく。永遠に口の中に居座ったまま、呑み込むどころか、頻繁に溜め息が漏れた。



「……誰に追悼してるんだ?」



「オレオと、昨日までの自分と、昨夜のバナナプディング」



 食後の楽しみであるデザートは、ソニアが作ったものだった。皿に敷き詰めたバタークッキーの上に、カスタードクリームとメレンゲとバナナで層にし、表面をトーチで焼いた、口当たりが滑らかな逸品だ。しかし、体調の条件が悪いとゴーストが現れる。



「まさか墓場で目覚めるとはな……あいつ、ちゃんと来るかな」



 ソニアが兄を睨め上げた時、外からクラクションが響いた。




 アクセルは朝食を口に放り込むと、カフェオレで流し込み、食洗器にカップを伏せて鞄を攫う。



「戸締り頼んだぞ。バス遅れるな」



 念押しで妹の肩に触れても、俯いたまま反応がない。束の間、その横顔に不釣り合いな影が見え、隣にそっとしゃがんだ。そして、明らかに乗り気でない手を添えられたオーバーナイトオーツを、遠ざけてやる。



「止せ。俺はシリアルを食べるお前が好きだ。誰に何を言われたか知らねぇけど、お前の好みを尊重できない奴の事なんか相手にするな」



「……でも皆、めちゃくちゃ綺麗にしてるんだもん。もう彼氏がいたりするし、格好だって、前のままじゃダサいって思われる。イケてなきゃ、ワンタップで次の日には噂が広まって、居場所がなくなる」









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サスペンスダークファンタジー


COYOTE


2025年8月下旬完結予定


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています

インスタサブアカウントでは

短編限定の「インスタ小説」も実施中


その他作品も含め

気が向きましたら是非




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― 新着の感想 ―
お疲れ様です! この話だけでもアクセル君が大人の階段を上っている事が伺える感じがしました! 甘いものから苦いものに変える朝食だけでも、そんな感じがしました(o^-')b ! 母親が息子にキスをするシー…
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