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*完結* COYOTE   作者: terra.
Waning Crescent
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10




 まじまじと見られて擽ったいソニアは、目を泳がせると、コーンフレークを掻きこみ、すぐさまおかわりを盛った。



「ミルクに入れてすぐのカリカリ派? ちょっと浸したフワフワ派? じっくり沈ませたクタクタ派?」



 気まずい空気を埋めようとする彼女に、レイデンは口角を上げる。彼はソニアの器のスプーンを取ると、底に沈んでいたイチゴを掬い上げ、摘んだ。



「ひったひたで、くたびれて、原形なくしちまった奴がイイ。なぁ――」



 レイデンは少し身を乗り出し、ソニアを打ち止める。



「そんな事聞きてぇんじゃねぇだろ。優しいんだな、兄貴に似てよ」



 2人のやり取りを殆ど聞いていない3人は、何となく、レイデンの大きな動きに振り向く。ソニアが動かなくなったのを見たアクセルは、朝食の邪魔だろうと、メンバーを部屋に入れようと声を掛けるのだが



「気にすんのは止めとけ、言ってみろ。こういう場合のアンプ()テクトは、いいもんが生まれるぜ」



 レイデンの発言に背筋をなぞられた3人は、彼に警戒の眼差しを向ける。また、彼等だけではなく、庭にいたキャシーが、テラスに不穏な目を向けた。そこで一緒だった母の洗濯物を持つ手が止まり、ガレージで積み込みを終えた父が、庭の2人に合流したところで立ち尽くした。




 ソニアはよく分からないまま、レイデンに素直に応じた。



「タトゥーが枠だけなのは何で? 仕上がってないよね?」



 その詳細を知らない妹に、アクセルははっと、話を遮りかける。だがレイデンは、余裕の笑みを浮かべると、器の中からオレオを摘んだまま、指に彫られたアウトラインだけのそれを突き付けた。



「ベーシストだからだ」



 意味が分からず、ソニアは目を細める。しんとしたその場は、咀嚼音だけになった。



「この線無くして完成しねぇんだよ、シスター。ベースラインがあるから、綺麗に納まる。色も模様も、音もだ。最終的にぼかされて分かんなくなっちまっても、その線が初めにあっから、メインが際立つ」



 周囲は、意外な返答をする彼に、何故、注目してしまったのかを忘れてしまう。



「土台がねぇと完成しねぇ仕組みだ。今日のメイクがイケてんのは何でだ、シスター」



 あまり呑み込めないといった顔をしていたソニアだが、その言い換えにしっくりきた途端、目を見開いていく。ベースメイクがなければ化粧が映えないという事かと、こくこくと頷いた。




 両親は、面白い友達がいるものだと笑っている。怪しんでいたキャシーもまた、レイデンの意外な教示に胸を撫でおろした。それは、彼の傍にいる3人もまた同じだった。



「けど君は、音楽よりも色気を出すのに夢中みてぇだから、もっとイイ事教えてやるよ」



 安堵したのも束の間、不穏な波は再び訪れた。








※アンプロテクト=unprotected を意味しています。

プロテクトは保護するという意味で、その否定形から、保護されていないとなります。

無防備な、無装甲の、というところから、守られていない状態です。

それは後の「生まれるぜ」にかかっているものですが、レイデンが何故この比喩を使い始めたのかは、以降でシーンが終わってから説明いたします。



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サスペンスダークファンタジー


COYOTE


2025年8月下旬完結予定


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています

インスタサブアカウントでは

短編限定の「インスタ小説」も実施中


その他作品も含め

気が向きましたら是非




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― 新着の感想 ―
こんにちは&お疲れさまです( ・∀・)っ旦 なんか、レイデンとソニアの関係が良い感じですね! これは、ひょっとしたら、ひょっとしたらかな( 〃▽〃) また一つ気になる事が増えました\(^o^)/ 自…
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