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急な兄の友人の集まりに、ソニアは食い入る。彼等に会うのは初めてではないが、ブルース以外の2人とは殆ど話した事がなく、つい、細かく目を這わせてしまう。
その視線を捕まえたレイデンは、匂いの出所を嗅ぎつけた様にソニアの前に座ると、コーンフレークの箱を取った。
一方、3人の間では、また同じ話になっている。誰よりも冷静に聞くジェイソンは、イベントには出られると言い放つブルースに待ったをかけ、直前に判断すると跳ね除けた。
「彼がリーダーなんだ」
咀嚼音が混じるソニアの呟きに、レイデンは箱を置く。シンプルに砂糖がまぶされたコーンフレークと、プレーンのものとが2箱並んでいるのを眺めてから、彼女の器に半分浸るオレオを摘んだ。どうやら今は2杯目の様で、ソニアは、カットしたイチゴと、好物のクッキーを混ぜて食べていた。
ソニアはレイデンを前に黙り込む。今も、不意に器に飛び込んできた彼の左手に目を見開き、彼の口の中に消えたオレオを見届けたまま固まっていた。
レイデンは彼女を平然と見つめながら、微風で目にかかった前髪を耳にかける。家を飛び出したため、髪のハーフアップは少し粗い。
「朝飯にこだわりがあんだとなぁ、シスター」
「……そうよ。週末はシリアルかコーンフレーク。最初はハニーミルクでシンプルに食べるの。だから砂糖がついてないやつ。締めは、好物ばかり」
兄に似て甘党かと、レイデンは鼻で笑う。その間も、ソニアを隈なく見つめていた。ソニアは、彼の手元から視線を逸らすと、少量のコーンフレークを掬い、静かに食べる。
「凄いお客の量……あんたいつの間に連絡したの?」
戻ったキャシーは皆に、心配をかけたと言いながら、爽やかに挨拶を交わした。中でもブルースとは知り合って長く、話が弾んだ。だがジェイソンとレイデンは初対面であり、アクセルは姉に2人を紹介する。
集まりの発端がレイラだと知ったキャシーは、礼を言っておくよう弟に言い残すと、洗濯物を干しに庭の奥へ向かった。それを手伝おうと、母が再び姿を見せる。そんないつもの何気ない時間を見れば見る程、昨夜の出来事が嘘に思えた。
「レイラと病院で会えたんでしょ、お兄ちゃん」
ソニアの一言に、ジェイソンは目を見開き、ブルースは興奮の叫びを上げると、アクセルは先を揺さぶられる。
片や、いつもならば食いつくレイデンは、こだわりの食事を続けるソニアを静かに面白がっていた。
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サスペンスダークファンタジー
COYOTE
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