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COYOTE  作者: terra.
Harvest Moon
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4




「お兄ちゃんこれ。もうソースかけちゃって」



 着くなり、妹が重そうに大皿を差し出してくる。レインボーフラッグを思わせる、彩り豊かなコブサラダが出来上がっていた。久しぶりのそれは、アクセルの大好物で、瞬きを忘れてしまう。




「アクセルお願い。オリーブオイル、お酢、塩コショウ、あと小皿を出しておいて。いつも使ってるやつ」



「あ、忘れてた。お兄ちゃん、ついでにスープ皿も! あと、これにパセリかけといて」



 妹が、オーブンから取り出したマカロニチーズをテーブルに置くと、キッチンに戻っていく。入れ替わりに、母が人数分のグラスと2リットルの水が入ったペットボトルを置き、立ち去った。




 未だに答えを貰えないアクセルは、テーブルを指先で叩きながら、キッチンの2人を睨んだ。とはいえ、注文は全てコピーしており、速やかにタスク処理に入る。




 ダイニングから続くリビングからは、ニュースが流れていた。今話題の、猟師が出先で襲われる事件に、時折、一家は耳を傾ける。



「何、また? 気をつけなさいよ、アクセル。平気で夜に出て行くんだから」



 趣味や仕事で猟をするなど珍しい事ではなく、父もよくしていた。ただ、あまりに没頭してしまった事を引き金に、母と口論になり、今は別居している。




 母とソニアが食卓につくと同時に、アクセルも料理の仕上げを終え、腰を下ろす。そして、しばしテレビの方を向いた。




“威嚇を見せる野生動物は、ハンティングエリアだけでなく、森林公園内の散策路付近にも現れました。警戒心が高い野生動物が、人を襲おうと身構える様子が、極めて不自然だったという情報もあります。その特徴は、白内障を彷彿とさせる白みがかった、或いは灰色がかった眼を持っている、と。これは、以前に世界的に大流行した感染症が未だ関係しているのか、もしくは、新たなウィルスの様な何かなのでしょうか――”



 キャスターの疑問を、コメンテーターが否定する。情報と比較しても、直近に流行していたウィルスとは考えにくかった。



“そして、気になる情報がもう1つ。野生動物だけでなく、人影の様な、極めて人間に近い大きさをした、何らかの存在が茂みを過った、という被害者の証言があります。現在、他に侵入者がいたのかどうか、警察は引き続き調査を進めています――”




 アクセルは溜め息を吐きながらテレビを切ると、好物のコブサラダを2度も3度も山盛りに取る。ソニアはそれに目を見張ると、慌てて横入りした。母はポタージュを静かに取り分け、2人の席に置いていく。



「分かってるだろ、緊急事態だ」



「そうね、消火器を用意しておかないと」



「スプリンクラーの点検もね。お姉ちゃんの鎮火は大変なんだから、お兄ちゃん気をつけてよ」



 ソニアは、ハニーマスタードがたっぷりかかったコブサラダを混ぜると、口いっぱいに頬張る。その横の母は、アクセルの配慮のもと、ソースがかかっていない部分のサラダを取ると、お気に入りのヴィネガーソースを絡めた。



「あの子が採用されない訳ないでしょう。卒業を機に改めて考えて、こっちで働く事にしただけ。少しの間は休めるみたいだし」



 シッターの母は、不在時間が変動する。近頃の治安の悪さから、なるべく、次女が家で長い間1人にならないようにしたかった。そこに、大学を卒業して長女が戻るのは救いだった。だが、息子は困り果てて首を振る。









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サスペンスダークファンタジー


COYOTE


2025年8月下旬完結予定


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています

インスタサブアカウントでは

短編限定の「インスタ小説」も実施中


その他作品も含め

気が向きましたら是非





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― 新着の感想 ―
お疲れ様です! コブサラダ食べたくなりました-! 色んな種類の食材が一皿の器に入っているところを想像するだけで、垂涎してしまうほどです(o^-')b ! それにしても、夜になると野生動物にウイルスが感…
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