表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
*完結* COYOTE   作者: terra.
Last Quarter
58/184

8




 言葉を失う3人に、アクセルは目のやり場に困ると、食事の手を止めてしまった。



「そのまま事情聴取をされたの?」



 静かに切り出す母に、アクセルは小さく頷く。



「取り敢えずは……向こうも、寄せられる情報を精査しねぇとって。悪戯も多いから。必要なら、また連絡が来る」



 寒気がする空気に溜め息を吐くソニアを前に、キャシーは首を傾げる。



「ところで、見た目がそんな感じだったんなら、ニュースで聞く容疑者じゃないでしょ。シベリアンハスキーを連れてたとか? 実際にシルバーの毛色もいるし、似てるところは多い」



 キャシーは、弟の不安を埋める様に冷静に話すと、グラタンのブロッコリーを口に運ぶ。



「でも、コヨーテだって、ピンときたんでしょ? もしかして、その人、飼ってる事を奥さんに言えなくて帰れないとか」



 ソニアの可愛い分析に、皆は小さく笑う。だが笑ったものの、アクセルは、ローストチキンを半端に齧って止まる。家族の食事の音と会話が遠ざかった。心地よい香りに満ちた食卓は、あの男が呟いた、肉というワードで歪んでいく。




 独り、微妙な心境に佇む中、世間話が過ぎていくと、姉の話で持ちきりになった。中学に上がったばかりの妹には、まだ内容が難しく、姉は、上手い具合に内容を噛み砕いて話している。

 その一方で、グレードが上がるにつれて歌詞の質が変わった様に、姉が関わる世界にも、耳を傾けてみようと思えた。

 ペットに対する考え方や、そこに広がる歴史の話は深く、久しぶりに長い食事の時間になった。








 買い手のニーズに応えるため、利益のため、子どもを生ませる繁殖施設が存在する。犬と猫が大きく取り上げられるが、鳥類や齧歯類、兎といった小動物も同じだった。商業目的で命を量産する施設から来る生体の殆どは、先天性や遺伝性の疾患、感染症に罹患している確率も高い事が分かっている。しかし、そこを考慮されずに、近親交配が繰り返されている実態があった。




 売買の成立が速いほど、ケージが空くのも速い。それを早く埋めるのに効率がいいのは、ペットオークションだった。生まれたてで可愛い、健康的とされた動物を、物の様に段ボールに流し入れ、入札したその足で販売店に持ち帰られるといった事がある。



「それをする人達って、自分が子どもだった時も、そんな風に扱われてたのかしらね」



 ソニアは言うと、スープに浸したコーンブレッドを口に入れる。キャシーは妹の考え方に指差すと、ワインを少量啜った。



「いい置き換えね。姿形は違えど、同じ命ある生き物よ。彼等は言葉を話さないけど、感情表現をちゃんとする。人がそれを感じ取るには、どうしても、見るからに分かりやすいサインからでしか難しいけど。でも、そこからどれだけ読み取ろうと思えるかよ」



 キャシーは、家族に贈ったローストチキンを皿に取っていく。ついでに母が、空になった自分の皿を長女に託した。



「近頃は、譲渡会の案内もよく聞くわ。職場の人が、保護施設から2匹の犬の里親になったけど、仲が良かったみたいで、出産をしたんですって。できれば動物も、自然に想いを寄せて、自然に子どもを授かれるのが、身体のためにもいいでしょうね」



 母は言いながら、長女から皿を受け取った。




 疾患があったり、躾が困難であったり、性格に不満がある理由で見放される動物も多い。そうして行き着く先が、安全な施設であるならば幸運だが、場合によっては、その命は意図的に奪われてしまう。どこかでは、毒殺する庫内をドリームボックスなどと呼ぶ。そこに入る事に至った彼等に、人は、一体何をされたのだろうか。









-----------------------------------------


サスペンスダークファンタジー


COYOTE


2025年8月下旬完結予定


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています

インスタサブアカウントでは

短編限定の「インスタ小説」も実施中


その他作品も含め

気が向きましたら是非




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
こんにちは&お疲れ様です( ・∀・)っ旦 アクセルは聴取を取られてたんですね。 やはり暗い上、コヨーテか、または飼い主?が化け物だったなんて中々、信じてくれませんよね(-_-;) ソニアの見解通りです…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ