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*完結* COYOTE   作者: terra.
Last Quarter
52/184

2




 陽射しが眩しく、日没が近いなど嘘の様だ。だがアクセルは、美しい景色に浸るよりも、事件の話を聞いて父が気になった。



「帰ったら電話してみっかな。昨夜、宿題してたらうっかりしてた」



 社会の教師は、金曜日は決まって多めに課題を出し、月曜日に必ずディスカッションをさせる。虫の居所が悪いと、考えに至った経緯を事細かに訊ねられるので面倒だった。昨夜はそこも見越して、長めに教科書を読み込んでいた。




 宿題と聞いて、ブルースは大きく脱力する。ギターに打ち込み過ぎて、まだ予習を半分も済ませていなかった。近々エッセイの提出もあるため、あまりのんびりしておられず、溜め息を吐く。




 はっきりと主張する事、形式のある確かな文章を書く事、教科書とは別に資料を読み比べて信憑性を高める事に努め、高得点を目指す必要がある。この骨折り作業も、最終グレードになった今、要領が掴めるようになった。



「この事件についても意見交換させられそうだぜ」



 ブルースは、スマートフォンのニュース画面を開くと、テーブルに置いた。



「山で張り込むのか……前もやってたけど、ダメだったよな」



 アクセルは、画面上に綴られた警察の動きに目を走らせる。



「被害者の持ち物には、指紋とか、そういう決定的なもんは残ってなかったみてぇだぜ。犯人が街とか住宅街を歩いてたり、アパート借りて出入りしてるとか、そういう所もまだ発見されてねぇってよ」



 ブルースは画面をスクロールし、それが記されている箇所を示す。



「さすがに被害者が撮った映像は載ってねぇけど、山に入って張るってなったんなら、失踪者だっていう相当な決め手があった事になるよな」



「……それも言えるけど、目的は失踪者の確保ってよりか、危険人物の確保じゃないか」



 ブルースは目を瞬き、暫し間を置くと、アクセルの考えに静かに納得する。つい、失踪者であるという目立った情報に引っ張られていたと、髪を搔きながら、胸の中で立ち止まった。

 アクセルは頭を捻りながら続ける。



「考えてみりゃ、指名手配者が逃走してる事件は他にもある。今回の事件も、その前の同じ事件も、まだまだ分からねぇ事だらけだ。話題の失踪者や、その家族を煙幕にして、別の誰かが悪さしてるとしたら?」



「いざしょっぴいたら、全く別の事件の犯人だったってオチも、有り得るって事か」



 アクセルは首を縦に振ると、昼間に聞いた道行く人の声を改めて振り返った。



「賢い分析ね、アクセル。将来は歌える探偵志望?」



 ブルースの母が愛想よく現れると、気遣ってチョコチップクッキーを出した。



「冗談だろ!? 考え直せ! お前なしでバンドどうすんだよ!」



「そんな訳ないだろ。世界に行くって約束だ」



 それを耳にしたブルースの母は、テラスの階段を下りながら笑う。息子の力強い意思表示を、母は、背を向けたまま適当にあしらう様だった。だが、傍に立てかけていたシャベルを掴んでは、振り返る。



「音楽の世界も楽じゃないよ。何においても、世界に立つなら、それこそ広い感性と視野がいる。悪目立ちする情報は、簡単に繋がって大きくなって、どんどんオリジナルの世界を作っていく。そして、その世界の王は、事実だと匂わせる酒で人を酔わせて誘き寄せる」








※とにかく予習と読む事が重要になる宿題スタイル。リーディングがとにかく重要と言っていたりもします。授業は意見交換やクイズ、ディスカッションが多いため、クラスは大抵少人数制になっているようです。教科書をしっかり読んでおかないと授業にならないというのが、宿題をしていないと露骨に出るみたいです。今の、特に日本の高校ではどうなのでしょうか。お子さんがおられる執筆者さんを見ている様子だと、自己主張と呼べる評価があったりと、新たな成績のつけ方もありそうですね。



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サスペンスダークファンタジー


COYOTE


2025年8月下旬完結予定


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています

インスタサブアカウントでは

短編限定の「インスタ小説」も実施中


その他作品も含め

気が向きましたら是非




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― 新着の感想 ―
お疲れ様です( ・∀・)っ旦 謎の危険人物を追うのに警察も必死でしょうし、かと言って山で張り込むのも得策とは言えませんよね(-_-;) どうしたら山で横行している、怪異のような犯人を見つけられるのか。…
感想一覧
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