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*完結* COYOTE   作者: terra.
Waning Gibbous
42/184

8




 変わらない日常を送れる。それは偶然であり奇跡なのだと、母は今日までを思い返していた。




 世界中のニュースを目にしてきたが、自分や家族の目と鼻の先で事件が起こる事はなかった。いつも遠目に見る側であるあまり、呑気でいた。いつ何が起こるか分からない。その何かは、大抵は起きない。心配や備えのし過ぎは毒になる。そんな言葉を誰かに言ったり、言われたりしてきた。ありがたい事に、無傷で平和に暮らせている。人はそれをどのくらい、日常で意識するのだろう。




 ふと、ダイニングで食事の用意をする子ども達を見た。眩しい成長ぶりを、この先もずっと見ていたい。だから心配もするし、幾つになっても手を焼いてしまう。シッターを務めていれば、成長できる事がどれほどの奇跡なのかを考えてばかりいた。




 同時に、長女が動物を想う様になって以来、同じ命あるものについて考える機会も増えた。だからつい、別居する夫に、狩猟を止めろと強く出てしまった。彼は今、大丈夫なのだろうか。

 と、歩いて然程かからない所に住む夫を想ったのも束の間、狩猟というワードから、長女の話が浮かんだ。

 長女は、狩猟の講義にかなりの影響を受けていた事がある。そこにもまた、残酷な背景があるのだと。その講師の名前を、なんとなく宙で探ってしまう。




 そこに、次女が言う、酷いニュースだという発言が浮かんだ。その拍子に、コメンテーターが仮説だと強調した空気が蘇ると、勝手に奇妙な繋がりを感じ、思わず身震いした。






 ニュースの話題は次々と切り替わり、コマーシャルが入ると、空気に温度差ができた。




 朝食を済ませたアクセルが玄関を出ると、ブルースの車が来た。それに向かう最中、リビングの窓から、母がブルースに明るく手を振る。



「いつも悪いわね! 燃料代、いくらでも取ってやって!」



「お気になさらず、テレサさん。その分、声量に変えてもらってるよ」



 ブルースは、車内の音を上回る声で返すと、庭で優雅に朝食を取るソニアにも、手だけで挨拶を交わす。




 2人は、母の、気をつけろという念押しの声に手を振ると、出発した。



「早ぇな」



「昨夜の事件で道混んでっかもって。迂回させられそう」



 下げられていくギターミュージックは、近頃よく聴く、ブルースがリスペクトする日本ギタリストのものだ。2002年に現れ、刺青が目立つファンキーなアーティストだが、エレキギターを、ピックではなく指で(はじ)くスラップ奏法をする。個性的な技を持っており、世界的にも注目を浴びている。彼の様々な曲を、ブルースは自身のウォームアップに採用していた。




 住宅街を抜け、大通りに差し掛かろうとする頃、パトカーが数台立ち往生していた。事件現場の立ち入りを、黄色いテープで阻んでいる。一部の道が塞がれており、車が順に別の道へ誘導されていた。



「俺んとこ山(ちけ)ぇだろ? 昨夜やたらコヨーテ鳴いてたの、聞こえたか? 偶にある事だし、特に気にしてなかったけどよ……そいつが事件発生中だったとか、誰が想像つく?」




 アクセルは、昨夜レイラと聞いたコヨーテの声に、背筋がぞっとする。今朝のニュースが蘇ると、通りに見える赤と青のパトカーの照明を見た。ふと失踪者の情報が浮かび、その家族について、自然と意識が引き寄せられていった。








♪MIYAVI

独自のスラップ奏法を持つ日本の注目ギタリストです。世界でも有名になっています。アメリカのドジャースタジアムで、国家を演奏した事でも知られています。熱い挑戦者であり、サムライギタリストとも呼ばれています。



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サスペンスダークファンタジー


COYOTE


2025年8月下旬完結予定


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています

インスタサブアカウントでは

短編限定の「インスタ小説」も実施中


その他作品も含め

気が向きましたら是非




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― 新着の感想 ―
お疲れ様です( ・∀・)っ旦 日常から事件に巻き込まれるのは、どこか他人事のように思う人が大半だと思います! 自分も、どこか、非現実的にも思え、何故か自分の身に起きないと、心の何処かでそう思っています…
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