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*完結* COYOTE   作者: terra.
Waning Gibbous
40/184

6




 出て行く支度を終え、いつものスタジアムジャンパーを手に部屋を出ると、朝食に入る。休みの母はリビングで寛いでおり、ホットサンドとストレートティーを傍らに、テレビを見ていた。




 アクセルは母と短い挨拶を交わした後、トーストを用意していく。キッチンには半量ほどの紅茶が入ったポットがあり、鮮やかな色が陽射しに反していた。アクセルはそれを少し貰おうと、母に声をかけた。



「あら珍しい。レイラに教わったのかしらね」



「……紅茶派か!?」



 アクセルは大きく振り返ると、母はソファーと同化したまま、知らない、と手だけで示す。



「香りが高いでしょ。それがいい目覚めに繋がって、集中力が高まる効果があるの。それに、美白化粧品に配合されている成分と同じものが含まれているから、飲み続けるといいんだって」



 妹が階段を下りながら解説を挟んできた。メイクは控え目になっているが、ヘアスタイルは相変わらず崩れを知らない。ソニアは、兄が手にしていた紅茶のポットをあっさり奪うと、優雅に注いだ。



「極端な奴だな。早々に得たばかりの知識だけで踊り狂うところ、見直した方がいいぞ」



 それに構わず、ソニアは、兄の手元にあるインスタントコーヒーに眉を寄せる。



「またミックスジュースにするつもり?」



 そこへ、母がソファーからカップを突き出した。



「アクセル、それ美味しいんでしょ? 1杯入れてよ」



 ソニアは母に首を竦めると、昨夜の内に準備しておいた例の朝食を冷蔵庫から取り出し、リンゴやオレンジを投入していく。




 アクセルは、自分の分は後にし、母のカップにインスタントコーヒーを半量、紅茶を半量淹れた。香港発祥の鴛鴦茶(えんおうちゃ)は、ユンヨンチャーと呼ばれている。カフェで知り、個性的で惹かれた。日本語ではオシドリと読み、オシドリ夫婦という言葉から、この組み合わせが仲睦まじい様を表すという。甘さや割り方によって、自由な味を楽しめる飲み物だ。アクセルは、たまたま妹が朝食のために出したハチミツを加え、味を決めた。




 そこへテレビが、コマーシャルの賑わいからシリアスな音に打って変わり、モーニングショーが始まる。




“またも、ハンターが襲撃されました”



 アナウンサーの強みを含んだ声で、近辺の住所を上げられ、3人の動きが止まる。



“立ち入り禁止区域で、ハンティングを行っていた2人の50代男性は、救急搬送され、命に別状はありません。

 目撃情報によると、銀に光る目を持つ凶暴な鳥類、小動物、コヨーテに襲われた。更には、失踪者ステファン・ラッセルと思われる人物にも遭遇した、と――”



 アナウンサーの映像から、搬送される最中の被害者の映像に切り替わる。映ったのは僅かだが、顔や首、手に引っ掻き傷や噛み痕を負った、見るに恐ろしい被害者は必死になっていた。



“あいつに違いない! 見たんだ! 髪と目はシルバーに光って、まるで狼男だ! 歯を立てて唸りながら襲ってきたんだ、本当だ!”



“そいつが動物を操ってた! 吠えるなり、みんな急に光に変わっちまって、綺麗サッパリ消えた! 音声だってある! 完璧な証拠だ! さっさと捕まえてくれ!”



 映像が再びスタジオに切り替わると、今年の初めにニュースになった失踪者の情報が拡大される。それは、街でもウェブでも見かける、MISSING PERSONのチラシと同じものだった。








※MISSING PERSON=失踪者・失踪者情報



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サスペンスダークファンタジー


COYOTE


2025年8月下旬完結予定


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています

インスタサブアカウントでは

短編限定の「インスタ小説」も実施中


その他作品も含め

気が向きましたら是非




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― 新着の感想 ―
お疲れ様です( ・∀・)っ旦 ソニアも益々、美に磨きがかかっているようですね! ソニアと同世代の子供がこちらの作品を読んだら共感したりするかもしれませんね! コーヒーと紅茶を混ぜて飲む飲み物は初めて…
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