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週末は、目が覚めても暫くベッドで過ごしていられるのが幸せだ。大抵は、お気に入りのアーティストの活動を追いかけるか、音楽系のラジオやテレビ番組をチェックする。それらのずっと後で、ついでのタスクとしてSNSを覗いていた。
こうしている間、ジェイソンとレイデンは既に、依頼バンドが指定した場所でリハーサルをしている。いつか、働き者の彼等に見合ったものを返せる様にと、やっとベッドから出た。
洗面台に立ち、スマートフォンで音楽を流す。エモーショナルなロックを奏でるのは、ブルースの影響でメンバー皆が気に入った、例の狼バンドだ。
究極の生命体だと名乗る５頭の人獣は、２０１０年より日本を中心に、世界まで活動を広げている。英詞が多い中でも日本語が混ざるものや、日本語だけの歌もある。殆ど理解できないが、ブルースの母と話す機会もあるお陰で、簡単な言葉なら分かるようになっていた。
音楽はライブ版を聴く事が多い。生の演奏が好きなのもあるが、アレンジされた歌い方や、観客の煽り方、MCの入れ方を学ぶためでもあった。しかし、MCはどちらかというと苦手で、話すよりも歌に全て込めてしまう方が、自分の中身を晴らしやすかった。
髪を適当に整え、やっとバスルームを開けると
「ちょっと占領し過ぎ、お兄ちゃん。何度呼んだと思ってるの？ １人３分以内で済ませなきゃ」
鳥が住んでいそうな髪をした妹が、着替えを済ませて仏頂面で立っていた。
「……妙だ。朝は起きたまま庭でゆっくりシリア……オーバーナイトオーツタイムだろ？」
「今は違う。その前にボディケアをしておかないと。寝ている間の老廃物を全部洗い流すの。古い角質は捨てて、常に新しい層を保ってなきゃ」
妹は、拭き取り化粧水のボトルを嬉しそうに揺らして見せる。他にもまだ、こだわりのヘアケア用品などを籠に纏めて提げていた。母は幾ら叩き出さされたのだろうと、アクセルは口を歪める。
「規則に沿うなら、シャワーだけで即退室になるぜ？」
「それはしない。流石に夜にしろって怒られたから。このお兄ちゃんのやつ退かすね。この子達をここに置いておけば色々スムーズなの。部屋も汚れないし」
自由奔放も極まりない。誰もまだ、良しと言っていないのに、妹は既に動き出していた。バスルーム１の小規模であり、極限の領域しか使用していないアクセルの必需品は、虫の様に払い除けられていく。
「おい、その、ちょっとの領域も譲れないくらい追い込まれてるのか？ 家族関係に支障が出るレベルのスタイルを欲しがる奴ってのは、一体どんなだ」
「昨日、私のスタイルを貫けって話だったでしょ？ それでよ。感謝してるわ」
とは言うものの、妹はこれから変身する事に意識を向けたまま、バスルームのドアを軽快に閉めた。
♪再紹介のMAN WITH A MISSION
ここではライブ版の「Emotions」を再生している設定にしています。2013年リリースの本曲は、映画「"HK 変態仮面"」の主題歌。これは調べて今頃驚いてる作者です…
※シャワーは１人３分以内
これは十分あり得る話なんですね。基本的に日本みたく水を必要なだけ使ってその分支払うって感じではなく、家庭に設けられた水タンクがあり、それを皆で１日で使うって感じです。多く使うと、誰かが、もしくは何かの作業時に不便になるのです。海外生活中、私はこっぴどく言われましたね。１分でもいいとか言われましたね笑
※肌ケアの方法が主に拭き取り化粧水
日本では保湿を目的に化粧水をパシャパシャつける感じですが、欧米は少し違うようです(日本でも人によりけりですが) 。それは、日本人の表皮の角質層が薄いからだそう。肌のバリアが薄く、刺激に敏感って事ですね。片や欧米人はその逆で、保湿よりも拭き取りを目的としています。乾燥しやすく、皮脂量が少ないので、乳液やクリームを使う事が多いようです。
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サスペンスダークファンタジー
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