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*完結* COYOTE   作者: terra.
Harvest Moon
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16




 さっさと平らげねばならず、3人は、料理を受け取った順に頬張っていく。




 アクセルは、グリルの網目がくっきりと入った、クラブハウスサンドに喰らいつく。歌い終えてからのお決まりは糖分摂取であり、チョコレートの香りが際立つクラシックブラウニーは欠かせない。




 ブルースは、イタリアンなラップサンドを噛みしめる。しっとりとした生ハムに、みずみずしいトマトとレタスが、チーズと共に包まれた、清々しい口当たりだ。




 レイデンは、ジューシーなミートボールとゆで卵、レタスとレッドオニオンで飾られた、サブマリンサンドを置く。と、すぐに手を出さず、予め丁寧にナイフでカットし、摘まんだ。




「へぇ、キャシー帰ってくんだ。賑やかでいいじゃねぇか。いつまで仲違いしてんだよ」



 ブルースは、アクセルの愚痴をアイスコーヒーごと飲み込んだ。



「愛の鞭を受けていられる内は華だぜ、ブラザー。俺を見てみろ」



 レイデンの笑えない発言に、2人は寸秒、手が止まる。彼が、剽軽(ひょうきん)でおふざけな自分を大胆に出せるようになったのは、バンドを結成してからだった。




 冗談だと、レイデンは2人の空気を払う。アクセルの様な家庭環境を持たないからこそ、不意に出た言葉だった。こうして楽しく過ごせているのは、目の前の2人が、意地になってでもバンドに誘ってきたからだ。そして、メンバー入りに否定的だったジェイソンを誘うのに、一緒になって苦労した。当時、彼がようやく頷いた時は、サッカーでゴールを決める様な最高の瞬間だった。そして、自分の人生が本格的に変わった瞬間でもあった。




 空気が解れてすぐ、ブルースの愚痴が始まる。母に、今朝のウォームアップが煩すぎると吠え飛ばされた話は、初めての事ではないのに毎回笑えた。




 そこへふと、耳に入ってきた会話が食事を止めてきた。その()は、隣の女子生徒の話しで埋められていく。




「あ、出てるじゃん。失踪したイケメンの医者」



 1人が、相手にスマートフォンを向けた。

 開かれているのは、人探しを呼びかけるチラシの画像だった。それは実際、街の掲示板や警察署にも貼り出されている。



「それさぁ、おかしくない? 襲われた人が言ってる見た目と、ちっとも違うじゃん。髪も目も、ギンギラに光ってたって。どうせガセネタよ」



 失踪中の男性は、医師になって間もなかった。彼の家族は、今でも捜索を強く促している。中でも妻は、最も情報発信をし、行動を続けていた。しかし――



「奥さん可哀想だよね。お腹の子は生まれたのかな」



 スマートフォンを向けていた生徒は、言いながら画面に向き直ると、スクロールしていく。



「それも思うんだけどさぁ。前に聞いた話じゃ、その人、妊娠して2年になるって。有り得ないでしょ? 絶対、そこら中の業界を巻き込んだ大規模ドッキリか何かだって」



 その情報は、失踪事件を機にマスコミを通じて、僅かながら病院から報じられていたものだった。




 猟師が野生動物に襲われる事件が相次ぐ一方で、男性の妻や家族の捜索活動は、再び、失踪事件発生当初を思わせるほど、メディアを騒がせていた。









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サスペンスダークファンタジー


COYOTE


2025年8月下旬完結予定


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています

インスタサブアカウントでは

短編限定の「インスタ小説」も実施中


その他作品も含め

気が向きましたら是非




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― 新着の感想 ―
お疲れさまです♪ アクセルは甘党なんですね! そう言えば家でもブラックのコーヒーを飲むのも億劫そうでしたもんね。 レイデンは口は悪いですが、私生活はきちんとしてそうですよね! 食べるときも丁寧にナイフ…
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