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*完結* COYOTE   作者: terra.
Hunters Moon
176/184

13




 アクセルは両足を振り、相手と距離を取ろうとした。だが、その彼の身体から立ち込める黒い陽炎は、アクセルの足首を掴み、幹に張りつけにする。



「時間がない、よく聞くんだ」



 異様な事態も余所に、彼は、先程とは違う穏やかな声で、冷静に切り出した。しかしアクセルは、拘束から逃れようと身体を揺さぶる。

 彼は、瞳に僅かな影を落とすと、陽炎による拘束を強めた。アクセルは、近づけられるピストルに、銀の眼を剥く。

 鏡張りのボディに浮かぶカウントダウンは、最終的に“0.00”を目指して高速に数字を切っていた。見ると、もう30秒を切っている。




 口を開いた矢先――銃口が捻じ込まれた。喉の奥まで迫るそれに歯を立て、アクセルは、噛み砕こうと威嚇する。だが、これまで喰らいついてきたどんなものよりも硬く、歯が痺れていく。



「さっきのコヨーテと、君に辿り着くのがやっとだった……でも君は、きっと未来を変えられる……ステファンの変化がそれを証明してると、僕は信じてる。いつか、誰もが元の生き方を取り戻せるように……僕も、それに努めてみせる」



 半ば早口とはいえ、優しい物言いだった。しかし内容が整理できず、アクセルは動揺し、顎の力が緩んでいく。

 抵抗が弱まるアクセルを見て、青い眼差しの彼は、肩で息をしながら微笑んだ。



「タイムリミットだ。会えてよかった。とはいえ、これも皮肉だけどっ!」



 その場が、息を吸い込む音に満ちた時――アクセルは、銀の閃光に視界を奪われた。




 体内に熱の激流を感じても、まるで声帯を奪われたようで、悲鳴が上がらない。骨の髄まで熱が沁み、焼かれていく様だった。大量の杭が、身体を隈なく貫き、軋ませてくるのにも似た感覚に、意識が遠のいていく。それでも、現れた彼の存在を感じていた。何も言えず、彼を掴み返す事もできないまま、ただ、言葉だけが残った。



「勝とうぜ……例え、その役目が君や僕でなくてもだ……人の力を引き継ごう……」



 拘束が解けるのが先か――あの、厚い鉄を激しく打ち鳴らす様な音が、再び轟いた。








 ライブ会場の柵の外から、激しい茂みの音がし、レイラは、はたと振り返る。他の警官達もまた、気配を察して目を凝らした。

 自然の音と思えば、いつもと何ら変わらない。しかし、音に振り向かされた、という感覚ではなかった。足は自ずと、その方角へ向きを変えていく。傍にいたリーダーに肩を掴まれても、反射的に振り解いてしまった。



「何かの接近を感じます。向かいます」



――ハイドアンドシークは、私が一番強い



 たとえ、それが違っていたとしても、駆け出しの自分の落ち度に終わるだけだ。どんな叱責を受けても構わない。今やるべき事は、メンバーの死角で、彼を探す事だ。

 レイラは、周囲の仲間達の声や、引き留める腕も余所に、会場の外側――茂みへ走った。









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サスペンスダークファンタジー


COYOTE


2025年8月27日完結

続編「Dearest」当日同時公開


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています

インスタサブアカウントでは

短編限定の「インスタ小説」も実施中


その他作品も含め

気が向きましたら是非




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― 新着の感想 ―
こんにちは♪ いつも投稿お疲れ様です☆ 謎の人物はまるでアクセルやステファンを救いたいと言う意志を感じました。 やってる事はメチャクチャですが、アクセルもその思いにだいぶ心揺さぶられた感じが見受けら…
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