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午前の授業が終わり、ブルースの車で行きつけの外食先に向かう。
車内は、新曲作りの進捗の話題で持ちきりだ。主に作詞をしているアクセルが、恋愛ものになりそうだと話す。と、レイデンに後部席から背中を蹴られ、咄嗟に睨み返した。だが、向けられる悪魔の様な笑みに、言葉が詰まる。
「真面目な話、レイラは単位大丈夫なのか? 新学期入って会ったのは2回だ」
「タイムテーブルが進化したんだから、被ってねぇだけだろうよ」
ブルースの席に、レイデンが寄り掛かって答える。彼が、シートベルトを強引に長く伸ばし、前のめりになるのは毎度の事だった。
「“お前ほんっま!” 止めろ! 親父の車だって言ってんだろ!」
咄嗟に出るブルースの日本語も構わず、レイデンは涼し気だ。
「西欧でドンチャン中なら、まだ大丈夫だろ。最終、俺が手入れしてやる」
ブルースは途端に口を閉じる。大雑把な自分は、掃除が疎かだ。それに比べ、レイデンは訳あって、圧倒的な清掃センスがある。
騒がしい2人を笑うアクセルだが、内心は、ふと話題に出た彼女の事でいっぱいだった。それに気付かれるまいと、サイドミラーに反す細い陽光に視線を向ける。
必修である一般的な5科目のほか、自分の興味や関心に応じて選択ができる科目がある。音楽の授業は豊富でも、より大きな枠組みで捉えると、フォトグラフやコンピューターグラフィック、ダンスや演劇といった、芸術も幅広く学ぶ事ができる。近頃は環境学も増えた。
彼女に会えるコマが1つくらいあっても、おかしくはなかった。更に言えば、アクセルの場合、学校で会えなくとも家の外で会える筈だった。
「まぁ……また何か事情があんだよ」
アクセルは窓から腕を出し、ボディを叩きながら呟く。2人は、置いてけぼりの話題に漸く反応するアクセルを、そっとしておくに留めた。
車を5分ほど走らせ、クラブハウスサンドの店舗に着いた。ブルースが駐車する間、2人はテラス席を確保しに向かう。周りは既に、同じ学校の生徒や、昼休みの社会人で賑わい始めていた。
サンドイッチの専門店だが、それとは別のメニューも少し用意されている。肥満問題が抜きん出ているからこそ、ヴィーガンメニューが推奨され、意識する人も増えつつあった。植物由来の食材で作った代替肉は、実際の肉であると錯覚するほどの味質を持っている。
社会は、人々が新しい食事に馴染みやすくするよう努めている。隣街の日系レストランでは、ほうれん草など、植物性食材を練り込んだヌードルが出始めた。椎茸や昆布、豆乳、胡麻を使ったスープと絡み、まろやかで絶品だと評判である。トッピングは、厚揚げなどでボリュームも出され、満足感を得るには十分な品だ。
※時間割を自分で作るのが一般的です。基本的には少人数制で、同じ科目を取っていても時間帯が違うといった事もあります。先生の時間枠によっては、インターバルといった長めの空き時間があったりもするようですが、概ね8時~14時か15時までぶっ通しみたいです。
朝からさっさと授業をして終わらせ、宿題の為に図書館を解放し、みっちり取り組んでもらうといった環境のようです。クラブもあったりしますが。
※昼食は外食したり、テイクアウトしてくる事が許されている学校があります。
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