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*完結* COYOTE   作者: terra.
Harvest Moon
16/184

14



※約3300字でお送りします。


♪ONE OK ROCK /【No Nothing Help】

YouTube / ONE OK ROCK Official Channel にて聴いて頂けます。

「【HD】ONE OK ROCK - Nothing Helps "Mighty Long Fall at Yokohama Stadium" LIVE」


★COYOTE ver. / 【Rev up!】






 周囲は、教師が思わず変える表情を揶揄いながら、出だしの音のリズムに合わせて、手拍子と声を足す。




 ブルースとレイデンもまた、教師に悪戯な笑みを浮かべると、透かさずジェイソンが、合間のシンバルを強く引っ叩いた。




 睨む彼を、アクセルは手だけで宥めると、片手でマイクを包む。空気が一変した時、声のペダルを踏んでいった。






誰も助けちゃ(Nobody)くれないよ(helps,)

置いて(no matter)かれない(how you)ように(spend the)努力を(effort not)した(to be)って(left.)

誰も(Nobody's)見てない(looking.)

結局 (In the)(end,)たちは(we're just)自分に(doing our)精一杯(best for)(ourselves)……」



 気の抜けた終わりで、アイドリングが静まり切ろうとすると――シンバルと床を突くドラムが2ヒットし、ギアが上がった。



いくぞ!(Come on)




 アクセルの声が効くと、連打でエンジンを吹かせたジェイソンは、影を残すスティックで、コマンドを打ち出す。それを受けたギターとベースが、最高速でサウンドのタイヤを走らせた。



吹かして(Rev up)みろよ(more)......ほら(Hey,)吹かせ(rev up)(more)......」



 重なる3人の声が煙を立て、空気を巻き上げた。飛び込むブルースのシャウトが観客を揺さぶり、歓声は、エンジン音と排気に変わる。




 開通したロックサウンドの道路を、4人は爆走した。向かい風に乗るメロディが、尾を引いていく。全身に受ける3人のスピードが緩やかになると、アクセルは、声のハンドルを切った。



よう(Hey,)新しい自分(what's up,) 調子は(new)どうだ(look.)

怖い(Are you)のか(scared)

世間が(Is it cuz)過去の(they)君の(locked)お蔵入り(away)を望んだ(the old)からか(you)

さぁ(So) 最高(let's get)と認(started)めら(and)れる(sync up to)ために(grab the)(title)調(of )('You)(are)わせよう(the best.')



 両側の2人の声が重なると、その場が揺れ、観客ごと捻じ曲げる。



長い(Cut off)もんは(the things)切り (that are)白は(long,)(and)(flip)(white)(to)よう(black.)

ほら(Well,)ご立(that's)派だ(impressive) 味方を得られ(if you get)たんなら(allies.)

けど言っ(But I will)ておく(say,) 長続(that)きなん(things)てし(won't)ない」(last.)



 スネアの孤立した1ヒットが、速さを欲しがった。前傾になるアクセルの声に続き、2人のタイヤが更に駆動すると、3種の声が加速する。



誰も助けちゃ(Nobody)くれないよ(helps,)

置いて(no matter)かれ(how)ない(you)ように(spend the)努力を(effort not)した(to be)って(left.)

誰も(Nobody's)見てない (looking.)

(In the)(end,) 俺達は(we're just)ただ制御(stuck)できず(driving)に運転し(out of)てるんだ(control. )

何度 起き(Even when )(we wake) (up)(again and) 聞こ(again, all)える(we)のは(hear is)クソ(just a )ノイ(damn)ズだ(noise.)

履き(Don't)違え(get it)るな(wrong.) 俺達(Why)はなんで(are we)ここにいる(here)

個性(Just)吹かす(to rev up)(our)(individua)(lity.)ろ」



 加わる2人の声が切れ、アクセルの声が、パッシングとして続く。



率直(We)(just)話し(wanna)たい(talk)だけな(openly,)んだ

下手(even if)くそな(we're not)喋りだ(speaking)として(well.)

けど(But) フリ(we)ーズすんだよ(freeze up.)

居場所(It's like)がなくな(we'll lose)ると思うと(the place.)

(We)(thought)(and)考えて(thought,)

明日(driving)(miles)自分(for)のために(tomorrow's)何マイル(sake,)も抜(but now)けたのに(we're)

ガス(out of)欠だ(gas.)



 声は再び3重になり、熱した空気に荒波を立てた。



平和を(What was)求めた(the first)最初(thing)(that)キッカケは(made you)何だ(want to)った(seek)んだ(peace)

殺し(We)合い(turned)(the)吹っ(key)飛ばし(to blow)たくて(away)キー(the)を回した(killing.)

Uタ(We’d)ーン(better)した(make)ほう(a)がいい(U-turn.) もっと(More) (and)っとだ (more. )

昔の(Rev )ベスト(up)を吹か(your)してみろ(old best)!」



 途端、ブルースの突き抜ける声をクラクションに、サビの幕を払った。



誰も(Nobody)助けちゃくれないよ(helps,)

置いて(no matter)かれ(how)ない(how)よう(spend the)に努(effort )力をし(not to)たって(be left.)

誰も(Nobody's)見てない(looking.)

(In the)(end,)俺達(we're)(just)ただ(stuck)制御で(driving)きずに運(out of)転して(control. )るんだ

何度 起き(Even when )(we wake) (up)(again and) 聞こ(again, all)える(we)のは(hear is)クソ(just a )ノイ(damn)ズだ(noise.)

履き(Don't)違え(get it)るな(wrong.) 俺達(Why)はなんで(are we)ここにいる(here)

個性(Just)吹かす(to rev up)(our)(individua)(lity)ろ!」



 サビを終えてすぐ、ノイズを出せと、観客一帯を煽った。




 ここまでのアクセルによるハイビームが下りると、3人のセッションが、違反速度に達していく。




 ブルースの増えて見える指が、タイヤのブレーキ音を、これでもかと掻き立てる。フォルムに格好をつける事はしない。長く、永久的に響かせようとするスタイルは、どこか古臭さがあった。全身を大きくしならせ、ギターを下部で抱えるアーティストとの違いを魅せる。




 レイデンは、首で軽くリズムを取るだけで大人しい。コーラスパートが終わる度に、エネルギーを放出し続けるドラムに近付いている。彼は、メロディとビートを橋渡ししていた。バンドの底の底までも支え、一度荒く排出した音を整える。そのまま、車体であるメンバー内に溜まったガスを、マフラーから抜き、終盤に向けて曲を持ち直していく。




 ジェイソンのタイピングに似たヒットは、レイデンの音と綺麗に合わさっていた。速さと安定さ、力強さは、序盤からブレない。曲中に散りばめられたキッカケを取りこぼさないよう、また、たとえメンバーが咄嗟にブーストを効かせてしまっても、自分が冷静さを取り戻せるようにする。いつだって、冷却装置である事を忘れない。




 観客の高々と上がる腕の動きが、校舎までもを歪ませていく。爽やかな朝を殴り、秋を散り散りにさせ、夏を広げた。




 練り動く音と空気の中で、アクセルは、ふと、観客を見回す。間が空くと意識してしまう癖は、合図を聞き逃しかねない。それ程までに影響を与えてくる彼女は、今日も、どこにもいなかった。廊下にも、窓の外にも、その姿は、眩しく浮かび上がってはくれない。恥ずかしそうにしながらも手を振る所を見たかった。その、徐々に落ちていく感情を音にしていく端の2人を機に、マイクを取り直す。




言い(There)出せ(was)ない(suffering)苦し(we)みが(couldn't)あるのに (speak of,)

(yet)手く(we)生きら(couldn't)れな(live)かった(well.)

誰かは(Someone)他人の(was forced)(into)通を強(someone)いら(else's)(normal) (and)( was)変えら(changed)れた(into evil.)

|平和を(What was)求めた(the first)最初(thing)(that)キッカケは(made you)何だ(want to)った(seek)んだ(peace)

笑って(Just )人生(wanna)(laugh)突っ走(and race)りて(through)(life)!」



 歌詞の終わりを際立たせるブルースのスクリームに、ヒットの連打が被ると、歓声の豪雨が降る。4人は、折り返した道路を一気に飛ばした。



誰も(Nobody)助けちゃくれないよ(helps,)

置いて(no matter)かれ(how)ない(how)よう(spend the)に努(effort )力をし(not to)たって(be left.)

誰も(Nobody's)見てない (looking.)

(In the)(end,) 俺達は(we're just)ただ制御(stuck)できず(driving)に運転し(out of)てるんだ(control. )

誰も(Nobody’s)教えてくれないぞ(telling,)

俺達(the way)(won't)教え(open) 導い(unless)(we)やら(show)ない(and)限り(lead.)

さぁ(Now)吹かせ(rev it up)

(Just)もかれ(bring)もを巻き(the guys)込んで(along) (and)かした(let them)車に(ride in)乗せてやれ(a cool car)

いけ(We go)!」



 最後のサビに勢いをつけると、速度が落ちていく。



俺達(What)(we)欲しいのは(want is) 本当(a day)の事(filled)に満(with)ちた日だ(the truth.)

俺達(What)(we)欲しいのは(want is) 自分(a day)らしく(to live)(like)きら(who)れる日だ(we are.)



 3人の、交互に飛び交う緩やかな声が、惰力の走りを見せる。繰り返されるそれは、観客とのコールアンドレスポンスに変わった。締めがそこまで迫ろうとも、ジェイソンは急かさない。




 観客の動きは、空気を渦巻かせながら、永遠のサウンドを求める。パーキングに入ろうとする4人が惜しく、繰り返される歌詞を叫び続けた。が、ここまで岩の姿勢を崩さずにいた教師の視線が、いい加減にするよう貫いた時――



さぁ鳴らせ(Honk, now)俺達は(We'll)その誰か(be that)になる(someone)

さぁ鳴らせ(Honk, now)ああああああああ(AHHHHHHHH)!」



 ジェイソンのヒットで、ギアが完全に落とされると、吹かし疲れたブルースとレイデンの音が伸びて響き渡る。余韻を飾るシンバルは、じきに、端の2人が愛機を掲げると同時に、エンジンを乱暴に切った。






 鳴り止まない歓声の中、次のターンのバンドは、迷惑そうに眉を寄せる。一仕事を終えた4人は、日常の様子から打って変わって、いつもエネルギッシュな音を放ち、校内で目を惹いていた。




 教師は愛想笑いを浮かべ、軽い称賛の拍手だけに留めると、次のバンドを呼ぶ。その一方で、4人にバンド名を訊ねた。だがその声は、未だ響き渡る生徒のどよめきに埋もれていく。



「いい加減にしろ。用が済んだら戻れ、他のクラスに迷惑だ」




 教師の声や、騒がしい生徒達の間を縫って進むジェイソンは、早くも廊下に出て行く。



「ジェイ、助かった! 放課後も頼んだぞ!」



 ブルースが慌てて声を張ると、ジェイソンは振り向かず、手だけで了解を示した。




 歓声が静まる中、レイデンが歯に舌を這わせ、悪魔の揶揄いを見せる。



「ようアックス。お前、間がありゃ勃たせんのか」



 とんだ勘違いに、アクセルは睨む。ぼんやりしている様に見えるレイデンは、常々、細部にまで目を光らせている。演奏を終えると、大抵いらぬ事を言うのもお決まりだ。




 その横では、教師が質問に答えろと言い放つのだが、傍にいた別の生徒が笑った。



「先生、知らないの? 彼等はバンド名がない。まぁそうね、NEO(ネオ) CLASSIC(クラシック)とでもしておけば?」




 曲自体は現代的でありながらも、バンドの姿は古典的(レトロ)であるという噂があった。着飾らず、シンプルさを通す彼等は、身体を気遣う演奏スタイルをするあまり、中年ではあるまいしと揶揄われていたりもする。だが、アクセルのマイクからは独特さを感じ、珍しいと話す生徒の声がした。そんな容姿と曲の形態のギャップをさらすバンドに、周囲はつい振り向いてしまう。不思議と、彼等が一時的に生み出す空間の一部にさせられてきた。




 そんな謎めいた魅力を、教師は特に知ろうとはせず、端の生徒に提案された適当なバンド名を、既定の欄に書き留めた。








※主にLIVE版を参考に書きましたが、合間はそうでない通常版の歌い方も混ぜてます。



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サスペンスダークファンタジー


COYOTE


2025年8月下旬完結予定


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています

インスタサブアカウントでは

短編限定の「インスタ小説」も実施中


その他作品も含め

気が向きましたら是非




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― 新着の感想 ―
熱いですね!!! リリックとシンクロする、車のドライビングと掛け合わせた表現。 まさに文字通りドライブ感!! ゾクゾクしてきます。 体が自然に動きそうですよっ(^O^☆♪
お疲れ様です♪ 素晴らしい音楽でした! 日常のモヤモヤを粉砕するようなダイナミックな演奏! しびれました((o(^∇^)o)) アクセルは彼女がいて欲しかったと事を歌いながらも脳裏を過っていたようです…
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