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*完結* COYOTE   作者: terra.
Waxing Gibbous
158/184

13



♪Never Let This Go / ONE OK ROCK

Free and Wild! / COYOTE Ver.






 スタッフが配置につくと、ステージの4人にサインを出した。

 会話の(ともしび)がふと消え、観客席を向いたメンバーに明暗が刻まれた時、しんと、空気が落ちる。声も視線もいらない。3人はただ、ジェイソンに背中を任せた。




 これまで、多くの切り出しをジェイソンに預けてきた。なのにまだ、何も返せていない。その上、また甘えることになる。彼への強い信頼と、惹かれるまでの潔さに。

 胸の微かな疼きに、アクセルは、影で口角を上げる。音を送れ――その願いは今、シンバルに弾かれる。




キま(Are you)る準備(ready for)はいいか(get high)

(Set)等の(the fire)ノイズ(with)で燃えてけ(our noise)

さぁ、(Now,)てめぇ(break)を曝け(yourself)出せ(out)

自由に(Free and)――」



 ブルースのシャウトに、3種のサウンドが烈火に変わる。更なる火力を、レイデンとアクセルの声で噴き上げた。



「――ワイルド(Wilde)にいけ!」



 メロディの爆風が、室内を瞬く間に満たしていく。人の声だけの緩い空気は、4人が吹かせたガスに変わると、サウンドの剣で、素早く、激情的に切り裂かれた。



また(Again,)(I)じ道で(ended up)溜め息(sighing)を吐い(on the)てしまった(same path)

干か(About)らびそう(to dry up)

もう(We’re)ご褒(already)美を(dreaming)夢見(of the)てる(reward)

(Keep)を振り(swinging)続けて(our sword)道を(to blaze)拓け(a trail)

転ん(Even)だとし(we fall,)ても

(the)点が(last stop)(will)美をく(bring us)れるさ(our reward)



 アクセルが切り出すストーリーに、観衆は、事件の勃発を錯覚する。時にサブボーカル2人が合わさり、更なる緊急性を掻き鳴らした。周囲の目は、一斉にステージへと引き寄せられていく。

 ドラムの安定したヒットは、真っ直ぐ曲に導くも、その場の空気を大きく突き上げる。会場一帯の鼓動を躍動させ、血までも騒がせようとしていた。



(What)達が(we'll)手に(grasp)するのは

(is)(the)幕閉(fiery)じだ(ending)

それは(It is not)|上手(about)い下(being)手と(good)かじゃ(or bad)ない

自分を(Did you)出し切(give it)れたのか(your all)

それが(That’s)全て(the whole)だよ(thing)

(Cuz’)の夜(your)(night,)君の(your)金曜日が(Friday)(is)ってる(waiting)んだから

俺達を(No way)止めるなん(to stop us)てありえない!――」



 寸秒生まれた静寂に、誰もが瞼を失った。



感じる(Running)まま走るの(as we feel)も悪くない(is not bad)

今 俺達の(Fill it)エア(with)ーで満(our air)たそ(now)うぜ!

自分(Raise)に乾杯(your glass)して(and) しく(let's)じり(erase)を忘(all our)れよ(mess)

狂って(Drive)(us)うぜ(crazy)

(We)(just)飲み干(drink it)(all)(and)リセッ(reset)トし(ourselves) 戦い(to fight)(and)(get)とう(the win)

だって(Because)味方が(our ally)そこに(is there)いる

必ず(We can)また(always)戻って(come back)来られ(again)る」



 2度目の声の爆発に、観客が席から跳ね上がり、歓声がブレンドされていく。

 暴走するバンドは、珍しく派手な騒音を撒き散らし、この雑な乱れを、敢えて魅せている様だ。だが、一定ラインからはみ出ようものならば、レイデンが、底からフェンスを打ち上げる。どこか幼児に戻るメンバーは、全員を揺さぶり、荒いモザイクを生み出していく。



 客が掻き回す腕で、辺りは熱を帯びはじめた。混ざり合う照明の中で、その撹拌に抗おうと、赤と青の光は、時にアクセルの視線を引こうとする。



また(Again,)(I)中で(ended up)後悔(lost)(in)して(regret)しまった(halfway)

でも(But)思い(try to)出してみ(remember)

な?(See,) もう(we’re)ご褒(already)美を(dreaming)夢見(of the)てる(reward)

誰かを(Maybe)傷つけ(someone)たかもし(got hurt)れない

誰かを(Maybe)困らせ(someone)たかもし(got upset)れない

戦士(Must not)失格(be a)だろう(warrior)

でも(But)(the)点はご(last stop)(will)美を(bring)(us)(our)るさ(reward)



 ジェイソンのヒットと共に、アクセルは語りかける。居場所が違えど、同じ様に生きる仲間として。

 人もまた動物的に、己や誰かを満たしたがる時がある――気付けば、歌に乗せていた。



(What)達が(we'll)手に(grasp)するのは

(is)(the)幕閉(fiery)じだ(ending)

それは(It is not)|上手(about)い下(being)手と(good)かじゃ(or bad)ない

自分を(Did you)出し切(give it)れたのか(your all)

それが(That’s)全て(the whole)だよ(thing)

(Cuz’)の夜(your)(night,)君の(your)金曜日が(Friday)(is)ってる(waiting)んだから

俺達を(No way)止めるなん(to stop us)てありえない!――」



 そしてまた、勢いの線が途絶えた。息が滲む静寂も束の間、ボーカルの点火に、黄色い声が一帯を染め上げた。


 レイラは、そんな中で唯一、荒波に耐える岩の様になっていた。先程まで傍にいた彼等が魅せるギャップに、独り、戦慄している。別世界に立っている様に見える彼等だが、誰かを置き去りにしようとする様子は、微塵もなかった。4人で確立する1人が、サウンドの腕を広げ、全てを包み、取り込もうとする。ワードこそ強くとも、そこに、誰かの声を聞こうとする優しさがあった。熱苦しくて引いてしまいそうになっても、根底にある包容力に、心が応えるように沸騰する。



感じる(Running)まま走るの(as we feel)も悪くない(is not bad)

今 俺達の(Fill it)エア(with)ーで満(our air)たそ(now)うぜ!

自分(Raise)に乾杯(your glass)して(and) しく(let's)じり(erase)を忘(all our)れよ(mess)

狂って(Drive)(us)うぜ(crazy)

(We)(just)飲み干(drink it)(all)(and)リセッ(reset)トし(ourselves) 戦い(to fight)(and)(get)とう(the win)

だって(Because)味方が(our ally)そこに(is there)いる

必ず(We can)また(always)戻って(come back)来られ(again)る」



 仕事や学業も、誰かのためになってきた。多過ぎる壁に辟易していても、何かに打ち込む姿は美しい。達成感や実績を上げるためではあるけれど、本当は、その後に待ち構える“好き”を全うするために(こな)している。それぞれの好みで、せめて今夜は、或いは曲を聴く間だけでも、世界に彩りを加えたかった。



俺達(We)は知(don't)りっ(know )こない

(if)日があ(tomorrow)るか(even)どうか(exists)なんて

放っと(Please)いて(leave)くれ(us be)

ただ(We just) 自由(wanna)(be)ワイ(free)ドに(and)いた(wild)いだけなんだ」



 アクセルは、手放しかけた剣に呟いた。消えそうになる意識は、ところが、ジェイソンの連打で背中ごと大きく叩き出され、再点火する。

 ブルースは、伸びるアクセルの声を掴むと、シャウトで繋いだ。



俺達を(No way)止めるなん(to stop us)てありえない!」



感じる(Running)まま走るの(as we feel)も悪くない(is not bad)

今 俺達の(Fill it)エア(with)ーで満(our air)たそ(now)うぜ!

自分(Raise)に乾杯(your glass)して(and) しく(let's)じり(erase)を忘(all our)れよ(mess)

狂って(Drive)(us)うぜ(crazy)

(We)(just)飲み干(drink it)(all)(and)リセッ(reset)トし(ourselves) 戦い(to fight)(and)(get)とう(the win)

だって(Because)味方が(our ally)そこに(is there)いる

必ず(We can)また(always)戻って(come back)来られ(again)る」



 熱気を歪める歓声は、今や、このサウンドを自分の武器に変えてくれている。この場所に、この時間に、また戻ってこられる――そんな気に、させてくれた。



「Free and Wild!

Free and Wild!」



 メロディが落ちていこうとも、アクセルは声量を保った。余韻を引き締めていく3人の音と、願いを織り込む声に、客の興奮が絡み合う。場を満たす拍手は、どよめきを延々と伸ばすようだった。



 アクセルは、ジェイソンの攻撃的な煽りと暴走に、自分の声だけで応えられた。レイデンは、揺らぐ足元に、確かな安定感を与えてくれた。そしてブルースは、速度を維持し、最後の1滴まで燃料を使い切る事を惜しまなかった。



 だが、汗の光に瞬くステージに割り込もうとするものに、アクセルは感覚を研ぎ澄ませる。歌いながら気付いていた。ライブハウスの色とりどりの照明に混ざる、同じ色でも異なる強弱を見せる、赤と青の光を。






 自分のターンを待ち構えていた1人の警官が、ステージのセンターを振り返るなり、カウンターから立ち上がった。



「約束だ。大ごとは止めてくれよ」



 この瞬間まで続いていた、マスターの念押しにも耳を貸さず、警官は淡々と観衆を切って進んだ。マスターは、背筋に冷気を感じた瞬間、ステージに引き寄せられる様に、足早に警官の後を追った。









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サスペンスダークファンタジー


COYOTE


2025年8月下旬完結予定


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています

インスタサブアカウントでは

短編限定の「インスタ小説」も実施中


その他作品も含め

気が向きましたら是非




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― 新着の感想 ―
こんにちは♪ いつも投稿お疲れ様です☆ とうとう来ましたね! 音楽と人の心が混ざり合い、一色となるシーンは激アツです! ロックで攻めるアクセルたちは、今までの困難を吹き飛ばすくらいの勢いがありました…
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