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アクセルとジェイソンは、ライブハウスまでの道路で検問にあっていた。容疑者が特定された現在、更なる情報収集をしているところだと、警官は言う。
ジェイソンが冷静に対話する一方で、アクセルは平常心を装うのに死に物狂いだった。しかし、自分だけ何も反応しない訳にもいかず、フードを被ると、あたかも睡眠の邪魔をするなといった態度を取り、それらしい顔で心境を誤魔化した。
「大変ですね。俺の事調べます? 仕事しててよく言われるから困ってんだよ、容疑者に似てるって。イケてるのはありがたいが、迷惑だ」
ジェイソンの自然な態度に、警官は気さくに笑った。
「それはそれは。心配しなくていい、君は見るからに違ってるさ。そっちの彼はクラスメート?」
アクセルは、わざとらしい溜め息をつくと、窮屈でならない心を強引に解放する様に、警官と向き合った。
「そうだよ、なんならパートナーだ。恥ずかしいから見ないでもらえる? こっちは短い貴重な放課後にしかデートできねぇんだからさ。体力の温存に睡眠が要るんだよ、分かるでしょ?」
警官はせせら笑いながら、アクセルの態度を手で払い除ける。
「それはすまないね。ただこちらも、君達の貴重で愛溢れる時間を守る義務があって、やってる。容疑者に襲われちゃ、たまったもんじゃないだろう」
もういいだろうと、ジェイソンは静かに警官に終わりを促すのだが、アクセルは、半ば前のめりになってしまった。
「それだけどさぁ、そっちは、どんだけ調べてあの人を犯人だって言ってるワケ?」
警官は腕を組むと、アクセルに目を這わせながら小首を傾げる。
「家族がいながら何でそうなっちまったか、何で家に帰れねぇかをどれくらい考えたんだって話だよ。ハンターが撮った写真だけで、犯人だって決めつけてるんじゃねぇのか」
「おい、その議論はクラスで散々やったろう」
ジェイソンは、運転席まで迫るアクセルを押さえつけながら、ただの思いつきを連ねた。
「なるほど。君の考えは興味深いが、容疑者を捕まえない限り答えは分からない。本人がどうであろうと、罪を犯せば法に基づくまで。相手の出方によっては、こちらも相応の態勢を取る」
「最悪、殺すのか……簡単に、撃っちまうのか……」
警官は僅かに眉を上げると、親指を前に、手を腰にやる。
「その辺の判断はシビアだ、少年。君の様な熱い存在に会えて嬉しいよ。ただ、それもまた、事件による不安がそうさせているとも言えるだろう。こちらは、一刻も早い解決に努めるよ。時間を取らせたな」
ジェイソンは軽く手を上げると、安堵の息を小さく漏らした。
2人を見送った警官は、端にいた相方に相槌を打つと、無線に触れながらパトカーに乗り込んだ。
「本人かは分からないが、気になる少年がいた。暫く見張る」
※親指を前に、腰に手をやる動作。
こちら、1種のボディランゲージで、情報をもっと欲しがっている可能性を秘めたものです。
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サスペンスダークファンタジー
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