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*完結* COYOTE   作者: terra.
Waxing Gibbous
147/184

2




 アクセルは、まだまだ中身を見せてくれないジェイソンの横顔を覗う。馬鹿な部分を見せたりしない彼は、メンバーの締め色の様だった。



「さぁどうだか……昨夜のあれだって、ちゃんと歌えてたのか……今思えば、バカな事したんじゃねぇかな……」



「レイラか」



 飛び込んできた言葉に、アクセルは目を見張る。ジェイソンは彼に、何をとぼけているのかと、呆れを滲ませた眼差しを向けた。



「喋り過ぎたんなら遅い。歌えたなら、よかったんじゃないのか」



 それからどうしたのだと、彼の静かな促しを察したアクセルだが、言葉に詰まってしまう。曲中に本心を込めなかったのは、歌に頼りたくなかったからだ。



「いや、遅かったよ……彼女は俺に、あんなに真っ直ぐ、愛させろって言ったのに……」



 この場に彼女がいるかの様に、その温度や震えを感じる。ほんの僅かな時間に、色々な顔を見た気がするが、焼きついているのは涙に濡れた表情だった。窓にその顔を見ては胸に沁み、あまりの痛さに瞼を閉ざしてしまう。



「お前の歌に押されたからなんじゃないのか。聞いた感じじゃ、昨夜のキッカケはお前だったと思うがな」



 信号待ちになると、ジェイソンは、顔が曇ったままのアクセルに向く。



「お前はその時、今だ、と思って出ていった。遅ぇもんか。お前にとって最速で、最高のクオリティーで伝えられる瞬間だったから、足が動いた。そこに涙があったかもしれないが、お互いがお互いを欲しがって、それが叶ったんなら、馬鹿なことな訳あるか。それが2人の形だ」



 前のめりになる言葉を聞いた瞬間、アクセルは、そこに別の言葉が重なって聞こえた気がした。誰の言葉だったかは思い出せないが、手帳の中で文字になっていたものだ。その綴った言葉もまた、ジェイソンがくれる熱意によく似ている様に感じた。



「ハッキリしたもんを求められる事もある。それをするのが難しいのは、俺も知ってる。苦手だ。けど、お前はそれに近いもんならできて、いざやってみたら、レイラは受け入れた。理由は、ただお前だからだ、アックス。どんなスタイルのお前でも、レイラはきっと受け入れる。表現にこだわり過ぎるな。お前が愛してる事なんて、彼女はとっくに分かってる」



 見ているこちらが分かるほどなのだからと付け足すと、ジェイソンは発進した。




 僅かな間が空くと、彼は小さく笑い、アクセルの髪を乱してやる。アクセルは、その手になんとなく父親を重ねてしまっていた。



「参ったよ……録りたいから、もう1回言ってくれ」



「それは、馬鹿だ」



 間髪入れずに言い返すジェイソンに、アクセルは声だけで笑うと、彼がくれた言葉を慌てて手帳に書き留めた。









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サスペンスダークファンタジー


COYOTE


2025年8月下旬完結予定


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています

インスタサブアカウントでは

短編限定の「インスタ小説」も実施中


その他作品も含め

気が向きましたら是非




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― 新着の感想 ―
こんにちは♪ いつもお忙しい中、投稿お疲れ様です☆ これが恋バナと言うやつですね! 読んでいてレイラの話題でしたが、こるがまた奥深いですね。 アクセルは大切な人を手放したくない、また自分が獣と化す事…
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