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*完結* COYOTE   作者: terra.
First Quarter
145/184

18




 レイラは、アクセルの隠しきれない震えと涙をそっと包み、拭っていく。手元に強く押し付けられる手帳を取った拍子に、受け止めた涙がそのまま同じ様に零れてしまうところ、ふと、笑った。



「“ハイドアンドシークは、私が一番強い。だから、貴方がどこに隠れようが、忘れてしまおうが、私は必ず貴方を見つけ出す。でも私の場合は、貴方がちゃんと見つけられるように、近くにいる。貴方の声が聞こえ、触れられる距離に――」



 レイラはペンを止めると、洟をすすり、アクセルに額を当てたまま続けた。



「だけどアックス……貴方にもそうしてもらいたい。何処へも行かず、ここにずっといてよ。明日、世界が終わるかもしれないって言うなら、尚の事……最期まで、愛させて”」



 レイラは、1ページいっぱいに、声に出した言葉を記した。そして大きく、レイラ・ガルシアとサインを残した。




 アクセルは(ようや)く、心の栓が抜けた様に、どっと肩を撫で下ろす。だがレイラは、涙を流したまま、眉間に不安を刻んでいく。



「何で、握り返してくれないの……」



 その言葉を受け、アクセルはほんの僅かに力を加えた。



「力が抜けるだろ、そんな事言うから……」



 アクセルは微笑むと、レイラの頬を柔らかく拭い、そのまま頬を軽く押しつける。そして、小さく絞り出した。



「君は最高で、綺麗だ……」



 レイラは頬を寄せ返すも、彼はあっさり離れてしまう。その顔色は、痞えていたものが取れたのか、すっきりしていた。だが、こちらの不安は膨らむ一方だった。彼はまるで、どこか別のところを見て話している様だった。



「アックス」



 立ち去ろうとする背中に、妙な影が歪んだ様な気がして、呼び止めてしまう。そして、また明日と、守れるかどうか分からない約束をしかけた時。彼は、いつもの様子で振り向くと、爽やかに笑い返し



「おやすみ」



 この時間にピリオドを打った。






         *




 現場検証での収穫はなく、被害に遭ったレンジャーと警官の目撃情報だけが頼りだった。

 高校生と見られる少年が、銀髪の姿で現れたというものであり、それは、過去の被害者の証言である銀の光の現象と一致していた。

 未だ寄せられる多くの目撃情報を、別の地域からのものと合わせて調査しようと、署内は忙しない空気で犇めいていく。



「被害者が見たとされる、銀の液……それが体内に入った場合、豹変するとすれば」



 男性刑事が呟く横で、女性刑事が関係資料を広げ、部屋のスクリーンに、北の地域での被害情報を映した。



「先週の土曜日に、容疑者と接触した少年のデータよ。レンジャーと警官が見たとされる少年と、特徴は近い様に感じる。ただ、当時彼が受けたどの検査からも、金属的な色のものを含めて、異常は見つかっていない。それに、事件現場である彼の自宅の庭からも、何も発見されなかったとあるわ」



 男性刑事は唸ると、少年とステファンの接触における時系列を見た。



「……潜伏期間があるとすればどうだ。少年の現状や、次の検査日は?」



 ステファンと少年に起きた異変のタイミングを比べてみても、両者には圧倒的な差があり、刑事は疑問に顔を歪める。だが



「彼にまつわる新たな通報は無い。当時の事情聴取の後、医師の話では、経過観察の判断が下りてて、検査は今週末の予定になってる」



 男性刑事は暫し思考を巡らせると、少年が一時入院した病院にアポイントを取ることにした。




挿絵(By みてみん)








※ハイドアンドシーク=かくれんぼ



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サスペンスダークファンタジー


COYOTE


2025年8月下旬完結予定


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています

インスタサブアカウントでは

短編限定の「インスタ小説」も実施中


その他作品も含め

気が向きましたら是非




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― 新着の感想 ―
こんにちは♪ いつもお忙しい中、投稿お疲れ様です☆ 本当に愛を感じました! 誰がどう見ても、アクセルとレイラは恋人ですね! レイラもアクセルのために詩を書き、その思いが届いたのかどうかと思うと、微妙に…
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